将来、日本は40兆円の損をするかもしれません。

この損益、「子どもの貧困」からくるのです。

このお金は、2022年の日本の税収の約4割に当たります。

「教育や子育てと自分は関わりがない」と思っていても、実は遠い問題ではありません。

将来のあなたの生活に直結しています。

まずは、子どもの貧困とはどんなことを指すのか、その実態を知ることから始めましょう。

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日本における子どもの貧困とは?定義を解説

子どもの貧困とは、相対的貧困状態にある子どもたちのことを意味します。

子どもの貧困と言っても様々な情景が思い浮かぶでしょう。

彼らは日本国民の年間所得の半分にも満たない環境で暮らしています。

このような経済的影響から、他の子どもたちと比べて、教育機会が少なかったり、地域との関わりが薄いといった状況です。

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日本の現状

厚生労働省によると、日本の子どものうち7人に1人が貧困状態にあります。

2021年の相対的貧困率では15.4%にあたり、その割合は2000年代から10~15%の間を推移しあまり変化は見られません。

また先進国と比較しても、その平均値よりも高い貧困率になっています。

しかし、貧困状態にあっても「普通」に見えることが多いです。日々の生活ぶりから判断すると、生存には問題ない場合が多いのです。

その反面、他の子どもにとって当たり前の学習や十分な食事ができない状況があります。

また、家庭が貧困状態にあるということを周囲に言い出したくないという感情の側面もあります。

参考:2022(令和4)年 国民生活基礎調査
   子どもの貧困対策/日本財団

私が見た子どもの貧困

私は、ボランティアで子ども食堂に伺った経験があります。

どの子どもたちも「普通」に見えましたが、運営の方から貧しい家庭環境にある子どもたちも多くいると聞き驚きました。

ある中学生の女の子は親の帰りが遅く、ご飯を一緒に食べることやコミュニケーションをとることが極端に少なかったのです。

過去に周囲との関わりに問題を抱えていましたが、子ども食堂への参加を通じて、徐々に友達に手を出さなくなったと伺いました。

一見、元気に友人と遊ぶ「普通の中学生」にみえても、貧困に基づく問題を抱えているのだとハッとした瞬間です。


子どもの貧困の原因

内閣府によると、相対的貧困にある人々のうち44.5%がひとり親世帯です。

なので、今回はひとり親世帯での子どもの貧困から起こる原因と問題を考えます。

参考:2022(令和4)年 国民生活基礎調査

制度に関する情報格差

貧困家庭に給付金支援制度についての情報が届いていないという実情があります。

2017年の子どもフォーラムによると、就学支援制度を利用していない層のうち6割が「支援制度自体を知らなかった」と回答しています。

必要な人々に情報を届けることが出来る仕組み作りがまだ不十分であると言えます。

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参考:令和3年度 「貧困状態の子供の支援のための教育・福祉等データ連携・活用に向けた調査研究」 報告書

経済格差

親の所得額が少ないことから子どもに使うことの出来るお金も減ってしまいます。

これが原因で、教育にかけるられるお金が不十分であったり、子どもに十分な食事を与えられないという状況が生まれています。

具体的に、どのような問題が子どもたちに起きているのでしょうか?


子どもの貧困で生まれる問題

教育格差

厚生労働省の調査によると、困窮層のうち半数が小学校3年生までに授業が分からなくなったと回答しています。

また、全世帯の子どもの現役大学進学率が70%を超えている一方、ひとり親世帯の子どもたちでは60%に満たない状況です。

このような教育格差は子どもの人生にも大きく関わります。

就業を例にとると、大学進学が叶わず高校卒で働く場合、月収は大学卒の6割程度に止まります。

このように、教育格差は子どもたちが貧困状況から抜け出せないことと深い関係にあるのです。

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病気

産前や幼少期の栄養不足によって、思いがけない病気を引き起こすリスクが高くなるのです。

産前の栄養の乏しさは、インシュリン分泌の弱さから糖尿病リスクが上がる可能性、幼少期の栄養不足は認知症リスクなどを上げるといわれています。

これらの病にかかると当然、仕事を休む必要や医療費がかかることになり、経済的な負担が大きくなります。

 コミュニケーション不足

親と関わる時間が少ないことから、コミュニケーション力を身に付けることが難しくなっています。

私が子ども食堂で出会った中学生も抱えていた問題です。

コミュニケーション力不足は、周囲の友人とぶつかることが多かったり、物事に集中できないまま育つことに繋がります。 


子どもの貧困が引き起こすさらなる問題

このような子どもの貧困の実態を放置することが、最初にも述べたように40兆円以上もの社会的損失を生み出します。

日本財団と三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査結果によるもので、教育格差の改善など子どもの貧困に対する対策を打った場合と何もしなかった場合を比較した結果です。

所得に加えて、国の財政収入が15.9兆円失われるという将来も想定されています。

自分の身近に子どもがいなくても、子どもの貧困は日本社会の将来に大きく関わり、ひいては個々人の生活にも関わりをもっていると分かります。

図:子どもの貧困の社会的損失

出所:小林庸平(2016年9月26日)「子どもの貧困の放置で生まれる社会損失は40兆円「投資の視点」で対策を

子どもの貧困に対する取り組み・対策

このような子どもの貧困の実態を変えようと、様々な企業が取り組みを始めています。

ライオン株式会社

歯ブラシといえば?で思い浮かぶ会社かもしれません。

ライオン株式会社は貧困家庭で歯磨き習慣がつかず、虫歯率が高いことを問題視し「おくちからだプロジェクト」を行っています。

歯磨きの方法や大切さに関する動画コンテンツを作成し、NPO法人を通じて子ども食堂などで使用されています。

 ソニー株式会社

家電会社として名を知られているソニー株式会社は、創業時から教育支援を行っています。

そのノウハウを活かし、「感動体験プログラム」とよばれるワークショップを学童や子ども食堂で体験機会の十分でない子どもを対象に提供しています。

プログラミング体験や異文化疑似体験など普段の生活ではない刺激の受けられる機会です。

 NPO法人 キッズドア

 子どもの貧困に正面から向き合い、教育機会を提供してるNPO法人です。

貧困家庭の子どもたちが学力差により、その貧困状況から抜け出せないことから活動が始まりました。

主に無料の学習支援や居場所提供の支援を行い、子どもたちの学習支援を中心としてた生活の支えになっています。

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子どもの貧困問題に対して私たちができること

ボランティアに参加することが大きな貢献に繋がります。

例えば、子ども食堂での活動参加です。

ごはんを作ったりすることももちろんですが、その場所に来る子どもたちとたくさんのコミュニケーションをとることで彼らの可能性を広げることに繋がります。

また、学習サポートも必要とされています。教育格差は子どもたちの将来を狭めてしまう大きな要因です。

なので、学習環境を整えることや学習の手助けをすることは子どもの貧困問題に貢献する大きな手立てになります。

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まとめ

子どもの貧困は、日本全体に関わる大きな社会課題であり、全ての人の生活に密接に繋がるものだと気づいていただけだと思います。

その一方、子どもや貧困家庭へのサポートは長期的なものが必要です。短期的なものでは解決されず、できることから少しずつ始めることが必要です。

少しでも問題意識を持っているのであれば、行動を起こしてみましょう!

身近な子どもたちの将来そして日本の未来をより良くする第一歩になるはずです。


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