今回インタビューさせて頂いたのはNPO法人フォレシア代表の佐藤高輝さん。
第3弾では佐藤さんがこれからの挑戦や社会貢献分野のキャリアに悩む方々へメッセージをお届けします。
佐藤高輝(さとうこうき)
1985年生まれ。秋田県秋田市出身
高校卒業後、地元の建設系企業に就職
26歳で独立、エクステリア事業を個人事業から開始
2017年、NPO法人フォレシアを設立。不妊治療支援を開始
2020年、エクステリア事業の法人化を期に代表を交代し、自身はNPO法人フォレシアの不妊治療支援に注力する。
これからやってみたいこと
ーーーNPO法人としてこれから取り組みたいことはありますか。
ソーシャルインパクトボンド(※1)を不妊治療の領域で取り組むことです。
今は不妊治療の当事者を支える活動がメインですが、同時に将来の不妊治療患者を減らすことや治療の長期化を予防することのために活動しようと考えています。
そのためには、仕組みを広く社会実装することが必要で、その手段としてソーシャルインパクトボンドの活用の準備をしています。
中央省庁や自治体との連携も必要なので、関係各所との調整も現在行っているところです。
その他には、地球の環境問題へも取り組みたいです。
※1 ソーシャルインパクトボンド・・・官民連携の仕組みの一つで、行政や民間事業者、資金提供者が連携して社会問題の解決を目指す成果志向の取り組み。
不妊治療と環境問題
ーーーどうして環境問題に取り組みたいのですか。
造園会社を作ったのも、昔から自然が好きだったことがあります。
また少し大げさかもしれませんが、地球に今住める環境だからこそ、不妊治療への取り組みが出来ています。
地球に住めない状況であれば、不妊治療どころではなくなってしまいますからね。
だから多くの社会課題の根底にある基本が環境問題だと思っています。
当事者として不妊治療への意識が大きかったので、私は不妊治療支援を選びましたが、不妊治療と環境問題は似ている点があると感じています。
ーーーどういう点が似ていると思いますか?
それは、問題解決のために動いても、すぐに成果がでる課題ではない点です。
不妊治療に関しては、今の子どもたちが大人になった頃にやっと成果が出始めるのではないかと考えています。
目先の利益ではなく、未来のことを考えて活動したいと思って始めたのがFORECIAです。
法人の名前にもなっている「FORECIA」にもその想いが込められています。
ーーー「FORECIA」はどういう意味なのでしょうか。
「FORECIA」は「FOREST(森)」と「幸せ」を掛け合わせた造語です。
森を作ることは、目先の利益のためではない上に、50年~100年と長い年月が必要です。
自分が生きている間に森ができるのを目指すことよりも、自分が1本の木を植えたことで、後世の人たちがそれに続いて森ができることを目標にしています。
不妊治療の課題に対しても最初の1本の木を植えていくイメージで、「FORECIA」という名前にしました。
その意味では、環境問題も自分のやりたいことだと思っています。
実は、FORECIAはハチドリ電力(※2)の寄付団体でもあります。
偶然ですが、環境問題との繋がりができて、嬉しいです。
※2ハチドリ電力・・・ボーダレス・ジャパンが地球温暖化問題解決のために始めたサービス。自然エネルギー100%の電気を提供する他、電気料金の1%がNPO法人に寄付される。
読者へのメッセージ
ーーー社会貢献の分野で活動したいが、キャリアに悩む学生へのメッセージをお願いします。
ビジネススキルを身につけることは必須だと思います。
社会貢献と言っても手段は沢山ありますが、「主体的に継続して支援を拡大出来ること」は共通で必要なことだと思っています。
FORECIAの設立当社は、寄付金や補助金に頼らず、事業収益のみで運営できるようにすることを重視していました。
当たり前ですが、助成金ありきの場合、助成金が尽きてしまうと、支援したい人に対して支援ができなくなってしまいます。
そうなってしまうと、支援したい方々に失礼です。
なので、質の良い支援を継続的に行うためには、主体的に継続できるビジネスの要素を取り入れることが大切だと思います。
現在は助成金や寄付もいただいていますが、それは運営資金ではなく、事業の拡大に伴う資金や調査費用などに充てています。
だから、継続的に支援するためには主体的に燃料を生み出すビジネススキルは重要です。
私は、本を読んだり、人から聞いたりして、たくさんインプットしてきました。
インプットに終わりはないので、常に勉強していかないといけません。
最初は理解できなくてもたくさんインプットしていくことで、経験と共に徐々に理解でき、自然とアウトプットもできるようになると思います。
ーーー編集後記
「最終的にはFORECIAがなくなることが理想。」
「助成金頼みの事業にはせず、継続的に支援できるようにする。」
などと仰る佐藤さんの様子から、不妊治療と仕事の両立の課題を解決したいという強い気持ちを感じました。
また、支援の際に心がけていることとして、「自分が考えている不妊治療の課題が、本当にその人にとっての課題であるのかの深掘りはとても重要だと思います。」とお答え頂きました。
これは不妊治療に限らず、他の課題に取り組む際にも言えることだと思います。
自分が感じている課題は本当に課題なのか、背景にあるのは別の課題なのではないかをしっかりと考えることが社会課題解決への第1歩になると感じました。
この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。