みなさんは、「文字だけを追って読んでしまう」経験はありませんか?

関心のないニュース、

読まないといけない課題図書、

その状態のことを「機能的非識字」と呼びます。

文章を読まなくても困らない社会に向かっている中、ぜひ一度、気づいていただきたい社会課題です。

機能的非識字とは?

機能的非識字の定義

機能的非識字とは、文字自体を読むことはできても、文章の意味や内容を理解できない状態のことを指します。

例えば、SNSに書かれている簡単な文章は理解できても、新聞に書かれている内容は理解できない状態のことです。

かつては、「文盲」と表現されることもありましたが、差別用語にあたるため現在は使われていません。

非識字との違い

非識字とは、簡単な文章の読み書きや計算ができない状態を指します。

文字を読むことができないという点で、機能的非識字者と異なります。

ディスレクシアとの違い

ディスレクシアとは、文字の読み書きに限定した困難さを持つ疾患です。

文章理解ができない原因が脳機能の発達にある点で、機能的非識字とは異なります。

また、ディスレクシアは発達障害の中の学習障害に位置付けられます。


機能的非識字の現状

機能的非識字者は、どのくらい存在するのか?

全米教育統計センターによると、アメリカ国籍の成人のうち21%が機能的非識字者だと言われています。

また、韓国では、10人に2人が機能的非識字者にあたるとの調査結果が出ています。

世界全体でのデータは算出されていませんが、身近な国々に、多くの機能的非識字者がいると分かります。

参考:全米教育統計センター(NCES)

機能的非識字による損失

機能的非識字によって、社会での自立や就労が難しくなり、経済的損失が出ると言われています。

2015年の調査によると、アメリカでは4000億円以上の損失が出ると言われています。また、同じアジアの韓国でも300億円以上の損失になります。

社会で求められる識字能力が高度な国であるほど、損失が大きくなると言われています。

機能的非識字に陥る背景

文章の内容が理解できなくても、必要な情報が得られるからです。

電化製品の説明書が典型的です。

最初のセットアップ方法など、最低限必要なことの多くは、図(アイコン)や漫画などで説明されています。

iPhoneのように、感覚で操作できるような仕様になっている製品も増えています。


日本の機能的非識字

日本の状況

「中学3年生の約15%は、 主語が分からないなど、文章理解の第一段階もできていなかった」

2017年、全国学力調査によって判明したことです。

15%のほとんどは、日本語をネイティブとする子どもです。

日本での識字率は、ほぼ100%と言われています。

しかし、機能的非識字に焦点を当てると、多くの子どもが困難を抱えていると分かります。

また、非識字による日本の経済的損失は950億円以上で、世界で3番目と言われています。

参考:平成29年度 全国学力・学習状況調査 報告書・調査結果資料

学校での現状

機能的非識字にあたる生徒は、授業を受けることに支障が出ています。

ある公立中学校の教師によると、授業中に生徒に音読をさせると、漢字をほとんど読み飛ばす生徒、

文字は書けても、文章を作れない生徒がいるそうです。

そして、そのような生徒は少数ではありません。

彼らは、日々の生活に「障がい」はなくても、少し踏み込んだ学習になると、困難を生じてしまうのです。


機能的非識字が引き起こす問題

日常生活の危険に気づくことができない

危険を示す情報や避難先の情報を、適切に得ることができません。

そのような情報は、公的機関から出されることが多いです。

しかし、公的な情報は複雑な文章で書かれることが多く、機能的非識字者には理解が難しいです。

社会や政治への参加が困難になる

新聞やニュースに記載されている内容が理解できず、社会の流れを把握できないからです。

例えば、選挙で投票先を選ぶ時、候補者について理解する必要があります。

しかし、社会情勢を理解できなければ、投票のための十分な情報を得られないでしょう。

思考が浅くなる

文章の内容を理解する能力が欠けているため、複雑な内容や抽象的な内容を理解することができないです。

ひいては、自分の考えのみで判断をするため、思考が深まることもありません。

また、自分の経験に基づいてのみ社会を解釈することに繋がり、短絡的な考えになりやすいです。

機能的非識字を改善するには?

幼いころから、文章に触れる

小さな頃から文章を読んで理解する経験を積むことです。

例えば、両親が幼い頃から絵本を読み聞かせることで、文章を理解することに慣れてきます。

また、将来の文章を書く能力にも活かされます。

文章を読んで、まとめる

本や新聞をじっくり読んで、自分なりの意見をまとめるトレーニングをすることです。

大人になると、ゆっくり読む時間が取りづらいです。

しかし、じっくり読むことを習慣化すると、文章理解に対して徐々に慣れることに繋がります。

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まとめ

機能的非識字は、他者が気づくのも、自覚を持つことも難しいです。

しかし、確実に、生活に困難をもたらします。

まずは、機能的非識字の問題を理解し、この機会に文章を読む習慣付けに挑戦してみてください!