※本記事は、認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン様からの情報提供で作成しております。
認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンは2017年より日本国内の子どもの貧困対策事業として、低所得のひとり親家庭への食品支援事業「グッドごはん」を運営し、ひとり親世帯への食品配付を行っています。
今回、グッドごはんを利用するひとり親を対象にアンケートを行い、子どもの冬休みの過ごし方や年末年始期間中の家計などに対する不安・困りごとについて調査しました。
調査の結果、困窮するひとり親家庭は冬休み・年末年始の期間中、子どもの心身の健康が脅かされるほどの生活難に陥るケースが懸念されるなど、貧困のリスクに一層さらされる可能性があることが明らかとなりました。
アンケート概要
「子どもの冬休み・年末年始期間中におけるひとり親家庭の不安・困りごとに関するアンケート」
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実施日程:2023年12月1日~12月10日
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対象者:「グッドごはん」の食品受取に申し込んだ首都圏・近畿圏・九州の利用者(首都圏は主に東京・神奈川・埼玉・千葉 / 近畿圏は主に大阪・京都・兵庫・奈良 / 九州は主に佐賀・福岡) ※利用者は、ひとり親家庭等医療費受給者証保有者に限る(ひとり親家庭等医療費受給者証とは、18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証)
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回答方法:アンケート回答フォームへの入力(オンライン)
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回答者数:3,550名(首都圏1,838名 / 近畿圏1,515名 / 九州197名)
本アンケートでは、「子どもの今年の冬休みの過ごし方に関する困りごと」「冬休み・年末年始期間における家庭での困りごと」(選択式)、および「冬休みの家計や生活全般で不安に思うこと」(自由記述式)について回答を得ました。
その結果、有効回答者全体の約9割が、冬休み・年末年始期間の生活において何らかの心配や困りごとを抱えていることがわかりました。
【子どもの今年の冬休みの過ごし方に関する困りごと】
●「冬休み明けに、みんなの楽しそうな旅行のお話を、どんな気持ちで聞くのだろう」
子どもの今年の冬休みの過ごし方に関する困りごとの内容として、上図のとおり、「体験活動(旅行やレジャー、文化的体験など)をする予定がないこと」の選択率が最も高くなっており、回答者の過半数が当項目を選択しました。
子どもが様々な体験に触れることは、主体性や豊かな感性、問題解決力など、あらゆる能力や個性を育む点で重要であることが文部科学省の調査[1]などでわかっています。子どもが得る体験の質や量は家庭環境により差が出やすいと考えられ、体験活動の不足が子どもの成長や将来に及ぼす影響が懸念されます。
この困りごとに関連した内容で、自由記述の回答には下記のような声が寄せられました。
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年末年始に新幹線や飛行機で旅行に行くお友達が多い中、冬休みにどこにも連れて行ってあげることができません。冬休み明けに、みんなの楽しそうな旅行のお話を、どんな気持ちで聞くのだろうと胸が締め付けられます
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楽しい場所に連れていく予定がないのに、学校では週末日記や冬休みの思い出など書かなくてはいけない事が憂鬱
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1度で良いから旅行に行ってみたいと言われることが辛い
●子どもを家で一人にさせることへの不安 「一人の時、寒くても子供は暖房器具を使わない」
子どもの今年の冬休みの過ごし方に関する困りごととして、4割の回答者が「一人またはきょうだいだけで家で過ごす時間が多くなること」を選択しました。
冬休みの間、子どもを家に残して仕事に行かざるを得ない場合もあり、以下の回答にみられるようにもどかしい思いを抱いているひとり親も少なくありません。
「日曜日や年末年始も収入のために働きに出ますが、子供の学童は休業になるので、家に子供一人にしなくてはなりません。特別年末年始らしいこともしてあげられず、その上学童もなく1人で過ごさせるのが可哀想だと感じています。それでも、出勤しなければ収入が減るのでジレンマを抱えています」
グッドネーバーズ・ジャパンがグッドごはん利用者を対象に行った過去のアンケート調査[2]では、回答者の56%が非正規雇用で就労していることがわかりました。時給制で賃金を得ている場合も多く、仕事に時間を費やすため、親が子どもと過ごす時間を十分に確保できない家庭がみられます。
冬休み中の子どもの過ごし方については他にも、“子どもが一人で家にいる間、電気代を気にして暖房器具を使わない”との声が寄せられています。
暖房の使用に関しては、3割を超える回答者が「家で暖房を使いたいときに使えないこと」を選択しており、下記のとおり切実な声があげられました。
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暖房はつけてねと伝えていますが、年頃の子供は家や私のことを考えて我慢しているようで、申し訳ないです
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暖房器具はありますが、電気代節約の為に一切使用出来ません
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部屋の中でコートを着ているので暖房はつけません
●食事を満足にとれない不安を抱えるケースも
困りごととして「十分な食事をとれないこと」を選択した回答者もみられます。冬休み期間中は学校給食がないため家庭で満足な食事を子どもに用意できるのかという不安から、自由記述回答では、以下のような厳しい状況を伝えるコメントがみられます。
「普段から朝食はナシ、土日祝はお昼ご飯も僅かしか食べさせられないが長期休みになると光熱費が増え更に食費を削る事になってしまい子ども達に申し訳なく思う」
【冬休み・年末年始期間における家庭での困りごと】
●冬休み・年末年始に増える支出と物価高騰が、ひとり親家庭の家計を圧迫
上図のとおり、冬休み・年末年始期間中の家庭での困りごととして、「家にいる時間が長くなるため、水道光熱費や食費の支出が増えること」の選択率が最も高く、8割近くの回答者が当項目を選択しました。
この困りごとに関して、自由記述回答には以下のような声が寄せられています。
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光熱費、食費がかさむのでどう切り抜けたら良いか悩みます。昨年は暖房を使わずに冬を乗り切りましたが、今年もやはりそうする事が節約の一つになりそうです
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年末年始は食費、光熱費全てにおいて1番お金がかかる上、物価高騰、給料は休みの分少なくなり1番大変な時期です
冬休み・年末年始期間における光熱費や食費などの支出増大に関連し、物価高騰に対する悩みや不安の声が多くあげられています。自由記述回答では、「光熱費も物価も去年より明らかに上がり追いつかない」「寒いですが、光熱費高騰のため、家にいないようにして外のビルの中で暖を取る。虚しいです」などのコメントがみられました。
●季節のイベントで食事やプレゼントを用意できない・・・「我が家の状況は他と異なることを思い知らされる」
冬休み・年末年始期間中の家庭での困りごととして、回答者の半数以上が「お正月・クリスマスなど季節のイベントに際して特別な食事や品物を用意したくてもできないこと」を選択しました。食費や光熱費などがかさみ家計が苦しい中、季節のイベントを子どもに楽しませてあげる余裕がないことに対し苦悩する声が寄せられています。
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お正月、クリスマスなどのイベントの度に子供の希望通りの用意ができず、親子関係もギスギスしてしまい、せっかくのイベントなのに、と自分の不甲斐なさも痛感し、胸がくるしくなります
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クリスマスプレゼントやお正月のお年玉、冬休みの過ごし方など、子どもがお友だちとの会話についていけない、我が家の状況は他と異なることを思い知らされる時期なのが悩みです
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保育園でクリスマスプレゼントの話を友達としているみたいで、サンタさんにプラレールお願いすると言っていますが到底経済的に買ってあげられません。切ないです
【おわりに】 困窮するひとり親家庭が一層“見えない貧困”に陥るリスクのある長期休み
本アンケート調査では、子どもの冬休み・年末年始期間において、ひとり親家庭が抱える心配や不安、困りごとの内容を明らかにしました。
子どもの冬休みの過ごし方に関する心配として「体験活動(旅行やレジャー、文化的体験など)をする予定がないこと」、家庭での困りごとでは「お正月・クリスマスなど季節のイベントに際して特別な食事や品物を用意したくてもできないこと」が比較的高い割合で選択されました。
長期休みや季節のイベントを通して子どもが得る思い出・経験の質や量は、家庭環境により差が出やすいと考えられます。文部科学省の調査[1]では、他の子どもたちがやっていることを経験したことがないと、それがコンプレックスになってしまう場合があると指摘されており、“体験格差”が子どもの心理面や将来に与える影響が懸念されます。
冬休み・年末年始期間中の生活面では、回答者の多くが水道光熱費や食費の増加に不安を抱いていることがわかりました。自由記述回答では、昨今の物価高騰がその不安に拍車をかけている様子が明白にみられます。
「物価高騰で何もかも厳しい」
「お風呂はなし。シャワーのみです。お風呂に入りたいなと子供に言われますが物価が高騰しているので難しい」
このような声が聞かれ、切迫した生活を余儀なくされるケースがあると見受けられます。
本アンケート結果より、冬休み・年末年始の期間中、困窮するひとり親家庭はより困難な暮らしに陥ると推察されます。しかし、家で満足に食事や暖をとれないことや、体験活動の少なさにより子どもが負の影響を受ける可能性があることは、周囲からは明確に気づかれない場合が多いと考えます。これは“見えない貧困”であり、困窮するひとり親家庭が孤立を深め、困難な状況が深刻さを増していく可能性が危惧されます。
未来の社会を担う子どもの心理面・身体面での健やかな成長は、将来にわたり安定した社会が守られるための糧となり得ます。そのため、困窮家庭の生活苦は家庭内にとどまる問題ではなく、社会として取り組むべき課題であると考えられます。
長期休みの期間中、より一層厳しい状況に置かれやすい低所得のひとり親家庭の困難から目をそらすことなく、すべての子どもたちが安心して暮らせるよう、効果的な対応策を社会全体で整えることが求められます。
[1]文部科学省 令和2年度 青少年の体験活動に関する調査研究報告書[2]アンケート調査概要
アンケート名:グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業利用者の収入に関するアンケート(関連記事:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000075.000005375.html)
・実施日程:2023年1月26日~2月27日
・対象者:グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業「グッドごはん」の利用者 ※利用者は、ひとり親家庭等医療費受給者証保有者に限る(ひとり親家庭等医療費受給者証とは、18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証)
・回答方法:アンケート回答フォームへの入力(オンライン)
・有効回答者数:919名
・回答者の主な居住地域:首都圏(東京・神奈川・埼玉)および 近畿圏(大阪・京都・兵庫・奈良)
団体について
特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパンは、国際組織グッドネーバーズ・インターナショナルの一員として、2004 年に開設されました。「子どもの笑顔にあふれ、誰もが人間らしく生きられる社会」を目指し、国内外の子ども支援を行っています。公益性の高い団体である「認定NPO 法人」として東京都から認可を受けています。
https://www.gnjp.org/
ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」とは
「グッドごはん」とは、ひとり親家庭等医療費受給者証をもつ、所得が限度額未満のひとり親家庭を対象に、食品を無料で配付する事業です。
企業や個人の寄付によって集まった、お米や調味料、レトルト食品、お菓子など、約10,000円相当のカゴいっぱいの食品を毎月ひとり親家庭に配付しています。
2023年11月時点で、首都圏、近畿圏および九州において約50か所に配付拠点を設けています。
https://www.gnjp.org/work/domestic/gohan/
※通常、配付拠点に直接取りに来られる方を対象に食品を配付しています。
※生活保護受給中の方は対象外です
情報元サイト:PR TIMES
>オリジナルサイトで見る
この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。