ティアハイムとは?
ティアハイムとは、ドイツで生まれた動物保護施設です。
ドイツ語で動物(tier)と家(heim)が合わさり、ティアハイム(tierheim)と呼ばれています。
ドイツ国内にはティアハイムをもつ団体が約1,400あります。
そして、年間約30万頭もの動物がティアハイムに保護されており、犬猫をはじめとして、ウサギや爬虫類、鳥類も保護されています。
ティアハイムの役割は、「動物の保護と収容」と「動物の仲介と譲渡」の2つです。
次の章では、ティアハイムの歴史と成り立ちについて解説します。
ティアハイムの歴史と成り立ち
ティアハイムの歴史は、19世紀のドイツにさかのぼります。
1841年、ドイツ・ハンブルクで初めての動物保護協会が設立され、その後、ドイツ各地で動物保護の取り組みが広がっていきました。現在のティアハイムの象徴ともいえるティアハイム・ベルリンは、1901年に現在の形で開設され、以来100年以上にわたり動物保護の拠点として機能し続けています。
これらの施設を束ねる組織として、ドイツ動物保護連盟(Deutscher Tierschutzbund)があります。同連盟は約740の加盟団体を持ち、ドイツ全土の動物保護活動を統括・支援しています。
このような長い歴史と組織的な基盤があるからこそ、ティアハイムは単なる「保護施設」にとどまらず、社会インフラとして機能しているのです。
ティアハイムで生活する動物は?
主な動物は犬猫
ティアハイムにいる主な動物は、犬と猫です。
保護されている動物のうち約3分の1は犬であると言われています。
しかし、犬猫以外にも多様な動物を保護しています。猿や羊、ミニブタ、馬などの哺乳類以外にも、インコやフクロウなどの鳥類、蛇やトカゲなどの爬虫類も保護されています。
どのような動物が生活している?
ティアハイムでは、さまざまな理由で飼い主が飼育できなくなってしまった動物が保護されています。
飼育できなくなる理由としては、飼い主の死別や動物アレルギー、引っ越しなどのやむを得ない事情から、劣悪な飼育環境の発覚など飼い主の虐待が挙げられます。
厳しい譲渡条件と高い譲渡率
厳しい譲渡条件
里親の希望者には厳しい譲渡条件が設けられています。
施設によって違いはありますが、トライアルやカウンセリングなどを経て、譲り受けることができます。この点においては、日本でも多くの保護団体が厳しい譲渡条件を設けています。
高い譲渡率
ドイツの中でも最大級の規模である*ティアハイム・ベルリンの譲渡率は、90%を超えています。
この背景には、ペットを飼う場合にティアハイムへ行くというドイツの文化と、ペットショップでの犬の販売が禁止されているなどの法律が大きく影響していると考えられます。
*ティアハイム・ベルリンについて
ティアハイム・ベルリンとは、ヨーロッパ最大の動物保護施設です。施設の総面積は東京ドーム約4個分の18.5万㎡に及び、年間で1.5万頭の動物が保護されています。有給の従業員数は約180人で、ボランティアは300〜400人が運営に携わっています。
ティアハイムの運営資金は?
ティアハイムは、100%民間の施設として運営されています。
そのため、運営資金は税金ではなく、ほとんどが寄付、一部が事業収益で賄われています。
寄付は、個人寄付や故人からの遺贈、企業のスポンサー費などです。一部の事業収益では、隣接する動物病院やオリジナルグッズなどで収益を得ています。
ドイツの動物保護を支える文化と法律
ドイツの動物保護施設が高い機能を発揮できる背景には、社会全体の文化と法律によるサポートがあります。
犬税(Hundesteuer)制度
ドイツでは、犬を飼うと「犬税(Hundesteuer)」が課されます。税額は地方自治体によって異なりますが、1頭目が年間約120ユーロ(約2万円)、2頭目以降は約180ユーロ(約3万円)が目安です。この税収は犬の登録管理や動物保護施設の運営支援に充てられており、無計画な飼育の抑止にも一定の効果があるとされています。
小学校での動物シグナル教育
ドイツでは、小学校のカリキュラムに「動物シグナル(Tiersignale)」という考え方が組み込まれています。これは動物の行動や感情のサインを読み取る力を育てる教育で、動物との正しい関わり方を幼い頃から学ぶことができます。動物との共生に関する感覚が社会全体に根付いているのは、こうした教育の積み重ねによるものです。
ペットショップでの犬の販売禁止
ドイツでは、ペットショップでの犬の販売が法律で禁止されています。犬を迎えたい場合はティアハイムに行くか、ブリーダーから直接迎えることが一般的です。この規制により、ティアハイムが「ペットを迎える場所」として社会的に認知され、高い譲渡率を支える要因のひとつになっています。
ドイツの動物保護の考え方や社会課題との関連については、以下の記事もあわせてご覧ください。
≫ドイツの社会課題とは?環境・格差・移民問題をわかりやすく解説
日本の保護施設との違い
日本の保護施設との違いを2つ紹介します。
殺処分を行わないこと
ティアハイムでは、基本的に殺処分を行いません。
一方、日本では犬猫の殺処分が長年の課題となっています。2019年4月1日〜2020年3月31日の期間には32,743匹が殺処分されました。
【最新データ】 環境省の統計によると、その後も数値は改善が続いており、2022年度(令和4年度)には犬・猫合計で約14,000頭まで減少しています。ピーク時(1990年代)の年間100万頭超と比較すれば大幅な改善ですが、殺処分ゼロを達成しているドイツとの差は依然として大きく、引き続き取り組みが求められています。
参考:犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況(環境省)
運営元の違い
運営元の違いもあります。
ティアハイムは、100%民間の施設として運営されています。日本では民間の施設もありますが、公共の施設が多いです。
≫アニマルライツとは?アニマルウェルフェアの違いや私たちにできること【事例付き】
日本でのティアハイム的取り組みの現状
日本でのティアハイム的取り組みは、近年、民間NPOを中心に広がっています。
国内の先進的な取り組み事例
日本では、ティアハイムをモデルにした動物保護施設の設立が各地で進んでいます。たとえば、一般財団法人「どうぶつ基金」は、地域猫の不妊去勢手術を無料でサポートする「さくらねこ無料不妊手術」事業を展開しており、野良猫の増加抑制に貢献しています。また、「ティアハイム」の名を施設名に冠したシェルターが国内でも誕生し、殺処分ゼロを目指す取り組みが広がっています。
課題と今後の展望
ドイツのティアハイムと比較すると、日本の民間保護施設は運営資金の確保や社会的認知度の面でまだ課題が多いのが現状です。犬税のような制度的サポートや、ペットショップ販売禁止のような法整備は日本ではまだ十分ではありません。個人の寄付・ボランティア参加に加え、企業や行政との連携強化が今後の鍵となります。
生物多様性や絶滅危惧種の問題とあわせて、動物保護のあり方を考えてみましょう。
まとめ
ティアハイムとは、ドイツで生まれた動物保護施設です。
1841年に起源を持つ歴史、犬税制度やペットショップ販売禁止といった法律・文化的背景、そして高い譲渡率と殺処分ゼロの方針が、ドイツの動物保護の先進性を支えています。日本でも民間NPOを中心にティアハイム的な取り組みが広がりつつありますが、社会全体の意識と資金的な支援がさらに求められています。
ぜひ皆さんも寄付やボランティアを通じて、動物保護の取り組みを支援してみてください。
よくある質問
Q1. ティアハイムとは何ですか?
ティアハイムとは、ドイツで生まれた動物保護施設のことです。ドイツ語で「動物(tier)」と「家(heim)」を組み合わせた言葉で、飼い主が飼えなくなった動物を収容・保護し、新しい里親に仲介する役割を担います。
ドイツ全国に約1,400の団体があり、年間約30万頭の動物が保護されています。殺処分を行わない方針と90%超の高い譲渡率が大きな特徴です。
Q2. ティアハイムとはどのような動物保護の仕組みですか?
ティアハイムは「動物の保護と収容」と「動物の仲介と譲渡」の2つを主な役割とします。里親希望者はトライアルやカウンセリングなど厳格な審査を経て動物を引き取ります。
運営資金は税金ではなく、個人・企業からの寄付や遺贈のほか、隣接する動物病院やオリジナルグッズなどの事業収益で賄われており、100%民間施設として自立的に運営されています。
Q3. 日本の動物保護施設とティアハイムはどう違いますか?
最大の違いは「殺処分の有無」と「運営元」です。ティアハイムは殺処分を行わない民間施設として運営されていますが、日本は公共の保護施設が多く、殺処分数は減少傾向にあるものの(2022年度 約14,000頭)依然として課題が残ります。
また、犬税やペットショップでの犬の販売禁止といったドイツの法制度が高い譲渡率を支えており、制度面での差も大きいです。
Q4. ティアハイムへの寄付や支援はどのようにできますか?
ティアハイム・ベルリンをはじめ各施設はWebサイトから寄付を受け付けています。個人寄付のほかに、企業のスポンサー費や、故人の意思によって財産の一部を施設に贈る「遺贈」という形の支援も行われています。日本国内では、ティアハイム的な活動を行う民間NPOへの寄付やボランティア活動への参加も、動物保護の支援につながります。

この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。
