生物多様性が大切という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。

その生物多様性を守るための国家間の約束を生物多様性条約と言います。

生物多様性は、自然環境の保全や種の発展だけでなく、人間社会の発展にとっても重要な概念です。

今日はその生物多様性条約について一緒に学んで行きましょう。

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生物多様性条約とは

生物多様性条約とはかけがえのない生物多様性を守るため、また、そこから発生する利益を公正に分配するための国家間の約束です。

生物多様性は人間に利益をもたらすため、それを守っていく国際的な枠組みを生物多様性条約と言います。

国際的な枠組みが作られた背景は、生物の中には渡り鳥のように国境を超えて移動するものも多いためです。

また、ある国の農産物などの生物資源が他の国で使用されることもあります。

そのため、技術的に進んでいる先進国が他の国に技術を共有することも含めて、国を超えて生物多様性を保全していく必要があるのです。

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生物多様性とは

そもそも生物多様性とは、細菌から大型哺乳類まで地球上にいる数千万種の生物が直接的、間接的に関わり合っていることを指します。

単純にたくさんの種類の生物がいる、という種の多様性だけの話ではありません。

それに加えて、同じ種の中でもバリエーションがあることを指す言葉が遺伝子の多様性です。

例えば一言で「ヒト」と言っても人種間で肌の色や体格など遺伝子によって差があります。

さらに、様々な自然環境という側面があり、そこにも多様性を見ることができるでしょう。

たとえば、一言で「アフリカ」といっても、砂漠、サバンナ、ジャングルなど多様な生息地があります。

さらにその生息地に適合した生物が集まって、生態系を形作っているのです。

生物多様性条約の背景

このような生物多様性を守る生物多様性条約が制定された背景はなんでしょうか。

大前提として、われわれ人間はこのような生物多様性の一部であり、その資源を利用しています。

例えば、ゴム製品はゴムの木と呼ばれる、木の樹液を加工して作られています。

この側面だけを見れば私たちはゴムの木からのみ、利益を受けているように見られるかもしれません。

しかし、ゴムの木が繁殖するには昆虫による受粉が必要です。

したがって私たちはそのような昆虫からも利益を間接的に受けていると言えるでしょう。

また、近年ではゴムの木を栽培するプランテーションによってジャングルの生態系に悪影響を与えているとの指摘もあります。

このように、人間は生物多様性の一部で利益を受けている一方で、生態系に対して影響力を強く持つ生き物です。

そして、ゴムプランテーションの事例のように、人間の活動によって生物多様性が損なわれるということが多くありました。

このような観点から、生物多様性を保全するとともに将来的にも利益を享受できるような取り組みが必要だとして、条約が定められました。

生物多様性条約の歴史

生物多様性条約の検討会合は、1987年に国連環境計画で設置されることが決定しました。

その後、約5年の検討期間を経て、1992年にリオデジャネイロの「環境と開発に関する国連会議」で生物多様性条約が採択され、日本も署名をしました。

その後、2年の間隔でCOPという締約国会議が開かれ、現在は196カ国が締結しています。

参考:生物多様性条約(CBD)について |WWFジャパン

生物多様性条約の内容

生物多様性条約の目標は以下の3つです。

  1. 生物多様性の保全
  2. 生物多様性の構成要素の持続可能な利用
  3. 遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/bio.html

まず、1つの要素は生物多様性を将来的に守っていくことです。

2つ目は将来の世代もその利益を享受できるように、考えながら利用することです。

3つ目はABSという問題があります。

ABSとはAccess and Benefit-Sharingの略で、遺伝資源の利用から生じた利益の公正で衡平な配分のことです。

例えば、先進国の製薬会社が途上国の先住民が活用してきた薬草を持ち出して、新しい薬を作ろうとしているとします。

その際に、製薬会社が得た利益は、途上国および先住民に還元されるべきでしょうか。

生物多様性条約以前では、利益を還元するという明確なルールはありませんでした。

しかし、条約締結後は薬草という資源の主権的権利は途上国に帰属すると明文化されました。

また、薬草を伝統的に利用してきた先住民を尊重し、彼らにも利益を配分するという取り決めもされました。

このような原則は2010年のCOP10で愛知議定書で取りまとめられ、採択されました。


生物多様性条約の強み・弱み

強み①国家戦略の策定

生物多様性条約は、上記の目標を達成するために各国に個別の取り組みの作成と実行を求めています。

これによって各国の状況に合わせて個別に法律を制定することができます。

生物多様性条約の締結後、194か国がそれぞれの戦略を制定しているとのことです。

参考:生物多様性条約(CBD)について |WWFジャパン

強み②途上国への手法共有

途上国には、生物多様性を支える自然が多くある一方で、経済発展によって自然が破壊されている現状があります。

また、先進国と途上国には技術力の格差がまだあるため、自然に配慮した技術を途上国に提供し各国が協力して行う取り組みがあります。

参考:生物多様性条約(CBD)について |WWFジャパン  

弱み①条約締結にかかわらず、生物多様性が減少し続けている

「生物多様性が重要である」とほとんどの政府が認識しているにもかかわらず、経済的な理由などから、絶滅する種が多くあります。

例えば、現在の種の絶滅スピードは人間が関与していない状態の1000倍から1万倍になると言われています。

参考:生物多様性とは?その重要性と保全について |WWFジャパン 

このように条約が生物多様性の保全を歌っているにも関わらず、生物多様性の減少には歯止めがかかっていない状況です。

弱み②知名度が低く、わかりにくい

地球規模の環境問題でよく挙がるのは気候変動ではないでしょうか。

しかし、気候変動は気温の上昇など身近なところで目に見えて影響があるのに対し、生物多様性の減少は日常生活ではわかりにくいと思います。

このように生物多様性の減少は大きな問題であるにも関わらず一般的な認知度が低いことも課題です。

参考:生物多様性条約、認知度に課題 | リコー経済社会研究所 | リコーグループ 企業・IR 


まとめ: 生物多様性を守るために日常生活でできること

この記事では生物多様性の重要性と生物多様性を守るための国際的な枠組みである生物多様性条約についてまとめました。

生物多様性条約はABSと保全に注力している一方で、まだ不十分な点も多いでしょう。

そこで、条約にかかわらず私たちも日常的に生物多様性に配慮した商品を購入していくことが重要ではないでしょうか。

例えば、フェアトレードやレインフォレストアライアンスは環境に配慮した認証にもなっていますので、そのような認証を参考にしてみてはいかがでしょう。