「社会課題を解決する仕事がしたい」と思ったとき、NPOや国際機関だけでなく「ソーシャルビジネス」という選択肢が気になっている人も多いのではないでしょうか。
でも、「ソーシャルビジネスって普通のビジネスと何が違うの?」「NPOとはどう違うの?」という疑問も同時に浮かぶはずです。
この記事では、ソーシャルビジネスの定義や特徴、NPO・一般企業との違いを整理したうえで、ソーシャルビジネスに関わるキャリアの入り口まで解説します。
社会課題に関わる仕事を考えているなら、ソーシャルビジネスという選択肢を具体的にイメージする助けになるはずです。
目次
ソーシャルビジネスとは
ソーシャルビジネスとは、「利益の追求だけでなく、社会的な課題の解決を目的とする事業」のことです。
その領域は国際協力、教育、環境、福祉、地域活性化など多岐にわたります。
最大の特徴は、寄付金などの外部資金に頼らず、自社の事業収益によって活動を持続させる点にあります。
「社会に良いことをしながら、事業として成長し続ける」——この両立がソーシャルビジネスの本質です。
「事業成長=課題解決が進む」という構造が最大の特徴
ソーシャルビジネスの最大の特徴は、事業が成長すればするほど、社会課題の解決が広がる構造を持っている点です。
たとえば再生可能エネルギーを提供するソーシャルビジネスであれば、売上が上がるほど多くの家庭・企業にクリーンエネルギーが届きます。
教育格差の解消を目指すオンライン学習サービスなら、利用者が増えるほど学びの機会が広がります。
これは一般的な企業の「利益最大化」という目的とは異なり、「事業を成長させること自体が社会貢献につながる」という独自の構造です。
だからこそ、ソーシャルビジネスで働く人は、売上を上げることに後ろめたさを感じる必要がありません。
むしろ、事業を成長させることが使命の実現そのものになります。
一般企業・NPO・ボランティアとの違い
ソーシャルビジネスを理解するには、似た概念との違いを整理するのが近道です。
一般企業との違い
一般企業の主な目的は利益の最大化であり、社会課題への取り組みはCSRや付随的な活動として位置づけられることが多いです。
ソーシャルビジネスは、社会課題の解決を事業の目的そのものに置いている点が異なります。
NPOとの違い
NPOは非営利組織であり、寄付金や助成金を主な財源として活動します。
ソーシャルビジネスは事業収益を自ら生み出す点で大きく異なります。
外部資金に依存しないため、持続可能性が高く、事業を拡大しやすい構造を持っています。
ボランティアとの違い
ボランティアは無償での活動が基本であり、継続性や規模の拡大には限界があります。
ソーシャルビジネスは収益を生みながら活動を継続・拡大できるため、より多くの人に価値を届ける可能性を持っています。
ソーシャルビジネスの定義(ユヌス・経産省)
ソーシャルビジネスには、複数の定義が存在します。
ここでは代表的な2つの定義を整理します。
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ユヌスが提唱した3つの要素
ソーシャルビジネスという概念を世界に広めたのは、グラミン銀行創設者のムハマド・ユヌス氏です。
2006年にノーベル平和賞を受賞したことで、ソーシャルビジネスという言葉が広く知られるようになりました。
ユヌス氏が提唱するソーシャルビジネスの要点は以下の通りです。
- 利益の最大化ではなく、社会問題の解決を事業の目的とする
- 経済的な持続可能性を自ら実現する
- 投資家は投資額までは回収できるが、それを超える配当は受けない
- 元本回収後の利益は、従業員の福祉やさらなる事業拡大に再投資する
- ジェンダー平等と環境への配慮を重視する
この定義の核心は「社会課題の解決が最優先であり、利益は手段である」という点です。
(出典:Yunus Centre)
経産省が示す社会性・事業性・革新性
経済産業省のソーシャルビジネス研究会は、ソーシャルビジネスの要素として以下の3つを示しています。
社会性
現在解決が求められる社会的課題に取り組むことをミッションとすることです。
事業性
そのミッションをビジネスの形に表し、継続的に事業活動を進めることです。
革新性
新しい社会的商品・サービスを開発・活用し、社会に広げることで新しい社会的価値を創出することです。
この3つが揃ってはじめて、ソーシャルビジネスと定義されます。
「良いことをしていればいい」ではなく、事業として持続しながら革新を生み出し続けることが求められる点が重要です。
ソーシャルビジネスに取り組む企業を紹介
ソーシャルビジネスに取り組む企業を紹介を5社紹介します。
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株式会社ボーダレスジャパン
「ソーシャルビジネスで世界を変える」ことを目指し、社会起業家が集うプラットフォームカンパニーとして2007年3月設立。
貧困・環境問題など多様な社会問題を解決するため、国内外を問わず、30以上のソーシャルビジネスを展開しています。偏見のない世界を作る多国籍コミュニティハウス「ボーダレスハウス」やオーガニックハーブで貧困農家の収入をアップする「AMOMA natural care」、バングラデシュに雇用を作るビジネス革製品「ビジネスレザーファクトリー」など多くの社会的事業を創出しています。
ボーダレスグループの社会起業家のインタビュー記事
無国籍問題に、ソーシャルビジネスで挑む〜アノテーションサポート株式会社 白石達郎〜
株式会社マザーハウス
株式会社マザーハウスは、2006年にバングラデシュで設立されました。
「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念のもと、途上国にある素材や職人の可能性に光を当てたモノ作りを行う企業です。
6つの生産国でのものづくりを展開し、日本・台湾・シンガポール40店舗超で販売しています。
各国の素材や文化を活かした付加価値の高いものづくりを続けています。
マザーハウスで働く方のインタビュー記事
【株式会社マザーハウス 内定者】新卒で国際協力を仕事にするためには○○が大切~稲葉汐美~
株式会社ユーグレナ
株式会社ユーグレナは、2005年に世界で初めて微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養技術の確立に成功しました。
ユーグレナなどを活用した機能性食品や化粧品等の開発・販売のほか、バイオ燃料の生産に向けた研究などを行っています。
また、2014年より行っている、バングラデシュの子どもたちに豊富な栄養素を持つユーグレナクッキーを届ける「ユーグレナGENKIプログラム」の対象商品を、2019年4月より化粧品を含む全グループ商品に拡大しました。
「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」をユーグレナ・フィロソフィーと定義し、事業を展開しています。
ユーグレナで働く方のインタビュー記事
【株式会社ユーグレナ 】人が成長し続けられる社会を軸にした就活とは~喜多倫久~
株式会社LIFULL
LIFULLは「あらゆるLIFEを、FULLに。」をコーポレートメッセージに掲げ、個人が抱える課題から、その先にある世の中の課題まで、安心と喜びをさまたげる社会課題を、事業を通して解決していくことを目指すソーシャルエンタープライズです。
現在は、主要サービスである不動産・住宅情報サイト「「LIFULL HOME’S」をはじめ、空き家の再生を軸とした「LIFULL 地方創生」、シニアの暮らしに寄り添う「LIFULL 介護」などの事業を展開しています。
この世界の一人ひとりの暮らし・人生が安心と喜びで満たされる社会の実現を目指し、さまざまな領域に事業拡大しています。
LIFULLで働く方のインタビュー記事
【株式会社LIFULL 内定者】社会貢献が仕事になる社会を創るために~吉田宏輝~
認定NPO法人フローレンス
認定NPO法人フローレンスは、「みんなで子どもたちを抱きしめ、子育てとともに何でも挑戦でき、いろんな家族の笑顔があふれる社会」の実現を目指す、社会問題解決集団です。
2004年に設立されたフローレンスは、子どもが病気になった時でも預けられる訪問保育として、病児保育事業をはじめました。
現在では、「訪問型病児保育」「障害児保育」「小規模保育」など、常識や固定概念にとらわれない新たな価値を創造しています。
フローレンスで働く方のインタビュー記事
ソーシャル・ベンチャーで働く楽しさとは?~認定NPO法人フローレンス 山﨑剛~
ソーシャルビジネスの企業に就職をする3つのポイント
ソーシャルビジネスで働くとはどういうことか
ソーシャルビジネスへの就職・転職を考えるとき、「実際に働くとどんな感覚なのか」を理解しておくことが大切です。
やりがいと手触り感
ソーシャルビジネスで働く最大の魅力は、「事業の成果が社会課題の解決に直結している」という手触り感です。
売上が上がることで、より多くの人に価値が届く。
事業が成長することで、支援できる人の数が増える。
その一連のつながりを感じながら仕事できることは、一般企業では得にくい経験です。
また、社会課題を解決することをミッションに掲げた組織では、同じ志を持つ仲間と働ける環境が整いやすいです。
「なぜこの仕事をするのか」という問いへの答えが明確なため、日々の業務に意味を感じやすいと言われています。
理念と事業性を両立させる難しさ
一方で、ソーシャルビジネスには「理念と事業性を両立させる難しさ」もあります。
どれだけ大切な課題に取り組んでいても、事業として成立しなければ継続できません。
社会課題解決への想いが強いほど、「なぜこんなに良いことをしているのに結果が出ないのか」と苦しくなる場面もあります。
また、ソーシャルビジネスの多くはスタートアップ規模であることが多く、給与水準や福利厚生が大企業に劣るケースもあります。
「社会に貢献したい気持ち」と「自分のキャリア・生活の安定」を同時に考えることが、長く続けるために必要な視点です。
ソーシャルビジネス企業に関わるキャリアの入り口
ソーシャルビジネスへのキャリアを考えるとき、押さえておきたい3つのポイントがあります。
就職・転職で選ぶ3つのポイント
① より深い軸を設定する
「ソーシャルビジネスに関わりたい」という軸だけでは、選考で評価を得にくいです。
「誰の」「どんな課題を」「どんな手段で」解決したいのかを具体化することが重要です。
面接やエントリーシートでは「ソーシャルビジネス」という言葉そのものよりも、課題への解像度と自分なりのストーリーが問われます。
② ボランティアとビジネスの違いを理解する
ソーシャルビジネスはビジネスである以上、売上を上げ続けなければ存続できません。
「社会課題を解決したい」という想いと同時に、「その事業をどう成長させるか」というビジネスへの理解も求められます。
理念と事業性の両立を自分の言葉で語れるようにしておくことが、選考突破のカギになります。
③ なぜその課題に関わりたいのかストーリーをつくる
「なぜその課題なのか」「なぜその組織なのか」を、自分の経験と結びつけたストーリーとして語れるかどうかが重要です。
大きな原体験がなくても、「関心を持ったきっかけ→調べた・行動した→気づいたこと」という流れを言語化することで、説得力のある志望動機になります。
まだ経験が少ない場合は、ボランティアやプロボノで現場に関わることから始めると、具体的なストーリーが生まれやすくなります。
自ら立ち上げる選択肢もある
ソーシャルビジネスへの関わり方は、就職・転職だけではありません。
自ら課題を見つけ、ソーシャルビジネスを立ち上げるという選択肢もあります。
多くの場合、起業は現場での経験やスキルを積んだ後に現実味を帯びてくるものです。
ただし、強い当事者意識と覚悟があれば、若いうちから動き出す人もいます。
まずは既存のソーシャルビジネス企業で経験を積みながら、将来的な起業を視野に入れるという戦略も十分に有効です。
ソーシャルビジネスが見つかる求人サイト
ソーシャルビジネス企業への就職・転職を検討している方に向けて、求人・企業情報が集まるサービスを紹介します。
cococcareer(COCOCOLOR EARTH運営)
社会課題解決に取り組む企業のデータベースサービスです。
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約1,000社の企業情報が掲載されており、ソーシャルビジネス企業を探す起点として活用できます。
DRIVEキャリア
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まとめ
ソーシャルビジネスとは、社会課題の解決を目的とし、事業収益によって持続可能な形で活動を広げていく事業形態です。
一般企業・NPO・ボランティアとは異なる独自の構造を持ち、「事業成長=課題解決が進む」という一致が最大の特徴です。
ソーシャルビジネスに関わるキャリアを考えるなら、まずは「どの課題に」「どんな立場で」関わりたいのかを具体化することから始めましょう。
理念と事業性の両立を自分の言葉で語れるようになったとき、ソーシャルビジネスのキャリアは一気に現実的なものになります。
まずは求人サービスで企業を調べ、気になる企業の事業モデルを読み込むことから始めてみてください。
社会課題解決を「仕事」にする道は、想像以上に多くの入口があります。 → 関連記事:社会課題解決を仕事にする6つの方法

この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。
