現役外資系コンサルタントの国際協力記

3.国際開発業界を目指す方へのメッセージ

ーーーお仕事以外でも国際協力に関係する活動をされていますが、idpcはどのようなきっかけで始められたのでしょうか?

idpcは、年に一回開催する「国際開発プランニングコンテスト」の運営を主な活動とする任意団体のNGOです。

このコンテストは、国際開発の分野でキャリアを築きたい、活躍したいと考えている20代、30代の方々を対象にしており、国際開発の課題について解決策となるプロジェクトを立案し、その質を競い合ってもらうというゲーム形式のトレーニングです。

プロジェクトの検討から発表までの過程で、講師による講義やフィードバックが行われ、国際開発において必要なスキルを体験してもらうことを狙いとしています。
また、講師や参加者同士の縦横のつながりを作ってもらうことも重要な狙いの一つです。

この活動は自分が日本で大学院生をしていた時に始めました。

まだ社会人経験もなかった時期ですが、国際協力に関心はあっても、実際にそれを仕事として実現できない人や、何も行動に移せていない人が多いことに気がつき、彼らのために何かしたいと思ったのがきっかけです。

今思うと、自分自身にも将来、開発を仕事にできるかわからないという不安があり、idpcの活動を通じて何らかの道筋を見つけたかったというのもあったと思います。

idpcを立ち上げたもう一つの理由は、私自身がリーダーシップの経験を積むためでもありました。

当時参加したあるビジネスコンテストで自分はリーダーシップが特に弱いと痛感する機会があり、リーダーシップをどうにか伸ばせないかと考えていました。

本を読んだりもしましたが、リーダー経験を積むのが一番だと思い、組織を立ち上げることを決めました。

どうせなら出来るだけハードルを上げようと考え、立ち上げには友達を誘わず、webでメンバーを一般公募し、連絡を頂いた方々と一人一人面談をして、全員がお互いに初対面という仲間7人で立ち上げました。

idpcを立ち上げた1年目は大変でした。

それまでサークルの幹部等は経験したことがありましたが、大学も学年もバラバラ、さらには社会人もいるというような集団を代表としてまとめることに、それまでにないプレッシャーを強く感じました。

その時は、idpcが主催するイベントに来てくれている参加者によいものを提供すること以前に、idpcの活動に相当な時間を使ってくれている仲間たちが活動に満足しているかということの方が不安でした。

毎週ミーティングをしていましたが、会場として使っていた早稲田大学に向かうときはいつも胃が痛くなっていました(笑)。

当時は組織運営のためにとにかくマネジメントやファシリテーション、組織論などのビジネス書を読んでいて、その時にコンサル業界には様々なノウハウが蓄積されていることを知ったのも、後にコンサル業界を就職先として意識したきっかけの一つです。

リーダーシップを学びたいという当初の目的については、自分なりのリーダーシップの型を見つけられたという成果がありました。

自分は仲間を上からぐいぐい引っ張るというより、下から押してあげるようなリーダーのタイプです。
自分一人で全部をやらずに、上手く人を頼ることでそれぞれのモチベーションをあげるようにしました。

人に動いてもらうには、「自分はこれをやりたいが、あなたにしかこれはできないから是非助けてほしい」と伝えること、そして助けたいと思ってもらえる人であることが大事だと学びました。

辛い時に頑張れたのは、集まってきてくれた人の期待を裏切りたくないという思いが強かったからです。

後から聞いた話ですが、当時の立ち上げメンバーの何人かは途中、コンテストの実現は無理だと思っていたくらい、活動は順調ではありませんでした。

しかし、せっかく集まってくれた仲間に、なんとか活動に参加してよかったと思ってもらいたいという一心で走り続けました。

今振り返ると、idpcの立ち上げは色々な経験ができて、今までで一番成長できた1年間だったと思います。

ーーー現在も続けていらっしゃるのはなぜですか?今後も続けていきたいと思われますか?

実はidpcの運営からは一度手を引いていて、しばらくは後輩らが中心となって運営していました。

2016年のある時、代表を務めていた後輩がidpcを離れることになりましたが、後任が見つからないと相談を受けました。

私も社会人としての生活に余裕が出てきていたのもあって、自分の経験やネットワークを日本にいる若い方々に還元するにはよい機会だと考え、もう一度idpcの代表になりました。

idpcの今後については、規模の拡大を追求するつもりは特にありませんが、コンテストのフィードバックやトレーニングの質をあげることに注力したいとは思っています。

また久しぶりに自分の拠点を日本に戻したので、idpcの新たな活動として国際開発の勉強会であるiDev cafeを新たに立ち上げました。
1,2カ月に一回の頻度で開催していく予定です。

ーーーなぜ新しいことにどんどんチャレンジできるのですか?

周りからは、転職してイラクに行ったり、仕事を辞めて留学したりしているのはリスクを取っているように見えているのかもしれませんが、自分の中ではむしろリスクを減らすための選択です。

学生時代に、会社のリストラに合って苦労をした人の話を聞いた経験などから、特定の組織に依存して生きるのにはリスクがあると考えるようになり、組織から市場に突然放り出されても生きていけるような実力を備えていたいとは常に思っています。

イラク行きについては、やりたいことがあるのにそれに挑戦せずに人生を終える可能性の方が私には大きなリスクだと考えました。

あとは新しいこと始めるのが好きで向いていると思います。


自分は人と競争して勝ち負けを決めるのが好きではありませんが、何かを新しく作ることには勝ちも負けもありません。

ナンバーワンではなくオンリーワンを目指して自分の価値を発揮しようと、新しいことをつくるのにエネルギーを使うようにしています。

なお、新しいことを始めるには人を巻き込む必要がありますが、その点は過去の成功体験からか自分に巻き込まれた人には楽しいと思ってもらえるという変な自信があります(笑)。

ーーー開発業界に携わる中で必要なスキルは何だと思いますか?

開発業界の中でも分野や職種に応じたハードスキルはそれぞれ必要であることは間違いありませんが、ソフトスキルに関して言えば、人や組織を動かせる力が大切であると思います。

イラクで働いていたときによく直面したのですが、開発のプロジェクトは様々なトラブルでしばしば進捗が止まり、そうした時に現地政府や関係者の誰に、どういう情報を伝えれば組織のボタンが押されて物事が前に進むのか、という事を考えさせられました。

人は論理と感情で動くので、論理的な思考に加えて感覚的なセンスが大切だと思います。
その人がどういう問題意識を持っていて、誰の話であれば聞くのかを見極める観察力が求められます。

語学力も当然ながら重要です。
仕事を不自由なく遂行できるだけでなく、ポリティカルコレクトに表現できるような、高いレベルの言語能力が求められます。

日本に帰国してからはイギリスの経済紙The EconomistのPodcastなどを聞いて語学力を維持するようにしています。

ーーー開発業界を目指す学生・社会人に応援メッセージをお願いします。

若い人たちに伝えたいのは、自分が好きなことを見つけ、それを伸ばすことの大切さです。

自分自身の経験を振り返ってみても、自分が好きなことは、熱中して取り組むうちに気が付いたらそれが強みになり、仕事で役立っている事が多いです。

例えば、私は人と会うのが好きな人ですが、人と沢山会ってきたことで形成してきた人脈は、私のアセットの一つになっています。

一方で、将来役に立ちそうだからやっておこう、という考えで始めたものの多くは実際には中々身につかなかったり、結局使うことがなかったりしました。

「好きこそものの上手なれ」は本当にそうだと思いますし、好きなことを極めることが、キャリアという観点でも重要なのではないでしょうか。

中には自分が好きなこと、熱中できることをまだ見つけられていないという人もいるかもしれません。

無理に見つける必要はないと思いますが、見つけたい、という思いがあるのであれば、まずは色々なことを体験してみることが大切だと思います。

例えば、漠然と途上国に興味があるのであれば、ただ悩むのではなくて、まずは現地に行ってみて、ボランティアでもインターンでもなんでもよいので実際に活動を体験してみて、本当に自分は途上国に興味があるのかを検証する事が大事だと思っています。

できれば経験内容も一つではなく、いくつか異なる体験をした上で、様々な角度から自分のやりたいことを考えてみたらいいと思います。

1 2

3

関連記事

  1. 本田圭佑選手とともに目指す「“モノ”ではなく、”機会”の提供を」 ~SOLTILO二村元基さん~

  2. 民間企業で見つける社会貢献のあり方〜エネルギー問題と向き合い〜

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。