企業の持続可能性(サステナビリティ)への取り組みは、もはや“おまけ”ではなく、競争力を左右する経営課題です。
そんな中で企業の羅針盤となるのが「サステナビリティコンサルタント」。
環境・社会・ガバナンス(ESG)の視点から戦略策定や実行支援を行い、脱炭素や循環型経済の推進をリードします。
本記事では、「サステナビリティコンサルタントとは何か」から、具体的な業務内容、必要スキル、などわかりやすく解説します。
目次
サステナビリティコンサルタントとは?

サステナビリティコンサルタントとは、企業や自治体が環境・社会・ガバナンス(ESG)課題に取り組む際に、戦略策定から実行支援までをトータルにサポートする専門家です。
近年、脱炭素や循環型経済への移行が国内外で急務となり、多くの組織が持続可能性(サステナビリティ)を事業戦略に組み込むニーズを強めています。
その過程で必要となる「何を」「どのように」実行すべきかを示し、ステークホルダーとの調整や施策の効果測定まで関与するのが役割です。
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サステナビリティコンサルタントの主な業務内容

サステナビリティコンサルタントの主な業務内容について一例を解説します。
サステナビリティ戦略策定
企業の経営ビジョンや事業ポートフォリオを踏まえ、脱炭素や循環型経済といった長期的目標から、初年度のCO₂削減率やリサイクル率などの短期KPIまでを設計。
経営層とのワークショップやデータ分析を通じ、実現可能かつインパクトの大きいロードマップを策定します。
ESGリスク・機会の把握
サプライチェーンや製品ライフサイクルを詳細に調査し、温室効果ガス排出のホットスポットや未活用資源を特定。
リスクとしての法規制対応や自然災害、機会としての新市場開拓や省エネ技術導入を評価し、優先的に取り組む施策を提案します。
ステークホルダーエンゲージメント
投資家、顧客、従業員、地域住民など多様なステークホルダーの期待と懸念をリサーチし、対話プログラムやアンケート、説明会を企画。
双方向コミュニケーションを通じ理解を深めることで、信頼性の高いサステナビリティ推進体制を構築します。
レポーティング・開示支援
GRI、SASB、TCFDなど主要フレームワークに準拠し、定量・定性データを整理。
サステナビリティレポートや統合報告書のドラフト作成から、開示基準への整合性チェック、ステークホルダー向け資料のデザイン調整まで、一貫した支援を提供します。
現場実行・PDCA運用
社内推進体制の立ち上げ支援や、部門横断のタスクフォース運営、研修プログラムの設計・実施を担当。
設定したKPIに基づきデータをモニタリングし、月次レポートで成果と課題を可視化。
改善策を打ち出すことで継続的なPDCAサイクルを回します。
サステナビリティコンサルタントに求められるスキル・資格

サステナビリティコンサルタントに求められるスキル・資格について解説します。
環境・社会領域の専門知識
環境法規制やSDGs、ESG評価指標などの最新動向を体系的に理解し、企業の持続可能性戦略策定に活用します。
法令対応のみならず社会課題の本質を捉えた提案が求められる能力です。
データ分析力
CO₂排出量やエネルギー使用量、サプライヤー情報など多種多様な環境データを収集・加工し、定量的に課題を可視化。
統計手法やBIツールを駆使して根拠ある改善策を導出する力が不可欠です。
プロジェクトマネジメント
多部署横断・外部パートナーを含むプロジェクトを計画から実行まで統括。
スケジュール管理、リソース調整、リスクマネジメントを徹底し、ステークホルダーの合意形成を図りながら目標達成に導くスキルです。
コミュニケーション能力
経営層や現場担当者、投資家、地域住民など多様なステークホルダーと信頼関係を構築。
専門用語を平易に伝え、対話を通じて課題理解を深め、プロジェクト推進に必要な協力を引き出す力が求められます。
サステナビリティコンサルタントのキャリアパスと将来性

サステナビリティコンサルタントのキャリアパスと将来性について解説します。
コンサルティングファーム所属でのキャリアパスと将来性
1. アナリスト/コンサルタント
新卒や転職で大手総合系ファーム(アクセンチュア、PwCなど)や環境特化系ファーム(ERM、S&P Global など)に入社。プロジェクトのデータ収集や調査分析、レポート作成などからスタートし、数年間で幅広い業界・領域の知見を獲得します。
2. シニアコンサルタント/プロジェクトリーダー
3〜5年目を目安に、小〜中規模案件のリードを担当。クライアントとの要件定義やチームマネジメントを通じてプロジェクト推進力を磨きます。ここでの成果が、以降の昇進や大型プロジェクト参画の鍵となります。
3. マネジャー/ディレクター
7〜10年目でマネジャーレベルに昇格し、部門横断の大型プロジェクトやグローバル案件を統括。社内外のステークホルダー調整やビジネス開発(新規案件獲得)も担い、収益責任を負う立場になります。
4. パートナー/エクゼクティブ
10年以上の実績を背景に、ファームの経営戦略策定や組織運営にも関与。対外的には基調講演や業界イベントへの登壇、ホワイトペーパー執筆などでリーダーシップを発揮します。報酬面では年収1,500万~数千万円規模を狙えるポジションです。
企業内サステナビリティ部門の専門家としてのキャリアパス
1. ジュニア/アソシエイト
メーカーや金融機関、IT企業のCSR・サステナビリティ部門に入社。ESGレポートの作成補助や社内推進施策の運営サポートから始め、企業特有の業務フローを学びます。
2. シニアスペシャリスト/リーダー
部署内でプロジェクトリーダーとして、部門横断の改善活動や社外取引先との調整を担当。社内研修や新技術導入、社外報告書の編集長など、裁量ある業務を担うフェーズです。
3. 部門長/チーフサステナビリティオフィサー(CSO)
数年のリーダー経験を経て、部門長やCSOとして経営会議にも参画。サステナビリティ戦略全体の策定・実行を統括し、CFOやCIOと並ぶ経営幹部として組織を牽引します。報酬や影響力の面でも社内トップクラスに位置します。
独立・フリーランスとしてのキャリアパスと将来性
1.実績構築期(~5年目)
コンサルファームや企業内で培ったプロジェクト実績をポートフォリオとして整理。セミナー講師や執筆活動を通じて専門性を外部に発信します。
2.顧客拡大期(5〜10年目)
複数社からの案件受注を安定化させるため、独自サービス(ESG評価ツール提供、研修プログラム開発など)を開発。ネットワークを活用したリファラルやプラットフォーム登録で新規顧客を獲得します。
3.プレミアムフェーズ(10年以上)
高度な戦略立案やグローバル案件、多国籍企業のC-suite向けアドバイザリーを中心に活動。自身のブランド力がクライアント獲得を左右し、単価も大手ファーム水準以上(時間単価5万~15万円)を実現可能です。
サステナビリティコンサルタントの将来性の展望

サステナビリティコンサルタントの将来性の展望について解説します。
規制強化・ESG投資拡大
気候変動対策やサプライチェーン透明化を巡る法規制が世界的に強化される一方、ESG投資残高は年々増加。コンサル市場も成長余地が大きく、専門家需要はさらに拡大します。
デジタル×サステナビリティの融合
AIやIoTを活用した環境データ分析、ブロックチェーンによるトレーサビリティなど、新技術とのシナジー領域が急成長。これらの知見を持つコンサルタントは今後、特に高い価値を発揮するでしょう。
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グローバル展開機会の増加
サステナビリティの枠組みは国境を越えて共通化が進むため、海外拠点や多国籍企業をクライアントに持つチャンスが拡大。英語力・異文化理解を備えた人材は一層重宝されます。
サステナビリティコンサルタントに取り組む企業3選
サステナビリティコンサルに取り組む企業を紹介します。
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株式会社クレアン
株式会社クレアンは、1988年8月に設立されたサスティナビリティコンサルティング企業です。
「私たちは輝く笑顔があふれる地球の未来を創造します」という企業理念のもと、CSRのコンサルティング事業、CSRレポート・統合レポートの企画・編集事業を行っています。
PwCサステナビリティ合同会社
https://www.pwc.com/jp/ja/about-us/member/sustainability.html
PwCサステナビリティ合同会社は、PwC Japanグループの一員として、日本企業のサステナブルな企業価値の向上を目指す企業です。
企業が持続可能なビジネスモデルを実現するための戦略策定から実行まで、一貫したサポートを提供することで、企業価値の向上と社会的責任の達成に貢献しています。
また、PwCグローバルネットワークの一部として、国内外の専門知識と経験を活用して、多様な業界のクライアントに対応しています。
KPMGあずさサスティナビリティ株式会社
https://kpmg.com/jp/ja/home/about/sus.html
KPMGあずさサステナビリティ株式会社は、サステナビリティ保証やアドバイザリー業務を専門とする企業です。
長年の実務経験を通じて蓄積した知見や専門性に基づき、環境問題、カーボンニュートラル、生物多様性、食糧問題、人権問題など、現代が直面しているさまざまなサステナビリティ課題への対応を支援しています。
KPMGあずさサスティナビリティ株式会社の創業理由や事業内容を詳しく見る
企業がサステナビリティコンサルタントを導入するメリット

企業がサステナビリティコンサルタントを導入するメリットについて解説します。
専門知識の獲得
最新の環境規制やSDGs、ESG評価指標は日々更新され、社内だけでは追い切れないケースも多々あります。
サステナビリティコンサルタントを導入することで、業界動向やベストプラクティスを迅速に取り入れ、実効性の高い戦略立案が可能になります。
効率的な課題解決
社外の専門家による第三者視点でのリスク分析や機会評価は、社内リソースだけでは偏りが出がちな課題を客観的に洗い出します。
これにより、優先順位を明確化した上で、迅速かつ的確な実行計画を策定・推進できます。
投資家・顧客へのアピール
GRIやTCFDなど国際フレームワークに準拠した信頼性の高い報告書作成や認証取得を支援。
透明性のある情報開示は、ESG投資家からの資金調達を有利にし、顧客や取引先へのブランド価値向上にもつながります。
リスクマネジメント強化
気候変動リスクや新たな環境規制への対応策を事前に策定し、事業影響を最小限に抑制。
サプライチェーンの脆弱性評価やBCP(事業継続計画)との連携を通じて、予期せぬトラブル発生時にも迅速に対応できる体制を構築します。
まとめ
サステナビリティコンサルタントとは、企業や組織が持続可能性を事業戦略に組み込むための専門家です。
ESG課題の把握から戦略策定、実行支援、レポーティングまで幅広い業務を担います。
環境規制の強化や投資家の要請が高まる中、今後も需要は増加傾向にあり、関心のある方は早めに知識や経験を積むことをおすすめします。

この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。