テロリストやギャングと呼ばれる人々にもそれぞれの理由がある。”

そう語るのは、NPO法人アクセプト・インターナショナルの河野さん。

現地でテロ組織の逮捕者や投降兵の人々を直接支援されています。

関心の無い人に、テロや紛争問題を自分ごととして捉えてもらうための広報戦略や、現在の仕事のいいところから悪いところまで根掘り葉掘り聞いちゃいました!

プロフィール

河野智樹(かわのともき)さん
山形大学人文学部人間文化学科 国際文化学コース卒業。
アクセプト・インターナショナル広報・ファンドレイジング局長。
大手ITコンサルタント企業にてコンサルタント、新規事業開拓を担当。
前職の国際協力機構(JICA)ではラオス・カンボジアの保健・教育・平和構築分野などを担当し、ラオス国立大学工学部の無償事業の立ち上げなどを行う。
テロ・紛争解決分野へ従事したいという強い思いから、2020年4月より現職。

アクセプト・インターナショナルとは

ーーー現在は、どのような活動をされていますか?

「テロ・紛争問題の解決」に向けて活動をしているNPO法人アクセプト・インターナショナルで、広報・ファンドレイジング局長として、団体の広報や資金調達にあたる活動の責任者を務めています。

アクセプト・インターナショナルは、中立の立場で所謂テロ組織への新規の加入者を減らすとともに、テロ組織を抜け出す人を増やすことで問題の根本的な解決を目指しています。

そして、現在最も注力しているのは、テロ組織からの投降兵及び逮捕者の社会復帰や現役テロリストの組織からの脱退の促進を目的とするDRRプロジェクトです。

プロジェクトは、ソマリアの首都モガディシュにある中央刑務所で行われています。

一人ひとりの対象者に合わせた、リハビリテーションやスキルトレーニングに加え、身元引き受け人との調整など、様々なプログラムを通じ、釈放後にテロ組織に戻ってしまうことを防いでいます。

また現在現役でアル・シャバーブ(テロ組織)に所属する人々の投降を促進するべく、現地から要請を受け、投降リーフレットの作成及び、現地の軍と連携をして地域コミュニティへの配布及び投降促進のオペレーションを行っています。

9月からパイロット施策として試験的に実施してきましたが、12月時点で約90名の現役テロリストの投降を実現しました。

これまでのテロ・紛争解決における分野における世界的な取り組みと比較しても、短期間においてかなりのインパクトが見えてきており、さらなる影響力の拡大を目指しています。


現地との関わり方

ーーー現在支援している方にはどんな人が多いですか?

実際のテロリストやギャングとされる人々は、メディアに映る「人殺し」とか「過激な人」というイメージとは異なり、様々な背景があってテロ組織に入っています。

例えば、家族を亡くした怒りでテロ組織に入った人や、入らなければ殺すと脅されて入った人、お金のために入った人など様々です。

実は、テロ組織に入っている中で「可能なのであればやめたい」と思っている方はたくさんいるのです。

そんな彼らも含め、テロリストと呼ばれる人々が武器をおき、1人の人間として社会復帰できるための支援を行っています。

ーーー武装解除の交渉をしていく中で、実際の現場では緊迫感はありますか?

武装解除というものは通常和平合意のプロセスの中で行われますが、ソマリアは紛争が未だアクティブな状態であり、様々な困難や緊迫感は確かにあります。

また、刑務所内のみならず、コンパウンド(関係者のみ出入りが可能で、壁で囲まれた絶対死守エリア)を出て刑務所に移動する際は、テロの脅威に最も晒されやすくなる瞬間でもあり、危険が高まり、非常に緊張を感じます。

ーーーコロナ禍においてなかなか海外に行けない中で、現地とのやり取りはどう行っていますか?

新型コロナウイルス感染症が広がる以前より現地スタッフを雇用し、綿密なコミュニケーションを行ってきており、コロナの影響ですぐに現地にいくことができなくなった時期も、同スタッフがプロジェクトを実施・管理しました。

さらには、現地政府や軍も含む関連ドナーとの調整等を細かく行っています。

上記もふまえ、2020年12月から2021年1月末までソマリアに滞在をしておりますが、スムーズにプロジェクトを進めることができています。


テロ・紛争問題に関心を持つ仲間に出会うために

ーーーやりがいを感じる瞬間を教えてください。

仲間に出会えたときです。

私は、アクセプト・インターナショナルの広報や資金調達にあたる活動の責任者を務めています。

テロや紛争の問題は、あまり世間には馴染みがなく、また所謂加害者とされる人々を対象にしているがゆえに、共感を得にくいという難しさもあります。

そのため、私たちの活動意義が人々に伝わり、団体の活動意義に賛同し、共に問題解決のために考え、さらには財政基盤を支えていただける貴重な仲間に出会うことができた際は、非常にやりがいを感じます。

講演会や様々なイベントでの登壇、SNSマーケティングなどを駆使した広報戦略は、地道なものではありますが、非常にやりがいを感じることも確かです。

ーーー具体的には、どのような広報戦略をされているのでしょうか?。

どのような人を対象に発信するかによって、話の内容を変えることは、戦略のひとつです。

例えば、イベントをする際、参加者がテロや紛争に興味のある人であれば「テロや紛争問題を解決するために何が重要か」といったより専門的な話をします。

しかし、中学校や高校、大学で講演をする時には、より身近に捉えられる話をして、テロや紛争の問題に関する心理的ハードルを下げることを意識します。

また、加害者とされる側の方々だからこそ、共感のみに頼らず本質的に問題がどこにあり、今どんなことが必要とされているのかを伝えていくということを非常に重要視しております。

ーーーテロ・紛争問題に関わった活動をする中での困難は何でしょうか?

当方自身の担当領域の中でいうと、企業の理解を得たり、テロ・紛争問題に全く興味がなかった人に協力してもらったりすることです。

SDGsは、日本政府やJICA、NGOだけでは絶対に達成できないと言われています。

テロ・紛争問題も同様に達成するためには、関心がない方々や企業の力が必要です。

そのため、私たちはテロ・紛争問題を自分ごととして捉えてもらえるよう、働きかけています。


お知らせ(~1/31)

ーーークラウドファンディング挑戦中だと伺いました。プロジェクト内容をお教えいただきたいです。

我々は、2017年からソマリアのモガディシュの中央刑務所において、テロリストの方々を対象に社会復帰の支援(DRRプロジェクト)を行ってきました。

限りなく予算を切り詰めていますが、年3800万円規模のプロジェクトです。

今まで私たちは、事業の独立性・中立性・公平性を貫いてきました。

今後もそれらを貫きつつ、新規プログラムの費用や現地スタッフの安全を守る費用を確保すべく、クラウドファンディング( ~2021年1月31日21時まで)に挑戦しています。

人生をやり直したいと思うテロリストのために、ご支援よろしくお願いいたします。

次回予告

現在アクセプト・インターナショナルでご活躍されている河野さん。
実はJICAや民間企業で働いた経験が…?!
おおらかな河野さんのお人柄とともに、JICAの実情や転職のお話をお届けします!

転職とJICAの実情#2~アクセプト・インターナショナル河野智樹さん~