急激な経済活動と開発の拡大によって、絶滅のおそれが生じている野生生物が、世界の森林や海洋に増えています。
本記事では、絶滅のおそれがある野生生物についてまとめたレッドリストの概要、IUCN・環境省の評価基準について解説します。
環境問題にかかわる要素として、絶滅の危機がある野生生物の現状を知っておきましょう。
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目次
レッドリストとは
レッドリストとは、国際自然保護連合(IUCN)が作成した絶滅のおそれのある野生生物のリストです。
国内では、環境省や地方公共団体、NGOなどが、IUCNの評価基準を参考にして日本独自のレッドリストを作成しています。
レッドリストは、現地報告、科学論文の発表、世界危惧種フォーラムによる科学的知見の収集など、さまざまな人々の貢献によって作成されています。
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レッドリストの必要性
レッドリストの必要性については、野生生物を絶滅から救うために、私たちがどのような対応をしたらよいのか判断できるようになることです。
絶滅の危機に瀕している動物や植物の情報をリストアップすることは、野生生物の保護に必要な要因を理解し、環境問題について考える際の重要な参考資料となります。
参考:レッドリスト・レッドデータブック | 自然環境・生物多様性 | 環境省
:IUCN Red List of Threatened Species
レッドリストの概要
環境省が作成するレッドリストは、生息・生育する野生生物について、生物学的観点から絶滅のおそれのある種を選定してリストにまとめています。
レッドリストには、動物、植物のカテゴリーごとに以下の種類をリストアップしています。
- 動物:哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、汽水・淡水魚類、昆虫類、陸・淡水産貝類、その他無脊椎動物
- 植物:維管束植物、蘚苔類、藻類、地衣類、菌類
レッドリストの内容については、5年ごとに更新され、カテゴリーごとに絶滅の危険性の高さをランクで記しています。
レッドリストとレッドデータブックの違い
レッドデータブックとは、環境省がレッドリストに記された野生生物の生息状況や危険性の原因などを解説したものです。
レッドリストは、野生生物の絶滅の危険度を科学的・客観的に評価してまとめたリストである一方、レッドデータブックでは生息地の現状や原因などが記載されています。
環境省が作成した最新のレッドリストは、2020年に公表されたレッドリスト2020です。
レッドデータブックについては、2012年〜2013年に作成された第4次レッドリストの解説書として2014年レッドデータブックが作成されています。
参考:環境省レッドリスト2020の公表について
:レッドデータブック2014の完成・出版について
絶滅の危機がある野生生物の現状
IUCNによる絶滅の危惧がある野生生物のデータについては、44,000種以上の生物に絶滅の危惧があり、評価種の28%以上に相当しています。
- 両生類:41%
- 哺乳類:26%
- 針葉樹:34%
- 鳥類:12%
- サメ・エイ類:37%
- 造礁サンゴ類:36%
- 甲殻類の一部:28%
- 爬虫類:21%
- ソテツ類:70%
参考:IUCN Red List of Threatened Species
現在、絶滅危惧がある野生生物は年々増加傾向にあり、この20年間に4倍近く増加した結果となっています。
世界の絶滅危惧種の増加は、環境負荷の問題も大きく影響しており、野生生物の生息環境の保全や密猟や密輸などの問題解決の必要性が高まっている現状です。
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世界のレッドリスト
国際的な自然保護団体IUCN(国際自然保護連合)によるレッドリストについて解説します。
詳しくはこちらより閲覧できます。
IUCNのレッドリストの基準
絶滅危機のランクごとに基準ABCDEに分類され、評価の観点について以下のように設定されています。
- 基準A:個体群の縮小
- 基準B:地理的範囲
- 基準C:成熟個体の数と減少
- 基準D:成熟個体の数
- 基準E:定量的分析
IUCNのレッドリストのカテゴリー
IUCNのレッドリストのカテゴリーは以下の通りです。
(EW)→(NE)の順に絶滅リスクが高くなります。
- Extinct (EX) 絶滅
- Extinct in the Wild (EW) 野生絶滅
- Critically Endangered (CR) 深刻な危機
- Endangered (EN) 危機
- Vulnerable (VU) 危急
- Near Threatened (NT) 準絶滅危惧
- Least Concern (LC) 低懸念
- Data Deficient (DD) データ不足
- Not Evaluated (NE) 未評価
IUCNによるレッドリストの評価
440000種以上の生物が絶滅危機にある中、IUCNレッドリストでは、現在、157,100種以上が評価されています。
暫定的な目標として16万種の評価が提案されています。
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日本のレッドリスト
環境省によるレッドリストについて解説します。
詳しくはこちらより閲覧できます。
環境省のレッドリストの基準
環境省のレッドリストでは、数値基準による判定が困難な分類群が多いことから、絶滅危惧種について定性的要件と定量的要件が併用されています。
環境省のレッドリストのカテゴリー
環境省のレッドリストのカテゴリーは以下の通りです。
環境省は、IUCNの「低懸念LC」「未評価NE」を設定せずに、独自に「絶滅のおそれのある地域個体群LP」を設けています。
- 絶滅(EX)
- 野生絶滅(EW)
- 絶滅のおそれのある種(絶滅危惧種)
- 準絶滅危惧(NT)
- 絶滅のおそれのある地域個体群(LP)
- 情報不足(DD)
環境省によるレッドリストの評価
環境省レッドリスト2020における※13分類群の絶滅危惧種の合計種数は、3,716種です。
環境省が選定した絶滅危惧種の総数は、3,772種となっています。
※動物では、①哺乳類 ②鳥類 ③爬虫類 ④両生類 ⑤汽水・淡水魚類 ⑥昆虫類 ⑦貝類 ⑧その他無脊椎動物(クモ形類、甲殻類等)の分類群ごとに、植物では、⑨維管束植物 ⑩蘚苔類 ⑪藻類 ⑫地衣類 ⑬菌類の分類群ごとに、計13分類群について作成しています※
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まとめ
レッドリストにあげられた絶滅のおそれがある野生生物の保護について関心を持つことで、豊かな地球を次世代に受け継ぐことに繋がっていきます。
また、豊かな自然と野生生物の住む場所を残すために、何ができるのか考えるきっかけになると良いでしょう。
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この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。