ミャンマーでのマイクロファイナンス事業を始め、中絶した女性へのサポートの拡充など多方面に活躍されている小路さん。
第2弾では、彼女の学生時代の話や、国税庁やJICAでの勤務を経て現職に至るまでのキャリアステップついて迫っていきたいと思います。
1981年生まれ。
同志社大学卒業後、国税局に勤務。息子を出産したことをきっかけに、女性の働き方や自分のそれまでの生き方に疑問を感じ、約15年勤務した国税を退職。
現在はミャンマーのMJI社において、貧困層の女性の社会的・経済的地位向上を目的としたマイクロファイナンス事業に携わり、社会的効果・価値に関する指標策定等を行っている。
このほか、「社会的価値をビジネスのチカラに」をスローガンとするトークンエクスプレス株式会社において、社会課題解決と経済的利益の実現を同時に実現したい企業のためにサービスを提供。
また、ライフワークとして、自身の経験から、中絶した女性へのサポートの拡充、多様な女性の選択を後押しする社会の創造を目指している。
学生時代の活動
ーーー学生時代はどのような活動をされていましたか?
これといった活動はしていないです。
どうやって自分は生きていけばいいのか、ただ生きるのに必死だったと思います。
摂食障害だったので、どうしたら自分は普通にご飯を食べて生きていけるのかを考えたりしていました。
また実家が裕福ではなかったため、勉強用の本や生活費、オシャレをするための費用を賄えるだけのお金を稼いで、普通の暮らしをしたいという思いも強かったです。
そして、そういった自分の切羽詰まった状況を周りに隠すのに必死でした。
また、途上国開発に興味はありましたが、自分には無理だと思っていました。
というのも、通っていた高校に「タイ隊」というボランティアのサークルがあり、タイのシスターのお手伝いをするといったプログラムがありました。
そのプログラムに参加したいと親に相談した際に、「貧乏人は自分のことだけ考えておけば良い」などと経済的理由で厳しいと言われたのです。
その時から、途上国支援は私にとって縁のない世界だと思いこんでいました。
国税庁を辞めてJICAで働き始めるまで
ーーー大学卒業後、国税庁に入ろうと思ったきっかけは何ですか?
私が就職活動をするころは就職氷河期でした。
大学は法学部だったので、せっかくなら法律・行政系がいいなと思い、公務員というのを念頭に置きました。
私の時代は子どもを持つと仕事を辞める母親が多く、共働きの家庭は大半が公務員家庭でした。
だから、女性で産後も仕事を続けるには公務員がいいのかなと考えていました。
また、働き続けたかった理由として、経済的に自立していないと結婚しても家庭で発言権がないと思っていたこともあります。
そもそも「お金が無いと意見を言ってはいけない」という考えを持ってしまうことがおかしい気はしますが。。。
ーーー国税庁を辞めてJICAで働くことになったきっかけは何ですか?
国税庁にいた際、アフリカの税務当局に国税徴収法をレクチャーする講師として、マレーシアにJICAを通して派遣されたことがあります。
息子を授かり、国税庁での仕事を生涯続けていくのか悩んでいた際にその経験を思いだしまた。
そのような仕事をもう一度してみたいと思って探してみたところ、期限付職員ではありましたがJICAで募集があり、応募しました。
ーーーJICAではどのような仕事をされたのですか?
民間連携事業部の管理課で海外投融資案件のモニタリングをしていました。
JICAは、円借款だけではなく、民間企業にもお金を貸しています。
そのお金を貸した民間企業の事業が計画通りにきちんと進んでいるか、ローンを返済できるだけの収益をあげられているのかなどを監理していました。
ーーー国税庁時代の仕事と比べて、JICAでの仕事でのやりがいや楽しかったことなんですか?
何かを生み出している感覚、自分の役割は小さいとはいえ、単純に自分の仕事が裨益者に繋がっていることに嬉しさを感じていました。
国税での差し押さえ業務はもちろん必要な仕事です。
しかし、滞納というのはどれだけ差し押さえをしても0にはならないし、税務調査をどれだけ行っても脱税はなくならないという点に自身の無力さを感じていました。
JICAでの仕事では、社会のために何かをしたいと思っている人と自分が関われていることに喜びがありました。
現職で女性問題に関わるようになったきっかけ
ーーー現職に通ずる、女性の地位向上やリプロダクティブヘルス*に興味を持ったきっかけはなんですか?
マミートラックというのを知ったことです。
マミートラックというのは、妊娠出産をした女性は比較的仕事量の少ない部署に配置されるといったことを言います。
実際、私が子どもを産んだときに、国税庁から税務署に異動が決まってしばらく国税庁に戻ることが出来ませんでした。
明確な証拠があるわけではないので、それが本当にマミートラックだったかはわかりません。
自分の能力不足が処遇に影響したと考えていますが、育児休暇前は処遇、給与ともに一選抜クラスでしたが、育児休暇後は最終遅れくらいでした。
人事は様々なことが考慮されるので、原因は分かりません。
「子供がいない使いやすい私」が仕事や職場で評価されていたのかな、と当時は感じました。
しかしその経験から私は、「キャリアを考えるなら子どもは生まない選択を求められている風潮」を感じ取り、問題意識を持ちました。
子どもを持ってもキャリアを積めるような社会になってほしいと思う一方で、子どもを持たない選択をした女性社員や男性社員と、仕事の上の負担を公平に分かつのは至難の技です。
だからこそこの問題の解決はとても難しいですが、キャリアか子どもどちらかを選ばなければならない風潮は払拭されるべきだと私は思っています。
*リプロダクティブヘルス:「性と生殖に関する健康とその権利」をさし、単に生殖の過程に疾病がないということではなく、身体的・精神的・社会的に良好な状態であることを意味する。
現在、小路さんが働かれているトークンエクスプレス社では人材を募集されています、
興味のあるの方は是非下記のリンクにアクセスしてみて下さい。
https://token-express.com/magazine/recruit_bizdev_1/
ーーー次回予告
学生時代から様々な紆余曲折を経て今に至っているからこそ、現在の活動を全力で楽しめている小路さん。
次回は、仕事をするにあたって彼女が大切にしているマインドセットや、キャリアに悩める学生へのメッセージを紹介したいと思います。
失敗で失うものは無い#3~MJI Enterprise Co.ltd 小路麻美#3~
金子歩乃歌(かねこほのか)
「性別が個人の夢を邪魔しない世界」を創りたい。
将来は、男尊女卑の残る地域で女子教育の普及に関わる予定。
Twitter:@honoka_color
この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。