近年、日本で働く外国人労働者を目にする機会が増えていると思います。

国をあげて彼らを受け入れている日本ですが、多くの問題が存在します。

ベトナム人の実習生が職場で暴行を受けていたことが大きくニュースに取り上げられ、外国人労働者の問題が露わになりました。

他にも問題は多く存在します。

ここでは外国人労働者問題の実態から、その原因まで幅広く見ていきましょう。

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急増する外国人労働者問題とは?

厚生労働省によると、2020年10月に、日本で働く外国人労働者数は過去最高となりました。

労働者の国籍の内訳としては、中国、ベトナム、フィリピンが多いです。

労働者数は過去10年間で3倍になり、2021年時点で約172万人が働いていますが、増加に伴い、様々な問題が発生しています。

参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ
   「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和3年10月末現在)

外国人労働者とは

外国人労働者とは、在留資格や、技能実習、特定活動、資格外活動など、在日理由は多岐に渡りますが、母国を離れ日本で働く外国人のことです。

日本では、留学生の受け入れや、技能実習制度などの国の政策によって、積極的に外国人を受け入れています。

以前、ココカラアースで「留学生アルバイト問題」について取り上げているので、ぜひこちらも参照してください。

留学生アルバイト問題とは?増えた背景や留学生を取り巻く問題を解説

外国人労働者のニーズの高まり

それでは、なぜこんなにも外国人労働者のニーズが高まっているのでしょうか。

それは、以前から深刻で、今後も重要な課題である人手不足を補うためです。

政府は2019年に特定技能という制度を作り、優秀な人材の確保に努めています。

これは、人手不足と認められる業界への受け入れが可能となる制度です。

新型コロナウイルスの影響で、飲食や宿泊業界など一部のニーズは下がっていますが、収束後はより高まると見られます。

技能実習​​

最近、技能実習生という言葉をよく耳にする様になりました。

技能実習とは、外国人に日本の技能を教え、それを母国の発展に生かすことを目的としています。

日本への滞在期間は5年で、受け入れ可能な職種は80種類にのぼり、受け入れ国の制限もありません。

しかし、低賃金や長時間労働が問題となっています。

参考:技能実習生とは?わかりやすく制度や仕組みを解説

    新たな外国人技能実習制度について

話題になったニュース

岡山県の建設会社で、技能実習生のベトナム人男性が、従業員4人から2年間に渡り暴行を受けていたことがニュースとなりました。

彼は、箒で体を叩かれることに始まり、肋骨を3本折られるなどの暴行を受けたと訴えました。

2022年8月4日、理由は明かされていませんが、元従業員の4人は不起訴処分となりました。

参考:実習生暴行事件、4人不起訴


外国人労働者を取り巻く6つの課題

多くの企業で労働基準関連法の違反が見つかるなど、外国人労働者を取り巻く問題は多発しています。

ここでは、それらの問題のうち6つを紹介します。

就労制限

在留資格が就労を許可するものであるか、また、就労期間がどのくらいかなど、就労制限が設定してあります。

これを守らないと法律違反となり、不法就労者となります

出入国在留管理庁によると、2021年度に強制退去措置を取られた外国人のうち約69%は不法就労者でした。

単に制度を知らずに不法就労者になってしまう人も多いですが、不法就労者数は増えています。

参考:令和2年における入管法違反事件について(速報値)
   令和元年における入管法違反事件について

低賃金

外国人労働者の賃金は、日本人の社員より安く設定されたり、賃金未払いが行われたりと、安価な労働力として搾取されています。

賃金の不平等を理由に離職や失踪する人もいます。

外国人雇用のためにはコストも時間もかかるので、賃金を上げにくいという事情もありますが、不平等な雇用は容認されるべきではありません。

長時間労働

企業の違反項目で一番多いものが長時間労働です。

日本語が堪能でないことを原因に、労働基準法を知らず、不当な労働時間を強いられていることに気づけない人も多いです。

劣悪な労働環境

外国人労働者は弱い立場にあり、危険や不衛生な仕事を押し付けられることがあります。

また、基本的に人材不足の現場が多く、重労働かつ長時間労働です。

そのため、労災の発生数も増加しています。

他にも差別やいじめ、パワハラが報告されており、外国人労働者にとっては劣悪な環境となっているのです。

参考:令和2年 外国人労働者の労働災害発生状況

職場におけるハラスメントとは?よくある種類と問題の解決方法

コミュニケーションの問題

当然ながら、日本と外国では言語も文化も違います。

外国人労働者は日本語が流暢に話せる方ばかりではありません。

そのため、仕事の指示が伝わらず、認識違いによって仕事へ悪影響が及ぶこともしばしばあります。

2019年9月の内閣府の調査によると、企業側の感じる課題の約半数がコミュニケーションの問題です。

地域社会との摩擦

日本に滞在する外国人の数は増加傾向にありますが、依然として外国人に慣れていない地域も多いです。

そこでは、外国人に対する偏見や差別意識を持つ人も多く、誤解やトラブルが起こります。

2020年にNHKが行った調査によると、外国人が自分の地域に増えることに関しては不安を抱く人がいます。


原因は日本側の受け入れ体制の不備

様々な原因が複雑に絡まっていますが、課題を見てみると日本側に非がある場合もあります。

そこで、ここでは日本人側の原因3つを紹介します。

外国人労働者に対する人権意識の低さ

長時間労働や低賃金、劣悪な労働環境を引き起こす原因の1つは、外国人労働者に対する人権意識の低さです。

彼らの権利を無視して労働力として捉えていることが、数々の課題を引き起こしています。

日本人と同等に彼らを扱い、権利を尊重する必要があります。

外国人任せな態度

コミュニケーション問題に関して、外国人の言語習得を原因とするのではなく、日本人の歩み寄りも必要となります。

企業側のサポートや社員の接し方など、言語力以外にも円滑なコミュニケーションには努力が必要です。

外国人と接する機会が少ない

コミュニケーションや外国人に対する考え方の原因に、彼らと接する機会が少ないことが挙げられます。

外国人と接する経験があった人ほど、外国人に対して理解があることが、民間の調査によって明らかにされています。

参考:多文化共生意識に関する定量調査


解決策は相互理解

一概に解決策があるわけではありませんが、少しずつ行動や考え方を変えることで改善が可能です。

待遇の改善

まず、労働基準法などの規則を守り、最低限の待遇にする必要があります。

また、日本人社員との賃金格差も埋めなければなりません。

その上で、外国人労働者が働きやすい環境を作り上げていくべきです。

特に、働き始めは文化や言語の違いに苦労するので、公私共にサポート体制が整うと、働きやすくなるでしょう。

知識を深める

不法就労の原因の一つに情報不足があります。

企業側も制度について把握することで、不法就労者の数を減らせます。

管理のために社労士やクラウドシステムを活用する企業もあります。

また、雇う外国人労働者の働いている事情や語学力などを知ることで、企業としての関わり方も見つかるかもしれません。

受け入れ態勢や支援を整える

彼らは慣れない土地で働き、私たちが気づかないストレスや心配事を抱えてる可能性が高いです。

彼らが何をどのように感じているか聞くことで、彼らの働きやすい環境を作ることができるでしょう。

日本人向けの研修

日本人社員が彼らに対して認識を改める事も大切です。

コミュニケーションの取り方について考え、異文化について理解することでより良い職場を作り出せます。

また、こうすることでお互いに歩み寄り易くなるのではないでしょうか。

交流の場を設ける

コミュニケーションの問題などで居心地の悪い環境を解決するには、社員同士の交流の場を設けることが効果的です。

仕事の場面以外でお互いに話したりゲームをすることで、仲や理解が深まります。

また、これは地域と外国人の相互理解のためにも有効です。

外国人労働者を受け入れるメリット

外国人労働者を受け入れることは多くのメリットをもたらします。

もしかすると、その企業にとっては大きな進歩につながるかもしれません。

人手不足の解消

新型コロナウイルス感染症の流行前は、人手不足が騒がれていました。

技能実習制度や新型コロナウイルス感染症の流行もあり、一部では安定している様に見えますが、今後も更なる人手不足が予想されています。

そこで、外国から人手が入ることは日本にとっては何よりもメリットです。

優秀な若手人材の獲得

現在、日本は高齢化社会であり、優秀な若者を採用することが厳しくなっています。

しかし、海外には多くの優秀な若者がいます。

彼らが日本で働いてくれることで、大きな利益をもたらすでしょう。

海外展開の足掛かり

海外進出を考えている企業にとって、海外との距離を縮める1つの手です。

もし、進出したい地域が決まっていれば、その地域の人を雇うことで、文化を知ることができ、海外進出に大きく役に立ちます。

また、実際に進出する際にも様々な場面でその強みを生かすことができます。

組織の活性化

海外からの視点を取り入れることで、その企業に今までなかった発想が生まれます。

そうすることで、新たな事業を展開したり、海外への視野が広がったりします。

それが社員にも刺激になり、様々な取り組みや制度を活性化できるのです。


外国人労働者を受け入れるデメリット

メリットは多いですが、配慮やより緻密な把握が必要となります。

ここでは、受け入れる事で伴うデメリットを紹介します。

就労ビザの資格取得時間

外国人が日本で働くには就労ビザが必要です。

手続きには数ヶ月かかる上にコストもかかります。

受け入れるにあたり、確認事項は多岐に渡ります。

労務管理の知識や実践が必要

例えば、不法就労者を雇用した場合、その企業に対しても罰則があります。

これを防ぐには、本人に任せるのではなく、企業側が管理しなければなりません。

これは多くの資料を読み、理解しておく必要があるため、手間のかかる作業です。

まとめ

外国人労働者が抱える問題は表面化していないものも多く、把握が難しいです。

しかし、日本側が対応を考え、改善に努めることで状況を変えることができます。

また、外国人労働者を雇うことで得られるメリットは多いです。

偏見を持って考えるのではなく、彼らが一体どういう人たちなのか知り、理解することが大切です。


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