利益を追求するがゆえに環境を破壊し、それによって大災害に見舞われる。

このような社会は本当に良い社会といえるのでしょうか?

たしかに、資本主義社会は多くの国に経済的な繁栄をもたらしました。

その一方で、資本主義社会においては環境破壊、経済格差の拡大など弊害も多く見られています。

そこで登場した概念が「グレートリセット」です。

今回は「グレートリセット」が起こっているこの世界で私たちはどう対応できるのか、一緒に考えていきましょう。

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グレートリセットとは?簡単に意味を解説

グレートリセットとは、世界中のあらゆるシステムを見直すことです。

現在、資本主義の社会はさまざまな弊害を生んでいます。

そのような社会の在り方を多面的に見直し、改革しようとする動き広がりつつあります。

国際機関である世界経済フォーラム(WEF)が、2021年5月に開催されたダボス会議のテーマを「グレートリセット」にすると発表し、大きな話題となりました。

また、2022年1月に行われたダボス・アジェンダ2022では、岸田総理もグレートリセットについて言及しています。

さらに、直近に開催された2023年ダボス会議では、世界的なインフレや継続して問題視されているウクライナ侵攻などが中心となって議論されました。

このようにさまざまなテーマが議論されていますが、それらを解決するために、世界中の社会と経済、金融などのさまざまなシステムを見直して刷新する「グレートリセット」を行う必要があると発表したことも大きな話題になっています。

【参考】
「ダボス・アジェンダ2022」における岸田総理大臣の特別演説
World Economic Forum Annual Meeting 2022
World Economic Forum Annual Meeting 2023

ダボス会議とは?

ダボス会議とは、国際連盟本部が位置するスイス・ジュネーブを拠点に活動する非営利財団「世界経済フォーラム(WEF)」が、同じくスイスのダボスという場所にて開催する年次総会です。

世界経済フォーラムが設立された1971年から毎年1月に開催されているという長い歴史を持っています。

ここでは、世界のリーダー有識者が一同に集まり、各年に世界的に問題視されている課題を解決することを目的に議論されます。

ダボス会議とは?テーマや参加メンバー、なぜ注目されるのか解説


グレートリセットに注目が集まる2つの理由

グレートリセットに注目が集まる2つの理由を解説します。

  • 資本主義経済は重大な問題を引き起こす
  • 既存の資本主義経済で課題に対処するには限界がある

資本主義経済は重大な問題を引き起こす

みなさんは、資本主義社会で利益を追求したがゆえに発生する問題をご存じでしょうか。

例えば、環境問題公害問題があります。

生産性を上げ、利益を増やすことは資本主義経済の社会においては当然のことです。

しかし、生産性を上げるがゆえに資源を搾取しているのも事実です。

具体的な環境問題としては、回復スピードを上回る速さでの森林破壊があります。

また具体的な公害としては、農業従事者が生産性を上げるために農薬を大量に散布すると、人間の健康被害や土壌汚染を引き起こすことがあります。

世界全体で持続可能な成長を実現するために、このような弊害を生んでしまう社会を見直さなければなりません。

既存の資本主義経済で課題に対処するには限界がある

また、現在の資本主義経済では、既存の問題を解決することも難しいといえます。

例えば、発展途上国には貧困などの理由で医療にアクセスできず、命を落とす子どもが何人もいます。

しかし、利益を第一に考える資本主義社会は、途上国の人たちよりも裕福な人たちに医療を提供することが合理的だと考えるでしょう。

結果的に、そのような子どもたちへの医療提供が遅れ、21秒に1人のペースで先進国なら治るはずの病気で命を落とす子どもがいます

また、コロナ禍では多くの国が前代未聞のパンデミックに対処できず、多くの犠牲者や経済的な損失を生みました。

将来、新型コロナウイルス感染症による今回のパンデミック以上に、大惨事が起こる可能性は十分にあります。

その際に、きちんと対応できる社会を構築していく必要があるでしょう。

参考:いま、この瞬間にも。救える命がたくさんあります。| 日本ユニセフ協会


グレートリセットが起こると何が変わる?

グレートリセットが起こると何が変わるのでしょうか?

グレートリセットが起こると変わる3つの変化を解説します。

  • ステークホルダー経済のため、経済への政府の関与が強まる
  • ESG投資が活発になる
  • ICT技術やビッグデータがより活用される

ステークホルダー経済のため、経済への政府の関与が強まる

グレートリセットが目指している経済は、「ステークホルダー経済」です。

ステークホルダー経済とは、消費者や株主だけでなく、従業員、社会、環境、取引先(下請け)などといった、ありとあらゆる利害関係者のことを考えた経済です。

これによって、企業による適切な賃金の支払いや自然環境の保護が促進されます。

ステークホルダー経済の推進だけでなく、天然資源に代わる再生可能エネルギー利用の推進や所得の再分配などに関わる立法や政策の実施が盛んになるかもしれません。

ESG投資が活発になる

ESGとは、Environment(環境)、Society(社会)、Governance(企業内統治)の略で、これらに配慮している企業への投資が下図のように増加しています。

ESGについて詳しい解説はこちら

言い換えれば、環境破壊をしていたり、労働力を搾取していたり、情報漏洩の危機があったりする企業は投資リスクが大きいとされます。

こちらのサイトには、世界的企業のESGスコアが載っています。

ICT技術やビッグデータがより活用される

グレートリセットは、デジタル革命によって身近になったICT技術やビッグデータの活用を促進します。

例えば、ビデオ会議によって多様な専門家が一丸となって課題に対処できます。

また、データを活用することで、より根拠のある施策の実施も可能です。

さらに現在でも「オンライン診療」があります。

これが拡大することによって、患者さんが遠隔地にいても医療サービスを受けられます。


グレートリセットされた世界に対応するためにできること

グレートリセットされた世界に対応するためにできる2つのことを解説します。

  • 新しい概念を勉強する
  • ICT活用やデータ処理のスキルを身に着ける

新しい概念を勉強する

グレートリセットでは、従来の概念から新しい概念に変わります。

例えば、就活や転職で「企業選びの軸」という言葉をよく聞きますが、今後は「ESG投資を受けやすい企業に就職する」という軸も主流になるかもしれません。

インターネットやメディアを上手に活用し、グレートリセットに関する情報を収集していきましょう。

ICT活用やデータ処理のスキルを身に着ける

今後は、ICTが活用されるため、働く上でITスキルは必須と言って良いでしょう。

また、データ解析や統計のスキルも社会で活躍するために必要です。

さらに、世代間のデジタルデバイドも進行しています。

自身のスキルを年配の人たちに教えることも、社会全体でグレートリセットに対応することに繋がるでしょう。

デジタルデバイド(情報格差)とは?日本の現状や原因、企業の取り組みを紹介

さいごに

今までの社会のあり方に疑問を投げかけ、多面的に見直そうとする「グレートリセット」。

グレートリセットが叫ばれている背景には、資本主義社会が引き起こした様々な問題や、未解決の課題があります。

グレートリセットが起こった世界では、ステークホルダー経済やESG投資、ICTやビッグデータ活用などの改革が見込まれています。

グレートリセットされた社会で必要なスキルは情報収集や処理の能力、ICTを使いこなす能力です。

その社会に、取り残されないように私たちも勉強を続けていきましょう。


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