今回はJ.P.モルガンの東京オフィスで、CSR担当として働く加藤さんにインタビューをしました。
外資系企業のCSRではどのような業務があるのか。また加藤さんはどのような考え方を大事にしているのか。
ここでしか聞けない話が満載です。
1999年5月 バーモント州立大学卒業 経済学部
2004年2月 マッコーリー大学院 修士課程修了 国際関係
2006年から2年程クレディ・スイス銀行にて仕組債などの業務に携わる。
2008年よりJ.P.モルガンに勤務。
2019年よりCSR担当として働く。
現在の活動について
ーーー現在の活動について教えてください。
J.P.モルガンはグローバルでInclusive Growthをミッションとして、4つの柱をベースに社会貢献活動をしています。
日本ではそのうち3つ、就労支援、中小企業支援、ファイナンシャルヘルス、にJ.P.モルガン・チェース財団が助成金を抽出、パートナーNPO団体と共に誰もが経済の発展により恩恵を受けることができる社会を目指して活動しています。
僕は、現在J.P.モルガンの東京オフィスでCSR担当として働いています。
CSR部門では、財団が支援するプログラムと社員によるボランティア活動の推進を主な業務としています。
財団のプログラムは東北の農家の海外進出支援や中学生向けのSTEM教育を取り入れたメンタリングなどを、半年から2年程の期間で行なうプログラムです。
CSR部門はNPOパートナーと協力してプログラムを進めつつ、主にイベントの調整や、プログラムの進捗状況の確認などを行います。
社員によるボランティア活動は様々な分野があり、社員が興味のある地域活動や社会課題への取り組み等を社員主体で進められます。
環境問題では、ビーチクリーンや富士山の麓の清掃活動。貧困問題では、フードバンクでのボランティアや食糧支援、試験勉強の手伝い。
障がい者支援では、知的障がい者の方と一緒にスポーツをしたり、施設の清掃の手伝いをしたり、等があります。
また台風や地震などの自然災害に対する支援金拠出も活動の一つです。
特に現在は新型コロナウィルス感染拡大で影響を受けた個人や家庭への支援をするプログラムを展開中です。
例えば、他プログラムで支援している東北の農家さんから、新鮮な農産物や水産物を買い取り生活困窮者に支給する活動です。
レストランへの卸が減り苦労している農家の方の支援にもなり、食料受益者の方々からは乾物ではなく新鮮な野菜が食べられる、という2重のメリットがあります。
社員ボランティアはコロナ禍で従来の活動が難しくなったため、新しい形で社員たちが社会貢献をできる方法を模索しています。
大切にしている考え
ーーー活動する上で加藤さんご自身が大切にしている考えはありますか?
できる限り自分と違った考え方を持つ人と活動をして、意見を取り入れることです。
同じ考えを持つ人とは仕事がしやすいのは事実ですが、一部の人にしか受け入れられない狭いものしかできません。
反対意見や欠点を指摘してくれる人と活動をして意見を取り入れる事により、より良いものが生み出せると考えています。
ーーー考え方の違う人々の意見を取りまとめるのは難しいですか。その際に意識していることはありますか。
難しいです。
東京には1000人以上の社員がいますが、育った環境、家族構成、興味がある分野、ボランティア経験、様々です。
一般企業とNPOとの間に視点の違いがあることもあります。
興味がないこと、日常生活に関連しないことは心に響かないこともあります。
幸い弊社の社員は社会貢献に熱心な方々が多いです、彼らが興味あり、専門知識を生かせる取り組みを見つけることが僕の仕事です。
社内では有志の社員で構成されているフィランソロピーコミッティーというものもあり、活動の予算も組まれています。
社員のボランティアに対する意識が高いことがわかると思います。
社会貢献活動は押し付けるものではありませんが、背中を一押しすることは必要かもしれません。
その為、コミュニケーションを意識しています。
単純なことですが定期的に話をして距離を縮めれば、「休日時間があるからちょっとだけボランティアに行ってみよう」くらいの気持ちで来てもらえることもあります。
一回参加するとそれをきっかけに何度も足を運んでもらえることにつながります。
業務内で定期的にミーティングを設定したり、カフェテリアで話しかけたりするなど、積極的なコミュニケーションを大事にしています。
理想の世界
ーーー加藤さんが作りたい世界(社会)を教えてください。またなぜそのように思ったのか教えて下さい。
動物に優しい世界です。
人間は他の動物と共存ができる生き物だと思っています。
例えば子どもは動物が大好きです。
しかし、今の社会はほんの100年前と比べても、比較にならない規模の動物の犠牲の上に成り立っています。
現在の大規模畜産業が地球の環境や個人の健康に与える影響は多大であり、なにより多くの命が毎日奪われています。
ジェンダー、人種差別、障がい者、LGBTQに関わる差別問題が未だ多いのは事実ですが、多様性が重視される社会になってきているのも事実です。
その対象をもう一歩踏み出して、痛みを感じ、社会を形成して生活しているはずの動物たちにも広げられるはずです。
もちろん今の食生活を諦める必要はないのです。
科学とテクノロジーの発展は一方を諦めるのではなく両立できる力があると信じています。
子どもたちが明るい未来を向かえる為に、植物ベースの食文化を築き、全ての動物を尊重できる社会を作りたいです。
ーーその世界観をどのようにしてCSRの仕事へ結び付けていますか?
まだ会社のCSRとは結び付けられていませんが、僕のこの会社でのゴールです。
グローバル規模でサステナビリティは最も重要なトピックのひとつであり、ビジネスと切っても切れない関係になっています。
植物ベース食品の産業も破竹の勢いで伸びています。
環境活動家や科学者では食肉は控えるべきという考えも浸透してきています。
まずは環境問題から話をはじめプラントベースの食文化を広げたいです。
社内で行っているアウェアネス・セッションという社会課題を学ぶ会や、ワークショップを通じて少しずつ問題定義をして考える場を増やしたいです。
ーーー次回予告
周りの人と密に連絡をとることで様々な意見を取り入れ、広げていく加藤さん。彼の姿は地道な努力に支えられているものでした。
次回は彼がJ.P.モルガンのCSR担当として働くまでの道筋、そして大企業のCSR担当として働くなかでの難しさやそれを乗り越え継続するコツについてお聞きします。
ぜひお読みください。
この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。