日本でも注目度の高まっている「昆虫食」ですが、昆虫を食べることに抵抗がある方も多いのではないでしょうか。
しかし、世界中で昆虫食は重要視されているため、日本でも昆虫食が一般的になる時代も近づいていると言えるでしょう。
本記事では、昆虫食の概要や種類、メリット、デメリットを解説します。
目次
昆虫食とは?
昆虫食とは、コオロギやイナゴ、ハチの幼虫などの昆虫を食品の代用として食べることを指します。
国連食糧産業機関(FAO)が2050年ごろに世界で深刻な食糧難になると指摘したことがきっかけとなり昆虫食の注目度が高まりました。
昆虫食の種類には何がある?
世界中で1,900種類以上の昆虫が人間によって食べられているというデータがあるほど、世界的に見ると昆虫食は一般的な食事といえます。
参照:「Forest products critical to fight hunger – including insects」(FAO)
また、日本においては江戸時代以降、庶民が昆虫食を取り入れていたというデータが残っており、以下のような昆虫を盛んに食べていました。
・イナゴ
・スズメバチ類の幼虫
・タガメ
・ゲンゴロウ(金蛾虫)
・ボクトウガの幼虫
・カミキリムシの幼虫(柳の虫)
・ブドウスカシバの幼虫(えびづるの虫)
参照:公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会「多彩だった昆虫食」
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昆虫食のデメリット5選
昆虫食の主なデメリットは以下の通りです。
・アレルギーのリスク
・見た目に拒絶反応を起こしてしまう
・農薬に関する問題
・食中毒のリスク
・入手の難しさ
それぞれのデメリットについて、以下で詳しく解説します。
アレルギーのリスク
昆虫はエビやカニなどの無脊椎動物に分類されるため、甲殻類アレルギーと同じような症状が発症する可能性があると考えられています。
見た目に拒絶反応を起こしてしまう
日本では”昆虫を食べる”という行為が一般的ではないため、昆虫の見た目を拒絶して昆虫食を受け入れられない可能性があります。
実際に、徳島県の県立高校が2022年から実験的に給食にコオロギパウダーを使用したことについて、「コオロギを食べるなんてありえない」と頭ごなしに否定する意見もSNS上ではみられました。
このように、”コオロギ”ということを拒絶しているため、コオロギをパウダー状に加工したとしても拒絶する人は多いでしょう。
農薬に関する問題
野菜や果物などをエサとする昆虫を食べる場合、昆虫の体内に残された「残留農薬」のリスクがデメリットとして挙げられます。
摂南大学農学部食品栄養学科の「食品衛生学研究所」の研究によると、市販されている昆虫食に含まれる残留農薬は人間に悪影響を及ぼさないという結果が出ています。
参照:摂南大学農学部食品栄養学科「昆虫食の残留農薬を分析しました!(食品衛生学研究室)」
とはいえ、現状はまだ研究段階であるため、今後日本で昆虫食が一般的になるにつれて、残留農薬の安全性について確立する必要があります。
残留農薬の安全性について確立できない場合、全国的に農薬の規制が厳しくなったり、使用できる農薬が限られる可能性もあるのです。
健康リスク
昆虫は、豚肉や牛肉、鶏肉などの食肉と同様に食中毒の原因となるサルモネラ菌の宿主として知られているため、しっかりとした管理や加工が必要となります。
また、寄生虫などに食中毒のリスクもあると考えられています。
入手の難しさ
日本における昆虫食は一般的ではないため、コンビニやスーパーなどではほとんど取り扱っておらず、気軽に購入できる環境は整っているとはいえない状況です。
昆虫食が普及しない理由は?
日本で昆虫食が普及しない大きな要因となっているのは、「昆虫を食べる習慣がないこと」と「試す機会が少ないこと」でしょう。
今まで昆虫を食用として認識していなかった人が昆虫食を当たり前にするのは簡単ではありませんし、昆虫食を試そうと思っている人がいたとしても身近に売っていないければわざわざ昆虫を買いに行くことは少ないはずです。
このように、日本で昆虫食を普及させるためにはさまざまな課題が残っています。
昆虫食にはメリットもたくさんある
昆虫食の主なメリットは以下の通りです。
・環境に優しく飼育できる
・栄養価が高い
・加工しやすい
それぞれのメリットについて、以下で詳しく解説します。
環境に優しく飼育できる
昆虫食に使用される昆虫の飼育は豚や牛などに比べて温室効果ガスの排出量が少ないことや、エサの量が少ないこと、水の飼料量が少ないことなどの理由から環境に優しく飼育することができます。
栄養価が高い
昆虫食のなかでもコオロギは「スーパーフード」と言われており、豊富なタンパク質やカルシウム、必須アミノ酸、ビタミン、鉄分が含まれているため、栄養価が非常に高いことで知られています。
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加工しやすい
昆虫はそのまま食べるだけでなく、粉末状に加工したり、ペースト状に加工したりと、加工しやすいことも大きなメリットです。
まとめ
昆虫食は、栄養価が高く、環境への負荷が少ないという大きなメリットがあります。
しかし、アレルギーや健康リスク、入手の難しさなど、克服すべき課題も少なくありません。
昆虫食が普及しない主な理由は、文化的な抵抗感と試す機会の不足にありますが、これらの課題に対処し、昆虫食のメリットを広く伝えることができれば、持続可能な未来への重要な一歩となるでしょう。
≫植物のように 昆虫のように~NPO法人 昆虫食普及ネットワーク 理事~
この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。