営業部門からサステナビリティ部門への転換

ーーー最初に営業部門に所属したのはなぜですか?

人とコミュニケーションを取りながら仕事をすることやスポーツのような熱い体験をすることを目指して、最初から営業を志望していました。

最初の5年間は酒類事業の営業として九州の飲食店・チェーン企業を担当しました。

顧客の経営課題を共に考える機会にも恵まれ、ビジネスを基礎から鍛えていただきましたね。

また、社内では選抜制のビジネス改革プロジェクトに参加したことで、より経営に近い仕事で社会に貢献したいと考え、中小企業診断士の資格を取るなど自己啓発にも努めました。

ーーー営業での経験後、サステナビリティ部門に所属しようと考えたのはなぜですか?

きっかけは、あるビール事業にとって大事な国内の原料生産地の持続可能性に危機感を感じたことからです。

営業時代に研修でビールの原料であるホップの生産地へ研修に伺ったことがありました。

その際に、生産地での生産者の高齢化や後継者不足の現状を目の当たりにし、キリンとしてどんな取り組みをしているかを学びました。

それまでは営業で自社の製品を楽しんでいただくお客様ばかり見ていましたが、サプライチェーンの上流に触れることで、自社の役割の大きさを営業とは別の形で感じることができ、商品やブランドには大きな責任が伴う事を感じましたね。

この経験からキリンのCSV経営への関心が強まり、自分で世の中のサステナビリティについて勉強し、社会に貢献したいと考え、CSV戦略部に異動の希望を出し、縁あって配属となりました。


サステナビリティをビジネスに取り入れる葛藤

ーーーサステナビリティを社内外に取り入れるのに、どのような難しさがありますか?

2つの難しさがあります。

1つは、様々な立場の社員にサステナビリティを自分事として捉える機会を設けること。

もう1つは、利益追求と社会性の両立です。

CSV経営を進めているキリンでも、現状、サステナビリティに非常に関心のある社員は決して多くなく、浸透は道半ばであると感じています。

これは、まだまだ日常でサステナビリティに触れる機会が少ないからだと考えています。

実際に、自分の身に何か起きないと自分事として捉えてもらうことは難しいですからね。

そのため、どうすれば自分事として捉えてもらえるか考えるのに苦労しています。

目の前のお客様に喜んでもらうだけでなく、社会のためにビジネスをすることの良さを伝えていきたいです。

また、利益追求と社会性の両立には工夫やイノベーションが必要だと思っています。世界のCSV先進企業として、キリンが先導してたくさんのモデルケースをつくり、多くの方に伝えていきたいと考えています。

ーーービジネスにサステナビリティを取り入れるために必要なことはなんだと思いますか?

サステナビリティを事業の仕組みや戦略に導入することとイノベーションだと思います。

そのために、まずは実際に私が自分の会社で戦略を実践していきたいと感じています。

また、私は消費者として「ビジネスレザーファクトリー」のバッグを購入したことがあります。

恥ずかしながら、その時はサステナブルな商品だとは気づかずに、デザインの良さから購入を決めたんですが、後々、自分が購入したものがバングラディッシュの労働者に配慮した、サステナブルな商品だと気づきました。

こういった経験をすると、サステナブルなものを手に取ってもらうことだけではなく、手に取ったものがサステナブルだった、という体験も非常に大事だと思うようになりました。

お客様・消費者の価値と社会の価値が同じ方向を向くことが必要であり、決してサステナビリティの押しつけはダメだなとも感じていますね。


コロナ禍で見えてきた課題

ーーー新型コロナウイルス感染症拡大後、CSV経営において見えてきた課題はありますか?

キリンではCSV重点課題として酒類メーカーとしての「責任」、「健康」、「地域社会・コミュニティ」、「環境」の4つを掲げています。

この中でも特に健康と地域社会・コミュニティで新しく見えてきた課題があります。

まず健康面では、人々の免疫に関する意識が高まったと考えています。

キリンでは、プラズマ乳酸菌を活用したブランドを育成し、健康な人の免疫機能を維持する特徴のある商品に取り入れることで健康への取り組みを加速させています。

また、感染症の拡大によって人と人とが直接的に関わるコミュニティが減りました。

お酒は様々なシーンで楽しんでいただいておりますが、「一緒に飲みに行かない?」といった人と人とのつながりをつくるものでもあります。

感染症の拡大を契機に、お酒がもたらす価値や人々のつながりの重要性を考え直し、今後はキリンがつくるコミュニティの新しい在り方を考えていきたいと思っています。


金田さんの思いと未来