社会人として働きながら大学院に通うという選択は、多くの人にとって大きなチャレンジです。

松丸里歩さんは、その道を選び、ロンドン大学ゴールドスミス校で学びながら、自身のキャリアや生活にどのような変化があったのかを語ってくれました。

この記事では、松丸さんの経験を通じて、社会人が大学院に通う際のさまざまな側面について深掘りしていきます。

留学先・経歴と留学までの流れ

まずは、松丸さんの留学先・経歴と留学までの流れをご紹介します。

留学先・経歴

〇留学先
ロンドン大学ゴールドスミス校(2023/09〜2024/08)
専攻:社会学部 MA in Ecology, Culture and Society

〇経歴
1998年生まれ
国際基督教大学卒
ITスタートアップ Co-founder

留学までの流れ

2022年
3月 留学エージェントの無料カウンセリングに申し込む
4月 留学エージェントに申し込む
6月 出願大学・コースの決定
8月 Personal Statement(志望動機書)の作成
9月 大学院に出願
10月 合否通知、進学先決定
11月 奨学金に出願

2023年
3月 奨学金合否通知
5月 ビザ申請、家探し
7月 賃貸契約
9月 渡英


社会人大学院とキャリアについて

社会人大学院とキャリアについてを伺いました。

Q:大学院進学を決意された具体的なきっかけや背景について教えてください。

A: 社会人経験を3年間積んだ後、自分のキャリアについて立ち止まって考えるタイミングが来たと感じました。

学部生の頃から海外大学院への進学は視野に入れていたのですが、コロナ禍で留学が難しくなったことや、後輩たちが動き始めたのを見て、自分も行けるうちに行っておいた方がよいと考えました。

Q: 進学したことでキャリア観は変わりましたか?

A: はい、変わりました。

まだ具体的ではないですが、以前から今の学問分野に近い環境やサステナビリティの領域には関わりたいと思っていました。

具体的なところでは、留学前はコンサルタントも選択肢にありましたが、今はあまり選択肢にありません。

より直接的にソーシャルインパクトを感じられる仕事に就きたいという想いが強くなりました。

また、働き方に対しても考え方に変化がありました。

日本ではハードワークも厭わず働いていましたが、ヨーロッパのプライベートを大切にする文化を経験したことで、自分自身のことも大事にしたいという考えが強くなっています。

Q: 現職との調整をどのように行い、どのような準備が必要でしたか?

A: 合格後すぐに会社に伝えました。私はco-founderだったので、組織のことを考え、早めに伝える必要があると感じたため、渡航の1年前に報告しました。

その後、後輩の育成や引き継ぎを進め、留学中もリモートで短時間働くことになりました。

しかし、時差の影響や学業との両立などで難しい面もあり、学業に集中するため1月に正式に会社を離れることになりました。


社会人大学院とお金について

この章では、社会人大学院とお金についてお聞きします。

Q: 大学院進学にかかる費用はどのくらいかかりましたか?

A: 学費が約2万ポンド(300~400万円)、渡航費が20万円ほどかかりました。

留学エージェントはbeoの登録制サポートを利用しましたが、合格すれば料金が返ってくる仕組みだったため、費用はほとんどかかりませんでした。

その他、ビザと健康保険の費用や家賃も必要で、シェアハウスの月額家賃が850ポンド(12~17万円)です。

生活費は日本と比べて高く、時間に余裕があることもあって、スーパーで食材を購入して自炊するようにしています。

※1ポンド=150~200円

Q: 奨学金は利用しましたか?

A: はい、JASSOの海外留学支援制度の給付金を利用しました。

支援額が大きく、返済不要という点が魅力でした。

ただし、出願書類が多く奨学金の準備は、大学院の出願よりも大変でした。

奨学金の調査や準備は時間がかかるのと、期日が早いため、計画的な準備をおすすめします。

Q: 奨学金の選考はどのようなステップでしたか?

A:奨学金の選考は大きく分けて2つのステップがあります。

まず、書類選考で申請書や推薦状が審査されます。

過去の経験、大学院で学びたいこと、修了後に取り組みたいことを記載した書類が必要でした

次のステップとして、面接が行われます。

ここでは、留学先の言語でのスピーチを行い、志望動機や研究計画についての質疑応答があります。

事前に想定される質問とその回答を暗記し、面接に臨みました。

Q: 奨学金で留学にかかる費用を賄えますか?

A: 奨学金で学費の大部分をカバーできますが、生活費は若干不足します。

そのため、1月に退社した後は、日系美容室で受付の仕事を週10〜15時間ほどしています。


社会人大学院とプライベートについて

この章では、社会人大学院とプライベートについてお聞きします。

Q: 大学院進学がライフプランに与える影響、特に結婚や出産の時期、家族・友人・パートナーなどと離れることについて考えましたか?

A: 大きな影響はありませんでした。

逆に20代の今だからこそ、自分のやりたいことを優先し、今のうちに留学すべきだと考え、決意しました。

また、自分がそこまでホームシックにならないタイプということもありますが、周囲の理解を得て、渡航できたと思います。

Q: 大学院生活中のプライベートな時間はどのように過ごしていますか?

A: 授業時間は週に3時間×2回の授業で、もちろん課題や予習の時間は必要ですが、比較的自由な時間がありました。

美術館やギャラリーの展示に行くのが好きで、学んでいるテーマに関連するアートに触れる機会も多いです。

また、日本ではなかなか忙しくてできなかったヨガにも通うことができ、良いリフレッシュの機会になっています。

Q: 大学院の同級生との交流はありますか?

A: はい、同級生との交流はあります。特に、展示会やランチ、ヨガに一緒に行くことがよくあります。

また、ブラジル出身の友人がいて、親元を離れた生活で感じるジレンマや第二言語で暮らすことの課題など、分かち合えることが多く、そういった存在も心強いです。

共通の興味を持った友人ができたことで、ホームシックを感じることもなく、充実した留学生活を送れています。

社会人大学院と時間について

この章では、社会人大学院と時間についてお聞きします。

Q: 大学院進学前の準備にどのくらいの時間をかけましたか?

A: 渡航までに約1年半をかけて準備を進めました。

まず、エージェントの無料カウンセリングを受け、留学先の大学やコースを決定した後、出願書類や奨学金の準備を進めました。

特に、奨学金の出願が大変で、書類の準備や教授に推薦状をお願いするのに時間がかかりました。

Q: 仕事と学業の両立で大変だったことはありますか?

A: 留学前に仕事を続けながら準備を進めることが大変でした。

特に、奨学金の出願と大学院の出願が重なった時期が、最も忙しかったです。逆にそこを乗り越えれば、準備はスムーズでした。


社会人大学院と情報について

この章では、社会人大学院と情報についてお聞きします。

Q: 大学院進学に向けた情報収集はどのように行いましたか?

A: 主に留学エージェントのサポートを利用しました。特にbeoの登録制サポートが役立ちました。

奨学金に関しては、エージェントのサポートが利用できないというルールがありました。

そのため、必要な書類はwebで確認しながら、大学の同期や友人に壁打ちをしたり、アドバイスをもらったりして、書類の内容を仕上げていきました。

Q: 志望校選びの際に重視したポイントは何ですか?

A: 自分に合った校風や都市の環境、コースの内容を重視しました。

ロンドン大学ゴールドスミス校はアートとポリティカルな視点を兼ね備えた校風が特徴で、伝統的というよりややラディカルなところもありますが、そうした点が自分に合っていると感じました。

コース自体も他の大学院とは一線を画したユニークな内容だったので、第一志望として選びました。

また、ロンドンでの生活も大きな魅力の一つでした。

Q: 次のキャリアに向けた情報収集はどのように行っていますか?

A: まだ具体的には決まっていませんが、イギリスに残り、卒業ビザ(Graduate Visa)を取得して仕事を探すことを考えています。

社会人大学院と語学について

この章では、社会人大学院と語学についてお聞きします。

Q: 大学院進学前に語学の準備はどうしましたか?

A: IELTSスコアの取得が必須でした。以前の留学時に取ったスコア7.5を維持できればよかったので、IELTSの問題集を何度か解きました。

特にライティングは独特な形式のため、重点的に対策しました。

出願時に必要なPersonal Statementの作成も英語になりますが、自分で作文をした後、ネイティブの友人にも添削などサポートしてもらい、対応できました。

Q: 英語での授業や生活に不安はありましたか?

A: 過去にカナダやロンドンでの留学経験があり、日本での大学でも英語での授業を受けていたほか、職場でも英語話者がいて日常的に英語を使っていたため、特に大きな不安はありませんでした。

現地での生活や授業もスムーズに進められています。

Q: 語学力を向上させるために行っていることはありますか?

A: 日常的に英語を使う環境に身を置くことで、自然に語学力が向上しています。

また、授業でのディスカッションやプレゼンテーションを通じて、実践的な英語力を養っています。

あとは、現地の友人との交流も、語学力向上にとても役立っています。

Q: 英語で議論したり、課題を提出するにあたって、使用したサービスなどはありますか?

A: grammarlyという文法チェックサービスは、課題提出前に必ず使うようにしています。ちょっとしたミスはどうしてもあると思いますが、そうしたミスに気づいてくれます。

また、zoteroというサービスは、エッセイや修論で使用する参考文献をカテゴリ別に管理できたり、自分の使っている引用スタイルに合わせて参考文献リストを自動生成することができ、最近使っていて便利だなと感じています。


海外大学院に進学を考えている社会人へのアドバイス

最後に、海外大学院に進学を考えている社会人へのアドバイスをお聞きします。

Q: 社会人が海外の大学院に進学する際、どのようなアドバイスがありますか?

A: 興味が芽生えたのであれば、ぜひ行った方がいいと思います。奨学金なしであればもう少し短い期間でも大丈夫だと思いますが、奨学金を使うのであれば、進学の1年前から早めに計画して出願するのが一番いいと思います。

また、留学先でも社会人経験のある人たちが多いです。社会人として働き、社会を知った上で進学すると、その視点とアカデミアの視点を掛け合わせて学べるので、とても良い選択肢だと思います。

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