社会人として働きながら大学院に通うという選択は、多くの人にとって大きなチャレンジです。

河村泰志さんは、その道を選び、サセックス大学で学びながら、自身のキャリアや生活にどのような変化があったのかを語ってくれました。

この記事では、河村さんの経験を通じて、社会人が大学院に通う際のさまざまな側面について深掘りしていきます。

留学先・経歴

まずは、河村さんの留学先・経歴と留学までの流れをご紹介します。

〇留学先
サセックス大学(2022年の9月~)
専攻:MSc Sustainable Development(開発学系・持続可能性)

〇経歴
1996年生まれ
創価大学 経済学部
進学前:広告制作会社 データアナリスト
卒業後:株式会社エックス都市研究所 国際環境政策分野のコンサルタント


社会人大学院とキャリアについて

社会人大学院とキャリアについてを伺いました。

Q: なぜ院進を考えることになったきっかけを教えてください。

A: 小学生時代から環境問題に関心があり、大学では海洋プラスチック問題について研究していました。

その後、広告制作会社で働いていましたが、SDGsを推進する方針もある一方、大量生産・大量消費社会に関わっているという点で、矛盾と向き合う機会が多くありました。

そんな中で、自分が本当にこの業界で働き続けたいのか、自問自答するようになりました。

Q: なぜ院進を決断したのですか?

A: コロナ禍で自身の進路について考える時間ができ、スタンフォード式ライフデザインを学びました。

そして、先輩とのワークショップなどを進める中で、自分の一番進みたい道は何かを考えた時に、大学院進学を決めました。

Q: なぜこのタイミングだったのですか?

A: 会社に3年半在籍していたので、十分な経験を積めたと感じました。

また、年齢的にも20代後半なら、方向転換がまだ間に合う点も理由の1つです。

Q.会社にはどのように伝えましたか?

A: 渡航の1年半前、決断したときにまず部門長(役員クラス)に伝えました。そうしたことで一番上から直属の部長に伝えてもらうことができ、調整がスムーズにいったと思います。

Q: 大学院進学はキャリアにどのような影響を与えましたか?

A: シンクタンクなどで環境政策に関わりたい、という点は変わりませんが、関わり方のイメージに変化がありました。

進学前は、民間企業や自治体での仕事を考えていました。

しかし、進学後は、政策的アプローチを主に学んだことや、国際機関の重要性を目の当たりにしたことで、国際機関や政府機関に関わる仕事に興味を持つようになりました。

実際に、今では環境省などの政府機関やUNEP等の国際機関と仕事ができ、大学院時代に想像していた仕事と近いことができています。


社会人大学院とお金について

この章では、社会人大学院とお金についてお聞きします。

Q: 大学院進学の費用はどれくらいかかりましたか?

A: 学費は約£19,000(日本円で約330万円)、そのうちデポジットが£5,000かかりました。

渡航費は片道30万円ほどかかり、その他にもビザ、健康保険、家賃、生活費などがかさみ、全体ではかなりの額になりました。

※2022年当時のレート

Q: 費用はどのように工面しましたか?

A: 最終的には、前職で貯めた貯金を主に使いました。

大学が決まってから奨学金に応募しようと思っていましたが、JASSOや国の奨学金は締め切られてしまっていました。

なので、結果的に大学の奨学金£3,000しか受けられませんでした。

Q: 在学中もお金を稼いでいましたか?

A: 在学中は、International Student Ambassadorとしてキャンパスツアーの案内やオープンキャンパスのイベントに参加していました。

報酬だけではなく、学内でのつながりができる点も大きかったです。

また、生物多様性クレジットの創出を目指すイギリスの企業で有給インターンシップも行いました。

Q: 卒業後、年収は上がりましたか?

A: 年収は下がりましたが、前職は年齢の割に高額な水準だったため、あまり気にしていません。

年収アップよりも自分がやりたいことを優先したキャリアチェンジです。


社会人大学院とプライベートについて

この章では、社会人大学院とプライベートについてお聞きします。

Q: ライフプランにはどのような影響がありましたか?

A: 20代後半での渡航だったため、結婚や出産への影響は考えていませんでした。

Q: 大学院在学中のリフレッシュはどのように行っていましたか?

A: 意外とリフレッシュの時間は取れました。

自分のペースで調整しながら、リフレッシュも兼ねて友人と出かけたりしていました。

ただ、イギリスは雨がとても多いので、雨を好きになるくらいの気持ちが必要かもしれないです。

Q:入学後、同級生との交流はどのように行っていましたか?

A: 交流の場として、Post Graduate Officerが主催するイベントが隔週に1度開催されていて、ほぼ毎回参加していました。

また、誰でも参加できる「Society」というサークルのような集まりにも参加していました。

交流の時間は持った方がいいと思います。

社会人大学院と時間について

この章では、社会人大学院と時間についてお聞きします。

Q: 勉強・情報収集にどのぐらい時間をかけましたか?

A: 平日は、毎日2時間以上勉強していました。休日は4~5時間程度だったと思います。

 勉強は主に朝に行い、情報収集は夜や週末に行っていました。

Q: 仕事との両立に影響はありましたか?

A: 仕事はなるべく早く終わらせることを心がけました。

効率化のためにMicrosoft 365の使い方をかなり学び、時間を節約しました。

Q: プライベートとの両立に影響はありましたか?

A: 特に大きな影響はありませんでした。コロナ禍で時間があったので、問題なく両立できました。

Q: 勉強時間確保のために工夫していたことはありますか?

A: 早起きをすることで、勉強時間を確保していました。


社会人大学院と情報について

Q: 志望校を選ぶにあたり、どのような情報収集を行いましたか?

A: 以下のような順序で情報収集を行っていました。

序盤(探す): Best Masters Degrees & Masters Programs 2024を参考にしました。

中盤(絞る): BEO主催の大学院イベントで実際に大学の担当者から話を聞きました。

終盤(決める): エクセルを使って比較表を作成し、場所、ランキング、インターン(プレイスメント)機会、学費、宿泊施設、入学条件、特徴などを詳細に比較しました。

Q: 周囲に相談できる経験者はいましたか?

A: はい、大学や高校の同期に相談していました。

Q: 留学先の同級生は次のキャリア選びに役立ちましたか?

A: 新卒の就活とは少し異なるので、あまり参考にはなりませんでした。

特に日本人以外の学生は、就職活動を始めるタイミングが遅い傾向にあります。

私自身は、LinkedInや転職エージェントを活用して次のキャリアを探していました。

Q: 出願に必要だった主な準備物を教えてください。

A: Personal Statement(500ワード)、推薦状2枚、語学試験証明書、卒業証明書、履歴書(CV)が必要でした。

資料作りは、ウェブサイトやYouTubeを参考にし、例文を基に自分で作成しました。また、同じ大学院を修了した高校の同級生に添削をお願いしました。

社会人大学院と語学について

この章では、社会人大学院と言語についてお聞きします。

Q: 語学試験はどの試験を受けましたか?

A: IELTSを受験しました。目標はIELTS 7.0で、実際には7.5を取得しました。

大学生時代のオーストラリア留学前にTOEICで955を取得していたので、 半年程度の勉強で済みました。

Q: 勉強法を教えてください。

A:

・Listening(L)
早い英語に慣れるため、Podcastを倍速で聞いていました。

・Reading(R)
英文記事を読みながら情報収集を行い、英文に慣れるようにしました。

・Speaking(S)
ネイティブの友人に、IELTSの面接官役をしてもらい練習しました。

・Writing(W)
大学時代の英語の先生に連絡して、自分が書いたEssayを添削してもらいました。

詳しくは河村さんのnoteを参照
社会人でイギリスの大学院5校からOfferをもらった話③-英語篇-

Q: 試験の英語と実際の英語にギャップを感じましたか?

A: イギリス出身でない先生も多く、様々なアクセントや英語に対応する必要がありました。


海外大学院に進学を考えている社会人へのアドバイス

最後に、海外大学院に進学を考えている社会人へのアドバイスをお聞きします。

Q: 社会人が海外の大学院に進学する際、どのようなアドバイスがありますか?

A: 社会人の方が海外の大学院に進学することは非常におすすめです。

特に国際協力や国際関係の分野では、修士号がないとキャリアを進めるのが難しい業界です。

そのため、こうした分野でのキャリアを考えているのであれば、修士号は必須だと思います。

必ずしも海外ではなくても、日本国内の大学院も選択肢になります。

ただ、海外生活の経験がない方にとっては、新しい環境を経験することはとても刺激的で、視野が広がると思います!

河村さんのnoteはこちら
社会人でイギリスの大学院5校からOfferをもらった話
イギリス大学院留学中の話