NPO運営で必要な力は「想いとお金のバランス感覚」 〜NPO法人HERO代表 橋本博司さん〜

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本日は、NPO法人HEROの代表として社会貢献を仕事に活躍中の橋本博司(はしもとひろし)さんにお話を伺いました。
大学時代の“ある出来事”をきっかけに、目標ができた橋本さん。
着実にキャリアを積みながら挑戦し続ける、彼のまなざしに迫ります!

 

きっかけは20年前のバックパック

現在の活動

―――本日はよろしくお願いします。最初に、現在の活動について教えてください。

現在は、カンボジアで小学校や図書館の建設を中心に、ツアー事業・医療事業・貧困対策支援など幅広く活動しています。

メインの小学校建設では「カンボジアの子ども1万人を学校に通わせる」という目標を立てており、2010年設立当初から現在までに、約7000人の子どもたちを就学させることができています。

統計によってばらつきはありますが、「1万人」という数字はカンボジアで初等教育を受けられていない子どもの4分の1にあたります。

国際協力に興味を持ったきっかけとは!?

―――そもそも、国際協力に興味を持ったきっかけを教えてください。

約20年前、バックパッカーとして渡航したカンボジアの子どもたちとの出会いがきっかけです。

大学生だった僕は、アルバイトでお金を貯めては一人で海外へ行っていました。

カンボジアは、ちょうど内戦後の国境が解放された時期でした。

アンコールワットに行ったら子どもたちが寄ってきて、

「学校に通っていないから勉強を教えてほしい」

と言われたんです。

内戦の影響で先生が殺され、学校も壊されてしまったと。

そこで、子どもたちを集めて青空教室のような形で、簡単な日本語や算数を教えました。

そしたら今度は子どもたちが夢を語るようになりました

「僕は将来医者になりたい」

「学校の先生になりたい」

理由を聞くと、

「戦争でいろんな人が怪我しているから医者になって治してあげたい」

「学校の先生がみんな殺されちゃったから先生になって教えたい」

って言ってきたんです。

でも、その子たちは学校に通っていません。

そのまま大人になっても、読み書きも計算もできないので、医者や教師になれることはないだろうなと思ってしまいました。

同時に20歳の僕自身、夢とかやりたいことが全くなかったんです。

なので、すごくショックを受けてしまって。日本で恵まれた環境にいるのに何の努力もしていない自分に悩みました。

その帰りの飛行機の中で、

あいつら学校行ってないって言ってたな、だったら俺が作ってやろう

と手帳に"40歳までにカンボジアに学校をつくる"と書き殴ったのが僕のスタートでした。

 

NPOを立ち上げるまでの経緯

―――カンボジアに学校を建てようと思ってから、HEROさんを立ち上げるまではどのような道のりだったんですか?

就職→5カ月で退職→起業→世界一周→人事の仕事

これらを経てHEROを立ち上げ、目標より早い33歳でカンボジアに学校を建設することができました。

就活の時期に、「学校をつくるために自分には何が足りないんだろう?」って紙に書き出してみました。

単純にお金や人脈がないとか英語を喋れないとか、20~30個出てきたので、このリストを一個一個つぶしていこうと思ったんです。

40歳までに全部手に入れられていたら、俺学校作れてるじゃん、と。

最初のステップとして最も良いのは何かと考えたときに、起業をしようと思ったんですね。

経営者になればお金も人も集められるし経営能力もつくので、3つか4つリストをクリアできそうだと。

なので、「起業の勉強もできそうなところ」という軸で就活をしていました。

そして、「起業家輩出機関」と呼ばれていた企業に運よく内定をもらえて入社をしました。

しかし働いているうちに「経営者になりたいんだったら会社員やってる場合じゃない、自分で経営しなきゃだめだ」とそんな単純なことに気付いて、5カ月目で辞めました。

その1年後、地元の八王子に飲食店を立ち上げました。

借金まみれでしたが、2年くらいで返し終わったのでまたリストを見直したんですね。

次は何が優先順位にあたるかなと考えたときに、世界中を見て回り、もっと世界のいろんな現状を見たいなと。

ちょうど付き合っていた彼女と結婚したのを機に、新婚旅行で1年間かけて世界一周旅行に行ってきました。

帰国して、どうしようかなと思っていたら、お世話になっている方から

「ちょうど教育と採用の担当のポジションが空いているよ。カンボジアでの就業支援と教育支援に繋がるからいいんじゃないか?」

と人事の仕事の誘いを受けました。

自分もそこを学びたかったので引き受けました。

そこで採用の責任者を4年半ほど経て、33歳の時にようやくHEROを立ち上げ、学校ができました。 

カンボジアの子供と

 

「自分が楽しんでやる」

NPOを運営する上で必要な力

―――NPOの代表をしていて必要だと感じたスキルを教えてください。

想いとお金のバランス感覚です。

NPOや国際協力で働きたい方は、想いが強い傾向にあると感じています。

逆にお金のことを低くあるいは悪いものとして考える方が多い印象を受けます。

でも実際、どちらも同じくらい大事です。

想いを語りながらも、冷静にお金の計算もできる。このスキルが最も大事だと、僕は思っています。

ただ、これを一人で完結させるのって結構難しいので、共同代表立てて「僕は想いを語るから君にお金のことを任せるよ」みたいな形でもいいと思うんですよ。

ただ、しっかりとお金のことも考えられる。目標を立てて、タスク化して、着実にこなす。普通の企業でもやっていることです。

NPOでも、これができる能力が絶対的に必要だと思います。

 

―――そのスキルは、どのようにして身に着けられますか?

早い方法は営業経験です。

学生さんから「国際協力をやりたいけど就活迷っています。」と相談を受けます。

そんなときは「これだってものがないのなら営業をやりなさい。」と勧めています。

とりあえず営業力を身につければなんとかなります。

NPOと比較した民間企業のメリット

―――過去に民間企業で働いていたということでしたが、民間企業で働くメリットを、NPOと比較しながら経験を元に聞かせてください。

教育制度が整っているという点です。

よく学生さんから相談を受けますが、就職先として最初にNPOに入るのはやめた方がいいという話をします。

きちんとした教育制度が整っているNPOは、うちも含めて少ないという現状があります。

社会人の基本的なマナーや立ち振る舞いは、民間企業でないと学べないことがほとんどです。

ですが、NPOに入っていても付き合う相手は民間企業の方が多かったりします。

そうなった時に、社会人マナーができていないと相手にしてもらえない可能性が高いので、最初は民間企業に入った方がいいと思っています。

現在活動する上で大切にしている考え

―――現在の活動をする上で、大切にしている考えや哲学を教えてください。

シンプルなんですけど、自分が楽しんでやることです。

貧困問題って、かなり根が深いんです。

現地に行くと、その状況って想像を超えます。

バナナの葉や藁だけで作った家を目にして、「家なのかこれは?」みたいな。

そんな状況で、難しい顔をして難しい問題を難しく考えると、こっちはつぶれてしまう。

難しい問題だからこそ、あえてなるべく楽しく面白おかしく、いろんな人を巻き込めるようなものに変えていきたいと思っていて。

そのためにはまず、自分が楽しんでやろうというのを第一に心掛けています。

 

―――「難しい問題」に、面白おかしくいろんな人を巻き込みたいということでしたが、具体的にはどんなことをされていますか?

日本国内でいろいろなイベントをしています。

真面目なイベントもありますが、途上国も何も関係ない『人生のネタシリーズ』という、催眠術師を呼んだ催眠術飲み会や、映画祭などもやっています。

それらを面白がって来てくれて、結果として途上国に興味をもってくれるとか、途上国に興味はないけど参加した時点で参加費が還元されるとか。

全員が途上国に興味を持つ必要はなく、ただ知らずのうちに楽しい日常生活を送っていたら、何かしらの形に還元されていくようなモデルをつくりたいなと思っています。

 

これからの自分と、これからの社会

国際協力におけるこれからのキャリア

―――国際協力における、今後のキャリアプランを聞かせてください。

40代はなにか一つのことに注力して、50歳になったら一旦全部リセットしようと考えています。

ざっくりの人生プランですが、20代では全く違うジャンルの3つのことに挑戦しようと思ったんですね。

お店作ったりとか、海外に行ったりとか、会社に入ってその中で動くっていうのも僕の中では挑戦でした。

30代では途上国の活動をやろうと決めましたが、なにが自分に合っているのか分からなかったので、学校や医療、貧困対策の事業などいろいろなことに挑戦しました。

40代はどうするかっていうと、その中で一つに絞って本気でやろうかなと思っているんですね。

この10年は社会的にも世界的にも一番有効なものを見つけ出して、そこに集中していくような時期にしたいと考えています。

そして50歳になった時に、一旦自分の中での成功体験や実績をゼロベースで見て、そこから何を本当に自分の人生としてやっていきたいのか考えたいですね。

やっぱり途上国だと思ったら続けると思いますし、いや日本だなと思ったら日本に行くかもしれないし、別の団体を立ち上げするかもしれません。

これからの国際協力はどうなる?

―――今後の社会課題の潮流や、新しい動きがどのようになっていくか、何か考えがあれば教えてください。

ソーシャルビジネス、社会企業がもっと広がって、それをしていない企業が下手したら淘汰されていくのではないかと思っています。

投資の世界でも、環境のことを考えていない企業はこの先なかなか選ばれにくくなっていくかもしれません。

それから、日本発の巨大NPOが出てきてほしいなとも思っています。

UNICEFや、アメリカのRoom to Readのような、大きな組織のイメージです。

しっかりとした予算を持っていて、自分たちで収益を稼いでいて、1000人、2000人を雇用するNPOって、今は日本にはないんですね。

 

―――大きなNPOができるためには、どんな変化が必要だと思いますか?

NPOで働く人の給料をしっかりと出すことですね。

民間企業以上に出せるくらいの状態にならないと、転職先としてはどうしても選ばれにくいですし、実際そういった現状は既にあります。

民間で働いてから、理想だった社会貢献・国際協力の現場に30歳を過ぎて転職しようとしたら、下手すると給料3分の1とかになってしまいます。なので、なかなか優秀な人材が集まりません。

逆にアメリカやヨーロッパでは、民間からNPOに転職したら給料が上がる世界なので、優秀な人材がどんどん入ってきて組織としても大きくなっています。

理想とする社会

―――理想とする社会を教えてください。

日本が、「世界に貢献することを喜びとする国」になったら最高だなと思います。

今のところは、国際社会において経済では劣らない位置にいますが、この先すぐに中国やインドに抜かれていきます。

さらに少子高齢化が進んで人口が減少し、おそらく限界が来ると。

お年寄りが多くなるということは、その分の時間的余裕や経験、知恵がたまるわけです。

それを「抱える」のはもったいないじゃないですか。

そうではなくて、いろんな国にどんどんノウハウを提供して、貢献していこうぜっていう。

お金を持っているという豊かさではなくて、貢献することによる豊かさが尺度になるような国になったら理想ですね。

読者へメッセージ

―――最後に、国際協力を志す人への応援メッセ―ジをお願いします。

今までお店立ち上げたり、民間企業に入ったり、いろいろやってきましたが、結論から言って今の自分のやっていることが1番楽しいんですね。

何が1番違うのかっていうと、出会う人が変わったことです。

特にうちのスタツアに参加してくれる学生や寄付をしてくださる経営者の方々ですね。

スタツアでカンボジアに行くとなると自分の大切な時間とお金を費やすことになりますし、学校に寄付をするとなると企業の利益を出すことになります。

でも、そういう考えがベースにある方たちは、みんな素晴らしく話していても面白いです。

経営者に限って言えば、やっぱり成功してる人が多いんですね。皆さん応援してくれますし。

この世界に飛び込んでもらうと、それが体験できるのかなと思いますので、ぜひ日本の方に挑戦してもらいたいですね。

COCOCOLOR EARTH(ココカラアース)
ライタープロフィール
関沼久瑠美
中央大学 経済学部国際経済学科4年
フィリピン、インドなど5ヵ国でのボランティア活動を通して複雑に絡み合う社会課題を目にし、自分にできることを模索中。
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