現在、ChatGPTをはじめとしたAIがさまざまな場面で活躍しています。

そのAIに限らず、さまざまなデジタル技術を利用して農業の生産性を高めようとする取り組みがスマート農業です。

衰退している日本の農業を再興するためにも現代のデジタル技術は鍵となるでしょう。

今回の記事ではそのスマート農業について実例を交えて紹介します。

 

スマート農業とは

スマート農業とは、農林水産省によれば「ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業」と定義しています。

スマート農業:農林水産省

現在は第四次産業革命と呼ばれ、ICTが日進月歩で発展しています。

そのICTやロボット、さらにデータサイエンスを用いて、効率的に品質の高い農作物を生産する取り組みを言います。

 1-1 スマート農業導入の背景と歴史

スマート農業は日本では2013年に農林水産省に専門の研究チームができました。

スマート農業をめぐる情勢について 

その背景は日本では農業離れが深刻で、農家の平均年齢が70歳近くになっていることが挙げられます。

農作業はもともと体力作業ですが、このような背景からICTの力を用いて省力化や品質向上による収入向上を目指しています。


スマート農業の事例とその長所

省力化・自動化システム (ロボット・管理システム)

上ですでに述べている通り、農作業は体力が必要です。

その一方で、現実問題として農業従事者の高齢化が進んできました。

そこで荷物の持ち上げを楽にするアシストスーツを着用することで、体力的な負担を減らすことができます。

また、農業人口の減少に対処するために自走式トラクターもあり、1人で2台のトラクターを操作できるようにし、作業時間の短縮を図っています。

ロボット農機:農林水産省 

アシストスーツ:農林水産省

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センサー・ドローン

ドローンというと、航空映像を撮るものというイメージが強いのではないでしょうか。

一方で、ドローンによって空中から農薬散布を行い、時間を短縮するだけでなく、人や機械が入りにくい場所でも農薬散布を行えます。

さらに、近赤外線など不可視光線をドローンのカメラで観測することによって生育状況のモニタリングを行うこともできます。

これによって効率よく肥料の散布等を行うだけでなく、農作物の品質向上に寄与できるのです。

農業用ドローン:農林水産省

ノウハウの蓄積・継承

農作業は個人の経験に頼ることが多く、技術を口頭や実際の経験以外で伝承することが難しい状況でした。

そこで、カメラで撮影した動画やマニュアル等によって熟練の農家の作業を残すだけでなく、地域に普及することによって地域全体の技術の向上を図っています。

また、熟練の農家が経験に基づいて行っている農作業の「タイミング」に着目し、定点センサーのデータなどと組み合わせることで各作業のタイミングを定量的に分析する取り組みもあります。

その他農産関係:農林水産省 


スマート農業の課題

導入コストや農業従事者のITリテラシー

上記で紹介したテクノロジーを導入するにはそれなりの金銭面のコストがかかります。

例えば、趣味用のドローンは10万円以下で手に入るものもありますが、農業ドローンの導入コストとして農林水産省は80万円~300万円としています。

加えて、農業従事者が機械の操作に慣れるには、それなりの訓練期間が必要になるでしょう。

規格の標準化

スマート農業は比較的新しい市場のため、サービスが百花繚乱の状態です。

ユーザーは自身に必要なものを選ぶことができますが、それを別のサービスと連携することは難しいです。

例えば、ドローンで取得したデータを自走式トラクターの動作に反映したい時に、システム間の互換性がないと、スムーズにできない恐れがあります。

農業市場の衰退

日本の農業は現在縮小傾向にあります。

それがスマート農業を発展させる動機になっているわけですが、縮小傾向ということは、企業が農業に関する技術の開発に投資する際の障壁になりえます。

したがって縮小する農業をなんとかしたいが、それでは会社として利益を最大化できないというジレンマがあるかもしれません。


スマート農業に取り組む企業3選

スマート農業に取り組む企業3社紹介します。

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株式会社クボタ

https://www.kubota.co.jp/

株式会社クボタは、農業のトータルソリューションカンパニーとして、農業機械の開発から、農作物の生産、加工、消費などをトータルサポートするソリューションを提供する企業です。

日本の農業従事者の減少や世界各国の農業問題に幅広く取り組んでいます。

ヤンマーホールディングス株式会社

https://www.yanmar.com/jp/

ヤンマーホールディングス株式会社は、農業機械、建設機械、エネルギーシステム、マリンエンジンなどの分野で製品とサービスを提供する企業です。

スマート農業への取り組みに力を入れており、農業機械の自動化やデータ管理システムの開発を通じて、農作業の効率化と生産性の向上を目指しています。

株式会社AGRI SMILE

https://agri-smile.com/

株式会社AGRI SMILEは、テクノロジーによって、産地とともに持続可能な農業と地域をつくることをミッションに掲げる企業です。

技術を集積・継承していくツールとしてのソフトウェア、集積されたデータを元に新技術を生み出すScience、両者の相互作用によって農業界の発展を支援しています。

株式会社AGRI SMILEの創業理由や事業内容を詳しく見る

まとめ

現在、日本の農業は縮小傾向で、省力化や収入向上のための品質向上が大きなテーマとなっています。

そのような課題解決のためにICTやデータの力を使うのがスマート農業です。

その一方で、その導入にはコストなどの大きな障壁があります。

この記事が、農業を再興するために社会としてどうしていくべきか、考えるきっかけになれば幸いです。