「無戸籍問題」という言葉を耳にしたことはありますか。

日本には、存在しているはずなのに、存在していないことになっている人々が多くいます。
無戸籍者の問題とその背景について、実例を交えながら解説します。

無戸籍者とは

無戸籍者とは、戸籍を有しない人のことを指します。

日本では、戸籍法49条で
「出生から14日以内に届出をしなければならない」
ことが原則として定められています。

出生届を出す義務のある人(親など)が
何らしかの理由で出さないことにより子どもが無戸籍者になります。

日本には、約1万人の無戸籍者がいると言われています。
この数字は推定にすぎず、実際はもっといるのではないかとも考えられています。
また、一時的に無戸籍だった人も合わせると6万人にのぼるようです。

なぜ無戸籍者が生まれるか

ではなぜ、出生届が出されず、無戸籍となってしまう子どもがいるのでしょうか。

さまざまな理由がありますが、中でも1番多いのは、
離婚後に新たなパートナーとの子どもが生まれた場合です。

民法772条の2項には
法的離婚後300日以内に生まれた子どもは前夫の子と推定される
という規定があります。

この推定により離婚後にできた子どもでも、
300日以内に生まれた場合は、前夫の子どもとして出生届を出さなければなりません。

そして、この推定を否認するためには
原則として元夫が嫡出否認の調停を家庭裁判所に対して起こす必要があります。

新しいパートナーとの子どもであるにも関わらず、
それを認めてもらうために元夫に手続きをしてもらうのは抵抗がある方も多いでしょう。
そのために出生届を出さず、無戸籍となってしまうのです。

実際の例

「民法772条による無戸籍児家族の会」代表の井戸まさえさんは
離婚調停が非常に長引き、別居してから離婚が成立するまでにかなり時間がかかったそうです。

その後、今の夫と結婚し子どもを授かりましたが、その子が法的離婚後300日以内に生まれました。

出生届を出す際に今の夫の子どもとは認められず、前の夫の子とするように言われたそうです。

前の夫とは長く別居しており生まれた子は明らかに今の夫との子であるのに、
行政には前の夫の子として届けなければならないのです。

そのため自分の子どもを前の夫との子とする訳にもいかず、無戸籍の子とするしかない現状があります。
法律が無戸籍者を生んでしまっているのです。

井戸さんは法廷闘争を経て現夫の子としての戸籍を得たようですが、
裁判までしないと望む戸籍が得られないのは大きな問題ではないでしょうか。

無戸籍により生じる問題

教育

まず、教育を受けることが困難になります。

住民票がないと、役所から『就学通知』が来ません。
そのため、義務教育でさえも受けることは困難になってしまいます。

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医療

次に、健康保険証を持つことができません。

そのため、病院を利用する際は、医療費が全額自己負担となってしまいます。
さらには、健康診断や予防注射といった行政サービスも受けることはできません。

その他の困難

教育や医療以外の面でも困難がたくさんあります。

・18歳になっても選挙権が持てない
・銀行口座の開設や携帯電話の契約ができない
・運転免許やパスポートを取得できない
・身分証明書がないため就職が困難
・結婚や出産に支障がある

実際の例

2020年9月、大阪府高石市の民家で住人の高齢女性が餓死する事件が起こりました。

同居人の息子も衰弱して入院しました。その親子は生活費が底をつき、最後は水と塩だけでしのいでいたようです。
2人とも戸籍がなく、息子は「無戸籍だったので助けを求められなかった」と言っていたと報道されています。

このような痛ましい事件は、二度と起こしてはなりません。

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無戸籍問題の解決策

 

2021年現在、無戸籍問題の大きな原因となっている民法を改正する動きが出ています。

主な変更点は『法的離婚後300日以内に生まれた子どもは前夫の子と推定される』
規定に例外を設け、出生時に母親が別の男性と再婚していれば再婚後の夫の子と推定することです。

法務省は、早ければ来年の通常国会で改正案提出を目指しているそうです。
この改正が実現すれば万事解決というわけではありませんが、救われる方々も多数いらっしゃるでしょう。

最後に

両親が出生届を出さなかったことで、子どもは日常生活に大きな支障をきたします。
どんな事情があるにせよ、子どもがその悪影響を1番受けてしまうことは防がなければなりません。

多くの人がこの事実を知り、問題を助長している法律の改正を見届けることを切に願います。