教育問題 社会課題コラム

教員の多忙化から考える、日本の教育問題の原因と解決法

日本の教育環境には様々な問題があります。

いじめ、引きこもり、教育格差、詰込み教育、学力低下...

問題をあげたらキリがありません。

このような問題は、「社会の流れでしょうがない。」とか、「先生の能力不足に起因するものだ。」と思われる方も多くいらっしゃるかもしれません。

ただ、本当にこれらは解決し難い問題なのでしょうか?先生方の能力不足が問題なのでしょうか?

今回は、多々ある教育問題を紹介した上で、それを根本的に改善する方法を示したいと思います。

先進国である日本の問題は、自国で解決するしかありません。是非お読みください。

教育問題とは

教育問題は言葉の通り、教育上で発生する問題のことです。

ただそもそも教育とはなんでしょうか。

教育とは「むこと」ですが、

文科省によるとこの目的は一人一人の国民の人格形成と国家・社会の形成者の育成」の2点であるとされています。

つまり、国民の人格を形成し、社会を担う力を持った人を育むために行われるのが教育であると言えます。

そしてこの中で起こる問題が教育問題なのです。

それでは具体的に教育問題とはどのようなものがあるのでしょうか。

ここでは生徒が抱える教育問題を4つあげたいと思います。

いじめ

いじめとは、「生徒児童が心理的・物理的な攻撃により精神的苦痛を感じているもの」です。

文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」によると、平成30年度にいじめは543,933件確認されており、前年度と比べ30%近く増加しています。

そして下のグラフを見ればわかる通り、いじめ件数は年を追うごとに増加しており、未だいじめに苦しむ生徒は多いです。

悪化している教育問題の一つと言えるでしょう。

上記の文科省資料より

 

不登校

不登校とは、「生徒が、病気・経済的な理由ではなく、年間30日以上欠席すること」を指します。

文部科学省の資料によると小中学校で164,528人が該当すると言われ、100人いれば1人2人は不登校という状況です。

生徒が自ら学習の機会を断ってしまう不登校は、ここ5年で急激に増加しています。(図)

こちらも今なお改善されない教育問題です。

上記の文科省資料より

 

教育格差

教育格差とは、親の経済状況や出身地域など、生まれによって子どもが受けられる教育に格差が生じる現象です。

これは子どもの貧困の状況が直接に反映されるものですが、2020年のUNICEF(国連児童基金)によるレポートによると、日本の子どもの18%ほどが貧困の状況にあるとされています。

つまり5人に一人が貧困の状態です。

このような状態に追い討ちを書けるかのように子ども一人あたりにかかる教育費は増加しています。

何が経済的負担となっているのでしょうか。

内閣府資料より

内閣府資料より

グラフを見ると、大学等の教育費に準じて、学習塾など学校以外の教育費があげられています。

偏差値の高い高校や大学に行かせるためには学習塾での教育が欠かせないものになっている背景が伺えます。

皆が比較的安価に受けることのできる、公立学校の教育では不十分なことが、教育格差の根本的な問題の一つでしょう。

≫子どもの貧困とは?貧困の現状や原因、私たちにできることを解説!

学力低下

結論から申し上げますと、日本の学力は低下しています

OECD(経済協力開発機構)が世界的に行っている学力到達度調査にPISAというものがあります。これは15歳の生徒を対象に3年に一度行われるものです。

最近では2018年に行われました。

この2018年のPISA学力調査のデータを見ると

全参加国中(79ヵ国・地域)数学的リテラシーは6位、科学的リテラシーは5位、読解力は15位と比較的上位を保ってます。

ただ2015年の結果は数学的リテラシーが5位、科学的リテラシ―が2位、読解力が8位であり、これらと比べると2018年の結果はどれも順位を落としていることになります。

特に読解力でそれは顕著であり、統計的に有意に低下していると文部科学省も結論づけました。

PISAという一つの指標だけで測るのは少し早計かもしれませんが、学力が低下していることは十分に考えられるでしょう。

教育問題の根源=教員の多忙化

ここまで4つの教育問題を提示しましたが、これらは例に過ぎません。他にも多くの問題が存在しています。

これらの教育問題はとても入り組んでいて根本的な解決が難しいものですが、問題の根底にある原因は一致しているように思います。

それはきっと「教育者による教育が至っていないこと」です。

これは私の個人的な見解ですが、

いじめも不登校も先生が生徒に向き合って、彼らの精神的な問題を解消すれば解決する問題でしょう。

また教育格差、学力低下も学校の先生が十分な指導を行えば格差は軽減されますし、学力は向上します。

つまり、教員に問題の原因があるように思えるのです。

ただ教員は手を抜いているわけではないでしょう。

先生方も大きな問題を抱えているのです。

教員が抱える多忙化という問題

先生が抱える問題。それが多忙化です。

教員は忙しいがために生徒と向き合う時間が十分に取れず、教材研究の時間が取れていません。

そのため多くの教育問題が発生してしまうのです。

それでは実際に教員はどれほど忙しいのでしょうか。

平成28年度  文部科学省「教員勤務実態調査」によれば、

小学校教員の33.5%、中学校教員の57.7%が週に20時間以上の残業、つまり多くの教員が月80時間以上の過労死ラインを超える時間外労働をしていることがわかります。

なお、これらは自宅残業を含まないので、家での授業準備等も含めれば、より多くの教員が過労死ラインを超えた残業をしていることが見込まれます。

さらに、残業代は一切払われません。

教員の多くは残業代が支払われないにも関わらず、毎月過労死ラインを超える残業をしているのです。

教員が忙しい理由

さて、なぜ教員はこれほどまでに忙しいのでしょうか。

理由は大きく分けて3つ挙げられます。

仕事の多さ

1つ目が教員の仕事が多いこと

教員の仕事は多岐にわたります。

通常の授業はもちろん、生徒の進路指導や生活指導、保護者との面談や部活の管理など仕事の数は計り知れません。

この中でも部活動に関する仕事は日本の教員の重荷となっており、週の指導時間は平均7.7時間と、OECD諸国(2.1時間)の3倍ほどです。(文部科学省「学校や教職員の現状について」による)

このように教員の仕事が多いことは多忙化の原因でしょう。

質の低下

2つ目が教員の質が低下していること

教育研究家である妹尾昌俊さんが現職教員に調査した結果によると、公立の小中高において、7割以上の教員が「優秀な人材が教員を目指さなくなった」と実感しているようです。

優秀な人材が減れば減るほど、ある仕事に対して必要な時間は増加します。

教員の質が低下したことも教員の多忙化の原因でしょう。

教員の不足

3つ目が教員が不足していること

日本ではいま、教員数が相対的に減少しているのです。

教員自体の絶対数はほぼ横這いであり減少していませんが、必要な教員数は増えています。

アクティブラーニング等を適切に行うために、少人数授業を実施するには多くの教員が必要です。

さらに教員の数は増えない上に、産休や育休をとる教員は増加しています。

そのため相対的に教員数は減少しており、教員の多忙化の原因となっているのです。

教員の多忙化を解決する方法

さて、ここまで教育問題の根本的な原因である教員の多忙化について、その理由を説明してきました。

ここからは私が考える教員の多忙化の解決策を3つ提示します。

正当に評価をする

1つ目は教員に正当な評価をくだすこと

現在、教員には正当な評価が下されていません。

残業代が支払われず、働きに見合った給料が支払われていない。

というのも例の一つですが、そもそも教員に対する社会的評価が低いように思われます。

2019年9月10日に経済協力開発機構(OECD)が発表した『図表でみる教育2020 年版(Education at a Glance 2020)』で、日本は教育機関に対する公的支出の対GDP比が、OECD加盟国のなかで最も低かったことは、それを端的に示しているでしょう。

本来、教員とは社会を構成する人を育てる大事な仕事です。

にも関わらず教員を評価せずに優秀な人材を逃し続ければ、そもそも優秀な人材の育たない国が出来上がります。

教員を正当に評価することで、教員の質が上がり、多忙化が改善されるだけでなく、教育そのものの向上も見込めるでしょう。

社会との連携

2つ目は様々な専門職と協力すること

先に述べた通り、授業に部活に事務と、教員の仕事は多岐にわたります。

その上、ICT教育などが導入され、教員のやることは増えています。

ただ教員はそもそも教える専門家であって、競技の専門家でもなければ、機械の専門家でもありません。

だから時には、競技の専門家の手を借りたらいいし、機械の専門家を雇えばいい。

学校が社会と密接に連携し、様々な専門職からの協力を取り付けることができれば教員の負担は軽減されるでしょう。

≫EdTechとは?概要と日本政府や注目企業の取り組み全体像まとめ

免許更新制の廃止

3つ目は教員免許の更新制を廃止すること。

皆さんは現在、教員免許が更新制であることをご存じでしょうか。

2007年に安倍晋三氏により教育職員免許法が改正され、免許は10年ごとに更新されることが義務づけられました。

この改訂は教員の質を保つためのものでしたが、実際には現場とは程遠い講習にかかる金と時間が教員の負担になる上、優秀なペーパーティーチャーも多く逃す結果に。

もし免許更新制が廃止されれば、現職教員は生徒と向き合う時間が多く取れます。また優秀な人材に対する門戸も広がるでしょう。

まとめ

ここまでお読みいただき、どうだったでしょうか。

いじめや教育格差などの教育問題の根底には、「教員の多忙化」という問題があります。

そしてこの問題の背景には教員の仕事量が多いことや、教員の人数が足りないことなどが、挙げられます。

逆に言えば、

教員の社会的評価を向上させ、教員が他の専門職と協力できる体制が整い免許の更新制を廃止することができれば

教員は生徒と向き合う時間を十分に取れますし、授業準備も十分にできるようになるでしょう。

そうすれば多くの教育問題は改善の一途をたどるはずです。

教員の多忙化を知ったあなたが、教員の尊さを周りの人に伝えてください。

教員が向き合う厳しい現実を伝えてください。

教育が変われば、が変わり、社会が変わります。

あなたの小さな働きでこの社会を大きく変えてください。

ライタープロフィール

木下 悠(きのした ゆう)
早稲田大学社会科学部に在籍。平和学を専攻。興味分野は報道、教育。
考えるゴリラとしてnoteで執筆中。現在は面白い人へのインタビューを公開中。
Twitter:きのしたゆう@考えるゴリラ
note:考えるゴリラ@早稲田webライター

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