難民問題と聞いてどのようなことを思い浮かべますか?
聞いたことはあるけれどよく知らない、どこか遠い国のことだと感じる方もいると思います。
難民問題は、世界中で起こっている政治・経済・宗教・環境などの問題が原因となり人々の日常が突然奪われてしまうという深刻な問題です。
地球に住んでいる以上は私たちも「難民」になりうるのです。
私たちと切っても切り離せない問題に、少しでも目を向けてみませんか?
目次
難民問題とは
難民問題とは、難民となった人の保護や救済に関する問題のことを指します。
しかしそれ単体で起こっているのではなく、地球上の様々な問題が複雑に絡み合って起きているためグローバルな課題であると言うこともできます。
残念ながら難民問題の原因となる紛争などは年々深刻化しており、難民の数は2012年から増加し続けているのです。
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、2022年末時点で、紛争や迫害により故郷を追われた人の1億840万人となりました。
なんと、1年で1,910万人増加し、過去最大であり2012年の倍を超えました
難民問題の背景
さて、ここからは難民問題の背景について深掘りしていきます。
「難民」とはどんな人?
難民条約では、難民とは「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた人々」と定義されています。
近年では、紛争や人権侵害によって国を追われて助けを求める人々のことも指すようになっています。
また家から逃れても国内にとどまっている人々も増加し続けており、彼らのことを「国内避難民」と呼びます。
難民問題はなぜ起こる?
難民問題は主に政治・経済・民族や宗教の対立・それによって引き起こされる紛争などが原因となって起きます。
またこれらの問題が幾重にも重なっていることもあり、一口に難民問題と言っても一筋縄ではいかない問題なのです。
そのため、各国が協力して取り組む必要があります。
≫紛争とは?戦争、内戦は何が違う?現在起こっている事例をもとに解説
世界の現状
紛争や自然危機の深刻化により、難民問題の長期化が課題となっています。
世界の状況を見ると難民の出身国は最も多いのがシリア、二番目に多いのがウクライナ、三番目に多いのがアフガニスタンだと分かります。
これまでは、アジア・アフリカ出身者が多い傾向にありましたが、ウクライナ侵攻を機にウクライナの難民が急増しています。
世界の難民の76%が低中所得国での受け入れられており、それらの国々の負担も問題となっています。
日本の難民問題の現状
実は、日本も難民を受け入れています。
日本は難民を生み出す側ではなく難民条約に加入しており難民を保護する義務があるのです。
しかし、それに伴って深刻な問題も起きています。
日本は難民に対し依然として非常に厳格な姿勢をとっていることも事実です。
日々の中で日本の難民問題について目にすることはあまりないかもしれませんが、日本で暮らしている以上この事実について知っておく必要があります。
日本の難民受け入れ
2022年現在、日本での難民認定申請者数は3,772人、認定者は202人となっています。
こうした日本の難民認定数は2%と世界中の難民受け入れ国と比較してとても少ないことが分かります。(下の図を参照)
しかし、2020年は0.5%だったため、受け入れの体制は少しずつ改善されています。
引用:認定NPO法人難民支援協会HP(最終閲覧日:2023年6月15日)
参考:令和4年における難民認定者数等について | 出入国在留管理庁
入管における長期収容
では、難民申請が通らず正式に難民であると認められなかった場合どうなってしまうのでしょうか。
難民申請が通らないと「難民」として正式に認めてもらうことはできず、難民認定を待つ期間は長期にわたることもあります。
すると彼らは日本の不法滞在者であると見なされ、入国管理局(以下:入管)に収容されてしまう可能性もあるのです。
難民認定を待つ間、日本に逃れてきた人たちはこの恐怖に怯えながら過ごすことが少なくありません。
入管における難民の扱いは人権を無視したようなものである場合も多く、難民の死亡事件が後を絶ちません。
2021年にも、名古屋入管でスリランカ女性の難民の方が体調不良を訴えていたにも関わらず適切な処置がなされなかったために亡くなってしまうという事件が起こりました。
こうした入管による難民の長期収容は国連にも国際法違反であると指摘されています。
日本が難民受け入れに厳格な理由
日本がここまで難民に対して厳しい姿勢をとっている理由がいくつかあります。
政治的意思がないこと
日本では政治の場で難民受け入れについて十分に議論されてこなかったというのが一つの原因です。
難民も含めた共生社会を前提とした移民政策について話し合う必要があります。
また難民認定申請制度を利用して出稼ぎをしようと企む外国人が出てきたことから、2018年に難民認定申請者の就労許可を廃止することが法律で決められ難民に対する姿勢がより厳格になりました。
難民であることを証明するハードル
そもそも難民の中には身一つで逃げてきたという人も存在し、自分が難民であることを証明することは不可能に近いと言えます。
しかし、難民申請認定には厳しい条件が課されており、なかなか難民認定の許可が降りないのが現状です。
また日本独自の「個別把握論」という、政府から認識され狙われていなければ難民ではないという解釈も難民であることを証明するハードルを上げる原因となっています。
難民を「管理する」という観点
日本において難民認定を管理しているのは入管です。
そのため、難民を「保護する」よりも「管理する」という視点が強いという現実があります。
過去には、空港で「難民として助けてほしい」と訴えてもそのまま収容されたりするという事態も起きました。
危険な人物を入国の際にチェックすることは入管の重要な役割ですが、本来助けなくてはならない難民が収容・強制送還されるということが起こっています。
難民問題に対して日本にいる私たちに出来ること
ここまで述べてきたように、日本と難民問題は切っても切れない関係にあります。
では、私たちには何が出来るでしょうか。まずはこの問題の現状について知り、そして広めることです。
直接的に難民問題に携わることは難しくても、この記事を広めることで支援の輪を広げることが出来ます。
ぜひ、感想をシェアしてみてください。
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この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。