本日は大手自動車メーカーにEV(電気自動車)の研究者として勤める木内寛允さんにお話を伺いました!

エネルギー問題という非常にスケールの大きな社会問題…そんな社会問題に対して民間企業の研究者として向き合う木内さん。

大学院進学・国内原発企業、国際原子力機関IAEAインターンを経験した社会貢献を仕事にする木内さんの想いと選択したキャリアなどをみていきます!

国際的な視野で原子力発電の是非を見極めたい

国際機関IAEAでのインターン

ーー国際機関 IAEAでのインターンシップではどんなことをされていたんですか?

インターンシップでは、毎日のように開かれる国際会議の準備補佐や、原発導入を検討する国への意思決定を援助するアプリの開発などに携わりました。

大学での講義や国内のインターンシップでは得られなかった気づき、経験がIAEAを通して数多くありました。

 

ーー具体的にはどんな気づきがあったんですか?

「自分の視野の小ささ」の一言に集約されますね。

日々扱われるトピックは、原子力発電の技術だけでなく、取り巻く産業、規制、国際政治、核など多岐にわたり、原子力が抱えるトピックの複雑性を前に、自分の無知を痛感する毎日でした。

考えてみれば当たり前でしたが、実際に現場のフェーズで見れたことは大きな気づきでしたね。

インターン後の変化

ーーIAEAでのインターンシップを終えて、木内さんの中でどのような変化がありましたか?

元々「国際的な視野で原子力発電の是非を見極めたい」と強く思ったことがIAEAでインターンをするきっかけでした。

しかし、結局最後まで自分の中で原子力の是非を見出すことは出来なかったんですよね。様々な業務を通した気づきや発見は数多くありましたけど。

そんな時、インドネシア人の上司が私に“原子力発電だけがすべてではないよ”と伝えてくれたことはとても印象的でした。

たとえ原子力業界に身を置いたとしても、原子力ファーストではなく、常に原子力の強み弱みを理解し、日々変化する他のエネルギーと連携を試みる姿勢に感銘を受け、 “視座を高くする”ことを意識するようになったことが、私の中での変化であったと思います。


原子力における視座を高めるための海外インターン

インターンに参加したきっかけ

ーーそんなIAEAでのインターンにはどのようなきっかけがあって参加されたんですか?

国際的な視野で原子力発電の是非を見極めたいと強く思うようになり、トビタテ留学JAPANに応募ししたことがきっかけです。

大学を経て原子力発電を深く学びたいと思い、大学院に進学したのですが、いざ自分のキャリアを考えたとき、原子力業界を選ぶべきか否かにすごく迷ったんですよね。

東日本大震災もあって業界自体に対する今後の不安や親などのをはじめとする周りの人の心配もありました。

何より、原子核工学を専攻する身の上であるにも関わらず、原子力発電に対する自分の意見が確立できていないもどかしさがありました。

原子力発電が現場でどのように役立っているのかを実感するため、国内原発企業のインターンシップなど等などにも参加しました。

しかし、原発事故後の日本では福島の影響、廃炉作業、国内原発の再稼働などに話題が集中し、視点が限定的であるように感じました。

そのような経緯でIAEAでのインターンに参加しました。


”現場”で働く技術者として経験を積む

帰国後のキャリア

ーー帰国されてからご自身の進路についてはどのように考えたのですか?

大学院で研究をしながら、「将来、原子力分野に進むべきか?」と迷ったところからIAEAでインターンをすることに決めました。

しかし、実は帰国した後もなお、就活をしながら、迷っていました。

 

ーなるほど、木内さん自身も迷われたんですね

将来のビジョンとしては、「”どのエネルギー源をどう使うか” をエネルギーについて知らない人も巻き込んで先導できる人材」になりたいと思っていました。

ただ、そう考えると、原子力の知識を勉強して理解しただけでは足りないんですよね。

再生エネルギーの潮流がある中で、 その中心に飛び込んでみて、「原子力にバックグラウンドを持ちながら広い視野を持ってエネルギー全般について先導しなければ」と最終的には考えました。

 

ーー迷われた結果、最終的には現在勤められている、大手自動車メーカーにおいてEV(電気自動車)研究者としてのキャリアを選ばれたんですね。

「日本の強みに携わりたい」という気持ちがあったのと、自分のキャリアを考える際に決め手となったものが、経産省資源エネルギー庁が発表するエネルギー基本計画でした。

そこで経産省の指針として「今後、電気自動車に力を入れていく」という情報を見つけまして、その情報が現在のキャリアを選んだ際の後押しになりました。

国がこの先5年,10年,15年で力を入れていこうとしている分野には人もお金も集まりますので。

 

ーー元々の専門であった原子力ではなく、社会的影響度の高い自動車という分野からエネルギー問題についてアプローチしようと思ったんですね。

もちろん自分の知らないこともあるため、入ってみて難しいこともありました。

当たり前ですけど、他の分野に飛び込んだこともあるので専門が違えばバックグラウンドも考え方も違います。

民間企業という選択

ーーIAEAのような国際機関や政府機関ではなく”民間企業”という選択には迷いはなかったのですか?

政府系機関に進むことも考えはしましたが、まだ現場がどのように動いているのかも分からない状態で政府系に入って指針を決定するのには違和感を感じました。

まずは、実際に”指針を現実にしていく現場”であるメーカーで、技術者として経験を積むことにしました。

今後の展望

ーーそんな木内さんの今後の展望などがあれば教えてください。

私が理想とする社会のイメージとして、政府が決定した指針、行動に対して国民全体が納得感を持って

「このエネルギー政策を進めていくのって当然だよね」

と考えられる状態があります。

どんな政策に舵を切ろうが、ある程度根拠というものを共有してエネルギーに対する不安がない社会を作りたいですね。

読者へメッセージ

ーー最後に国際協力の道を志す人たちに応援メッセージをお願いします。

まず行動することが大切です。

私もIAEAでのインターンをしてみて自分の視野の狭さに気づきました。
動いてみて自分が見えてこなかったこと、認識していなかった課題がいくらでも見つかると思うので。

仮説を立てることは大事ですが、動いて検証しないことには何も始まりませんから、ぜひ積極的に動いていただければと思います。