昨今、社会的な意識の向上とともに、LGBTQ+に対する理解と支援が求められています。

その中で、「アウティング」という言葉が注目を集めています。

アウティングは、他人の性的指向や性自認を本人の同意なく公表する行為を指し、その被害は多大なものとなり得ます。

本記事では、アウティングとは何か、カミングアウトとの違い、具体的な事例、そしてアウティングを防ぐためにできることについて詳しく解説します。

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アウティングとは

アウティングとは、本人の了承なく、本人が公表していない性的指向や性自認を第三者やSNSに暴露する行動です。

アウティングは、プライバシー権の問題や選択の自由などの侵害となり、アウティングに関わる事件や事例はたくさん発生しています。

また、厚生労働省の調査によると、アウティングの認知度について、「言葉も意味も知らない」が8割強(84.3%)でした。

このことからも、自覚なくアウティングをしてしまうことも考えられます。

中には、良かれと思ってアウティングをしてしまうことがあり、トラブルとなる事例もあります。

冷静に考えると、LGBTQに関わらず、自分が秘密としていることを暴露されたら、気分を害するでしょう。

今一度、アウティングについて考えてみましょう。

参考:性的指向・性自認に関する認知の状況


アウティングとカミングアウトの違い

アウティングについて考える上で、カミングアウトとの違いを知ることは大切です。

アウティングとカミングアウトの違いは、自らの意思で公表するかどうかです。

・アウティング:本人の了承なく、本人が公表していない性的指向や性自認を第三者やSNSに暴露する行動

・カミングアウト:本人が、自らの意思で性的指向や性自認を伝える行動

また、カミングアウトせざるを得ない雰囲気を作り出したり、「そろそろカミングアウトしよう」などとカミングアウトを強制することはやめましょう。

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アウティングとカミングアウトの具体例


Young man and woman thinking, feeling doubtful and confused. Vector illustration in hand drawn style

ここでは、アウティングとカミングアウトの具体例を紹介します。

Aさん、Bさん、Cさんがいるとします。

レズであるAさんは、Bさんにそのことを告白しました。

Aさんの行為はカミングアウトになります。

そして、その告白を聞いたBさんが、Cさんに「Aさんはレズらしいよ」と言ってしまったとします。

このBさんの行為がアウティングに当たります。


アウティングの事件や事例

ここでは、アウティングに関する事件や事例を紹介します。

  • 一橋アウティング事件
  • 株式会社イデアルパートナーの事例
  • 2020年東京オリンピックにおけるアウティング

一橋アウティング事件

2015年4月に一橋大学法科大学院で起こった事件です。

ゲイの学生から告白を受けた異性愛の男性が、友人ら7人にSNSでその学生がゲイであることをアウティングしたことをきっかけに、うつ病となり自殺してしまいました。

翌年に死亡した学生の遺族が、アウティングをした男性と一橋大学の責任を追及して損害賠償を求める民事訴訟を起こしました。

この事件をきっかけにLGBTQの問題やアウティングについて広く知られるようになりました。

株式会社イデアルパートナーの事例

Aさんは、緊急連絡先を提出するよう求められた際、同性パートナーの連絡先と豊島区のパートナーシップ制度を利用していることを上司に伝えました。

これが、社内で初めてのカミングアウトです。

しかし、上司は、ほかの従業員にアウティングをしてしまい、Aさんはその従業員に無視されるようになりました。

そして、アウティングされたことが原因で、精神疾患を発症してしまいました。

その後、Aさんは、申し立てを行い、会社側が解決金を支払ったことで和解が成立しています。

2020年東京オリンピックにおけるアウティング

2020年東京オリンピックでは,、史上最多181名のLGBTQのアスリートが参加しています。

その中で、選手の性的指向に関する情報を、本人の合意を得ずに無断でSNS上でアウティングした動画が問題となりました。

LGBTQのアスリートを支援する団体プライドハウス東京が、2021年8月1日に緊急声明を出しました。

参加国の中には、性的マイノリティに対して死刑を課す国もあることを指摘して、「アウティングはアスリートの命にも関わる極めて危険な行為」と強く非難しています。

参考:東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に参加するアスリートの 性的指向・性自認に関するアウティングについての緊急声明

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アウティングを防ぐためにできること

アウティングを防ぐためには、カミングアウトされたときが大切です。

2つのポイントを抑えることで、アウティング防止に繋がるでしょう。

  • なぜ伝えてくれたのか、困っていることがあるか聞いてみましょう
  • 誰が知っているのか、誰に話してもいいのかを確認しましょう

なぜ伝えてくれたのか、困っていることがあるか聞いてみましょう

まずは、話を最後までしっかりと聞くことが大切です。

あなたに伝えてくれるということは、信頼関係の証でもあります。

そのうえで、なぜ自分に伝えてくれたのか、何か困っていることはないか聞いてみましょう。

誰が知っているのか、誰に話してもいいのかを確認しましょう

LGBTQの当事者の多くは、カミングアウトする範囲を決めています。

このことをゾーニングといい、その範囲を共有してもらうことでアウティングを防ぐことができます。

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まとめ

いかがでしたでしょうか?

アウティングは、本人の了承なく、本人が公表していない性的指向や性自認を第三者やSNSに暴露する行動です。

LGBTQに関わらず、自分が秘密としていることを暴露されたら、気分を害しますよね。

カミングアウトを受けた時は、だれが知っているのか、だれに言っていいのか相手のゾーニングを確認することで、アウティングしてしまうことを防ぐことができます。


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