私たちの生活は、プラスチックという素材なしには成り立たないほど、深くその利便性に依存しています。

軽量で耐久性に優れ、どんな形にも加工できるプラスチックは、日常生活のあらゆる面で使われています。

しかし、この広範な利用が引き起こす環境への影響もまた、無視できないほどに大きなものとなっています。

この記事では、生活に欠かせないプラスチックの現状から、プラスチックごみ問題の深刻さ、種類と流出量、そして海への排出実態に至るまでを概観し、問題解決に向けた取り組みの現状と課題を考察します。

八千代エンジニヤリングの事例をはじめとするマクロプラスチックの把握や回収事例を通して、今後の方向性についても探ります。

プロフィール
執筆者:吉田拓司

八千代エンジニヤリング 海洋プラスチックごみ対策担当
2008年、八千代エンジニヤリング株式会社入社。専門は環境管理計画、陸域から海域へのプラスチック排出量の実態など。
https://www.yachiyo-eng.co.jp/

生活になくてはならいプラスチックの現状

現在の生活になくてはならないプラスチックは1950年代に世界的に普及し、OECD(経済協力開発機構)によると、2019年には世界中で年間約4.6億トン※1ものプラスチックが生産されています。

私たちの普段の生活でもあらゆるところにプラスチックは存在していて、自宅を見渡してもプラスチック製品はすぐに見つけることができるでしょう。

特に顕著なのがスーパーやコンビニ、ドラックストアなどに置かれる消費材で、プラスチックに梱包されていない商品の方が少ないと思うほどありふれています。

これほどまでにプラスチックが生活に欠かせないものとなった背景には、プラスチックには「軽い、壊れにくい(破れにくい)、水に強い」という特徴があり、紙や木、ガラスや鉱物などほかの自然由来の素材に比べて非常に私たちにとって扱いやすいためです。

しかし、消費材に活用されていることからも分かる通り、プラスチックは廃棄量も多いのが現状です。

次の章でプラスチックごみ問題について解説します。


プラスチックごみ問題の現状

プラスチックが適切にごみとして回収されずに放置されてしまうと、紙や木、ガラスや鉱物などほかの自然由来の素材に比べて「分解せずに残留しやすい」、水のなかでは「沈まずに遠くまで運ばれやすい」という特性を持つがゆえに、プラスチック問題として取り上げられるのです。

特に海洋プラスチック問題については、近年グローバル規模での社会問題として話題となっています。

SDGsの中では目標14.1.1「沿岸富栄養化指数 (ICEP)及び浮遊プラスチックごみの密度」と掲げられていいます※2

2019年にはG20大阪サミットで2050年までに追加的なプラスチック汚染をゼロとする目標「大阪・ブルー・オーシャン・ビジョン」が掲げられ首脳間で共有されました。

その後の2023年G7広島サミットにて、「大阪・ブルー・オーシャン・ビジョン」で掲げた目標を「10年前倒しの2040年まで」となりました。

この2040年という目標は、HAC(プラスチック汚染に関する高野心連合)※3が2022年8月22日に掲げた目標で、日本は2023年5月に加入しています。

参考:プラスチック汚染対策の条約策定交渉に関する高野心連合への我が国の参加


プラスチックごみの種類とその流出量

プラスチックごみの種類とその流出量を解説します。

プラスチックごみは、その大きさにより、5 mm 以下をマイクロプラスチック(Microplastics)、5 mmから25 mmをメソプラスチック(Mesoplastics)、 25 mmより大きいものをマクロプラスチック(Macroplastics)と分類していますが、5mmよりも大きいサイズをマクロプラスチックと呼ぶことが多いです。

OECDでは※1適切に処理されず環境(陸域)中に流出(漏洩)するマイクロプラスチック、マクロプラスチック(メソプラスチック含む)の量は、それぞれ毎年270万トン(東京ドーム6,750個相当)、7,900万トン(東京ドーム197,500個相当)と算定されています。

プラスチックごみの種類と流出量一覧

大きさ

名称

陸への流出量

5mm以下

マイクロプラスチック(Microplastics)

270万トン(東京ドーム6,750個相当)

5mmから25mm

メソプラスチック(Mesoplastics)

7,900万トン(東京ドーム197,500個相当)

 

25mmより大きいもの

マクロプラスチック(Macroplastics)


実態が不明。海域へのプラスチック排出量

海洋プラスチック問題となっているプラスチックの発生原因を知っていますか。

実は海にプラスチックごみを直接捨てていることが原因と認識している方が多いのではないでしょうか。

その要因も間違いはありませんが、プラスチックごみの約7割に至っては陸から海へ移動し、それが海洋プラスチック問題となっています。

具体的には、適切に処理されなかったごみが雨などで川に流され、「沈まずに遠くまで運ばれやすい」特徴があるので、そのまま海に流れ込んでいます。

では、どのくらいのプラスチックごみの量が陸から海へ流れ込んでいるのかは、以下の通り、各研究者が評価を実施しています。

■グローバル規模のプラスチックごみ排出量

  • 480~1,270万トン/年(東京ドーム12,000~31,750個相当)(Jambeck et al.※4
  • 115~241万トン/年(東京ドーム2,875~6,025個相当)(Lebreton et al. ※5
  • 41~400万トン/年(東京ドーム1,025~10,000個相当)(Schmidt et al. ※6
  • 80~270万トン/年(東京ドーム2,000~6,755個相当)(Meijer et al. ※7

■日本でのプラスチックごみ排出量

  • 2.1~5.7万トン/年(Jambeck et al.※4
  • 0.19~1.05千トン/年(Lebreton et al. ※5
  • 1.84千トン/年(Meijer et al. ※7
  • 0.21~4.78千トン/年(Nihei et al. ※8
  • 0.11~3.50千トン/年(Nakayama & Osako※9

上記の評価は、一部の地域のみを対象としていたり、実際にプラスチックが多く流出すると想定される出水時のデータが考慮されていない点が課題として挙げられます。また、データを見てわかるよう、算定結果に乖離が見られます。

上記のことからわかるように、陸から海へどのくらいのプラスチックごみが流れ込んでいるのかの実態が把握できていないのが現在の状況です。

マクロプラスチックの把握について(八千代エンジニヤリングの事例)

私はマクロプラスチックを対象としたモニタリングに着目しています。

出水時には、多くのごみが流れますが、ごみの量を測定には、オイルフェンスや直接サンプリングによる手法が一般的用いられています。

例として、直接サンプリングの場合は、実際に人が雨の中で直接ごみを網ですくいあげる方法のため、調査の安全性や作業負荷の課題があります。

さらにいつ降るかわからない雨の中でサンプリングを行うことになるため、データを取得することも困難です。

こういった課題を解決するために、八千代エンジニヤリングでは、インターバルカメラを用いて河川水表面を撮影し、画像解析(RIAD:River Image Analysis for Debris transport)※10をすることにより、プラスチックを含む人工系ごみの輸送量を把握するモニタリングを実施しています※11

RIADは東京理科大学 二瓶教授、愛媛大学大学院 片岡准教授が開発され、八千代エンジニヤリングで製品化をしています。

RIADについての詳細はこちら

この技術により、これまで明らかにされていなかったマクロプラスチックが「どの河川から、いつ、どのくらいプラスチックごみが流れるか」を把握することができ、科学的知見より得られたデータを用いて効果的な削減対策、さらにその削減効果を得られることが期待できます。


マクロプラスチックサイズのプラスチック回収事例

マクロプラスチックサイズの海洋へのプラスチック流出対策として、プラスチック回収に関する技術も紹介します。

オイルフェンス

オイルフェンスやネットフェンスなどを設置し、河川を浮遊するごみを捕捉し回収します。ごみの回収は、基本的には人力作業となります。河川・湖沼の特性(流速や水深)を十分に検討し、ごみの回収に危険を伴う場合は、船舶や重機により回収する方法もあります。

前田工繊株式会社

除塵ネット(河川除塵機)

海に流出するごみを減らすためのフローティングネット。通過するごみを集塵ネットで受け、網を河岸に寄せて人力で回収し、ゴンドラでごみを堤防上に引き上げます。ダム・貯水池などに流入する流木や塵芥などから、水門や取水設備などを保護するために開発されたものですが、豊富なラインナップがあり、目的や設置場所の環境条件に応じて、テーラーメードが可能です。

藤沢市

ごみ回収船を使ったプラスチックごみの収集(The Ocean Cleanup)

ごみが流れに沿って浮遊するためのバリアーを河川の上流に設置し、流れ込むプラスチックごみを双胴型のごみ回収船により回収するツールです。河川ごみをバリアーによってごみ回収船の開口部に向かって誘導し、河川の流れによりベルトコンベア上にごみを移動させ、ベルトコンベアが水中からごみを連続的に取り出し、回収船にごみを送り込みます。ごみが満杯になると、オペレーターは、バージを撤去して川岸に運び、ごみ箱を空にし、地元のごみ処理施設にごみを引き渡します。

The Ocean Cleanup

海洋プラスチックごみ回収装置(Seabin)

海や湖などの水面に浮遊するごみを回収する装置です。吸込み口を上下に稼働させながら、水面に浮遊するごみを周囲の水とともに吸い込む形で回収します。吸い込まれたごみはキャッチバッグで回収され、水はポンプで水中に戻されます。平均回収量は1日当たり1.5kg(1年で1/2トンを超えるごみの量)です。

Seabin

水面に浮遊するごみを回収する清掃ロボット(JELLYFISHBOT)

水面に浮遊するごみを回収する海洋ドローン。3種類の収集ネットやオイルシート、吸着剤を使用することで、マイクロプラスチックや油など様々なごみを回収することが可能です。リモコンで簡単に操作できることができます。

JELLYFISHBOT

 

まとめ

海洋プラスチック問題を解決していくために、一つの組織のみ(国や県、一つの企業)では出来ることが限られています。そこで多くのステークホルダーと連携することが重要です。

私たちも海洋プラスチック問題への取り組みを、多くのステークホルダーと連携し進めていますが、熱い想いの人たちが集まり、一緒に行動をすると、自信もやる気も出てくると同時に、きちんと前に進んでいると感じています。

「解決すべき課題に向かって、社会に貢献しているか」「何が出来て、何が分かっていなくて、何が必要か」を意識しながら行動することを心がけています。

※1 OECD:Global Plastic Outlook (2022).

※2 一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク:基本解説そうだったのか。SDGs,pp.1-106,2017.

※3 High Ambition Coalition to end plastic pollution:2040年までにプラスチック汚染を終わらせるとの目標を掲げ、持続可能な水準のプラスチックの生産・消費、プラスチックの資源循環(リサイクル)の促進、プラスチックごみの適正管理等を追求する国家のグループ。ノルウェー及びルワンダが共同議長を務める。

※4 Jambeck, J. R., Geyer, R., Wilcox, C., Siegler, T. R., Perryman, M., Andrady, A. and Law, K. L.: Plastic waste inputs from land into the ocean, Science, Vol.347, Issue 6223, pp.768-771, 2015.

※5 
Lebreton, L.C.M., van der Zwet, J., Damsteeg J.-W., Slat, B., Andrady, A.and Reisser, J.: River plastic emissions to the world’s oceans, nature communications, Vol.8, pp.1-10, 2017

※6 
Schmidt, C., Krauth, T. and Wagner, S.: Export of Plastic Debris by Rivers into the Sea, Environ. Sci. Technol., Vol.51, pp.12246-12253, 2017.

※7 Meijer, L. J. J., van Emmerik, T., van der Ent, R., Schmidt, C. & Lebreton, L. :  More than 1000 rivers account for 80% of global riverine plastic emissions into the ocean. Sci. Adv. Vol.7, pp.1-13, 2021.

※8 
Nihei, Y., Yoshida, T., Kataoka, T. and Ogata, R.: High resolution mapping of Japanese microplastic and macroplastic emissions from the land into the sea, Water, Vol.12, Issue 4, pp.1-26, 2020.

※9 
Nakayama, T. & Osako, M.: Development of a process-based eco-hydrology model for evaluating the spatio-temporal dynamics of macro- and micro-plastics for the whole of Japan, Ecol. Model, vol. 476(C), pp.1-11, 2023.

※10 
Kataoka, T.and Nihei, Y.:Quantification of floating riverine macro-debris transport using an image processing approach. Scientific Reports, Vol.10, pp.1–11, 2020.  

※11  吉田拓司,藤山朋樹,片岡智哉,緒方陸,二瓶泰雄:IPカメラ連続観測と画像解析手法に基づく複数出水時の河川人工系ごみ輸送特性の比較,土木学会論文集B1(水工学),Vol.77, No.2, pp.I_1003- I_1008, 2021.