「福祉問題」と聞いても、具体的にどんな問題があるのかイメージしにくい方も多いのではないでしょうか。
この記事では、日本で起きている代表的な福祉問題を10種類、一覧でわかりやすく解説します。
それぞれの問題に対して詳しく掘り下げた記事も用意しているので、気になるテーマからぜひ読み進めてください。
関連記事
≫ヘルスケアとは?定義や関連する問題、人気のアプリ、取り組む企業を解説
福祉とは
福祉とは、「しあわせ」や「ゆたかさ」を意味する言葉であり、すべての人々に最低限の幸福と社会的援助を提供するという理念を表す言葉です。
日本では、社会保障制度・介護・障害者支援・児童支援・生活保護などの公的な仕組みを通じて、「誰もが安心して暮らせる社会」の実現を目指しています。
しかし、少子高齢化の加速や社会の多様化によって、福祉が対応すべき問題の幅は年々広がっています。
福祉問題10選
この章からは、具体的な福祉問題を10種類解説します。
- ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)
- ジェンダーフリー
- 無戸籍問題
- ニート
- ピアサポート
- 2040年問題
- 肩車型社会
- ヤングケアラー
- 尊厳死
- 安楽死
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)とは、多様性を認識するだけではなく、一人ひとりを受け入れ、尊重することによって個人の力が発揮できる環境を整備したり、働きかけたりしていく考え方です。
ダイバーシティは、集団において国籍や年齢、性別、宗教などさまざまな属性が集まる状態を指します。
企業におけるインクルージョンは、多様な人々が個性や特性を十分に活かして企業活動が行われている状態です。
日本では、女性活躍推進法や障害者雇用促進法などを通じてD&Iの推進が求められており、企業に対する開示義務も強化されています。
一方で、制度は整っても職場の意識や文化が追いついていないケースも多く、形式的な多様性にとどまらない本質的なインクルージョンの実現が課題となっています。
関連記事
≫ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)とは?5つの分類や4つのメリットを解説
ジェンダーフリー
ジェンダーフリーとは、従来の固定的な性別の役割分担にとらわれるのではなく、一人の人間として平等かつ自由に行動や生活するという考え方です。
「女はこうあるべき」「男はこうあるべき」という決めつけのせいで、生きづらさを感じている人が大勢います。
このようなジェンダーバイアスは、その人らしさを否定して個人の可能性を狭め、自由を奪う原因になりかねません。
就職・キャリアの場面でも、「女性は総合職向きではない」「男性は育休を取りにくい」といった無意識の偏見が残っており、個人の選択肢を狭めています。
ジェンダーフリーの実現は、個人の幸福だけでなく、組織や社会全体の活力向上にもつながると考えられています。
関連記事
≫ジェンダーフリーとは?ジェンダーレスとの違いやメリット、取り組む企業を紹介
無戸籍問題
無戸籍者とは、戸籍を有しない人のことを指します。
日本では、戸籍法49条で「出生から14日以内に届出をしなければならない」ことが原則として定められており、親が何らかの理由で出生届を出さないことで子どもが無戸籍者となります。
日本には約1万人の無戸籍者がいると言われており、実際はさらに多いとも考えられています。
一時的に無戸籍だった人も含めると、6万人にのぼるという推計もあります。
無戸籍のまま育つと、住民票が取れない・学校に正規に通えない・就職や銀行口座の開設ができないなど、生活のあらゆる場面で困難が生じます。
問題の根本には、離婚・DV・親の無関心など複雑な家庭事情があり、解決には法制度の見直しと社会的支援の両面が求められます。
関連記事
≫無戸籍問題とは?原因と解決策を事例とともに解説
ニート
日本におけるニートとは、15歳から34歳までに属し、学校に行かず就職・職業訓練も行っていない人のことを指します。
内閣府の子供・若者白書では「若年無業者」と表現され、英語のNEET(Not in Employment, Education or Training)に由来します。
この概念は1990年代にイギリスが労働政策の中で支援の必要な人を分類する際に生まれました。
総務省の調査によると、日本のニート数は長年50万人前後で推移しており、コロナ禍以降は増加傾向が続いています。
ニートになる背景は、学校・職場でのつまずき・家庭環境・精神的な問題など様々であり、一括りに「怠けている」と捉えることは適切ではありません。
本人の意思と状況に合わせた段階的な就労支援の仕組みが社会的に求められています。
関連記事
≫ニートとは?定義や引きこもり・フリーターの違い、ニート問題を解説
≫引きこもりとは?定義や原因、なりやすい人の特徴と対処方法も解説
ピアサポート
ピアサポート(peer support)とは、同じような立場や境遇、経験等を共にする人同士の支え合いを表す言葉です。
「ピア」はラテン語(par)に由来し、「仲間」「同輩」と訳されます。
たとえば、同じ疾患を持つ患者同士の支え合いや、同じ地域の住民同士の助け合いがその代表例です。
専門家によるサポートとは異なり、当事者同士の「共感」を基盤とするため、精神的な安心感や孤立感の軽減に特に有効とされています。
医療・福祉・教育・地域活動など幅広い領域で活用されており、現在は公的な支援事業にもピアサポーターを取り入れる動きが広がっています。
関連記事
≫ピアサポートとは?ピアサポーターの意義やなるための方法
2040年問題
2040年問題とは、日本が2040年に直面すると考えられる問題の総称です。
1971〜1974年の第二次ベビーブームに生まれた団塊ジュニア世代が2040年には65歳以上となり、総人口に占める高齢者の割合は約36.2%(約2.8人に1人)に達すると予測されています。
高齢者数がピークを迎えることで、医療・介護・福祉・社会保障の需要が急増する一方、それを支える現役世代は減り続けます。
特に、医師・介護士・保育士など福祉・医療系の専門職が絶対的に不足するという「ケア崩壊」のリスクが深刻視されています。
2040年問題に備えるためには、社会保障制度の見直し・テクノロジーの活用・高齢者や女性の就労促進など、今から多角的な対応を始めることが必要です。
関連記事
≫2040年問題とは?現役世代の負担や労働力不足にどう対応するか
≫少子高齢化問題とは?現状や原因、問題点、若者にできること
肩車型社会
肩車型社会とは、高齢者1人を支える現役世代が限りなく1人に近づいた社会のことです。
1960年は高齢者1人を11.2人の現役世代が支える「胴上げ型社会」でしたが、少子高齢化の進行によって2020年には2.06人まで減少し、「騎馬戦型社会」と呼ばれるようになりました。
出生率の改善がない場合、2060年頃には高齢者1人を支える現役世代が1.3人になると予測されています。
これが実現すれば、社会保障費の財政負担は現役世代に集中し、年金・医療・介護の制度維持が極めて困難になります。
若い世代にとって他人事ではなく、自分たちが現役の間に直面する問題として、今から制度や働き方を考えておく必要があります。
関連記事
≫肩車型社会とは?超高齢社会で迎える4つの問題と私たちにできること
ヤングケアラー
厚生労働省によると、ヤングケアラーとは「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子ども」のことです。
具体的には18歳未満の子どもが、兄弟の世話・両親や祖父母の介護・病気や障がいをもつ家族のサポート・料理・洗濯・買い物などを担っています。
日本語が第一言語ではない家族のための通訳、アルコールや薬物・ギャンブル問題を抱える家族の世話、感情面のケアなども含まれます。
2021年に実施された国の実態調査では、中学2年生の約17人に1人がヤングケアラーに該当するという結果が出ており、社会的な問題として広く認識されるようになりました。
学校に行けない・友人と遊べないなど子ども本来の生活が侵害されるケースも多く、早期発見と支援体制の整備が急務です。
関連記事
≫ヤングケアラーとは?子どもが抱える問題と私たちができることを解説
尊厳死
尊厳死とは、「自然な状態に近くして最期を迎える」死のことを言います。
具体的には、延命治療を過剰に行わなかったり中止を選んだりすることで、「生存状態を延長する」のではなく「本人の望む形で最期を迎える」ことを意味します。
尊厳死が認められるためには、①本人が希望を表明していること、②最期が近いことがわかっていること、③家族も同意していること、という条件が求められます。
日本では尊厳死を明示的に認める法律は存在せず、医師が延命治療を中止した場合の法的立場が曖昧なままです。
高齢化社会の進展に伴い、終末期医療のあり方についての議論が高まっており、個人の意思を尊重する制度整備が求められています。
関連記事
≫尊厳死とは?日本における立ち位置と「尊厳」の議論
安楽死
安楽死とは「本人の希望により、医師が薬物を用いたり治療を止めたりすることで患者を死に至らしめること」です。
医師が故意に患者を死なせる行為であり、一般的には終末期医療の文脈で議論されます。
オランダ・ベルギー・スイスなど一部の国では一定の条件のもとで合法化されていますが、日本では法律上認められていません。
安楽死と尊厳死は混同されがちですが、安楽死は「積極的に死を引き起こす」行為である点で、延命治療を止める尊厳死とは明確に異なります。
医療技術の発展によって「どこまで生かすべきか」という問いはより複雑になっており、社会全体での議論と個人の意思表明が重要です。
関連記事
≫安楽死と尊厳死とは?現状や違い、世界との比較、実例などを解説!
福祉の仕事・キャリアを探している方へ
福祉問題に関心を持ち、「仕事として社会課題の解決に関わりたい」と思っている方も多いのではないでしょうか。
福祉分野で働く選択肢は、介護士・社会福祉士などの対人支援職だけではありません。
福祉課題の解決をビジネスで目指すソーシャルビジネス企業や、NPO法人、就労移行支援事業所など、多様な働き方があります。
COCOCOLOR EARTHが運営する「ococキャリア」では、福祉・社会課題に取り組む企業への就職・転職情報を掲載しています。
関連記事
≫福祉の仕事・キャリアとは?種類や就職・転職の方法を解説
福祉に取り組む企業3選
福祉問題の解決に取り組む企業を3社紹介します。
関連記事
≫福祉問題に取り組む企業10選〜ベンチャー企業を中心にご紹介〜
≫就労移行支援に取り組む企業10選!就職・転職におすすめの大企業からベンチャー
株式会社リヴァ
株式会社リヴァは、「自分らしく生きるためのインフラをつくる」というビジョンを掲げ、1人でも多くの人の「自分らしい生き方」をともに探し、「何度でもチャレンジできる仕組み」を提供しています。
うつ病などのメンタル疾患からの社会復帰を支援する「リヴァトレ」、奈良県での宿泊型転地療養サービス「ムラカラ」、福祉事業所の業務効率化を支援するクラウド型情報管理システム「LACICRA(ラシクラ)」などを運営しています。
関連記事
≫【株式会社リヴァ】人々の「自分らしい生き方」を実現する仕事とは?〜大西貴大〜
株式会社ゼネラルパートナーズ
http://www.generalpartners.co.jp/
株式会社ゼネラルパートナーズは、マイノリティが抱える不自由・社会問題をソーシャルビジネスで解決する企業です。
「誰もが自分らしくワクワクする人生」を目指し、障害のある方向けの総合就職・転職サービスや就労移行支援事業などを行っています。
障がい者総合研究所を設立し、10年以上の知識と経験を活かした情報発信も行っています。
株式会社ゼネラルパートナーズの事業内容や創業理由を詳しく見る
株式会社ぴんぴんきらり
株式会社ぴんぴんきらりは、「きらりライフサポート」というサービスで、高齢者の生涯現役社会の創出と子育て世代・ミドル世代のQOL向上を同時に実現する社会課題解決型ベンチャー企業です。
家事代行やベビーシッターの枠を超えた出張サービスで、高齢者の「生きがい創出」と若い世代の「生活支援」を結びつけたビジネスモデルが特徴です。
よくある質問(FAQ)
福祉問題についてよく寄せられる疑問をまとめました。
Q1. 福祉問題とは何ですか?
A. 福祉問題とは、社会の中で「誰もが安心して生きられる状態」を阻む様々な困難や課題のことです。
高齢化・貧困・障害・児童虐待・無戸籍・ニート・ヤングケアラーなど、個人の生活に直結する問題から、社会保障費の増大・労働力不足といった社会構造的な問題まで幅広く含まれます。
Q2. 日本の福祉の課題は何ですか?
A. 日本の主要な福祉課題は、①少子高齢化による社会保障費の増大、②福祉・介護職の人材不足、③ヤングケアラー・無戸籍者など見えにくい当事者への支援体制の不足、④終末期医療・尊厳死に関する法整備の遅れ、などが挙げられます。
特に2040年問題(団塊ジュニア世代の高齢化)は、現役世代への負担増と福祉サービスの供給不足を同時に引き起こすとして警戒されています。
Q3. 福祉問題に関わる仕事に就くにはどうすればいいですか?
A. 介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士などの国家資格を取得して対人支援職に就く方法のほか、福祉課題に取り組むソーシャルビジネス企業・NPO法人へ就職するという選択肢もあります。
まずは「どの課題に関わりたいか」を明確にし、その分野に特化した企業や団体を調べることから始めましょう。
Q4. 福祉と社会問題の違いは何ですか?
A. 社会問題は貧困・格差・環境破壊など社会全体に広がる課題の総称で、福祉問題はその中でも「人々の生活の安心・安全・幸福」に直接関わる領域を指します。
貧困・育児放棄・介護崩壊など多くの福祉問題は社会問題でもあるため、両者は重なり合って使われることも多いです。
まとめ
この記事では、日本の福祉問題10種類を一覧でわかりやすく解説しました。
- D&I:多様性を活かす環境づくりが企業・社会に求められている
- ジェンダーフリー:性別の固定観念が個人の可能性を狭めている
- 無戸籍問題:生活のあらゆる場面で困難を生む深刻な人権問題
- ニート:背景は様々で、段階的な就労支援が必要
- ピアサポート:当事者同士の支え合いが福祉の現場で重要な役割を担う
- 2040年問題:医療・介護・社会保障への影響が特に深刻
- 肩車型社会:高齢者1人を現役1人が支える時代が迫っている
- ヤングケアラー:約17人に1人の中学生が該当するという実態
- 尊厳死・安楽死:終末期医療の選択肢をめぐる議論が進んでいる
福祉問題は、いつか自分や家族が直面するかもしれない「身近な社会課題」です。
「福祉の仕事に就きたい」「社会課題に関わりたい」という方は、ぜひ下のリンクから企業情報もあわせてご覧ください。
【企業様向け】福祉への取り組みをPRしませんか?

この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。
