現在、juwi自然電力にて太陽光発電の普及活動に従事している、北俊宏さんにお話を伺いました。
第1弾では、彼が現在行っている活動と大切にしている考え方について迫っていきたいと思います。
高校時代に発展途上国のゴミ問題に興味を持ち、大学から環境活動に従事。
大学卒業後、廃棄物処理や資源リサイクル事業を手掛けるDOWAエコシステム㈱にて5 年間勤務。
2013年10月 青年海外協力隊としてスリランカのキャンディ市役所へ赴任。
学校や住民集会での環境教育やコンポストの普及活動に従事。
2016年2月 juwi自然電力にて太陽光発電所建設のプロジェクトマネージャーを務める傍ら地域での環境教育等を続けている。
現在の活動
―――現在、juwi自然電力ではどのような活動をされていますか?
現在は、山口県にあるゴルフ場の跡地に、太陽光発電所を建設するプロジェクトのプロジェクトマネージャーをしています。
建設工事が今年の2月から来年の6月までで、この期間は基本的に毎週1回は建設現場を訪れています。
プロジェクトマネージャーの仕事は、全体の計画や予算管理、事業者や電力会社との交渉、地域の協力会社への発注などプロジェクトに関わるステークホルダーとの窓口からプロジェクトチームのリードまで様々な役割を担っています。
建設は短くて1年、長くて3年くらい同じ場所で行うので、その期間は東京を拠点にしながら現場に通い続けます。
―――太陽光発電建設のプロジェクトマネージャーとして、どのような困難を今までに経験されましたか?
これまで8案件ほど担当してきた中で、建設現場の近隣住民の方々からの反対には何度か直面してきました。
そういった事態に対応するのもプロジェクトマネージャーの仕事です。
反対される理由は、建設に際する騒音や、発電所からの排出に関する不安や疑問など大きなものから小さなものまで多義に渡ります。
そういったものに関しては、きちんと理解し納得していただくまで説明を行い、出来る限りご納得頂いた上で工事させていただきます。
一方で、自然を少しでも壊すのは反対だという方もいらっしゃいます。
例えば、長野県は条例で太陽光発電所の規制を厳しくしている県で、たとえ自然への負荷が少ない土地であっても規制されていたりします。
マクロな視点で見れば、自然エネルギーは地球温暖化の抑制に大きな影響を持ちますが、ミクロな視点では地域の自然環境に影響を与えていることもあります。
このように様々な立場がある中で、地域の方々に納得して頂ける着地点がどこかを社内で日々議論しています。
―――業務外で取り組んでいることについても教えて下さい。
社内のコミュニティー活動には積極的に参加しています。
例えば、“office zero waste”という社内サークルで、社内で出るゴミを削減しようと取り組んでいます。
なかなか難しい取り組みで、特にプラスチックに関しては生活から切り離すのはとても大変です。
他にも、今後自然エネルギー業界で確実に課題となってくる廃太陽光パネルの処理方法について、リサーチや社内での勉強会の開催、自治体との実証事業の企画を行っています。
また、社外でも、練馬区にあるリサイクルセンターで、主に小学生を対象にした環境教育授業なども行っています。
―――環境問題に常に意欲的に関われるパワーはどこから来るのですか?
やらなければならないというマインドセットではなく、自分が本当にやりたいことをやるという生き方を大事にしているので、様々なことにチャレンジできているのだと思います。
一方で、やりたいことがたくさんあるのでオーバーワーク気味になることもあり、その反動で休日に一日何もしなかったな、なんて日も時々あります。
以前はそれで自己嫌悪に陥ったりもしました。
そんな時、改めて人生を通して自分は何を成し遂げたいのだろうかと考えてみると、最後にはいつも人生を通して環境問題解決に貢献したいという心の声が聞こえてくるのです。
1番の出発点が自分の本当にやりたいことだからこそ、常に環境問題にマインドを向けられるのだと思っています。
大切にしている考え
―――環境問題に社内外で取り組む上で、大切にしている考え方を教えて下さい。
「現場」「step by step」「環境問題は人間問題」この3つのキーワードを大事にしています。
「現場」
高校時代、ゴミ問題に興味を持って、その流れから環境問題全般に広がり、勉強・活動してきました。
大学生当時、私の一番の悩みは”何も知らないこと”でした。
環境問題にとても関心があり、本で読んだり、テレビで見たり、人に聞いたりして上辺の知識は増えても本質的なことは何もわかりませんでした。
そういったコンプレックスの裏返しが、今のキャリアに結びついています。
大学時代に環境活動を始めたこと、廃棄物処理や資源リサイクルの会社に就職したこと、青年海外協力隊としてスリランカのゴミ問題に取り組んだこと、プロジェクトマネージャーとして太陽光発電所の建設に携わっていること。
全て現場で直に問題やその解決策に触れることを自分自身の行動原則にしてきました。
「step by step」
これは私が環境活動を始めた大学生の頃から大事にしている言葉です。
環境問題は複雑な問題なので、個人や一世代で解決できる問題ではありません。
何か一歩踏み出そうとしても、あまりの問題の大きさに呆然としてしまいます。
そんな時、私はいつもプロ野球のイチロー選手を思い出します。
日米通算4000本安打も、日々の1本のヒットの積み重ねや試合前のルーティンの積み重ねから生まれました。
どんな大変なことでも、step by stepで一歩ずつ歩んでいくことが活動に限らず仕事や人生において大事なことだと日々痛感しています。
「環境問題は人間問題」
大学2年生の頃から活動を始めて、1年くらい経ったとき大きな壁にぶつかりました。
活動を初めた頃は、地球のため、自然環境のため、世界の困っている誰かのためと思って活動していました。
しかし、ある時、その気持ちだけでは自分のモチベーションを持続できないことに気付きました。
当時私は、あまりにも大きすぎるグローバル環境問題の前で、解決の糸口や明確なゴールも見えない現状に疲れ切っていました。
自分には何もできない。
自分一人の活動なんて意味がないといったマイナス感情の中で、「何のための活動か」を日々自問自答していました。
そんな時、出会った言葉が「環境問題は人間問題」でした。
地球がどれだけ温暖化しても、ゴミが増えても、核廃棄物が増えても、地球は何も変わりません。
困るのは、私達人間です。
きれい事を捨てて、地球のためでもない、自然環境のためでもない、私達人間のための問題解決をしていると思えた時、活動を持続していくヒントが見えた気がしました。
また、活動を通して沢山の人達と出会い、多くの事を学び、それを楽しんでいる自分に気付いたとき、環境問題はマイナスだけでなくプラスの側面もあることに気付きました。
その気づきを踏まえて、環境問題の表面的な部分に一喜一憂するのではなく、その問題を私達人間一人一人がどのように受け取るかが重要なのだと考えるようになりました。
次回予告
juwi 自然電力にてプロジェクトマネージャーとして活躍されている北さん。
次回は、学生時代、環境問題に興味を持ち始めたきっかけや、現職に至るまでのキャリアステップついて迫っていきたいと思います。
この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。