「モンゴル」に新しい産業を創る理由とは??~ HushTug 戸田貴久さん~

起業家

本日は、遊牧民で有名なモンゴルでレザーブランド「HushTug」を立ち上げた戸田貴久さんにお話を伺いました。 

半分は興味本位で渡航したモンゴルで新しい産業をつくろう!と思い立ったその真相と、「泥臭く」モンゴルでの起業に挑戦してきた戸田さんだからこそ言える起業の心得など、社会貢献を仕事にする戸田さんに、迫っていきたいと思います!

1990年鳥取出身29歳
岡山大学経済学部卒業後、鳥取銀行入行
1年で退職後上京しIT(ウェブマーケティング関連)で起業
興味本位でモンゴルに住み始める
事業売却で得た資金でHushTug創業 

 

 モンゴルに新しい産業を生み出したワケ

モンゴルでレザーブランドを立ち上げるまで

―――本日はよろしくお願いします。早速ですが、現在の活動について教えてください。

今は「HushTug」というモンゴルレザーブランドの運営を行っています。

主に鞄などのレザー製品を現地で製造し、オンラインショップで日本人向けに販売しています。

 

―――なぜ、モンゴルで起業をしようと思ったのですか?

モンゴルと日本の経済格差や社会問題を目の当たりにしたときに、自分にできることをしたいと考えたからです。

今から3年ほど前、26歳の頃にグローバルに活躍できるビジネスマンになりたいと思っていた時期がありました。

そんなとき、偶然お世話になっている経営者の方からモンゴルに行くというお話を聞き

「一緒に付いて行ってもいいですか?」

と興味本位で訪れたのがモンゴルとの最初の出会いです。

事業計画などは何も考えていなかったところからのスタートでした。

少し重たい話になりますが、周りの知人たちが1ヶ月の間に5人の方が妊娠して、その内4人が流産してしまったことがありました。

日本でこんな話聞いたことないじゃないですか。

「原因は何なんだろう…??」と気になって調べてみると、モンゴルが抱える大気汚染が原因の一つでした。

モンゴルの冬はマイナス30度まで下がるんですけど、貧しい方々は電気がない場所(通称ゲル地区)で生活していることが多くモノを燃やして暖をとっています。

しかし、燃やす燃料がないのでゴミや捨てられたタイヤなどを代わりに燃やすんですよ。

その汚い空気がモンゴルの首都ウランバートルに集中してしまい、大気汚染が世界最悪の水準に達しており、これは北京の約5倍と言われています。

政府はこの問題を認識しているにもかかわらず、すでに2〜30年間も解決できないでいます。

シンプルに目の前の友達が困っていて、それに対して何もできない自分ってどうなんだろうって思いました。

産業をつくって若い子たちが何かしらで経済的に自立できたら、すごくインパクトが大きいと感じました。

そこから本格的に、モンゴルで産業をつくろうと思い始めました。

 

 ―――モンゴル人ではなく、日本人に向けて販売しているのはなぜですか?

 モンゴルの経済を発展させるには、輸出が前提だと考えているからです。

モンゴル国内で、モンゴル人に、モンゴルのモノを売っていても、モンゴルは儲からない。

実はこのブランドを立ち上げる前に、モンゴルで別の事業をしていました。

若い子たちのチャンスを作るためにコワーキングスペースをやってみたり、妻がネイリストなのでネイルサロンをやってみたり。

しかし、これらはモンゴル国内にベクトルが向いているので、モンゴルにとってはあまり大きなインパクトがないと感じたんです。

そこで、「輸出」に着目し、外にベクトルを向け始めた結果、辿り着いたのが今のレザーブランドというアイディアでした。

今はコワーキングスペースとネイルサロンの事業は撤退し、HushTug一本でやっています。

 

―――そこで目を付けたのが、「レザー」だったということですか?

 そうです。

モンゴルは遊牧民の国なので動物がたくさんいるんですけど、それを有効活用できていない現状があって。

日本のノウハウとお金があれば、この優れた素材を使ってモンゴルに新しい産業を創りだせると考えたのが、HushTugの始まりでした。

 

「起業に本当に必要なのは、知識でもスキルでもない」

 起業という選択肢

―――モンゴルで自分にできることをしようと考えたとき、民間企業や政府系、現地法人ではなく「起業」という道を選んだのはなぜですか?

自分で立ち上げた事業を大きくすることで、より大きなインパクトを起こせると思ったからです。 

例えば、ボランティアが良いか悪いかは別として、ボランティア自体には継続性のある発展が難しく、事業なら継続性があり将来的に持続性のある発展を実現できると考えたからです。

起業という道を選んだのは、社会を変えるのはビジネスだ!という考えが根底にあるというのも一つですね。 

それから、起業というもの自体が身近だったということもあります。

僕は、新卒で地元の銀行に就職しましたが1年で退職し、上京しました。

その後、24歳の時にウェブマーケティング事業で起業をしたので、モンゴルで初めて起業をしたわけではないんです。

リスクも大きいけれど、若いうちは失敗してもいいと割り切っていました。

 現在の活動に必要な力

―――今の活動をしていて、必要だと感じたスキルや知識はありますか?

実際、スキルや知識は起業をする上では必要ないと思っています。

もちろんあるに越したことはありませんが間違いなく「必須」ではありません。

必要なスキルや知識は、人間なので状況に応じて学習していくと思うんです。

僕自身、HushTugをやる前はレザーに詳しくなかったし、アパレルの在庫を持つことも未経験でしたが、今はなんとかなっているので。

それよりも必要なのは、折れないメンタルですね。

何か嫌なことや辛いことがあっても、折れずに泥臭くできるかどうか。

発展途上国、というかモンゴルしかやったことないから分からないですけど、最初は嫌なことしかないです。

嘘をつかれたりとか当たり前ですし。

日本とは商文化が全然違うので、 日本人の感覚で行ったら本当に痛い目に遭います。

その解決策としては、現地で本当に信用できるパートナーを作ることですね。 

起業のメリット・デメリット 

―――起業のメリット・デメリットを教えてください。

 自分の責任を負える範囲であれば、起業のデメリットはほとんどないと思っています。

 「起業して失敗したら借金漬けになっちゃう」みたいな考え、あるじゃないですか。

多額の借り入れなどをしてしまうと、大変になってしまうこともあるかもしれませんが自己資金でやればそんなリスクはありません。

さらに学生さんや20代の若いうちであれば失敗しても挽回できるチャンスは沢山あるのでデメリットは特にないですね。

それよりメリットの方が遥かに大きいです。

特に、海外を巻き込んでやるなら、言語や色々な文化を吸収できますし、成長速度はかなり早いと思います。 

取れるリスクの中ではじめは小さなことから、自分のできる範囲でというのが重要になってくると思います。

自分のやっていることを、ソーシャルビジネスだと思ってない

現在の活動の軸となるもの

―――現在の活動をする上で、軸になっているものがあれば教えてください。

「誰かのきっかけをつくる」ということをずっと意識していて、それが事業をやるモチベーションであり、今の活動の軸になっています。

僕が銀行員だったころ、周りに20代で起業をしている人はまず居ませんでした。

だから、何かしてみたいと思ってもどうしてよいか分からなくて。

でも、上京してから東京で知り合った方が20代で活躍していて、そういう出会いで僕の人生が変わったんです。

このような自分の経験から、変わりたいけど変われないとか、チャンスがない人ってたくさんいるわけで、そういう人たちの背中を押してあげられるようなきっかけを作れる人間になりたい思いました。

今の事業もこの軸に繋がっています。

モンゴルには優れた素材があって、優秀な若い方がいるけれどノウハウとお金がない。

でも日本にはそれらがあったので、両者の強みをうまく組み合わせてモンゴルに新しいきっかけをつくりたいと考えています。

自分たちの事業を通して、「挑戦したい」「本気でやりたい」と思った方がいるなら、飛び込んでこれるような環境をつくっていきたいと思っています。

特にモンゴルには、チャンスがない若い子たちがたくさんいます。

それってすごく不公平だなと感じています。

子供時代に親に捨てられたり、ゴミ山で生活をせざるをえない子どもたちがまだまだいるんですね。

実際に僕の通訳である相棒もそうでした。

「平等」って、みんな同じという意味だと思うんですけど、僕は「平等」ではなく「公平」でありたいと考えています。

これからのソーシャルビジネス

―――今後、ソーシャルビジネスの流れがどんなふうになっていくのか、考えがあれば教えてください。

消費者とビジョンを共有して、コミュニティになっていくようなビジネスの作り方が、これからもっと加速していくんじゃないかなと思います。

ただそれはあくまでもソーシャルビジネスというカテゴリで絞った話ではないです。 

僕は、自分がやっていることをソーシャルビジネスだとは思っていません。

 ソーシャルビジネスには、社会のためや誰かのため、可哀想な人を助けるみたいなニュアンスが入っているように感じるんですね。

僕は別に助けたいとは正直思っていなくて、彼らと一緒に協力してできるからやるのであって、自分たちにもメリットがなければやりません。

 また、誰かのためや人のためにならない事業は、今後どんどんなくなると思っています。

 例えば、発展途上国の労働力を安く買い叩いて安く売るビジネスシーンは現状たくさんあります。

今は、消費者が知らないだけで、今後どんどんSNSなどで拡散されるので消費者の共感を生まないと思うんです。

大企業は生き残るかもしれませんが、これから生まれる企業としてはやっぱり生き残れないのではないかと思っています。 

 読者へメッセージ

―――最後に、読者の方、特に社会課題解決に関心のある人たちに向けて応援メッセージをお願いします。

 「社会課題を解決する」というと、大きい問題から小さい問題まで色々あると思いますが、自分の手の届く範囲で一生懸命になることが大事かなって思っています。

それから、「僕たちはこういう想いでやっています」とか「こういうストーリーでやっています」というスタンスで顧客を獲得しようと考える方がいますが、正直あまり通用しないですね。

モノやサービスの良さ・メリットが消費者に伝わり、あくまでその後に製品の裏側のストーリーに共感してもらう。これが正しい流れかと思います。

このような流れで消費者の感情が動くということを意識しないと本当に売れないので。

エゴの押し売り」にならないように気をつけるべきですね。

自分が誰かを助けたいと思っても、他人からすると痛くないので、何も思わないじゃないですか。

「自分のやりたいこと」と、「お客さんが求めていること」を一緒にしない

これをちゃんと切り分けてやれると、すごく意味があると思います。

 

COCOCOLOR EARTH(ココカラアース)
ライタープロフィール
関沼久瑠美
中央大学 経済学部国際経済学科4年
フィリピン、インドなど5ヵ国でのボランティア活動を通して複雑に絡み合う社会課題を目にし、自分にできることを模索中。