CSV、すなわち「Creating Shared Value(共有価値の創出)」は、企業が社会的な課題を解決しながら経済的な価値を生み出す新しい経営のアプローチとして位置づけられています。
CSRやソーシャルビジネスといった似たような概念とはどのように違うのでしょうか。
また、CSVを実際に実践するための具体的な方法や、その取り組みを行う企業の事例はどのようなものがあるのでしょうか。
この記事では、CSVの基本から、その実践方法、企業事例、そして学生への効果的なPR方法までを詳細に解説していきます。
目次
CSVとは
CSVとは、Creating Shared Valueの頭文字を取ったもので、「共有価値の創造」を意味しています。
CSVは、企業の売上をあげる「経済的価値」と社会課題を解決する「社会的価値」を両立させる経営戦略のフレームワークです。
つまり、経済的価値の創造をしながら、同時に社会的価値を生み出すことを指します。
CSVが生まれた背景
CSVは、ハーバードビジネススクールのマイケル・ポーター教授が、戦略的にCSRを位置付けることで競争優位が実現すると主張して2006年に生まれた概念です。
その後、2011年に発売された『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌での掲載がきっかけで注目を集めました。
その後、2015年に国連サミットで採択されたSDGsの流れでさらに注目を集めています。
CSRとCSVの違い
CSRは、CSVと文字が似ているため、意味まで混同してしまいがちです。
しかし、大きく意味は異なります。
CSRとは、企業が組織活動を行うにあたって担う社会的責任のことで、「corporate social responsibility(企業の社会的責任)」の頭文字をとって「CSR」と呼びます。
CSRのイメージとしては、事業以外で行う企業の社会貢献であり、慈善事業に近いものになります。
一方のCSVは、事業として収益も求めつつ、社会課題の解決の両立に取り組みます。
そのため、イメージとしてはソーシャルビジネスに近いでしょう。
CSRとは?CSVとの違いや取り組むメリットデメリット、事例などを解説
ソーシャルビジネスとCSVの違い
それでは、CSVとソーシャルビジネスの違いはなんでしょうか?
ソーシャルビジネスにはいくつか定義があるため、ここではユヌス・ソーシャル・ビジネスの定義とします。
CSVは、経済的価値と社会的価値の両立に優先順位がありません。
しかし、ユヌスのソーシャルビジネスの定義では、利益の最大化ではなく社会課題の解決がビジネスの目的となっています。
つまり、CSVとソーシャルビジネスの違いは社会的価値の比重にあります。
CSVを実践するための3つのアプローチ
マイケル・ポーター教授は、CSVを実践するためのアプローチを3つ挙げています。
製品と市場を見直す
まず、社会課題の解決に繋がる製品と市場を見直しましょう。
自社の製品を見つめ直す中で、新たな市場を開拓できたり、新たな製品が生まれるかもしれません。
バリューチェーン(価値連鎖)の生産性を再定義する
バリューチェーンの中で社会課題の解決に貢献できないか再定義しましょう。
調達から製造、販売までの流れで工夫できるポイントを探します。
具体的には、調達でフェアトレードに取り組む、ロジスティクスで再生可能エネルギーを取り入れるなどが考えられます。
地域を支援する産業クラスターを開発する
1社のみでCSV経営を行うのではなく、地域を支援する産業クラスターを開発しましょう。
そもそも産業クラスターとは、分野で関係する企業が密集した地域という意味です。
例えば、アメリカのシリコンバレーなどが該当されます。
産業クラスターを開発することで、地域の雇用創出やインフラ問題などの課題解決に取り組めます。
CSVを行う企業の事例
株式会社大川印刷
株式会社大川印刷は、1881年に創業され、再生可能エネルギー100%での印刷を可能として、ゼロカーボンプリントに取り組むなど積極的な「環境印刷」に取り組んでいる会社です。
配送では、より環境負荷の少ない電気自動車やディーゼル車を、インクには環境負荷の少ないノンVOCインキを、用紙にはエコ用紙を使用しています。
このように事業を通して社会的価値を生み出しています。
また、様々な環境団体とともに、環境に配慮した取り組みを行っています。
https://cococolor-earth.com/interview-chinami-komine/サラヤ株式会社
サラヤ株式会社は、世界の「衛生」・「環境」・「健康」に関わる革新的な商品とサービスを提供する企業です。
具体的には、医療や福祉、食品工場やオフィス・公共施設などの衛生管理に関わる各種洗浄・消毒剤の他、環境に配慮した台所用品や洗濯用品、健康食品等の商品を取り扱っています。
その他にも、CSRの側面では、原料生産地の一つであるマレーシア・ボルネオ島での生物多様性保全活動や岡山県西粟倉村の健全な森づくりの支援などを行っています。
https://cococolor-earth.com/interview-nii-yukari/株式会社ユーグレナ
株式会社ユーグレナは、2005年に世界で初めて微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養技術の確立に成功しました。
ユーグレナなどを活用した機能性食品や化粧品等の開発・販売のほか、バイオ燃料の生産に向けた研究などを行っています。
また、2014年より行っている、バングラデシュの子どもたちに豊富な栄養素を持つユーグレナクッキーを届ける「ユーグレナGENKIプログラム」の対象商品を、2019年4月より化粧品を含む全グループ商品に拡大しました。
「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」をユーグレナ・フィロソフィーと定義し、事業を展開しています。
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この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。