日本の入管制度に対して、国連や他の機関から何度も「国際法違反」だと非難を受けています。
日本では、難民と認められず入国資格の無い人が施設に強制的に収容されてしまいます。
そこでは問題が多く発生しており、人権侵害同然の行為がなされています。
では、実際にどのような問題があり、社会はどう反応しているのでしょうか。
ここでは、入管施設での現状や問題点を紹介します
目次
入管問題とは
入管問題とは、入管施設へ入る判断から、施設の中での出来事まで、一連の動作の上で起こる問題のことです。
また、入管施設とは、オーバーステイなどの理由から在留資格を持たないとされる人々を強制収容する場所です。
一体どのような問題があるのでしょうか。
- 司法審査が無い
- 長期収容
- 稼げない
司法審査が無い
海外では、裁判所を通して、その人が難民であるかや収容すべきかなどを判断します。
しかし、日本では司法による判断ではなく、入管庁(出入国在留管理庁)が独自に判断します。
その人が難民であるかどうかを判断するには、正当性がなく不正確だと言われています。
長期収容
収容日数の制限が設けられていないため、何年間も自由を奪われている人が大勢います。
収容所を出るためには自国へ帰らなければいけません。
しかし、帰国には迫害や殺害の恐れや、日本に生活の地盤があるなどの理由から、自国への帰還が難しい人が大勢います。
不当な長期収容から心の病を抱える人が多く、過去には自殺も報告されています。
参考:仮放免制度の運用変更による収容問題の悪化 ー 改善に向けて
稼げない
短い期間だけ外で生活できる「仮放免」という制度があります。
唯一、普通の生活ができるはずの制度ですが、被収容者は労働が認められておりません。
その上、保険証も持てないので病院に行きたくても多大なお金が必要です。
仮放免で外に出られても、毎日を生きることすら難しいのです。
入管施設の問題点
とりわけ、入管施設内の問題が多く報告されています。
入管施設内の状況を見ていきましょう。
- 環境の悪さ
- 職員による暴行
環境の悪さ
生活環境は良いとは言えず、複数人で同じ部屋に住み、非常に密集した空間となっています。
実際、新型コロナウイルス感染症が流行すると、居住空間への対策に追われ、仮放免の許可が下りやすくなりました。
医療の体制も不十分で、何度も問題が発生しています。
収容所を経験した人からは、刑務所のようだという声が少なくありません。
職員による暴行
度々、職員による暴行が話題にあがります。
1人に対し大勢で押さえ込み、不必要に苦しめるなど、暴力を振う様子が報告されています。
入管職員が被収容者を見下している態度も見受けられるそうです。
入管施設での事件
これまでに収容所内で様々な事件が起こってきました。
ここでは2つを紹介します。
- ハンガーストライキ
- スリランカ人女性の死亡
ハンガーストライキ
ハンガーストライキとは、収容への抵抗の意思を見せるために食事を拒否し続ける行為です。
残念なことに、この行為は頻繁に起こっています。
ハンガーストライキは、命に関わる行為であり強い意志がなければできません。
しかし、頻発するということは、収容所内での生活の苦しさを物語っています。
スリランカ人女性の死亡
これは、大きくニュースで取り上げられた話です。
2021年3月、名古屋の収容所にいたスリランカ女性のウィシュマさん(33)が亡くなりました。
彼女は2ヶ月にわたって体調不良を訴えていましたが、職員に相手にされず、適切な処置がされませんでした。
それどころか、無理やり食べ物や薬を口の中に押し込む様子が記録されています。
入管庁による「入管法の問題点」
2021年に入管庁により「現行入管法上の問題点」が公表されました。
この内容に対して物議が醸されました。
一体どのような問題があったのでしょうか。
- 差別的表現
- 犯罪歴の強調
- 難民申請の濫用を強調
差別的表現
ある特定の国籍の人々が送還に応じないことが示されています。
しかし、送還を拒む人は自国に帰れない理由があるので、送還の拒否を問題にするのはおかしいです。
そこで、これは差別につながる表現として問題視されています。
犯罪歴の強調
犯罪歴があるかどうかは関係無いにも関わらず、敢えて犯罪歴のある人がいることを示しています。
これは犯罪歴のある人を特別扱いし、強制送還しやすい理由にするなど、入管側が有利になるような表現です
難民申請の濫用を強調
難民申請の乱用が強調されています。
しかし、そもそも日本の難民認定率が低いので、乱用と表現することに語弊があります。
また、難民認定率の低さが被収容者が多い1つの原因です。
ココカラアースの記事で日本の難民問題についても紹介しているので、是非こちらをご覧ください。
関連記事
≫日本の難民問題とは?他人事ではない、深刻な問題の裏側
≫人権問題とは?日本と世界の人権問題を一覧で解説
まとめ
今回挙げたもの以外にも多くの問題が存在し、罪のない人が刑務所のような暮らしを強いられ、心の病気に苦しんでいます。
『牛久』という映画では、入管施設を隠し撮りすることで実態を映し出しています。
他にも入管問題を取り上げている作品があるので、是非ご覧になってください。
この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。