今回は、せいぼじゃぱん代表理事の山田さんと活動に参加する大学生の平野さんにインタビューしました。
山田さんは、代表理事であると同時に、イギリスの通信会社MobellでSIM販売の営業も担当しています。
せいぼじゃぱんの多岐にわたる活動は、マラウイでの給食支援やフェアトレードコーヒーの販売、学校でのソーシャルビジネス探究の授業に及んでいます。
今回は、山田さんの社会課題への想いや平野さんが学生としてどのようにこれらの活動に関与しているのかお伝えします。
目次
せいぼじゃぱんの活動とは?
ーーー本日はよろしくお願いいたします。まず山田さんの自己紹介をお願いします。
せいぼじゃぱん(正式名:NPO法人 聖母)の代表理事をしております。
さらに、イギリスの通信会社MobellでSIM販売の営業も行っています。
せいぼじゃぱんでは、マラウイの給食支援やマラウイ産フェアトレードコーヒーの販売、学校でソーシャルビジネス探究の授業などを行っています。
マラウイで 1日に約1万7000人に食事を届ける
ーーーまずは、マラウイの給食支援について詳しく教えていただけますでしょうか?
マラウイの各地で、給食支援を7人の現地スタッフとともに展開しています。
幼稚園と小学校を対象に1日に約1万7000人分の食事を提供しており、活動は主に寄付金に支えられています。
給食支援を行っている理由としては、学校に来るきっかけを作ることと、教育を受けるうえでのエネルギーを作ることです。
また、マラウイでは「農業」と「公務員」の2つが職業の大半を占めているため、教育によって自分で新しいビジネスを作ったり、3・4次産業が進んでいくきっかけになればと思っています。
購入金額のほぼ100%が寄付になる⁉
ーーーマラウイ産フェアトレードコーヒーの販売についても教えてください。
マラウイの給食支援をする資金源として、マラウイ産フェアトレードコーヒーを販売を行っています。
コーヒー豆は、栽培、生産工程、保管、輸送など、消費者の手に届くまでのすべての工程に丁寧に気を配るサスティナブルなコーヒーです。
そして、企業様からのご支援により、豆の購入、焙煎、包装、配送、そして営業にかかる費用を賄うことができるため、収益のほぼ全額を寄付することが実現しています。
ーーーコーヒー豆の購入費用も支援いただいているのですね。
コーヒー生豆の輸入卸売業を行うアタカ通商が、無償で提供してくださっています。
アタカ通商の荒木社長との出会いが、コーヒー販売事業を始めたきっかけでもあります。
私たちがチャリティイベント用のコーヒーを探していた際、アタカ通商からフェアトレード農園で栽培されたコーヒー豆を60キロも無償で提供していただきました。
また、荒木社長が活動に協力してくれる焙煎会社の紹介なども行っていただいたことで、コーヒー販売事業が始まりました。
販売まで行うソーシャルビジネス探究授業
ーーー様々な企業の協力で支援が成り立っているんですね!
ソーシャルビジネス探究の授業はどのようなことを行っているのでしょうか?
活動に参加する大学生の平野さんお願いいたします。
平野さん:探究授業では、マラウイを学ぶことから始まり、コーヒーを売ることの社会的意義や仕入れ先となる会社や焙煎会社などのステークホルダーを学びます。
そして、マーケティングを学び、コーヒー豆のブランディングから販売に至るプロセスを経験します。
授業の締めくくりとして、マラウイの人々からのフィードバックを受け取ります。
私は、ファシリテーターとして参加しているのですが、毎回高校生ならではの新しい発想に刺激を受けています。
きっかけは、人の為に尽くすことへの憧れ
ーーー山田さんが、社会課題に関心を持った原体験やきっかけを教えてください。
カトリックのミッションスクールに通っていた時に、チャリティーを仕事にしている人がいたことがきっかけですね。
人の為に尽くすことがシンプルにかっこよく、神父になりたいと思っていました。
しかし、大学生の頃に出会った方々からの影響を受け、仕事(経済)を通して人のためになる方が、人生をより豊かにできるのではないかと考えるようになりました。
マラウイを支援するMobell社との出会い
ーーーその後、マラウイとはどのように出会いましたか?
Mobellというイギリスの通信会社に勤めているのですが、この会社と出会うまでは、マラウイをあまり知りませんでした。
Mobellは、自社のチャリティ活動、コミュニティ支援として、マラウイで職業訓練の支援を行っていました。
その取り組みや「Doing Charity by Doing Business」という社訓に共感をして入社しました。
Mobellとの出会いは、本当に偶然でしたね。
たまたま参加したイベントの登壇者と仲良くなり、その登壇者の職場に遊びに行った時に、そこにいたのが、Mobellの代表であるトニースミスでした。
イントレプレナーとして立ち上げたせいぼじゃぱん
ーーー運命的な出会いですね!せいぼじゃぱんを立ち上げた背景についても教えてください。
入社時点で、Mobellにはすでにせいぼじゃぱんの前身となる構想がありました。
マラウイは、乳幼児の死亡率が高い国でもあるため、その課題にも支援の必要があると始まったのが給食支援です。
その構想を実現するために、SIM販売の合間に、NPOとしての活動の基盤を作っていきました。
そのため、私自身はアントレプレナーというよりはイントレプレナー(社内起業家)に近いと思っています。
やればできるじゃなくて、やらなきゃいけないからできる
ーーー仕事と活動の両立は大変ではないですか?
大変でないと言えば嘘になりますが、何とかなってます。
フランシスコ・ザビエルの言葉に「やればできるじゃなくて、やらなきゃいけないからできる」があります。
やってみると、意外とできるものなんですよね。
「好きを仕事に」というかっこいいものではなく、「仕事に好き」になってもらった感じです
ね。
とはいえ、1人でできることには限界もあるので、平野さんのようにボランティアで関わってくれる人の支えがあるのはとても大きいです。
ーーー大切にしている考えや価値観や、その考えをもった原体験があれば教えてください。
現地の人々が、私が想像していたほど貧困を深刻に捉えていないことに気づき、私たちが主観的に作り上げた概念の可能性があると思いました。
それからは、本当に必要な支援は何かを考えるようになりました。
また、マラウイはコミュニティ文化が強く、精神的な豊かさを持っていると感じました。
なので、先進国的な経済面での豊かさを持てるようになったら、世界がより進歩していくだろうと思っています。
新たな商品にチャレンジ
ーーーせいぼじゃぱんが今後取り組みたいことについて教えてください。
マラウイに滞在中に知り合った、南部のサテンワ農園から仕入れたマラウイ産紅茶の販売を、今後実施していきます。寄付型で、多くの高校生が独自のブランドで販売してくれます。
ちょうど先日プレスリリースを出したばかりです。
他にもチョコレートなど飲み物に合う食品もやってみたいですね。
日本のNPOなので、日本の社会課題にも貢献できたらという想いです。
読者へメッセージ
ーーー最後に社会課題の道を志す学生へメッセージをお願いします。
周りの環境やそこでの出会いは、私たちの世界を広げる大きな要素です。
何気ない理由で新しい環境に飛び込むことが、意外なほど大きな影響を与えることがあります。
その繰り返しで点と点が繋がり、自分の興味や得意分野を深める機会にもなります。
時には、誰かが作った土壌で自分がやりたいことを始めることもあると思います。
そんな時は、伝統的な起業家だけでなく、社内でイノベーションを起こす「イントレプレナー」のような役割も一つの選択肢として考えてみてください。
私たちの活動も、そういった多様な生き方の1つとして考えてもらえればと嬉しいです。
この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。