「NPOで働きたいけれど、生活していけるだけの給料がもらえるのか不安」。

就職や転職を考えるとき、そう感じたことはないでしょうか。

「NPOは無給に近い」というイメージを持つ人も少なくありません。

しかしこのイメージは、内閣府の調査結果と食い違う部分があります。

内閣府の調査では、役員以外の職員を置く法人は認証法人で74.3%、有給職員数の中央値は2.0人でした。

内閣府が2024年3月に公表した「2023年度特定非営利活動法人に関する実態調査」の数字から、給料の実態と仕組みを解説します。

民間企業と財源が違う理由、規模や分野による差、そして給料を上げる・収入を安定させるキャリアの考え方まで紹介します。

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NPO法人が活動する分野の中でも、内閣府の調査で最も多いのは「保健、医療又は福祉の増進を図る活動」です。

福祉に関わる社会課題は、以下のページにまとめています。

≫福祉に取り組む企業・キャリア情報

 

NPOの給料はどのくらいか

NPOの給料は、法人の規模や財源によって幅があるお金です。

内閣府が2024年3月に公表した2023年度の実態調査には、職員数や給料手当の総額が中央値で示されています。

役員以外の職員がいる法人は7割超

この調査は、2023年5月末時点で全国に51,866法人あったNPO法人のうち、6,591法人を抽出して行われました。

認定や特例認定を受けていない「認証法人」は5,323法人を抽出し、認定・特例認定を受けている「認定・特例認定法人」は1,268法人すべてを対象にしています。

参考:2023年度特定非営利活動法人に関する実態調査(内閣府)

認証法人とは、認定や特例認定を受けていないNPO法人のことです。

役員以外の職員を1人以上置いている法人の割合は、認証法人で74.3%、認定・特例認定法人で86.3%でした。

この人数には、管理や庶務などを担う無給の職員も含まれています。

では、実際に給料が出ている職員は、どれくらいいるのでしょうか。

常勤有給職員の給与総額は法人規模で差がある

有給職員数の中央値は、認証法人で2.0人、認定・特例認定法人で5.0人でした。

中央値が1人以上ということは、半数を超える法人に有給の職員がいることになります。

「NPOはボランティアだけで運営されている」というイメージとは異なり、多くの法人が有給の職員を置いています。

そのうち常勤の有給職員数の中央値は、認証法人で1.0人、認定・特例認定法人で2.0人です。

有給職員の年間給料手当総額は、法人単位の合計で見ると、認証法人の中央値が118.8万円、認定・特例認定法人の中央値が600.0万円でした。

常勤の有給職員に限ると、年間給料手当総額の中央値は認証法人で112.0万円、認定・特例認定法人で444.6万円です。

これは職員1人当たりの年収ではなく、法人全体の年間の給与総額であることに注意が必要です。

認定・特例認定法人の常勤有給職員数の中央値2.0人で444.6万円を単純に割ると、1人当たりの目安は200万円台前半になります。

ただしこれは中央値同士を割った粗い試算であり、内閣府調査が示す公式な数値ではありません。

参考:2023年度特定非営利活動法人に関する実態調査 図表35・39(内閣府)

NPOと会社の違いや働き方の全体像は、以下の記事でも解説しています。

≫NPOとは?意味・種類・会社との違い・働き方をわかりやすく解説

役員報酬は「3分の1ルール」

法人の役員数の中央値は、認証法人で6.0人、認定・特例認定法人で10.0人でした。

このうち役員報酬を得ている役員数の中央値は、認証法人・認定等ともに0.0人です。

役員の多くは無報酬で活動していることがわかります。

年間役員総報酬額は、報酬を得る役員に限っても中央値が0.0万円で、平均値は認証法人で88.8万円、認定・特例認定法人で131.0万円でした。

参考:2023年度特定非営利活動法人に関する実態調査 図表34・38(内閣府)


「非営利」でも給料は出る

NPOの「非営利」という言葉から、給料を払ってはいけないと考える人がいますが、これは誤解です。

誤解の元は、「営利」という言葉が、日常の使い方と法律上の使い方でずれていることにあります。

非営利とは「利益を分配しない」という意味

NPOとは、継続的、自発的に社会貢献活動を行う、営利を目的としない団体の総称です。

参考:目的・定義等Q&A(内閣府NPOホームページ)

ここでいう「営利を目的としない」とは、活動でお金を得てはいけないという意味ではありません。

事業で得た利益を、役員や会員といった構成員に分配しないという意味です。

利益は分配せず、活動の継続や拡大にあてる仕組みになっています。

参考:認証制度について(内閣府NPOホームページ)

事業で得た収益を財源に活動を続ける法人のあり方は、以下の記事で解説しています。

≫事業型NPOとは?特徴・代表的な団体・働くキャリアの入り口を解説

職員給与は役員報酬とは別物

特定非営利活動促進法では、役員のうち報酬を受ける人数を役員総数の3分の1以下とするルールがあります。

参考:役員等Q&A(内閣府NPOホームページ)

このルールは役員報酬に関するもので、職員として働く人の給与を制限するものではありません。

内閣府NPOホームページも、役員が職員を兼務する場合、職員としての仕事の対価にあたる給与は役員報酬に含まれないと説明しています。

つまり職員として働き、労働の対価として給料を受け取ることは、NPO法人でも一般的な仕組みです。

NPOの給料が民間企業と違う理由 — 財源の構造

NPOの給料は、民間企業と同じく人件費として払われますが、財源の中身が異なります。

内閣府の調査では、認証法人と認定・特例認定法人とで、主な収入源そのものが違っていました。

NPO法人の収入源の内訳

NPO法人が主な収入源としているものを見ると、認証法人では「会員からの会費収入」が23.7%で最も多くなっています。

認定・特例認定法人では「個人や民間からの寄附金」が25.3%で最多でした。

このほか、行政や民間からの助成金・補助金、利用者からの料金収入、行政からの委託事業なども財源になっています。

参考:2023年度特定非営利活動法人に関する実態調査 図表18(内閣府)

株式会社が株主からの出資や事業収益を主な原資とするのに対し、NPOは会費・寄付・助成金といった多様な財源を組み合わせています。

財源の性質は、給与を含む人件費の安定度にも影響します。

寄付型NPOと事業型NPOで財源が違う

NPOは、財源の構造から大きく2つのタイプに分けられます。

寄付・助成金・会費を主な財源とする「寄付型NPO」と、事業収益を主な財源とする「事業型NPO」です。

寄付型NPOは、収益化が難しい社会課題に取り組みやすい一方、財源が外部環境に左右されやすい傾向があります。

≫寄付型NPOとは?特徴・代表的な団体・働くキャリアの入り口を解説

事業型NPOは、事業収益によって比較的安定した財源を確保しやすく、ビジネスの経験を持つ人材が活躍しやすい環境です。

財源のタイプによって採用計画や給与の安定度が変わってくる点は、就職・転職先を選ぶときの判断材料になります。

活動分野と法人規模による差

NPO法人の活動分野を見ると、「保健、医療又は福祉の増進を図る活動」が認証法人で56.0%、認定・特例認定法人で55.5%と、いずれも最多でした。

主な活動分野を1つだけ選んでもらう質問でも、認証法人40.4%、認定・特例認定法人32.6%とやはり最も多い分野です。

参考:2023年度特定非営利活動法人に関する実態調査 図表5・6(内閣府)

法人の規模で見ると、認定・特例認定法人は認証法人より役員数・職員数ともに多く、特定非営利活動事業の経常収益の中央値も、認証法人600.4万円に対し認定・特例認定法人は2,674.5万円と大きくなっています。

参考:2023年度特定非営利活動法人に関する実態調査 図表27(内閣府)

規模の大きい法人ほど、職員数も収益の規模も大きくなる傾向がうかがえます。


給料を上げる、収入を安定させるキャリアの考え方

NPOで働きながら給料を上げる、あるいは収入を安定させるための考え方はいくつかあります。

ここでは3つの方向性を紹介します。

NPO内でキャリアアップする

法人の中で役割や責任範囲を広げていくことは、給与の見直しにつながる一つの道です。

内閣府調査でも、認定・特例認定法人は認証法人より職員数・収益規模ともに大きく、常勤有給職員の年間給料手当総額も上回っていました。

事業を拡大し、認定・特例認定法人へとステップアップしていく法人で経験を積むことも、選択肢の一つです。

複業でNPOに関わる

本業を続けながら、副業や複業としてNPOに関わる働き方も広がっています。

NPO法人コンフロントワールドの代表理事を副業として務める荒井昭則さんは、寄付プラットフォームを運営するITベンチャー企業で働きながら活動しています。

荒井さんは、キャリアを選ぶ基準の一つとして「年収を下げないこと」を挙げ、現実的な生活基盤を保ちながら社会課題に関わる働き方を実践しています。

≫ケニアでの原体験から、NPO代表とITベンチャーの二足のわらじへ ~NPO法人コンフロントワールド 荒井昭則さん~

本業の収入を保ちながらNPOに関わる方法は、以下の記事でも紹介しています。

≫社会課題解決に個人で関わる方法とは?フリーランス・副業・プロボノ・ボランティアの選び方

企業のCSR・サステナビリティ部門へ転身する

NPOでの経験を、企業のCSRやサステナビリティ部門で活かすキャリアもあります。

NPOで培った現場感覚やステークホルダーとの調整力は、企業が社会課題に取り組む部署でも役立つ経験です。

民間企業で社会課題解決に関わる仕事については、以下の記事で詳しく解説しています。

≫民間企業で社会課題解決に関わるには?CSR・サステナ・ソーシャルビジネスの違いと選び方

NPOで働く・関わる仕事

NPOへの関わり方は、正職員として就職することだけではありません。

給料や生活とのバランスを考えながら、自分に合った関わり方を選べます。

正職員として働く

正職員として働く場合、事業の企画・運営や広報、資金調達といった業務を担うことが多くなります。

精神疾患の親を持つ子ども・若者を支援するNPO法人CoCoTELIで働く山縣勇斗さんは、新卒でNPOに飛び込んだ一人です。

山縣さんは「今も給料が高いわけではないですが、最低限生活していけるので、ありがたいと思っています」と語っています。

≫精神疾患の親をもつ子ども・若者のための居場所をつくる、NPOで目指す未来~NPO法人CoCoTELI山縣勇斗~

ボランティア・プロボノとして関わる

正職員以外にも、ボランティアやプロボノとしてNPOに関わる方法があります。

本業のスキルを活かして、マーケティングやデザイン、IT、会計といった専門知識を無償または低報酬で提供する関わり方も広がっています。

収入を本業で確保しながら社会課題に関わる時間を作れることが、この関わり方の特徴です。

求人を探す入り口

NPOの求人は、NPO専門の求人サイトや各法人の公式サイトで確認できます。

事業の企画・広報・資金調達など、担当したい職種を軸に探すことで、給与条件や業務内容を具体的に比較しやすくなります。

社会課題に関わる職種の全体像は、以下の記事でまとめています。

≫社会課題解決を仕事にする10職種まとめ|自分のスキルで課題に関わるキャリアの選び方


よくある質問

NPOの給料について、よく寄せられる疑問にお答えします。

Q. NPO法人の給料はどのくらいですか?

A. 内閣府が2024年3月に公表した2023年度の実態調査では、認定や特例認定を受けていない認証法人の場合、有給職員の年間給料手当総額は法人単位の合計で中央値118.8万円、常勤の有給職員に限ると中央値112.0万円でした。認定・特例認定法人ではそれぞれ中央値600.0万円、444.6万円と、規模が大きいほど総額も高くなる傾向です。これは法人全体の給与総額であり、職員1人当たりの年収を直接示す数字ではありません。常勤か非常勤か、法人の規模によっても幅があります。

Q. NPOで働くと給料は本当に安いのですか?

A. 一概には言えません。内閣府の調査では、認証法人の常勤有給職員数の中央値は1.0人と小規模な体制が多く、給与総額は法人ごとに幅があります。一方、認定・特例認定法人は職員数・収益規模ともに大きく、事業型NPOや規模の大きな団体では、民間企業に近い待遇の求人も見られます。NPO法人CoCoTELIで働く山縣勇斗さんは「給料が高いわけではないが、最低限生活していける」と語っており、団体の規模や財源によって実態は異なります。

Q. NPO法人の職員に給料を払うことは違法ではないのですか?

A. 違法ではありません。NPOの「非営利」とは、利益を出してはいけないという意味ではなく、活動で得た利益を役員や会員に分配しないという意味です。職員への給与は労働の対価であり、内閣府NPOホームページも、役員が職員を兼務する場合の給与は役員報酬に当たらないと説明しています。特定非営利活動促進法には、報酬を受ける役員を役員総数の3分の1以下とする規定がありますが、これは役員報酬のルールで、職員の給与を制限するものではありません。

Q. NPO法人の給料はどこから支払われますか?

A. 内閣府の2023年度調査によると、NPO法人の主な収入源は会員からの会費収入、個人や民間からの寄附金、行政や民間からの助成金・補助金、利用者からの料金収入、行政からの委託事業などです。認証法人では会費収入が23.7%で最多、認定・特例認定法人では個人や民間からの寄附金が25.3%で最多でした。給料はこうした収入から人件費として支払われるため、財源の種類や安定性によって、法人ごとの給与水準や採用計画が左右されます。

まとめ

NPOの給料は、法人の規模や財源によって幅があり、一律に安い、高いと言い切れるものではありません。

内閣府の調査が示すように、役員以外の職員を置く法人は7割を超え、非営利という仕組みのもとでも、労働の対価として給料を受け取ることは合法かつ一般的です。

気になる法人があれば、求人情報や活動報告を確認し、財源の構造や職員体制まで見てみることをおすすめします。

NPOで働く団体をもっと知りたくなったら、ココキャリアに載っている団体のページを開いて、活動内容や求人の有無を確かめてみてください。

給料の実態を知った上で自分に合った関わり方を選ぶことが、後悔のないキャリアにつながります。

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