ESG投資の拡大が、ビジネスとキャリアの世界を変えています。
「ESGに関わる仕事に就きたいけど、どんな職種があるのかわからない」——そんなあなたに向けた記事です。
企業がESG(環境・社会・ガバナンス)を重視することが当たり前になった今、「ESGに関わる仕事」の需要は急速に高まっています。
この記事では、ESGとは何か・ESG投資の概要を簡単におさえた上で、ESGに関わるキャリアの全体像・職種・スキル・入り口を解説します。
目次
ESGとは?簡単に意味を解説
ESGとは、企業を評価する際に財務情報だけでなく、環境(Environmental)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3つの視点を加味する考え方です。
環境(E)
気候変動対策・脱炭素・生物多様性・水資源管理など、環境負荷の低減に関わる課題です。
社会(S)
人権・労働環境・ダイバーシティ・地域貢献など、社会的な側面に関わる課題です。
ガバナンス(G)
企業統治・取締役会の構成・腐敗防止・情報開示など、組織の透明性・公正性に関わる課題です。
ESG投資とは、この3つの観点を投資判断に組み込むことで、長期的なリスク管理と持続可能なリターンを目指す投資手法です。
ESGはすでに世界の投資の35%以上を占めており、日本でも年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESG投資を積極的に推進しています。
[/st-mybox]ESGとSDGs、CSRなどの違いを解説
| ESG | SDGs | CSR | |
|---|---|---|---|
| 主体 | 投資家・企業 | 国家・国際機関 | 企業 |
| 目的 | 投資判断の基準 | 持続可能な開発目標 | 社会的責任の遂行 |
| 性格 | 投資・評価手法 | 国際目標・フレームワーク | 企業姿勢・活動 |
SDGsとESGの違い
SDGsとは、2015年に国連サミットで採択された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。
「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称として知られています。
SDGsは、17の目標・169のターゲットから構成されます。
つまり、SDGsは今後世界中の社会・企業が目指すビジョンであり、ESGは投資家からみた投資戦略です。
CSRとESGの違い
CSRとは、corporate social responsibilityの略称で、企業が組織活動を行うにあたって担う社会的責任です。
そして、「企業の社会的責任」とは、企業が社会や環境と共存し、持続可能な成長を図るため、その活動の影響について責任をとる企業行動であり、企業を取り巻く様々なステークホルダーからの信頼を得るための企業のあり方を指します。
つまり、CSRは企業の在り方を指すものであり、ESGは投資手法を指しています。
≫CSRとは?CSVとの違いや取り組むメリットデメリット、事例などを解説
CSVとESGの違い
CSVとは、Creating Shared Valueの頭文字を取ったもので、「共有価値の創造」を意味しています。
CSVは、企業の売上をあげる「経済的価値」と社会課題を解決する「社会的価値」を両立させる経営戦略のフレームワークです。
つまり、CSVは経営戦略を指し、ESGは投資手法を指します。
≫CSV経営とは?生まれた背景やソーシャルビジネスとの違い、事例などを解説
ESG投資の7つの分類
続いて、国際団体のGSIAが定義する7つの分類を解説します。
ネガティブ・スクリーニング
ネガティブ・スクリーニングとは、ギャンブルやタバコ、ポルノなど特定の業界を投資対象から除外することです。
ESG投資に語って代表的な手法となっています。
ポジティブ・スクリーニング
ポジティブ・スクリーニングとは、ESGに対して積極的に取り組む企業に対して投資をする手法です。
具体的には、環境問題やジェンダーフリー、D&Iなどの取り組みが挙げられます。
国際規範スクリーニング
国際規範スクリーニングとは、児童労働や強制労働、CO2の排出量などの国際規範を満たしていない企業を投資対象から除外することです。
ネガティブ・スクリーニングとは異なり、業界ではなく、企業単位でスクリーニングします。
サステナビリティ・テーマ投資
サステナビリティ・テーマ投資とは、持続可能な社会の実現に貢献するテーマを選び投資することです。
テーマの例として、再生可能エネルギーや食品ロス、気候変動などが挙げられます。
インパクト・コミュニティ投資
インパクト・コミュニティ投資とは、社会へのインパクトが大きい活動に対して行われる投資です。
主に、環境問題や地方創生の解決などが投資の目的に掲げられます。
ESGインテグレーション
ESGインテグレーションとは、財務諸表だけでなく、ESGの分析も投資の判断に加えることです。
財務諸表とESGのバランスを取った投資手法となります。
エンゲージメント/議決権行使
エンゲージメント/議決権行使とは、投資家が投資先へ行う目的を持った建設的な対話です。
対話方法は、会議や対談、インタビュー、会見など多岐にわたります。
ESGに関わるキャリアの全体像
ESGキャリアは、大きく「企業側」「投資家側」「支援・評価側」の3つに分けられます。
企業側:サステナビリティ部門・ESG推進担当
上場企業を中心に、ESG推進・サステナビリティ担当の採用が急増しています。
主な業務は以下のとおりです。
気候変動リスク・機会の評価(TCFD対応)
温室効果ガス排出量のシナリオ分析・物理的リスク・移行リスクの評価を行います。
Scope1/2/3の計測・削減計画
自社・サプライチェーン全体のCO2排出量を算定し、削減ロードマップを設計します。
ESGレーティング機関への対応
MSCI・Sustainalytics・CDP・東洋経済ESGなど、評価機関からの情報収集・スコア改善対応を担います。
サステナビリティレポート・統合報告書の作成
GRI・SASB・IFRS S1/S2などの基準に基づいた開示資料を作成します。
投資家とのESGエンゲージメント対応
ESG投資家との対話設計・IRとの連携・説明資料の作成を担います。
投資家側:ESGアナリスト・投資担当
機関投資家(年金基金・生命保険・資産運用会社)・証券会社・PE(プライベートエクイティ)などで、ESGの観点から企業を評価・分析する役割です。
ESGアナリストとして企業の非財務情報を分析し、投資判断に活かします。
インパクト投資・グリーンボンドなど、ESGに関連した金融商品の組成・運用に携わる仕事もあります。
「金融と社会課題を結びつけて、お金の流れを変えたい」という方に向いています。
評価・コンサルティング側:ESGコンサルタント・評価機関
企業のESG対応を支援するコンサルタント(PwC・デロイト・EYなど)や、ESGスコアを提供する評価機関(MSCI・ISS・CDP・東洋経済ESGなど)での仕事です。
企業のサステナビリティ戦略の策定支援・ESGデータの収集・評価・開示支援を担います。
「専門家として多くの企業のESG対応を支援したい」という方に向いています。
政策・行政側
金融庁・環境省・経済産業省などで、サステナビリティ開示規制の立案・ESG投資の市場整備・グリーンファイナンスの推進に携わります。
「制度設計から社会全体のESG対応を変えたい」という方に向いています。
ソーシャルファイナンス・地域金融(下流)
ESGやインパクト投資の「下流」にあたる領域が、クラウドファンディング・地域金融・NPO・スタートアップへの資金調達支援です。
クラウドファンディングプラットフォーム(READYFOR・Makuakeなど)では、社会課題解決プロジェクトへの資金調達を支援するキュレーターやCSポジションがあります。
地域金融機関(信用金庫・地方銀行)では、地域の中小企業・農業・社会事業への融資判断にESGの視点を組み込む動きが広がっています。
NPO・社会的企業の資金調達コンサルタントや、インパクト投資ファンドのポートフォリオマネジメントも、ESGの知見を活かせるポジションです。
「大企業ではなく、社会現場に近い場所でお金の流れを変えたい」という方に向いた選択肢です。
ESGに対する企業の取り組み
サントリーホールディングス株式会社
サントリーは、洋酒やビール、清涼飲料水の製造・販売等を行う企業です。
持続可能な豊かな地球環境を次世代に引き継ぐべく、環境ビジョン2050を定め、「再生・自然環境の保全」、「環境負荷低減」の2つの軸で、グループ全体での環境経営を推進しています。
エーザイ株式会社
エーザイの海外向けサイトには、「Sustainability/持続可能性」専用ページを設けています。
エーザイは「ESG」への取り組みを「非財務的価値」と位置づけ、持続可能な企業活動、雇用、社会との関係性、環境活動など、企業の姿勢と活動を世界へ的確に発信し続けています。
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ESGキャリアに求められるスキル
ESGキャリアで必要とされるスキルについて解説します。
環境・社会課題の知識
気候変動・カーボン会計・生物多様性・人権・ダイバーシティなど、ESGが扱う課題に関する幅広い知識が基盤です。
国際的な開示基準(GRI・SASB・IFRS S1/S2・TCFD・TNFD)のアップデートを継続的に追う情報収集力も必要です。
「常に変化する規制・基準に対応し続けられる人材」が、この分野では特に評価されます。
財務・金融の知識
ESGを「投資」と結びつけるためには、財務諸表の読み方・投資評価・リスク管理などの金融知識が不可欠です。
特に「ESGリスクが財務にどう影響するか」を定量的に語れる能力が高く評価されます。
「環境・社会課題を、財務の言語で語れる人材」は希少で、高い市場価値があります。
データ分析・定量化の力
Scope1/2/3の算定・ESGスコアの分析・インパクト測定など、「数値で語る力」が重要です。
Excel・Python・ESG専用プラットフォームの活用能力も強みになります。
「社会的価値を数値に変換できる人材」が、ESGキャリアの核心です。
コミュニケーション・ステークホルダー対応力
ESGレポーティング・投資家対話・社内の経営層への説明など、多様なステークホルダーへの適切なコミュニケーション力が求められます。
「複雑な情報を、わかりやすく・正確に伝える力」が特に重要です。
ESGキャリアのロードマップ
ESGキャリアのロードマップについて、新卒・転職それぞれの入り口を解説します。
新卒から入るルート
経済・経営・環境・法律・理工系など様々なバックグラウンドからESG関連部門への新卒採用が増えています。
大手企業のサステナビリティ部門・証券会社のESGリサーチ・コンサルティングファームのサステナビリティプラクティスが主な入り口です。
「自分の学部・専門に関係なく、ESGには関われる」という意識を持つことが重要です。
転職でキャリアシフトするルート
財務・法務・IR・環境エンジニアとしての経験を持ちながら、ESG専門職にシフトするパターンが多くあります。
CFA(証券アナリスト)・環境社会検定(eco検定)・TCFD関連研修などの資格・知識習得が転職活動を後押しします。
「今のキャリアに、ESGの知識を上乗せする」というアプローチが、転職の近道です。
まとめ
ESGキャリアは、環境・社会への関心と金融・ビジネスの知識の掛け合わせが強みになる分野です。
「社会課題解決と投資・企業経営を結びつける仕事がしたい」というあなたに向いたキャリアです。
まずはサステナビリティ関連のニュース・開示基準・TCFD報告書などを読む習慣をつくることが、ESGキャリアへの第一歩になります。
「お金の流れを変えることで、社会を変える」——それがESGキャリアの本質です。 → 関連記事:社会課題ごとのキャリアロードマップまとめ
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この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。
