社会課題コラム 貧困

無戸籍問題とは?~日本には1万人の無戸籍者がいる?~

2004年の第57回カンヌ国際映画祭で話題となった映画『誰も知らない』

この映画で描かれていたのは戸籍を持たない子どもたちです。

驚くことに、この映画は『巣鴨子供置き去り事件』という実際に起きた事件をもとにしています。

無戸籍者の問題はどこか遠い国の話ではありません。

日本にも存在しているはずなのに、存在していないことになっている人々が多くいます。

無戸籍者の問題とはどのようなものなのでしょうか。

無戸籍者とは

無戸籍者とは生まれた時に何らかの理由で出生届を出されなかった人々です。

その中でも戸籍のない子どもを『無戸籍児』と呼びます。

確かに存在しているのにも関わらず、その存在が行政に認知されないことで、存在しない人となってしまっているのです。

日本の無戸籍者

日本には、約1万人の無戸籍者がいると言われています。

しかし、この数字は推定でしかありません。

まだ把握されていないだけで実際はもっといるのではないかと考えられています。

また、一時的に無戸籍だった人も合せると6万人にのぼるようです。

『戸籍がない生活』とは?

戸籍がないことは、つまり住民票がないことを意味します。

そのため、日常生活を送る上で多くの困難をもたらします。

 教育

 まず、教育を受けることが困難になります。

 住民票がないと、役所から『就学通知』が来ません。

そのため、義務教育でさえも受けることは困難になってしまいます。

医療

 次に、健康保険証を持つことができません。

そのため、病院を利用する際は、医療費が全額自己負担となってしまいます。

さらには、健康診断や予防注射といった行政サービスも受けることはできません。

 その他の困難

 教育や医療以外の面でも困難がたくさんあります。

・18歳になっても選挙権が持てない

 ・銀行口座の開設や携帯電話の契約ができない

 ・身分証明書がないため就職が困難

 ・パスポートが作れない

 ・結婚や出産に支障がある

などです。

出生届が出されなかっただけで、こんなにも生きていくにあたって困難にぶつかるのです。

ここ最近では、無戸籍の問題が社会問題として認知されるようになりました。

そのため無戸籍者が希望すれば、行政サービスを受けられるケースもあります。

しかし、役所に掛け合い、説明するなどの手続きが面倒であるようです。

また、行政によっては無戸籍者に対する対応方針が確立されておらず、担当者が面倒に思って、理不尽に断られてしまうケースもあります。

無戸籍の人々も手続きが上手く進まず、最終的には諦めてしまうケースも少なくありません。

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なぜ無戸籍者が生まれるのか

無戸籍者が生まれる背景には様々な事情があります。

虐待などの家庭環境や経済的状況もその1つです。

中でも1番多いのは離婚後に、新たなパートナーとの子どもが生まれた場合です。

民法772条の2項には『法的離婚後300日以内に生まれた子どもは前夫の子と推定される』という規定があります。

この規定により、離婚後にできた子どもでも、300日以内に生まれた場合は、前夫の子どもとして出生届を出さなければなりません。

「民法772条による無戸籍児家族の会」代表の井戸まさえさんは離婚調停が非常に長引き、別居してから離婚が成立するまでにかなり時間がかかったそうです。

その後、今の夫と結婚し、子どもをもうけましたが、その子が法的離婚後300日以内に生まれました。

出生届を出す際に今の夫の子どもとは認められず、前の夫の子とするように言われたそうです。

前の夫とは長く別居しており、生まれた子は明らかに今の夫との子であるのに、行政には前の夫の子として届けなければならないのです。

そのため、自分の子どもを前の夫との子とする訳にもいかず、無戸籍の子とするしかない現状があります。

法律が無戸籍者を生んでしまっているのです。

井戸さんは法廷闘争を経て、現夫の子としての戸籍を得たようですが、裁判までしないと望む戸籍が得られないのは大きな問題ではないでしょうか。

最近の事例

冒頭で挙げた『巣鴨子供置き去り事件』は約30年前の出来事ですが最近でも無戸籍に関する事例があります。ここでは2つほど紹介します。

事例①

1つ目は、2020年7月に東京都台東区で起きた生後約3か月の女児がマンション室内に約16時間放置された事件です。

女児はその後病院で死亡が確認されました。

死亡した女児は無戸籍だったと見られています。

事例②

2つ目は、2020年9月、大阪府高石市の民家で住人の高齢女性が餓死した事件です。

同居人の息子も衰弱して入院しました。その親子は生活費が底をつき、最後は水と塩だけでしのいでいたようです。

2人とも戸籍がなく、息子は「無戸籍だったので助けを求められなかった」と言っていたと報道されています。

彼らがもし戸籍を持っていたとしたら、事件は防げたのかもしれません。

最後に

両親が出生届を出さなかったことで、子どもは日常生活において大きな支障をきたします。

どんな事情があるにせよ、子どもがその悪影響を1番受けてしまうことは防がなければなりません。

また、問題を助長している背景には法律があることは重大な問題だと思います。

無戸籍者の問題はあまり認知されていないように感じます。

しかし、子どもたちの生活に関わる大きな問題であるため、多くの人にこの事実を知って欲しいです。

無戸籍者の現状をリアルに知りたい方は井戸まさえさんの『無戸籍の日本人』を読んでみてください。

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