「社会に良いことをしている」を仕組みで証明する企業が増えています。

その代表がB Corp(ビーコープ)。

国際NPOのB Labが、企業のガバナンス・従業員・コミュニティ・環境・顧客を総合評価し、一定水準以上であることを認証します。

この記事では、B Corpの基本、スコアと審査、取得プロセス、メリット/注意点、日本の認証企業全リスト(最新)、就活・転職での活かし方までを、初学者にもわかりやすく解説します。

世界全体では10,000社超/102か国/164業種に拡大中です。

 

B Corp(Bコープ)とは?基本の意味と背景

この章では、B Corpの定義・成り立ちを解説します。

B Corpは、国際NPOのB Labが企業の社会・環境パフォーマンス/説明責任/透明性を総合評価し、基準到達を認証する制度です。

申請企業はB Impact Assessment(BIA)で80点以上+リスクレビュー通過、さらにステークホルダーへの法的コミット(定款等での明記)などを満たす必要があります。

B Corpの成り立ち

B Corpの運営元であるB Labは2006年、Jay Coen Gilbert/Bart Houlahan/Andrew Kassoyの3名により設立されました。

営利企業が利益と社会的価値の両立を実務で体現できるよう、外部基準と検証を持つモデルとしてB Corp認証が整えられていきました。

B Corpの審査領域とスコアの仕組み

この章では、評価される5領域の中身、スコアのつき方、審査~再認証までの実務、そして2025年以降の新基準の要点を理解します。

参考:B Impact Assessment

B Corpは、何を評価する?――5つの「インパクト領域」

B Corp認証は、企業のガバナンス/従業員(Workers)/コミュニティ/環境/顧客(Customers)を横断して評価します。

設問は会社規模・業種・所在地に応じて出題内容が変わり、会社そのものの運営品質とビジネスモデルの社会・環境への影響を問う構造です。

インパクト領域 主な評価観点(例)
ガバナンス 経営の透明性、倫理、説明責任、ミッションの定款反映 など
従業員 安全衛生、賃金・福利厚生、学習機会、DEI(多様性・公平性・インクルージョン)
コミュニティ サプライヤー政策、地域貢献、公正な購買、中小企業・社会的企業との取引
環境 エネルギー・水・廃棄物、温室効果ガス、製品・原材料のライフサイクル
顧客 製品・サービスの社会的価値、情報開示、安全・アクセシビリティ、苦情処理

B Corpのスコアはどうつく?――BIAと「80点以上」

オンラインのB Impact Assessment(BIA)で自己回答→証憑提出→検証という順で進み、200点満点のうち検証済み80点以上が合格ラインです。

点の取り方は加点式で、方針の有無だけでなく仕組み化の度合い・実績データが問われます(例:年○回の監査、対象従業員比率、取引額の比率など)。

どうやって確かめる?――B Corpの検証プロセス

提出後、B Lab側のアナリストがスコアの裏取り(ドキュメント審査)を行い、必要に応じて追加質問や面談・サンプリングを実施します。

検証後に最終スコアが確定し、80点未満に落ちた場合はクローズ→改善のうえ再挑戦へ。

目安として、検証~締結まで数か月かかるケースが一般的です。

ネガティブチェックと法的コミット

BIAの点取りだけでなく、リスク審査(Risk Review)や法的要件(Legal Requirement)も通過が必要です。

リスク審査は業種・製品・サプライチェーンに伴う人権・環境リスクの有無を確認し、法的要件はステークホルダーへの受託責任を会社の定款等に反映することを求めます。

公開と再認証――“とりっぱなし”で終わらない

認証後は、スコアや取り組み概要を公開し、3年ごとに再認証します。

毎年の年会費は売上規模に応じ、再認証では最新期の実績で再度の検証を受けます。

B Corpの新基準とは?

この章では、2025年にB Labが導入を進める新基準(V2.1)の考え方と、企業側の準備ポイントをわかりやすく整理します。

従来の「合計80点を超えればOK」という設計から、会社の規模区分の見直しとトピック別の必須要件が明確になった点が大きな違いです。

まず、会社の規模区分を「従業員数」か「売上高」のうち大きい方で判定します。

アウトソーシングや自動化で従業員が少なくても、売上規模が大きければより高い要求水準で審査されます。

これにより、社会・環境への影響度に見合った審査深度や証憑レベルが適用されるようになります。

さらに、旧来の80点以上を目安に加点を積み上げる設計から、重要テーマ(人権・気候・公正な労働・DEI・ステークホルダー・ガバナンスなど)に必須要件を設定します。

最低ラインを満たし、そのうえで加点領域を伸ばす流れになります。

結果として、「どこかで高得点を取って弱点を相殺する」発想から、抜け漏れなく重要テーマを押さえる発想にシフトされます。

海外のB Corp取得企業の事例

この章では、海外のB Corp取得企業の事例を紹介します。

パタゴニア(Patagonia)

HP:https://www.patagonia.jp/home/

登山・アウトドア用品のB Corp。環境再生を企業目的の中核に据え、サプライチェーン・製品設計・資金の使い方まで一体で運用しています。

【ポイント】

  • 本業KPI×インパクトKPIの統合
    売上や在庫回転と同列で、再生素材比率、修理・再利用件数、製品寿命などを追う。

  • サプライチェーン透明性
    労働環境・材料トレーサビリティの公開、第三者監査と是正のループ。

  • ガバナンスの制度化
    企業の目的を定款・所有構造に反映し、短期利益に左右されない意思決定基盤を確保。

ベン&ジェリーズ(Ben & Jerry’s)

HP:https://www.benjerry.com/

アイスクリームのB Corp。気候・人権・フェアトレードなど社会ミッションを製品とマーケティングの中心に置き、顧客との対話で継続的に改善しています。

【ポイント】

  • 製品ラベルと調達方針の接続
    フェアトレード原料、動物福祉基準、温室効果ガスの可視化。

  • 社会テーマの一貫コミュニケーション
    キャンペーンと事業KPIを連動させ、活動が売上・ブランド指標とどう結びつくかを検証。

  • 苦情処理とアクセシビリティ
    顧客の声→原因分析→配合・表示改善を短サイクルで回す。

ダノン(Danone/一部事業体がB Corp)

HP:https://www.danone.co.jp/

グローバル食品企業。国・事業単位でB Corp認証を広げ、気候目標・健康栄養・地域サプライヤー連携を事業運営に落とし込んでいます。

【ポイント】

  • 段階的スコープ化
    子会社・国単位で認証→共通ポリシーを横展開し、データ基盤を整える。

  • GHGとパッケージの両立
    再生素材・リサイクル設計と同時に、製造・物流の排出削減をKPIで管理。

  • 地域との価値共創
    中小サプライヤーの育成・公正取引条件の明文化。

日本のB Corp取得企業一覧(2025年最新)

 

この章では、2025年10月14日時点の公表情報を基に、日本のB Corp認証企業全66社を掲載します。

元データはBe The Change Japanが常時更新している公式公開スプレッドシート(企業名/登記地/業種/初回認証月/BIA得点)です。

# 社名 登記地(本社) 業種 初回認証年月 最新BIAスコア
1 株式会社シルクウェーブ産業 群馬 新素材開発 2016年3月 83.1
2 石井造園株式会社 神奈川 公共工事・植栽・外構工事・緑地管理 2016年5月 114.1
3 フリージア株式会社 埼玉 デイケアサービス 2016年11月 81.7
4 日産通信株式会社 東京 移動体工事・アクセス工事・セキュリティ工事 2018年1月 92.5
5 株式会社泪橋ラボ 東京 国際協力・保健/社会福祉等の調査 2018年6月 110.5
6 ダノンジャパン株式会社 東京 乳製品製造・販売等 2020年5月 109.6
7 株式会社エコリング 兵庫 買取事業・ブランド品小売 2021年6月 101.0
8 株式会社シグマクシス・ホールディングス 東京 コンサルティング・事業投資 2022年1月 80.9
9 合同会社mayunowa 神奈川 化粧品製造・販売、スパ運営 2022年3月 82.6
10 株式会社ファーメンステーション 東京 化粧品・雑貨・食品向け原料の提供/開発 2022年3月 121.5
11 株式会社オシンテック 兵庫 ソフトウェア開発・運用、コンサル 2022年3月 86.9
12 株式会社クラダシ 東京 社会貢献型ECの運営 2022年6月 110.1
13 株式会社CFCL 東京 ファッションデザイン・販売 2022年7月 128.0
14 ライフイズテック株式会社 東京 中高生向けIT/プログラミング教育 2022年9月 94.4
15 株式会社ovgo 東京 飲食の製造・販売 2022年12月 80.5
16 株式会社Innovation Design 東京 飲食・物販・コンサル 2022年12月 82.6
17 株式会社Colere 長崎 人事戦略コンサルティング 2023年1月 85.9
18 株式会社ルイーダ 東京 コンピュータープログラミング 2023年1月 85.6
19 株式会社People Focus Consulting 東京 組織開発コンサルティング 2023年2月 83.7
20 株式会社ナイスコーポレーション 岡山 アパレル製造 2023年4月 95.3
21 ハーチ株式会社 東京 デジタルメディア運営・サステナ支援 2023年4月 101.3
22 株式会社UMITO Partners 東京 水産・漁業関連コンサル 2023年4月 95.8
23 アークエルテクノロジーズ株式会社 福岡 脱炭素PF・新電力・DXコンサル 2023年6月 109.1
24 株式会社わざわざ 長野 パン・生活雑貨の店舗/EC 2023年6月 80.4
25 株式会社pP 東京 パーソナルケア商品販売 2023年6月 85.0
26 えそらフォレスト株式会社 福岡 ライフスタイル/コンシューマ向け事業 2023年6月 85.2
27 株式会社ファンドレックス 東京 コンサルティング 2023年7月 110.2
28 imageMILL株式会社 東京 ブランディング・広告制作 2023年7月 85.2
29 株式会社エヌ・ケー 東京 鞄・小物の製造加工・企画・卸 2023年7月 85.6
30 株式会社クラフ 宮崎 情報セキュリティサービス 2023年9月 93.8
31 株式会社メップル 東京 植物由来健康食品の企画・販売 2023年11月 92.0
32 株式会社andu amet 東京 皮革製品の企画・販売 2023年11月 86.9
33 総武建設株式会社 千葉 住宅の設計・施工・販売等 2023年11月 90.1
34 株式会社ネイチャーズウェイ 愛知 化粧品の製造・輸出入・卸/販売・R&D・OEM 2023年11月 90.7
35 株式会社アルティコ 東京 スポーツウェア・メディア運営等 2023年12月 88.1
36 株式会社Sanu 東京 貸家業 2024年2月 82.6
37 東陽電気工事株式会社 福島 電気・通信・消防設備工事 2024年3月 95.8
38 アスエネ株式会社 東京 CO2/ESG評価クラウド 2024年5月 83.5
39 株式会社サニーサイドアップグループ 東京 PR・コミュニケーション 2024年6月 83.6
40 株式会社STYZ 東京 ドネーションPF運営・コンサル等 2024年7月 86.6
41 株式会社アーチ 東京 アパレル企画・デザイン・販売・卸 2024年9月 85.1
42 ファブリック株式会社 東京 製品/サービスデザイン・リサーチ・コンサル 2024年9月 86.6
43 株式会社バリューブックス 長野 書籍の買取 2024年10月 80.9
44 CLASS EARTH株式会社 東京 オリジナル商品・アート・コンサル 2024年11月 126.1
45 株式会社TOMAP 東京 プログラミング教育・Web制作等 2024年11月 80.3
46 イチロウ株式会社 東京 介護士シェアリング・居宅介護支援等 2024年11月 83.2
47 株式会社エイチ・カツカワ 東京 皮革製品の企画・販売・修理 2024年11月 97.8
48 株式会社グッドカルチャーズ 群馬 オリジナルグッズ制作・販売 2025年1月 81.6
49 五常・アンド・カンパニー株式会社 東京 マイクロファイナンス 2025年1月 102.8
50 株式会社オリゼ 東京 発酵食品製造・D2C企画/運営 2025年2月 82.4
51 株式会社シーフードレガシー 東京 サステナブル・シーフード領域のコンサル 2025年3月 87.9
52 株式会社wash-plus 千葉 ランドリー事業・システム開発 2025年3月 81.4
53 Lively合同会社 東京 環境・人権コンサル・事業支援 2025年3月 88.1
54 HRガバナンス・リーダーズ株式会社 東京 ガバナンスコンサル 2025年4月 83.6
55 株式会社ブランドクラウド 東京 風評被害・誹謗中傷対策事業等 2025年5月 82.9
56 マテックス株式会社 東京 ガラス・サッシ卸、複層ガラス製造 2025年6月 95.2
57 株式会社アイクリエイト 東京 ブランド/マーケ支援・コミュニティ運営 2025年6月 82.3
58 株式会社アソボット 東京 コミュニケーションデザインのコンサル 2025年6月 92.2
59 木村石鹸工業株式会社 大阪 石鹸・洗浄剤・コンパウンド製造 2025年7月 84.1
60 ウィザーズコンサルティング株式会社 東京 建物管理・コンサル 2025年7月 89.4
61 株式会社ミヨオーガニック 愛知 アメニティ製造・輸出入、アップサイクル等 2025年7月 85.8
62 デコボコベース株式会社 東京 障害児通所支援・就労移行支援等 2025年7月 81.1
63 羽生会計事務所 大分 税務アドバイス・経営診断/改善支援 2025年8月 91.6
64 株式会社羽車 大阪 封筒・紙製品の企画/製造/販売、EC 2025年8月 82.6
65 株式会社UPDATER 東京 再エネ事業・ウェルビーイング環境改善等 2025年9月 118.9
66 株式会社テーブルカンパニー 東京 温浴施設・スパ・サロンの企画・運営 2025年9月 91.0

参考:日本のB Corpは66社 (2025年10月時点)

就活・転職でB Corpを活かす方法

就活・転職でB Corpを活かすには、以下の4ステップを意識するとよいでしょう。

①B Labの「Find a B Corp」で業界・地域・スコアから企業を検索し、価値観に合う候補を抽出。

②総合/領域別スコアと改善履歴で強み・課題を把握。

③面接では再認証に向けた重点テーマ、サプライヤー方針のKPI、苦情処理・アクセシビリティ運用を具体例で質問。

④自身の経験をESG貢献にどう接続できるかをSTARで語り、入社後の改善提案まで示す。

B Corpのよくある質問(FAQ)

この章では、B Corpのよくある質問に回答します。

Q. 一度取れば永続ですか?
A. いいえ。3年ごとの再認証が必要で、スコアの公開・改善が前提です。

Q. 取得にどれくらいかかりますか?
A. 体制整備や証憑収集に時間がかかるため、少なくとも12か月は見込みましょう。

Q. 80点取れば必ず合格ですか?
A. 80点以上+リスクレビュー通過+法的コミット+透明性が要件です(大企業は追加要件あり)。審査でスコアが変動するため85点以上での提出を推奨。

Q. 今後の基準はどう変わりますか?
A. 必須要件中心の新基準(V2.1)へ段階移行中。人権・気候・公正な労働などインパクト・トピックごとの満たすべき水準が明確化されます。

まとめ

B Corpは、企業の社会・環境インパクトを第三者が総合評価し、スコア公開と再認証でやりっぱなしを防ぐ仕組みです。

評価はガバナンス/従業員/コミュニティ/環境/顧客の5領域。新基準(V2.1)では、規模区分の見直しとトピック別の必須要件が明確になり、重要テーマの“最低ライン”を確実に超えることが求められます。

日本でも認証企業は増え、食品・小売・製造・IT・コンサルなど幅広い業種に広がっています。