2023年10月は、「食」と「海」をテーマにしたソーシャルグッドな取り組みが印象的な月でした。
ひとつは、パナソニック株式会社が提供する食品ロス削減マッチングサービス「ごはんのわ」のリニューアル。地域活性事業を手がける株式会社フューチャースピリッツが参画し、複数自治体で使いやすい仕組みへと進化しました。
もうひとつは、秋田県で行われた「あきた海ごみゼロプロジェクト」による、ごみ拾いイベント「出発!釣りキチ三平ごみ拾い隊」。ABSまつりと連動し、来場者参加型で楽しく清掃活動を行う取り組みです。
本記事では、この2つの取り組みを「食品ロス」と「海洋ごみ」の視点から整理し、社会課題とキャリアの観点で読み解きます。
今月のトピックサマリー
・食品ロス×地域経済
事業者から出る食品ロスを、住民の「お得な購入機会」としてマッチングするサービス「ごはんのわ」が、UI改善や複数自治体対応などを通じてリニューアル。食品ロス削減と地域のにぎわいづくりの両立を目指しています。
・海洋ごみ×市民参加
秋田市で開催された「ABSまつり2023」と連動し、「釣りキチ三平」と一緒に会場周辺のごみ拾いを行うイベントを実施。オリジナルごみ袋や「拾い箱」を活用し、楽しみながらごみ問題を自分ごと化する仕掛けがつくられました。
食品ロス削減サービス「ごはんのわ」を支える、フューチャースピリッツのリニューアル参画
※本記事は、株式会社フューチャースピリッツ様からの情報提供に基づき作成しています。
■事業者の食品ロスを、住民の「お得な購入機会」に
パナソニック株式会社が提供する「ごはんのわ」は、事業者から出る食品ロスを減らすことを目的としたフードシェアリングサービスです。地域の協力店が、まだ食べられる食品を掲載し、住民がそれを見て店舗へ足を運び購入することで、廃棄を減らしながら新しい来店機会を生み出しています。
サービスは実証実験から始まり、「もっと分かりやすく・使いやすく」「他の自治体にも展開しやすく」というニーズがありました。そこで、地域活性事業の知見を持つ株式会社フューチャースピリッツがリニューアルプロジェクトに参画し、基盤システムを食品ロス削減と地域活性化に特化した形で再構築しました。
■リニューアルで強化された3つのポイント
フューチャースピリッツが中心となって行った主な改善は次の3点です。
・UIの向上
初めて利用する人でも迷わず操作できるよう、画面構成を整理し、シンプルで直感的なデザインへ改修。検索から購入までの導線をスムーズにしました。
・複数自治体対応
特定の自治体内だけで完結していた仕組みを拡張し、他の自治体に登録された店舗の商品も表示できるように設計。ユーザーの生活圏や移動を前提に、地域の境界を越えた利用拡大を目指しています。
・店舗ランキング機能
参加店舗の食品ロス削減への取り組み状況をランキングとして可視化。どのお店を応援するかを住民が選びやすくなり、店舗側にはモチベーション向上やPRのきっかけを提供します。
■フューチャースピリッツの背景と、「社会課題×IT×公共」のキャリア
フューチャースピリッツは、「“つながり”から未来をつむぐ」をミッションに掲げ、ホスティングサーバーやクラウド構築・運用、Webシステム開発などを手がけるIT企業です。
自治体のDX支援や健康ポイント事業、新規事業開発支援など公共分野での実績も多く、官公庁・地方自治体・企業と連携しながら、クラウド技術を活用したサービスを展開しているのが特徴です。
COCOCOLOREARTHとしては、
・食品ロス削減
・地域の小売支援
・行政との連携
を、ITとクラウド基盤で支える好例だと捉えています。
画面の使いやすさやランキング機能など、「人が行動したくなる仕掛け」にきちんと投資している点は、社会課題系サービス設計の参考になります。
キャリアの観点では、
・自治体DX・公共×クラウド
・フードテック・サーキュラーエコノミー
に関心がある人にとって、「裏側でどんなプレーヤーが動いているか」を知るケーススタディと言えます。
情報元サイト:PR TIMES
>オリジナルサイトで見る
◆あきたの海ごみゼロへ!釣りキチ三平ごみ拾い隊と楽しみながら清掃活動
■ABSまつりと連動した、ごみ拾いイベント
「あきた海ごみゼロプロジェクト実行委員会」は、秋田の人気イベント「ABSまつり2023」と連動し、「出発!釣りキチ三平ごみ拾い隊 ABSまつりでみんなでenjoy清掃活動」を実施しました。
日程:2023年10月8日(日)
場所:秋田市「エリアなかいち」
会場では、オリジナルごみ袋を配布し、来場者に会場周辺のごみ拾いを呼びかけ。集めたごみは「拾い箱」に分別して捨てる仕組みが用意されていました。
■キャラクターと一緒に、海ごみ問題を自分ごと化
このイベントは、日本財団が推進する海洋ごみ対策プロジェクト「海と日本プロジェクト・CHANGE FOR THE BLUE」の一環として開催されています。
ステージには、プロジェクトのシンボルキャラクター「釣りキチ三平」が登場。ABSの広報キャラクターも見守る中、海ごみゼロを目指す活動や拾い箱プロジェクトについて紹介し、会場の人たちに周辺のごみ拾いを呼びかけました。
会場では、
・「釣りキチ三平だ!」と懐かしむ大人
・キャラクターを知らなくても「かわいい」と一緒に写真を撮る子どもたち
・配布されたごみ袋で実際にごみ拾いをし、拾い箱の前で分別する家族連れ
といった姿が見られ、世代を超えて海ごみ問題への関心を高める場になりました。
■あきた海ごみゼロプロジェクトと「CHANGE FOR THE BLUE」
秋田県は日本海に面した長い海岸線と、多くの河川を持つ地域です。海洋ごみの約8割が街から川を通じて海へ流れ出ると言われる中で、あきた海ごみゼロプロジェクトは、海岸だけでなく内陸部での活動にも力を入れています。
・さまざまな業界・団体と連携してイベントや清掃活動を企画
・海洋ごみの現状を見える化し、県民に「ふるさとの海を大切にする」意識を広げる
といった取り組みを進めています。
「CHANGE FOR THE BLUE」は、「これ以上、海にごみを出さない」社会を目指し、産官学民が連携してアクションモデルをつくり、国内外に発信しているプロジェクトです。
COCOCOLOREARTHとしては、
・海ごみ=海辺での清掃、というイメージにとどまらず
・まちのイベントと連動させて内陸部から動く
というアプローチが印象的だと感じています。
キャラクター×テレビ局主催イベント×市民参加という掛け合わせで、「環境問題は難しいもの」という印象をやわらげている点も特徴的です。
キャリアの観点では、
・環境教育・啓発
・ローカルイベントづくり
・メディアと連携したキャンペーン設計
といった領域で働きたい人に、多くのヒントがある取り組みです。
情報元サイト:PR TIMES
>オリジナルサイトで見る
◆編集部から:2023年10月を振り返って
2023年10月は、
・食品ロス削減と地域の店舗支援を同時に実現しようとする「ごはんのわ」のリニューアル
・大規模イベントと連動し、楽しみながらごみ拾いに参加できる「あきた海ごみゼロプロジェクト」の清掃イベント
という、「行動のハードルを下げる工夫」が共通した2つの取り組みが印象的でした。
どちらも、
・難しい社会課題を“知識の話”で終わらせず
・日常の行動(買い物・イベント参加)の延長線上で
・「自分も参加できる」形に落とし込んでいる点が特徴です。
「社会にいいを仕事にしたい」と考える人にとっては、
・プラットフォームづくり(UI・ランキング・複数自治体対応)
・参加型キャンペーン(キャラクター・イベント・メディア連携)
など、課題と人の行動をつなぐ仕事のあり方を考えるヒントになる月だったと言えそうです。
※本記事で紹介した各取り組みは、掲載元プレスリリースおよび公式情報をもとに、COCOCOLOREARTH編集部が再構成しています。

この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。
