1章では、河野さんのNPO法人アクセプト・インターナショナルでの活動内容をお伺いしました。
新卒で民間企業に入った河野さん。
その後、JICAへの転職とアクセプト・インターナショナルへの転職を経験されました。
JICAの転職の実情や、実際の仕事内容をはじめ、地方大学生だったころの話もお届けします!

プロフィール

河野智樹(かわのともき)さん
山形大学人文学部人間文化学科 国際文化学コース卒業。
アクセプト・インターナショナル広報・ファンドレイジング局長。
大手ITコンサルタント企業にてコンサルタント、新規事業開拓を担当。
前職の国際協力機構(JICA)ではラオス・カンボジアの保健・教育・平和構築分野などを担当し、ラオス国立大学工学部の無償事業の立ち上げなどを行う。
テロ・紛争解決分野へ従事したいという強い思いから、2020年4月より現職。

国際協力と河野さん

ーーー国際協力に興味を持ったのはいつ頃ですか?

国際協力に興味を持ったのは、大学時代でした。

きっかけは、図書館で何気なく手に取った国際ジャーナル誌を読んだことです。

国際ジャーナル誌には、シリアの空爆に巻き込まれ、血だらけになり動かなくなった少女を、父親がなんとも言えない表情で見つめている写真が載っていました。

その衝撃的な写真を目にし、テロ・紛争問題に関わりたいと感じました。


JICAに就くのは難しい?

ーーー大学卒業後、民間企業に就職されたそうですね。その後JICAに転職したのはなぜですか。

IT関連のコンサルタントで営業担当として一年ほど働いたのですが、テロ・紛争問題へ取り組みたいという思いが捨てきれなかったからです。

まずは、ODAにおける日本国内の代表的機関であるJICAがどのように資金を活用し、事業を形成していくのか流れを知りたいと思いました。

一生JICAで働くことは考えていなかったので、まずはJICAでキャリア形成をし、次のステップに生かしやすいと思ったのも理由のひとつです。

ーーーJICAに就くと言うと、少しハードルが高いイメージがあります。その点はどのように感じますか?

確かに、JICAに新卒で入るのは結構大変です。

しかし、ハードルの高さは就くポストや入り方によりますね。

いきなり海外に行く専門家としてのポストや、JICAの正社員として中途採用されるポスト、私みたいに期限付きで正社員と同じ仕事をするポストなどがあります。

専門家のポストだと、数年〜数十年のキャリアを積んでいる方がいらっしゃいますが、私が入ったポストは、2~3年の現地経験が必要だと応募要項には書かれていました。

私は現地経験が全くありませんでしたが、とりあえず受けてみたところ民間企業での経験を評価されたこともあり、採用されました。

ーーーなぜJICAにおいて、民間企業出身であることを買われたのでしょうか。

JICAの仕事は、民間企業とのやり取りが多いにもかかわらず、民間企業出身者が少ないからだと考えています。

私の場合は、民間企業の中でも営業をやっていたので、企業をはじめとするプライベートセクターの方々とのコミュニケーションスキルがあるという点も評価いただきました。

JICAへ入る選択肢はいくつかあるため、もしJICAに行きたいと考えるのであれば、新卒で入れなかったとしても絶望しないでください

様々なところで経験を積んだ後、JICAに入るという選択肢もありますし、新卒で入るのが全てではないと思います。

ーーーJICAではどんな仕事をされていましたか?

教育や保健、平和構築という分野において、事業形成やプロジェクト管理、先方政府はじめ関係省庁との調整業務を担当していました

まず、要請を受けたら、予算の確保やプロジェクトの形成について、現地政府と話し合います。
(先方政府から要請を取り付ける前からすでに予算の確保、プロジェクト形成についてある程度決まっている状態がほとんどですが)

また、実行するプロジェクトに参入する民間企業の方々との打ち合わせ等も担当に含まれます。

そして、最終的にプロジェクトスコープが決まったら、JICAの理事会で承認を得ます。

最後に外務省から許可が出るのを待って、プロジェクトに着手するのが大まかな一連の流れです。

中でも私は、外務省の承認取り付けを行うまでのリサーチや打ち合わせ、調整、交渉を担当していました。

ーーー現地との関わりはあまり無いのでしょうか?

そうですね。

働いてみて、自身のポスト・業務上に限っていうのであれば、最も感じたのは言葉を選ばずにいうと、JICAは役所業務に近いイメージを持ちました。

もちろん所属するポストにもよりますが、当方の場合はスーツを着て、空調設備が整った部屋でパソコンに向かっていることがほとんどでした。

JICAでは、部署が大体2年毎に変わります

部署は数多あるので、海外駐在できる部署につくまではある一定の年月を費やします。

仮に3年目で海外駐在の部署に当たったとしても、数年でまた日本に帰ってくることになるんですね。

私が学生の頃に感じた、現地とのコミュニケーションやそれを通じた問題の把握、彼らのために何かできることをしたいといったやりがいをモチベーションに働くのであれば、JICA以外で、より現場に近い立ち位置でやりたいことができる職場を探すことも選択肢にあって良いのではないかと思います。


テロ・紛争問題に直接関わる

ーーーアクセプト・インターナショナルさんに転職された理由はどのようなものでしょうか。

テロ・紛争問題に、直接的に取り組みたかったからです。

JICAは非常に大きな組織です。

日本を代表する途上国支援機関であり、開発の分野でこれまで様々な素晴らしい成果をあげてきました。

一方でテロ・紛争問題は、ハイリスクな分野であるため、直接的に関わるということはつまり危険を伴います。

日本の日の丸を背負った大きな機関であるJICAでは様々な責任も背負っているため、テロ・紛争問題に限ってはできることに限界があります。

そのため、直接テロリストの人々と関わり、テロ・紛争問題を根本的に解決しようと活動しているアクセプト・インターナショナルに転職しました

他の団体も検討しましたが、テロリストの方々を直接支援しているのはアクセプト・インターナショナルが国内唯一の団体でした。


地方学生に情報は入手しづらい

ーーーもし今、学生時代に戻れるとしたら何をしますか?

2つあります。

1つ目は、情報に貪欲になることです。

私は大学時代を山形で過ごしたので、入ってくる情報が乏しかったです。

だから、東京に出てきてでも学生団体やインターンでの経験を積んでおけばよかったなと感じます。

特に今は、物理的な距離が遠い場所にいてもSNSやzoom等オンラインで繋がれる時代なので、自ら進んで情報をとったり、人脈を広げたりしたいです。

2つ目は、現地語であるソマリ語の勉強です。

テロリストの方々と話す上で、自分の言葉で現地語を話せるとより心理的距離が近づくと思うので、ソマリ語を勉強したいですね。

お知らせ(~1/31)

ーーークラウドファンディング挑戦中だと伺いました。プロジェクト内容をお教えいただきたいです。

我々は、2017年からソマリアのモガディシュの中央刑務所において、テロリストの方々を対象に社会復帰の支援(DRRプロジェクト)を行ってきました。

限りなく予算を切り詰めていますが、年3800万円規模のプロジェクトです。

今まで私たちは、事業の独立性・中立性・公平性を貫いてきました。

今後もそれらを貫きつつ、新規プログラムの費用や現地スタッフの安全を守る費用を確保すべく、クラウドファンディング( ~2021年1月31日21時まで)に挑戦しています。

人生をやり直したいと思うテロリストのために、ご支援よろしくお願いいたします。

次回予告

テロ・紛争問題の抜本的な解決を目指し、河野さんは日々活動されています。
そんな河野さんが望む世界や、挑戦してみたいことを、お届けします。
読者へのメッセージも必見です!

テロや紛争がない世界を創るために今、私たちができること#3~アクセプト・インターナショナル河野智樹さん~