※本記事は、株式会社坂ノ途中様からの情報提供で作成しております。
環境負荷の小さな農業を広げるべく、バリューチェーンの再構築に日本と東南アジアで取り組む株式会社坂ノ途中は、国連WFPと、ラオスでコーヒー生産に取り組むSAFFRON COFFEE(サフロンコーヒー)の3者で契約を締結し、ラオス北部でコーヒー生産支援を通じた生活・栄養改善プロジェクト「Cocreation of Food Security for Farmers with Economic Empowerment with Japan (COFFEE-JAPAN) プロジェクト」をはじめます。
背景
坂ノ途中では、2016年より東南アジアをはじめとするコーヒー生産地で「アグロフォレストリー」と呼ばれる、木々を伐採せず森の中で農作物を育てる農法でコーヒー栽培を促進し、生産地域の森林保全とコーヒー生産者の収入向上に取り組んできました。この取り組みをはじめたのは、ラオス北部のルアンパバーン県で、本プロジェクトの対象地域でもあります。この地域では伝統的に焼畑農業を行いつつ、人々は自然と共生した暮らしを営んできました。しかし近年、ゴムやトウモロコシなどの大規模プランテーション農業の拡大や焼畑農業のサイクルの加速により、森林がかつてないスピードで減少し、森とともにあった人々の暮らしや豊かな実りが失われつつあります。これは、他の東南アジアの地域でも起こっている状況です。
坂ノ途中は、森林の中で育つコーヒーに注目しました。コーヒーはアグロフォレストリーに適しており、木陰のもと、じっくりと熟すことによって品質の高いコーヒーチェリー(コーヒーの果実)ができます。毎年、スタッフが産地に通って栽培・収穫・精製の指導や支援を行い、生産されたコーヒーを輸入・販売することで生産者の収入の安定につなげています。そうして環境負荷の大きな焼畑農業や大規模プランテーション農業に依存しない生活基盤を築き、森林減少の緩和と再生に貢献しています。
今回、これまでの取り組みと実績が評価され、国連WFP及び現地パートナーのサフロンコーヒーとともに、持続可能な地域社会の実現に向けたプロジェクトを約3年間実施します。
2024年2月15日(木)には、ラオスのルアンパバーン県にて、国連WFP、サフロンコーヒー、坂ノ途中、そしてラオス国農林省、日本国大使館の5者で調印式を執り行いました。
プロジェクト概要
本プロジェクトは、ラオス北部のコーヒー生産者への生産支援と、彼らの生活・栄養状態の向上を目的としています。
坂ノ途中は、サフロンコーヒーとともに、ルアンパバーン県ビエンカム郡の4村とポンサーイ郡の4村のコーヒー生産者に、苗木の配布、栽培と収穫に関わる技術・知識を共有するワークショップを行い、コーヒーの収量拡大と森林保全に取り組みます。また、品質の高いコーヒーを作って付加価値を高められるよう、コーヒーチェリーを加工する設備の導入や加工全体の技術指導も実施します。コーヒー生産による収入で食料へのアクセスが増え、彼らの生活と栄養状態の改善が期待できます。
国連WFPは、生産者の各家庭の栄養状態などを調査し、支援が必要な家庭へ栄養価の高い果物や野菜の栽培方法、家畜や魚などの飼育方法、乳幼児の食事、水や衛生の重要性などに関する指導を重点的に行います。
調印式に先立ち、2023年10月に国連WFPラオス事務所、サフロンコーヒー、各県及び各郡の行政関係者との顔合わせを行うとともに、ポンサーイ郡の4村(ロンラット村、チョムチアン村、フアドイ村、ホーアイロンサン村)を訪問し、プロジェクトの概要を現地の住民に対して説明するワークショップを実施しました。
ラオス北部地域の現状と目標
国連WFPによると、プロジェクトを実施するラオス北部地域では以下のような現状が報告されています。
・5歳以下の子どもたちのうち33%が発育阻害の傾向がある
・5歳以下の子どもたちのうち44%と、15歳~49歳の女性のうち39%が貧血状態
・生後6ヵ月~23ヵ月の乳幼児のうち十分に栄養が取れているのは4人に1人
・妊産婦の半数以上が推奨量とされる栄養が不足している
現在、ラオスのコーヒー生産の8割が南部で行われています。一方、北部は近年コーヒーの生産地として注目を集めており、フランス政府の協力によるコーヒーの品質向上プロジェクトや、ドイツとルクセンブルクの資金協力によるアヘン栽培からコーヒー栽培への転換プロジェクトも実施されています。
土壌や環境の観点からコーヒーの生産地としてのポテンシャルのある地域ですが、ほとんどの生産者が零細農家で、コーヒーの栽培知識が不足し、収量と品質ともに課題があるのが現状です。
目標指標
プロジェクトの目標指標は以下の通りです。
1.2026年までにリスクにさらされている対象地域の人々の食料・栄養・収入が保障され、気候変動やその他の出来事に対するリスク軽減・対応能力を強化する。
指標1.1 ターゲットとなる家庭の食料摂取スコア消費指数(FCS)を20%上げる。
指標1.2 ターゲットとなる家庭の対抗戦略指標 (CSI)を20%上げる。
指標1.3 コーヒーの収量について、ポンサーイ郡における2022/23クロップのコーヒーチェリーの収穫量10トンを2025/26クロップでは24トン(2.4倍)にまで増やす。ビエンカム郡における2022/23クロップのコーヒーチェリーの収穫量0.4トンを2025/26クロップでは10トン(25倍)にまで増やす。
2.栄養不良のリスクに晒されている、特に妊娠・出産適齢期の女性や5歳以下の子どもたちの栄養課題に関する結果をラオス政府の目標に沿って2026年までに改善する。
指標2.1 ターゲットとなる妊娠・出産適齢期の女性の栄養状態評価指標を20%上げる。
指標2.2 ターゲットとなる6ヵ月~23ヵ月の乳幼児の最低食事水準を20%上げる。
株式会社坂ノ途中 代表取締役 小野邦彦 コメント
環境への負担の小さい農業を広げるというチャレンジをしている当社は、2016年に海外事業部「海ノ向こうコーヒー」の元となるプロジェクトをラオス北部のルアンパバーンから始めました。今回、国連WFP、サフロンコーヒーとともにこの思い入れのある地でプロジェクトをはじめることができ、とてもうれしく思っています。収穫を迎えたコーヒー豆は、国連WFP、サフロンコーヒー、農家さんたちの想い、そしてラオスの文化や暮らしとともに、日本中のカフェやロースターさんに紹介していきます。
国連世界食糧計画 ラオス事務所 栄養部門政策担当 田才諒哉 コメント
本プロジェクトは、国連WFPラオスとして初めての取り組みとなる民間企業との協働案件です。坂ノ途中による技術協力とマーケティング、WFPによる栄養改善活動のシナジーによって、ラオスの小規模コーヒー生産者とそのコミュニティが豊かに暮らせるようになることをともに後押ししていきたいと思います。
サフロンコーヒー 代表 トッド・ムーア コメント
本プロジェクトは国連WFP、坂ノ途中、サフロンコーヒーの連携のもと行われ、ラオスのコーヒー農家の収入向上に貢献するものです。プロジェクトに参加する各コーヒー農家の栽培面積を1ヘクタールとすることをひとつの目標としています。現在のコーヒーの取引価格で考えると、その目標を実現できれば、プロジェクトに参加する農家はコーヒーの収入だけでラオスの平均年収相当を得ることができるでしょう。プロジェクトはこれから約3年間かけて行われますが、同時にそれは数十年先の未来にとっての成果にもなりうるものだと考えています。農家のみならず、ラオスと日本双方の経済活動にも利益をもたらすものだと思います。また経済的な利益だけではなく、日陰でも栽培が可能なコーヒーはラオス北部地域にとって重要な作物でもあり、焼畑や森林破壊などの環境問題の解決にもつながります。
ピーク時には1ヘクタール当たり500㎏~700㎏ほどのスペシャルティコーヒーの生産が見込まれ、ラオス国内のみならず日本へも流通していくでしょう。
株式会社坂ノ途中について
「100年先もつづく、農業を」というメッセージを掲げ、農薬や化学肥料不使用で栽培された農産物の販売を行っている。提携生産者の約8割が新規就農者。少量不安定な生産でも品質が高ければ適正な価格で販売できる仕組みを構築することで、環境負荷の小さい農業を実践する生産者の増加を目指す。その他、東南アジアの山間地域で高品質なコーヒーを栽培することで森林保全と山間地での所得確保の両立を目指す「海ノ向こうコーヒー」も展開。農業分野を代表するソーシャルベンチャーとして事業成長を続けている。
京都市「1000年を紡ぐ企業」、経済産業省「地域未来牽引企業」「J-Startup Impact」など、受賞多数。
・Web:https://www.on-the-slope.com
・X(旧Twitter):https://twitter.com/saka_no_tochu
・Instagram:https://www.instagram.com/sakanotochu
会社概要
代表者:小野 邦彦
本社所在地:京都市南区上鳥羽高畠町56
設立日:2009年7月21日
資本金:397百万円
Web:https://www.on-the-slope.com
情報元サイト:PRTIMES
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この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。