シエラレオネにはINGOがまだまだ必要

現地での活動でこころがけていること

―――国際協力の活動で心がけていることはありますか。

現地で事業をする上では、契約書に事前に色々な事柄を盛り込むことを心がけています。

というのも、現地でいざ事業を進めようとしても思い通りにいかないことが多いからです。

私たち日本人の感覚で「これをやって」と言っても、結果としてこちらが驚いてしまうようなことが多々あります。

例えば、車を1日レンタルする際、「この値段で何時間で」っていう契約書を作ってサインしてもらって現場へ向かうとします。

それでも、途中でタイヤがパンクしてしまったときには、そのお金を払えと要求されることがあります。

日本ではそんなこと絶対に言われないんだけど、そこまで想定し尽くして、事前に契約書に盛り込む必要がある。

日本ではスペアタイヤくらい持ってるでしょう、保険とか入っているでしょうってなるけれど、アフリカではそうなりません。

だから、予想されるアクシデント1つ1つに前もって対処していくことを一番に心がけていますね。

 

NPOとしてシエラレオネで活動する意義

―――NPO法人としてシエラレオネで活動する意義について教えてください

政府と反政府軍(革命統一戦線=RUF)がダイヤモンド鉱山の利権を巡り10年以上も争った内戦は、2002年にようやく終結しました。

当時と比べ、危険レベルも観光客が渡航できるくらいに下がり、日常的な争いや飢餓などの心配はなく、人々は豊かに暮らしているように思われます。

ただ、恒常的な問題として、何か問題が起きた時の社会保障、いわゆるセーフティーネットは、まだまだ脆弱です。

一見豊かに暮らしているようにみえても、家族が病気にかかったときや、災害にあったときなどに、まったく社会保障がない、それに加えてその時の貯蓄もない、という、常にリスクのある中で、人々は生活しています。

日本には、国民全員に健康保険があり、失業すれば失業手当ももらえます。

けれども、シエラレオネでは何か起きたときに、社会が守ってくれない課題があり、
例えば、一番弱い立場の子どもが、自分の生活費・教育費を工面するために、路上で売り歩き労働をしてしまう、初等教育をドロップアウトしまう…。

それが本当に大きな社会問題だと感じています。

長い内戦を経験し、18歳以上の識字率が30%程度と言われているシエラレオネ。

”ビジネスで社会貢献する!”という視点もとても大切ですが、そこで恩恵を受けられるのは、現在までになんらかの支援があって「教育を享受できた人」だけです。

そういった点では、INGO=Internatioal NGOの伴走支援はまだまだなくてはならない、やりがいのある活動だと感じています。

 

現地の人々とのコミュニケーション

―――現地の人々の意見を大切に活動されていますが、下里さんの意見を通したいと思う場面はありますか。

現地の人々にとって、彼らの社会保障はどこにもないので、私たちに出会えたことはある意味、大きなチャンス。

生活の不満を訴えられえる先はそう多くはないので、あれもしてほしい、これもしてほしいと、要求されてしまうこともありました。

例えば、一番困ってしまうのは「家族が病気だから、今お金を払ってほしい」と言われてしまうこと。

意外と、プロジェクトに入り込んでいる農村部では言われることがないのですが、首都オフィスの近所の人たちに、気軽に言われることは多々あり、目の前の人の生死を左右しなければならない場面に出くわしたことは何度もあります。(個人的にお見舞金を渡すこともありますが…)

目の前の困難に手を差し伸べる支援や、現場のニーズを知ることは確かに大切なのですが、本来のプロジェクトで目指すべき目標を見失ってしまうことにも繋がります

あらかじめプロジェクトをやる際には、私たちの事業ではここまでは担当し、いずれは行政に引き継ぐ形で撤退するので、これ以上の支援は他の支援機関と組み合わせて生活を立て直すように、というのを書面できちんと説明するようにしています。