ファーストキャリアについて
ーーー新卒で経営コンサルタントの仕事を選ばれた理由は何ですか?
実家が自営業なので経営を身近に見て育ってきたことと、イギリスの大学院時代に、コンサルティングプロジェクトに参加した経験が大きいです。
学生同士がグループになって、途上国の社会的企業やNGOなどが進めるプロジェクトの課題を分析、解決する必修の授業でした。
授業を通して、経営コンサルタントになれば問題解決のプロセスや方法を勉強でき、将来的に現場で社会課題を解決するための武器になるのではないかと考えました。
ーーー他にキャリア形成に影響を与えた要因はありますか?
私が理想とするキャリア像を持った人たちの影響を受けています。
みなさん、経営コンサルタントや外資系投資銀行など民間企業の経験を経て国連に勤め、その後に社会起業家になっています。
2人のロールモデルがいるのですが、1人がインドネシアのバリ島で途上国の貧困問題の解決に携わるNPO法人コペルニクを設立された中村俊裕さん。
もう1人は、ISAKという全寮制インターナショナルスクールを軽井沢に設立された小林りんさんです。
ーーーどのような就活をされたのですか?
とにかく経営コンサルティングに関われるところに応募し、それ以外の業界は考えていなかったです。
内定はいくつか頂きましたが、その中でも社員の人柄が最も合っていると感じたデロイトトーマツコンサルティングに決めました。
ーーーコンサルタントの経験を通じて得たスキルはなんでしょうか?
ハード面、ソフト面があります。
まず、ハード面では、エクセルやパワポなどを使って質の高い成果物を最も効率よく作成する方法を教え込まれましたね。
ソフト面では、「なにがなんでもやり遂げ、クライアントの期待に応える」というマインドセットが身につきました。
人道支援組織である国連WFPの現場でも「Get things done(やり遂げろ)」という言葉がよく使われますが、その姿勢はコンサルの経験で得られたと感じます。
国連職員になるまで
ーーーその後、WFPに転職されたきっかけは何ですか?
広島平和構築人材育成事業(国連ボランティアに参加する研修員募集)の説明会に参加したことです。
入社してから1年半がたったころ、仕事の休憩時間に知った情報でした。
急遽、夜の予定を変更して参加しました。
その講演で出会った、国連WFP職員として25年間紛争地を中心に人道支援に携わられた忍足謙朗さんの影響が大きいです。
忍足さんは、WFPで一緒に働きたい人材の7箇条を話されたのですが、それが仕事に求める自分の価値観にぴったり当てはまると感じました。
その後、応募を経て合格し、国連ボランティアとしてWFPジンバブエ事務所に派遣されました。
ーーーJPO派遣制度で採用された理由は何だと思いますか?
徹底した準備とWFPで働きたい強い想いだと思います。
1度目の応募では書類審査で不合格になり、次こそは何としてでも合格したいと思い、そのぶん準備を重ねました。
ソーシャルメディアや友人の紹介でJPO合格者20人くらいに連絡を取ってアドバイスやフィードバックを頂いたり、求める人材像と私の経験をしっかり整理して書類審査や面接に臨みました。
あとは、誰よりもパッションを持って、「なぜWFPでなければならないのか」を伝えましたね。その結果、ルワンダ事務所への赴任が決まりました。
合格をもっと確実にするならフランス語の勉強をしたり、関連する職務経験を積んだりするといいと思います。
ーーーJPO派遣制度で採用された後、どのような流れで正規職員となられたのでしょうか。
国連WFPの正規職員は、筆記試験と面接を経て採用されます。
専門能力を問う筆記試験と本部の人事担当官との45分間の面接試験に合格することで、ロスターと呼ばれる正規職員候補者のリストに2年間の期間限定で載ります。
そして、そのリストの中から必要なポストに合わせて、国連WFP側が候補者に連絡を取ります。
しかし、毎年500人くらいの応募者の中から数十人しか選ばれず、かなりの倍率です。
そこで私は、ロスターに載った時点でそれまでお世話になった同僚にメールを送り、JPO期間終了後の仕事を探していることを伝えて回りました。
その中の1人、4年前に国連ボランティアとして赴任していたジンバブエ事務所の代表が、「今はスーダンの代表として赴任しているので、いつかポストが空いていたら伝えるよ」と返信をくれたのですが、仕事の依頼はJPOの契約が切れる当日まで来ませんでした。
「明日からは貯金を切り崩して生活しないとな」などと考えていた矢先、あと数時間で契約終了と同時にアクセスの切れるメールアドレスにスーダン事務所の副代表から、「あなたの話を聞きました。来月に正規職員としてスーダンへ来ませんか?」という依頼が来たんです。
ーーーそんなに唐突にくるのですね。
そうですね。
国連WFPは人道支援組織として現場でのニーズに応えるために、必要がある場合には即座にスタッフを採用し、緊急支援の場合は72時間以内に現場に送る方法をとっています。
先日、ウクライナ支援のために数十時間以内に来れないかという依頼も頂きました。。
今はスーダンに専念したい気持ちが強いのでお断りしましたが、そのように必要があれば採用をしていく仕組みになっています。
大切にしている想い
この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。