現在ミャンマーのMJI社にて、貧困層の女性を対象としたマイクロファイナンス事業に従事していらっしゃる、小路麻美さんにお話を伺いました。

第1弾では、現在の活動内容と日々感じるやりがいや困難について迫っていきたいと思います。

プロフィール

1981年生まれ。
同志社大学卒業後、国税局に勤務。息子を出産したことをきっかけに、女性の働き方や自分のそれまでの生き方に疑問を感じ、約15年勤務した国税を退職。
現在はミャンマーのMJI社において、貧困層の女性の社会的・経済的地位向上を目的としたマイクロファイナンス事業に携わり、社会的効果・価値に関する指標策定等を行っている。
このほか、「社会的価値をビジネスのチカラに」をスローガンとするトークンエクスプレス株式会社において、社会課題解決と経済的利益の実現を同時に実現したい企業のためにサービスを提供。
また、ライフワークとして、自身の経験から、中絶した女性へのサポートの拡充、多様な女性の選択を後押しする社会の創造を目指している。

現在の活動

ーーー現在はどのようなお仕事をされているのですか?

大きく3つの仕事をしています。

まずは、ミャンマーでマイクロファイナンス事業を行うMJI社でのExcective Directorとしての仕事です。

具体的には、内部監査の改善や資金調達の計画、インパクトレポートの発行にむけた取組みなどです。

また、社会的価値をビジネスのチカラに」をスローガンとするトークンエクスプレス社さんにて、企業が社会的価値を事業、収益に活かすことを目的としたマーケティングコンサルの仕事をお手伝いしています。

こちらトークンエクスプレス社さんの代表紺野さんは元JICA職員で、エジプト駐在時代に現地のマイクロインシュアランスの整備に従事され、そのなかで企業の社会的価値がビジネスと両立するということを原体験として持たれています。

その原体験から、日本の地方創生など社会課題をビジネスで解決することを目指されています。

彼の「社会を良くするには、ビジネスが社会課題を解決し、そしてそのビジネスが持続可能な世界を創ることが必要だ」という考えに非常に共感しています。

最後に、中絶した女性のケアに関する事業も行っていて、こちらは現在商品開発に向けて女性の声を集め、ラインチャットなどで支援できるものを政策している段階です。

こちら事業と言いましたが、場合によっては一部無料でサービスを受けていただけるようなものを考えています。

「子どもを作らなきゃ」や「良いお母さんにならなきゃ」などの価値観からもっと女性が解放されて、自身が一番幸せになれる選択を自由にできる社会に変えたいと思っています。

 

ーーー中絶した女性のケアに関する事業についてもう少し詳しくお聞かせ願えますか?

もともと、私自身の中絶体験を日経のブログに綴ったところ、多くの反響を頂いたことがきっかけです。

私は中絶してから10年ほど経っていますが、そのブログに寄せられた反響から、その頃私が働いていた環境と現在の女性の働く環境がほとんど変わっていないことに気づきました。

そのことに問題意識を感じ、志を共にしてくれる人と一緒に事業を始めました。

現在、中絶をした女性の心のケアをするホットラインのようなものは存在していますが、それは私がやりたいこととは少し違うのです。

中絶は、経済的な事情や暴力などといったどうしようもない事情でしかとってはいけない選択肢だと世間では広く考えられていると思います。

一方、女性が主体的に自分の人生を決めていく中で、今は子どもを産むのに相応しいタイミングではないのに授かってしまうこともあります。

例えば、「仕事のタイミング的に今は子供はいらないかな」というときであっても、100%確実な避妊方法がない現状では、妊娠する女性はゼロではないですし、中絶もゼロにはなりません。

そのような理由であっても、自分の人生を優先して中絶をする選択も許容される価値観、一つの生き方ではないかと私は考えています。

しかし現時点では、女性の人生より子どもの命を大事にしなければならないという風潮が強いです。

中絶をするという選択をすると、それだけで女性は心身にダメージを負うことになる上に、周りからの批判も受けるというのはおかしいと思います。

だから私は、「自分の人生を優先して中絶をする選択肢をとってもいい。一つのオプションである」という価値観を社会に増やしたいと考えています。

きっと男性も仕事が波にのっていて、「今は妊娠するタイミングではないな。」というときは、100%避妊できる方法が欲しいでしょうし、産まない選択も視野に入るとでしょう。

だから、中絶にスティグマを貼らず、一つの選択肢として語ることができる社会にしたいと考えています。

そのための計画を今練っている最中です。


日々感じるやりがいや困難

ーーーMJI社さんやトークンエクスプレス社さんでの仕事を遂行するなかで、やりがいや困難に思うことを教えてください。

MJI社に関していうと、現時点でやり取りがオンラインである上に、英語でのコミュニケーションがあまり得意ではないという点から、大変さは感じています。

マイクロファイナンス事業に関しても、過去にJICAでマイクロファイナンス管理の仕事を経験したことはあるものの、マイクロファイナンス自体の実務経験はありません。

だから、マイクロファイナンス事業により精通した現地スタッフに対して自分がどう貢献できるかを考えることに難しさを感じています

一方やりがいとしては、自分が社会を良くしようとする生き方ができているという点です。

以前は、自分が生活をしていくのに必死だったため、働くことに辛さを感じることも多かったですが、今ではやりがいを感じて働けています。

 

ーーー国税庁での経験は現在の仕事にどのように生かされていますか?

MJI社に関しては、内部監査の仕事に国税庁での経験が生きていると思います。

国税庁では、法律関係の知識を要する差し押さえや滞納処分などを行っていました。

マイクロファイナンスは平たく言うと貧困層向けの貸金事業なので、債権回収の適正な手続きを行ったりする際には自分の経験が役に立っているように感じます。

現在、小路さんが働かれているトークンエクスプレス社では人材を募集されています。

興味のあるの方は是非下記のリンクにアクセスしてみて下さい。

https://token-express.com/magazine/recruit_bizdev_1/

次回予告

ミャンマーでのマイクロファイナンス事業を始め、中絶した女性へのサポートの拡充など多方面に活躍されている小路さん。

次回は、学生時代から国税庁、JICA勤務を経て現職に至るまでのキャリアステップついて迫っていきたいと思います。

自分が楽しめる生き方に出会うまで#2~MJI Enterprise Co.ltd 小路麻美#2~

 ライタープロフィール
金子歩乃歌(かねこほのか)
「性別が個人の夢を邪魔しない世界」を創りたい。
将来は、男尊女卑の残る地域で女子教育の普及に関わる予定。
Twitter:@honoka_color