NPO法人=非営利組織という印象はあるけどよく実情がわからない、また社会起業家になりたい!という思いはあるものの、NPO法人と株式会社でどっちが良いのかイマイチ分からないという人もいると思います。

この記事では実際にNPO法人の登記手続きを行ったココカラアースの角田からNPO法人設立までのステップや手続きのリアルについて解説します!

この記事を読めばNPO法人の設立は問題なくできると思いますのでぜひご覧ください!

NPO法人とは?

まずNPO法人はどんなものなのかについて簡単にご紹介します。

NPOは「Non Profit Organization」の略で日本では「非営利組織」と呼ばれています。

株式会社との大きな違いは「営利目的」かどうかです。

株式会社は株を発行することで資金を調達し、得た資金で経営を行い、発生した利益は株主に対して配当金として分配しています。

一方、NPO法人は余剰分の利益を社員に配当することが法律で禁止されています。

事業等で利益を上げることは問題ありませんが、出た利益はすべてNPO法人の活動資金にあてなければいけません。
※人件費は経費として計上するので、正職員は無給じゃないといけないというわけではありません。

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NPO法人を設立する前に考えるべきこと

株株式会社とNPO法人の違いについてはなんとなくイメージがついたけど、自分はどっちの法人格の方が良いかイメージがつかないと思います。

私たちがNPO法人にした理由なども含めてNPO法人設立のメリット・デメリットについてお伝えします。


NPO法人設立によるメリット・デメリット

NPO法人を設立するメリット

・設立経費を抑えることができ、税制上の優遇も多い

・社会的な信用度が高い

・NPO法人で受けれる特典がある

ひとつずつ見ていきます。

設立経費を抑えることができ、税制上の優遇も多い

すべて自分たちで手続きを進めるのであればNPO法人の設立費用は基本的にかかりません。

株式会社や合同会社は、設立するだけで登記免許税などで費用がかかります。

NPO法人を設立する時は所轄庁に申請するのですが、申請手数料もないのでお金面の心配はいりません。

また、株式会社とは違い、NPO法人の法人税は原則非課税とされています。

収益事業には法人税がかかってしまいますが、特定非営利活動に関連する所得には法人税はかかりません。

自治体によっては法人住民税の均等割りの免除になることも。

社会的な信用度が高い

個人や株式会社で活動を行うよりもNPO法人格をもっていた方が社会的な信用度があります。

それは「設立認証の厳しさ」がポイントです。

個人事業主は開業届けを出してしまえば特に審査もないので誰でもなれてしまいます。

株式会社のような法人も設立時に認証はありません。

しかし、NPO法人は設立する際に厳しい認証があります。

また、所轄庁に書類を提出した後は約1ヶ月間縦覧という市民が自由に見ることができる期間があります。

つまり、市民からも審査されるということです。

このように、公的機関と市民の両方から認められて初めてNPO法人を設立できるようになります。

厳しい審査を経てNPO法人となるので、自然と社会的な信用度が高くなります。

NPO法人で受けれる特典がある

実はNPO法人にすることで格安に利用できるサービスがあります!

例えば

・Google広告(月1万ドル分の文字広告が無料で利用可能)
・ZOOM(約半額の価格で利用可能)
・キントーン(年間9900円で利用可能)
・Chatwork(有料版を無料で利用可能)

などなど

他の特典などはこちらのサイトがまとめてあるので、気になる方はチェックしてみてください。

【NPO必見】非営利組織 割引・特典 一覧

このように、NPO法人を設立することで利用できる特典がたくさんあります。

なるべく経費を抑えたいNPOの人たちにとっては通常の価格よりも安く利用できるのはとても嬉しいですね!

NPO法人を設立するデメリット

・設立の手続きや書類作成に労力がかかる

・税務申告が必要(収益事業を行っている場合)

・10名以上の社員、3名以上の理事が必要

デメリットについてそれぞれ見ていきます。

設立の手続きや書類作成に労力がかかる

とにかく設立する際の手続きや書類作成が大変です(笑)

後ほど詳しく解説しますが、NPO法人を設立する際に11種類ほどの書類を作成する必要があります。

定款(団体の決まり)や活動予算書など全部自分たちが考えて作成しなければならないので、とても労力がかかります。

また書類を申請してからも3ヶ月ほど審査の期間があるので、書類作成からNPO法人設立までトータルで4~5ヶ月ほどの期間が必要です。

すぐNPO法人に登記したいと思っている人にとってはネックかもしれません。

税務申告が必要(収益事業を行っている場合)

NPO法人になると税務申告が必要になります。

収益をあげていない事業については特に必要ありませんが、何か商品を販売するなど事業収入が入ってくる場合は税務申告する義務が発生します。

株式会社かNPO法人のどちらかで考えているのであればどちらも税務申告は必要なので関係ないと思いますが、手続きが面倒と感じる方は株式会社やNPO法人以外の方法を検討した方がいいかもしれません。

10名以上の社員、3名以上の理事が必要

NPO法人を設立にあたり社員に関する条件があります。

NPO法人として認証されるには

・10名以上の社員(社員とは正会員のこと。理事や監事も含む)
・最低3名以上の理事と1名以上の監事

を集める必要があります。

ココカラアースの場合は理事と社員はすぐ集まりましたが、監事をやってくれる人を探すのが大変でした。汗

1から立ち上げたいと思っている人は一緒にやってくれる仲間を集めるのが最優先事項です。


NPO法人設立の条件とは?

NPO法人を設立する前に以下の2つの条件を頭に入れましょう。

・事業内容が20種類に限定

・10名以上の社員が必要

事業内容が20種類に限定

実はNPO法という法律が存在しており、NPO法人の活動分野は以下の20種類に限定されています。

1.保健、医療又は福祉の増進を図る活動
2.社会教育の推進を図る活動
3.まちづくりの推進を図る活動
4.観光の振興を図る活動
5.農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
6.学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
7.環境の保全を図る活動
8.災害救援活動
9.地域安全活動
10.人権の擁護又は平和の推進を図る活動
11.国際協力の活動
12.男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
13.子どもの健全育成を図る活動
14.情報化社会の発展を図る活動
15.科学技術の振興を図る活動
16.経済活動の活性化を図る活動
17.職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
18.消費者の保護を図る活動
19.前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
20.前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

これらの項目は設立時の定款に記載しておく必要があります。

NPO法人の設立を検討している方は今やろうとしている事業が上記の20項目に当てはまるとどうか事前にチェックしておくことをオススメします。

10名以上の社員が必要

先程デメリットのところで触れましたが、NPO法人を設立するためには10名以上の社員と3名以上の理事が必要です。

ここで言う社員というのは、正会員のことを指します。

正会員は議決権を持っているので、団体の方針を決定する際に自分の意見を反映することができます。

社員になるために法律で「不当の条件を付さないこと」が定められているので、基本的には誰でも社員になることができるようにしなければなりません。

また配偶者や親族がNPO法人の理事や監事になることに関しては、制限があります。

NPO法には

・各役員について、その配偶者もしくは三親等以内の親族が2人以上いないこと。

・当該役員並びにその配偶者及び三親等以内の親族の数が、役員総数の3分の1を超えて含まれないこと。

と明記されています。
※3分の1には自分自身も含みます

例えば役員総数が5名だと配偶者や親族を1人も含めることはできません。

役員総数が10名だと自分を含め配偶者と親族を3人まで含めることができます。

ご夫婦や親族が役員になる場合は最低でも6名以上の役員が必要です。

ココカラアースがNPO法人にした理由

NPO法人に登記しようと思った理由は

・プロボノメンバーが多いため
・団体の信用度を高めるため

です。

社会貢献分野のロールモデルを多く発信していくためには継続的な活動資金の確保と団体の信用度が必須だと思っています。

例えば寄付を募ることでライターに報酬を支払うことができます。

その分、質の良い記事を執筆することが可能になりますし、取材依頼する際にも任意団体よりNPO法人として依頼した方がインタビュイーも安心して取材を受けることができます。

このように2つの理由からCOCOCOLOR EARTHはNPO法人に登記することにしました。(実際は諸事情があり、登記直前で申請を取り下げています。

NPO法人を設立するまでのかかるお金と時間は?

NPO法人設立に必要な費用

NPO法人を設立する手続きで必要な費用はありません。

また最低資本金といった規則などもないので、資金や資産がなくても登記が可能です。

登記するための資金に余裕がない学生でもNPO法人を設立できます。

実際にかかった費用は

・登記用の印鑑(5000円)
・住民票の発行手数料(一人300円ほど)
・提出書類の印刷費(500円)

くらいでした。

資金に余裕があっても、時間に余裕がない方はNPO法人の設立に詳しい専門家にお願いするのもいいかもしれません。

NPO法人設立に必要な期間

先程お伝えしたように書類作成から登記完了まで4~5ヶ月ほどかかります。

【具体的なスケジュール】
・書類作成・・・1~2ヶ月間
・縦覧(じゅうらん)・・・1ヶ月間
・所轄庁による審査・・・2ヶ月以内
・法務局に登記申請・・・認証完了後2週間以内
※縦覧の間は市民が自由に申請書類を見ることができます。

NPO法人を設立するまで時間がかかります。

もし希望の時期にNPO法人を設立したい場合は設立する半年前から着手すると余裕持って申請できます。

早めに書類を申請すると希望より早い時期に設立することになってしまうので要注意です。

所轄庁に書類を提出するのは設立3~3.5ヶ月前がいいと思います。


NPO法人設立のステップ

10名以上の社員を集める

10名の社員を集めない限り、NPO法人は設立できません。

もし人数が足りないのであれば知り合いや同じ分野に関心のある人に声をかけましょう。

Activoさんなどを使ってメンバーを募集するのも良いかもしれません。

登記申請書類の作成

10名以上の社員が集まったら所轄庁に提出する申請書類を作成しましょう。

以下の書類を揃える必要があります。

1.設立認証申請書
2.定款
3.役員名簿(役員の氏名及び住所又は居所並びに各役員についての報酬の有無を記載した名簿)
4.役員の就任承諾書及び誓約書の謄本
5.役員の住所又は居所を証する書面
6.社員のうち 10 人以上の氏名及び住所又は居所を示した書面
7.認証要件に適合することを確認したことを示す書面
8.設立趣旨書
9.設立についての意思の決定を証する議事録の謄本
10.設立当初の事業年度及び翌事業年度の事業計画書
11.設立当初の事業年度及び翌事業年度の活動予算書

書類は下記のリンクからダウンロードできます。

法人設立認証申請に関する様式・書式

一つずつ解説します。

1.設立認証申請書

団体名・理事長の氏名、定款に記載した目的などを記載します。

2.定款

定款は団体の規則となるものです。NPO法に倣って作成する必要があります。

NPO法人に設立した後は定款に則って活動しないといけないので他団体の定款を参考にしながらメンバーとしっかり議論してください。

他団体の定款は団体のHPもしくは所轄庁のサイトから各自治体のHPに飛ぶと登記申請中のNPO公開情報が見れますので覗くといいかもしれません。

3.役員名簿(役員の氏名及び住所又は居所並びに各役員についての報酬の有無を記載した名簿)

理事・監事の名簿になります。

代表には理事長、副代表には副理事長と書きましょう。

報酬の有無も記入してください。

※報酬を貰える役員は総数の3分の1以下にする必要があります。

4.役員の就任承諾書及び誓約書の謄本

理事・監事は書類に則って承諾書に署名します。

団体の正式名称や住民票に記載されている住所を間違えないように記載してください。
※理事・監事で書式が違うので注意してください。

5.役員の住所又は居所を証する書面

役員全員分の住民票の写しが必要になりますので、各自治体で発行してください。

住民票の写しとは自治体が発行したものです。コピーではありません。

海外に住む日本人や外国人は住所又は居所を証する権限のある官公署が発給する文書を発行する必要があります。

6.社員のうち 10 人以上の氏名及び住所又は居所を示した書面

理事・監事含めた社員全員分の名簿になります。

事前に全員分の住所を聞き、Wordで一括記入するのが良いと思います。

7.認証要件に適合することを確認したことを示す書面

理事長に当たる人が署名すれば大丈夫です。

8.設立趣旨書

何の課題に対してどのように取り組んでいくのか、なぜNPO法人に登記するのかをA4一枚以内で記載する必要があります。

これも理事長の署名が必要です。

9.設立についての意思の決定を証する議事録の謄本

1~7、9~10の書類が完成したら社員を集めて設立総会を開催します。

設立総会で定款や事業計画書、活動予算書などを全員で確認し、可否を聞きます。

議事録を書いた人の署名が2名必要なので、事前に決めておきましょう。

現在は定款に記載すればZOOMなどのツールを使って総会を開催することが可能になっていますので、記載すると今後の運営で便利になると思います。

10.設立当初の事業年度及び翌事業年度の事業計画書

定款に記載した事業の活動内容・日時・場所などを記載します。

設立初年度と設立翌年度の2年分が必要です。

11の活動予算書とズレがないように記載してください。

11.設立当初の事業年度及び翌事業年度の活動予算書

収益と経費に分けて記載します。

9と同じく、定款に記載している事業について記載してください。

所轄庁に申請書類の提出

書類が全て整ったら、登記する場所の所轄庁に行きましょう。

(団体の所在地が東京都なら都庁の生活文化局になります。)

ほとんどの場合は修正箇所を伝えられ、返されると思います(笑)

修正箇所がなければ受理されます。

また書類や申請に関してわからない部分があれば聞いておくと良いです。

縦覧・認証

縦覧から所轄庁の審査まで3ヶ月ほどかかります。

その間に認証後に必要な準備を進めましょう。

必要なことはこの3つです。

・設立登記完了届出書

・設立当初の財産目録

・登記用印鑑の購入

設立登記完了届出書

理事長に当たる人が署名すれば大丈夫です。

設立当初の財産目録

団体の資産について記載します。

新しく団体を設立するのであれば全て0円と記載します。

任意団体からNPO法人に移行する場合は任意団体時の資産を引き継ぐことになります。

ただ、任意団体を解散させて新しく団体としてNPO法人を設立するとなれば資産の移行は必要ありません。

登記用印鑑の購入

法務局に登記申請をする際にNPO法人の印鑑登録が必要となるので、登記用印鑑を購入しましょう。

Googleで「NPO法人 登記用印鑑」と検索するとたくさん出てきますので検討してみてください。

ちなみにココカラアースは楽天市場で5000円ほどのものを購入しました。

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登記手続き

所轄庁から認証の通知が登録した団体の住所に届きますので、通知が届いたら2週間以内に法務局に行き、設立の手続きを行います。

設立の手続きが完了すると登記事項証明書が発行されますので、設立登記完了届出書と設立当初の財産目録の計3種類の書類を所轄庁に提出します。

これでNPO法人の設立手続きが完了します。
※通知から半年以内に手続きしないと認証が取り消される可能性がありますので要注意です。

まとめ

NPO法人の設立について詳しく解説しましたが、設立に関しては、メリット・デメリットの両方があります。

またNPO法人を設立することで今まで以上に管理や組織体制などを気をつけなければなりません。

NPO法人を設立をする際はしっかり吟味してから行いましょう。

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