「バイオテック企業で働いてみたいけれど、具体的にどのような仕事があるのか分からない」「生物学の知識を活かして社会貢献したいが、どんな企業があるのか知りたい」そんな悩みを抱えていませんか?
バイオテクノロジーは、生物の持つ機能や仕組みを活用して、医療、環境、食料問題など、私たちの生活に直結する課題を解決する革新的な技術分野です。
近年、気候変動や高齢化社会といった社会課題の解決手段として、バイオテック企業への注目が高まっています。
この記事では、バイオテックの基本概念から実際に社会課題解決に取り組む日本企業の事例、そしてこの分野でキャリアを築く具体的な方法まで、詳しく解説します。
目次
バイオテックとは?
バイオテック(Biotech)は、「生物学(Biology)」と「技術(Technology)」を組み合わせた造語で、生物の持つ機能や特性を人工的に利用・改良して、人類の生活向上や社会課題解決に役立てる技術の総称です。
簡単に言えば、微生物、植物、動物の細胞や遺伝子をもとに、私たちの生活をより良くする技術のことです。
例えば、病気を治す薬を作ったり、環境を綺麗にしたり、食べ物をより栄養価の高いものに改良したりすることができます。
バイオテックの歴史と発展
バイオテクノロジーの歴史は古く、紀元前から発酵技術として利用されてきました。
しかし、現代的なバイオテックは 1970年代の遺伝子組み換え技術の発明から本格的に始まりました。
主要な発展段階
- 1970年代:遺伝子組み換え技術の確立
- 1980年代:バイオ医薬品の実用化
- 1990年代:ヒトゲノム計画の開始
- 2000年代:再生医療技術の発展
- 2010年代:CRISPR-Cas9技術の実用化
- 2020年代:mRNAワクチンの実用化
バイオテックの主要分野
現代のバイオテクノロジーは、私たちの生活のあらゆる場面で活用されています。
主要な分野とその具体的な応用例をご紹介します。
医療・ヘルスケア分野(レッドバイオテック)
遺伝子治療によるがんや遺伝性疾患の根本的治療、iPS細胞を用いた臓器再生、抗体医薬品やワクチンの製造、患者の遺伝子情報に基づく最適な治療法の選択、がんの早期発見や感染症の迅速診断などが実現されています。
環境・エネルギー分野(グリーンバイオテック)
微生物による土壌・水質汚染の除去、藻類やバイオマスからの燃料生産、有機廃棄物の有用物質への変換、温室効果ガスの削減技術、環境負荷の少ない素材開発が進められています。
農業・食品分野(ホワイトバイオテック)
病害虫に強く栄養価の高い作物の開発、健康増進効果のある食品の開発、天然由来の保存料や包装材料、植物性肉や培養肉の開発、プロバイオティクスや機能性発酵食品の製造が行われています。
工業分野(産業バイオテック)
石油に代わる生物由来プラスチック、洗剤や化学工業での環境負荷軽減、バイオセルロースやバイオシルクなどの新素材開発、微生物による化学物質の生産が実用化されています。
バイオテック業界の将来性と成長機会
バイオテック業界の将来性と成長機会について解説します。
急成長する市場規模と投資動向
世界のバイオテクノロジー市場は急速に拡大しており、その成長性は他の産業を大きく上回っています。
市場規模の推移として、2022年は約 1.2兆ドル、2030年予測は約 2.4兆ドル(年平均成長率 8.9%)、日本市場は2022年約 4.2兆円、2030年予測約 7.8兆円となっています。
業界が直面する課題と対策
規制・倫理的課題への対応
バイオテクノロジーの発展に伴い、安全性や倫理的な観点からの規制整備が重要な課題となっています。
主な課題として、遺伝子編集技術の安全性評価、個人遺伝情報の保護とプライバシー、国際的な規制の調和があります。
業界の取り組みとして、自主的な安全性ガイドラインの策定、倫理委員会の設置と運営、規制当局との積極的な対話が行われています。
深刻な人材不足と育成の取り組み
急速な技術発展に対して、専門知識を持つ人材の育成が追いついていない状況があります。
不足している人材として、バイオインフォマティクス専門家、薬事・規制専門家、事業開発・マーケティング人材、国際展開を担える人材が挙げられます。
業界の人材育成施策として、産学連携による実践的教育プログラム、社会人向けリスキリング支援、海外研修・留学制度の充実、が進められています。
資金調達環境の改善
研究開発期間が長く、初期投資が大きいため、継続的な資金調達が課題となっています。
資金調達の多様化として、ベンチャーキャピタルからの投資増加、政府系ファンドの積極的支援、クラウドファンディングの活用、製薬大手との戦略的パートナーシップが進んでいます。
日本のバイオテック業界の競争優位性
強みとなる要素として、高い技術力と品質管理能力、豊富な臨床データと医療インフラ、製薬企業との連携基盤、政府の積極的な支援政策があります。
また、今後の成長戦略として、アジア市場への展開加速、デジタル技術との融合推進、国際的な人材獲得・育成、規制環境の国際調和が重要です。
バイオテックが解決する社会課題
バイオテクノロジーは、現代社会が直面する様々な課題の解決に重要な役割を果たしています。具体的にどのような社会課題にアプローチしているのかを見てみましょう。
気候変動・環境問題へのアプローチ
地球温暖化は人類共通の課題です。バイオテクノロジーは、この問題に対して複数のアプローチで貢献しています。
二酸化炭素削減技術では、微生物による CO2 固定技術の開発、藻類を活用したバイオ燃料の生産、植物の光合成効率を向上させる技術が研究されています。
環境浄化技術では、重金属や有害化学物質を分解する微生物の開発、海洋プラスチック汚染を解決する酵素技術、土壌汚染の生物学的修復技術が実用化されています。
食料安全保障と持続可能な農業
2050年には世界人口が 97億人に達すると予測される中、食料不足は深刻な課題です。バイオテクノロジーは、この課題に対して革新的な解決策を提供しています。
作物の改良と生産性向上では、干ばつや塩害に強い作物の開発、栄養価を高めた機能性作物の創出、病害虫抵抗性を持つ品種の開発が進められています。
代替タンパク質の開発では、植物性肉の技術革新、培養肉の実用化研究、昆虫タンパク質の活用技術が注目されています。
高齢化社会における医療イノベーション
日本の高齢化率は 29.1%(2022年)に達し、医療費の増大や新たな治療法の開発が急務となっています。
革新的治療法の開発では、がん免疫療法の進歩、アルツハイマー病の根本的治療法、糖尿病の完治を目指す再生医療が研究されています。
予防医療の充実では、遺伝子検査による疾患リスクの早期発見、個別化医療による最適な治療選択、バイオマーカーを活用した健康管理が実現されています。
資源循環型社会の実現
限りある地球資源を有効活用し、廃棄物を資源として再利用する循環型社会の構築が求められています。
廃棄物の資源化では、食品廃棄物からのバイオガス生産、廃プラスチックの生物学的分解、下水汚泥からの有用物質回収が実用化されています。
持続可能な材料開発では、生分解性プラスチックの実用化、バイオベース化学品の製造、再生可能な包装材料の開発が進められています。
バイオテックに取り組む企業
日本には、バイオテクノロジーを活用して様々な社会課題の解決に取り組む企業が数多く存在します。実際の企業事例を通じて、バイオテック分野でのキャリアの可能性を具体的に見てみましょう。
環境課題に挑戦する革新企業
株式会社タベルモ
スピルリナという微細藻類を活用した食品開発のパイオニア企業です。
スピルリナは従来の農業と比較して 99%少ない水と 99%少ない土地で生産可能でありながら、タンパク質含有量が 60%以上という驚異的な栄養価を誇ります。
同社では、研究開発職から製造技術職、マーケティング職まで幅広い職種で人材を募集しており、食料問題と環境問題の同時解決を目指すやりがいのある仕事に携わることができます。
株式会社ちとせ研究所
「微生物で世界を変える」をミッションに掲げ、微生物を活用したバイオテクノロジーの研究開発を行っています。
廃水処理技術や有用物質の生産技術において世界トップクラスの技術力を持ち、水問題の解決に貢献しています。
研究者だけでなく、事業開発や国際展開を担う人材も積極的に採用しており、グローバルに活躍できる環境が整っています。
DAIZ株式会社
「発芽大豆由来の植物肉」の開発・製造を行う企業です。
従来の畜産業と比較して温室効果ガス排出量を 96%削減できる革新的な代替タンパク質技術を持っています。
食品技術者、品質管理者、営業職など多様な職種があり、持続可能な食料システムの構築という大きな社会課題に挑戦できます。
医療・ヘルスケア分野の先進企業
株式会社HIROTSUバイオサイエンス
線虫の嗅覚を活用した革新的ながん検査技術「N-NOSE」を開発しています。
1滴の尿でがんの有無を判定できる技術は、がんの早期発見による医療費削減と患者の QOL 向上に大きく貢献しています。
研究開発職、臨床開発職、薬事職など専門性の高い職種で、医療の未来を変える仕事に携わることができます。
株式会社ペルセウスプロテオミクス
プロテオミクス技術を活用した個別化医療の実現を目指しています。
患者一人ひとりの体質に合わせた最適な治療法の選択を可能にする技術開発を行っており、医療の質的向上に貢献しています。
バイオインフォマティクス、データサイエンス、臨床研究などの専門職で活躍の場があります。
コージンバイオ株式会社
先端医療技術の開発を通じて、難治性疾患の治療法開発に取り組んでいます。
特に、がんや自己免疫疾患の分野で革新的な治療法の研究開発を行っており、多くの患者さんに希望をもたらす仕事に従事できます。
循環型社会を目指す企業
株式会社JOYCLE
バイオテクノロジーとシェアリングエコノミーを組み合わせた循環型社会の実現を目指しています。
廃棄物の資源化技術とゴミ問題の解決に取り組み、持続可能な社会システムの構築に貢献しています。
株式会社バッカス・バイオイノベーション
微生物を活用した環境技術の開発を行い、産業廃棄物の処理や有用物質の生産技術を提供しています。
環境問題の解決と経済価値の創出を両立させる技術開発に取り組んでいます。
関連記事
≫バイオテックに取り組む企業10選!就職・転職におすすめの大手企業からベンチャー
バイオテック分野でのキャリア形成
バイオテック業界では、理系出身者だけでなく、文系出身者や異業種経験者も活躍できる多様な職種があります。あなたの興味や経験を活かせるキャリアパスを見つけてみましょう。
職種別:求められる人材像とスキル
研究開発職(R&D)
新しい技術や製品の開発を担う、バイオテック企業の中核となる職種です。
必要なスキル・経験として、生物学、化学、工学、医学などの専門知識、実験計画の立案・実行能力、データ解析・統計処理スキル(R、Python等)、論理的思考力と創造性、英語での論文読解・執筆能力が求められます。
キャリアパス例:研究員 → 主任研究員 → 研究グループリーダー → 研究部長 → CTO(最高技術責任者)
事業開発・マーケティング職
技術を市場価値に変換し、事業として成功させる重要な役割を担います。
必要なスキル・経験として、科学技術への基本的理解、市場分析・事業戦略立案能力、プレゼンテーション・コミュニケーション能力、規制・法務に関する知識、財務・会計の基礎知識が必要です。
キャリアパス例:マーケティング担当 → プロダクトマネージャー → 事業部長 → CMO(最高マーケティング責任者)
営業・カスタマーサクセス職
顧客との関係構築と製品・サービスの価値提供を行います。
必要なスキル・経験として、製品・技術に関する基本的理解、顧客ニーズの把握・提案能力、長期的な関係構築スキル、問題解決能力、業界ネットワークの構築力が求められます。
バイオテック業界で重視されるスキルセット
技術系スキル(理系職種向け)
分子生物学、細胞生物学、生化学の基礎知識、実験技術(PCR、クローニング、培養技術、顕微鏡操作等)、データ解析ソフトウェアの操作(Excel、GraphPad Prism等)、プログラミング能力(Python、R、MATLAB等)、統計解析の基礎知識、論文読解・執筆能力が重要です。
ビジネススキル(全職種共通)
プロジェクトマネジメント能力、英語コミュニケーション能力(TOEIC 700点以上推奨)、プレゼンテーション・資料作成能力、チームワーク・協調性、問題解決思考、継続的学習意欲が求められます。
業界特有のスキル
規制・法務に関する基礎知識、知的財産権の理解、臨床試験・治験に関する知識、国際的な業界動向への理解、倫理観・コンプライアンス意識が必要です。
まとめ
もしあなたがバイオテック分野で社会課題解決に取り組む企業への転職を検討しているなら、COCOCOLOR EARTH のココキャリアをぜひご活用ください。
環境問題、医療・ヘルスケア、食料問題など、様々な社会課題に挑戦するバイオテック企業の求人情報を豊富に掲載しています。
あなたの専門性と情熱を活かして、より良い社会の実現に貢献できるキャリアがきっと見つかるはずです。
社会課題解決とキャリア成長を両立させる、あなたらしい働き方を実現しませんか?
未来の社会を変える技術開発に携わり、多くの人々の生活を向上させる仕事。それがバイオテック分野でのキャリアの魅力です。
まずは一歩を踏み出して、あなたの可能性を探ってみてください。

この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。