サーキュラーエコノミーという言葉をご存じでしょうか?

廃棄物を出さずに資源を循環させる経済の仕組みであり、世界中で注目を集めています。

実は、日本はサーキュラーエコノミーを江戸時代から行っているとも言われているのです。

今回の記事では、サーキュラーエコノミーの定義や歴史、国内外の事例について解説します。

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サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミーの定義

サーキュラーエコノミーとは、廃棄物を出さずに資源を循環させる経済の仕組みです。

製品を発案・設計する段階から資源を考慮し、汚染物(CO2など)や廃棄物を出さない(土に帰る)システムです。

上図のように、円を描くように循環させるためサーキュラーエコノミーといい「CE」と略されることもあります。

製品と原料を使い続ける、自然システムを再現することが求められ、SDGsおよびパリ協定の目標に求められている経済のモデルです。

また、サーキュラーエコノミーをうまくサービスに組み込むことをサキュラーデザインと呼びます。

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サーキュラーエコノミーの3原則

皆さんは、サーキュラーエコノミーの3原則というものをご存じでしょうか?

サーキュラーエコノミー推進団体であるエレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の3原則として以下を掲げています。

  • Eliminate waste and pollution
      廃棄物と汚染を取り除く
  • Circulate products and materials(at their highest value)
      製品や素材を(高い価値の状態のまま)流通・循環させ続けること
  • Regenerate nature
      自然を再生させること

リニアエコノミーやリサイクリングエコノミーとの違い

サーキュラーエコノミーに対し、従来の経済のモデルはリニアエコノミーもしくはリサイクリング(リユース)エコノミーと言われています。

上の図にもありますが、リニアエコノミーは直線型経済のことです。廃棄物が出るため問題があるとすぐわかります。

リサイクリング(リユース)エコノミーは図のようにサークルが閉じておらず、廃棄物が出ることが前提となっています。

日本は、リサイクリング(リユース)エコノミーが主流となっており成果を上げています。

環境省の「第4次循環型社会形成推進基本計画」の概要によると循環利用率※は2015年の時点で16%、Circular material use rate によると欧州は11%となっています。

また、日本は世界的にみてリサイクル率も高く、リニアエコノミーからリサイクリング(リユース)エコノミーへの転換は成功したと言えるでしょう。

※循環利用率:社会で使われた資源のうちどれだけのものが循環利用されたかを表したもの

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▼参考 リサイクリングエコノミーに取り組むサイト
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サーキュラーエコノミーの事例

海外での導入事例:「Allbirds」

​​ニュージーランドのティム・ブラウンとジョーイ・ツゥイリンジャーが始めたシューズを中心に展開しているアパレルブランドです。

創業時より環境負荷低減に重点を置き、素材調達から廃棄までの過程でCO2削減を数値化し公表しています。

また再生可能な素材として​​持続可能な天然素材とリサイクル素材を使用している上に、製品寿命にも配慮した設計をしています。

さらに、CO2削減のため、再生エネルギーの利用と海上輸送をメインにしています。

商品が顧客の手に渡った後も責任を持ち、​​商品のメンテナンス(洗濯)の仕方についてもアドバイスを行っています。

日本での導入事例:「アイカサ」

シェアリングサービスを利用したことはありますか?

シェアリングサービスとは、個人や企業が所有している資産を他の人に貸し出すサービスのことです。

実は、サーキュラーエコノミーの概念の中にシェアリングエコノミーがあるのです。

ここでは「アイカサ」というシェアリングサービスを紹介します。

「アイカサ」は、JR東日本の子会社と提携し、駅を活用した「傘シェアリングスポット」を導入しました。

日本の年間ビニール傘消費量と一人当たりの所有率は世界一位。

そのうち6割が捨てられ地球に埋められています。

「アイカサ」は傘をシェアすることによりこの問題を解決しようとしています。

シェアされる傘はグラスファイバーを使った丈夫な作りですが、リペアラブルで何度も使用可能です。また、一回の利用でCO2を692g削減できます。

​​2021年1月には山手線全駅に傘立てを設置完了し、設置箇所は全国に広がっています。

このようにしてシェアリングサービスは少しずつ私たちの生活にも浸透し始めています。

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昔から日本にもあった循環型システム

牛乳配達

新聞のように朝、自宅に届けてくれる牛乳配達は知っていますか?

翌日配達の時に瓶を回収し、再利用する仕組みになっています。

今はあまり見かけなくなったこの牛乳配達。
昭和時代には牛乳と同様に瓶のビールを配達、回収する酒屋さんがたくさんありました。

ここで使用されている瓶はリターナブル瓶と言われるものです。このシステムに製造過程から環境に配慮することができればサーキュラーエコノミーの完成です。

江戸時代のアップサイクル

サーキュラーエコノミーでは​循環することを想定して製品が設計されます。

アップサイクルは、循環する際に元のものより価値の高いものを作り出す仕組みのことです。

江戸時代の稲作を例に挙げてみます。

籾を取った後の「わら」は「わらじ」や「縄」に使われていました。

「わら」から「わらじ」になることによって価値が上がります。

そして、「わらじ」は最後に燃やして肥料になり、それがまた稲作に生かされる仕組みになり循環していることがわかりますね。

他にも精米時にでる「ぬか」は「ぬか味噌」や「せっけん」として利用されていました。

このように自然と循環型社会が出来上がっていました。

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さいごに

日本人の意識

​環境省によると、​​循環型の社会への移行に関して「生活水準を変えずにリサイクルすればよい」「現在の生活水準を落とすこととなり受け入れられない」という意見が1/4を占めました。※1

またCO2排出などによる気候変動への対策をするにあたって、生活の質が下がってしまうと考える割合が60%に上り、世界平均の26%を大きく上回る結果になっているます※2。

このことから日本人はこれから起こるであろう変化に対するマイナス面に目がいっているようです。

※1 ​​​​環境省 循環型社会の形成に関する意識調査報告書(概要)
※2 2015年 世界市民会議「気候変動とエネルギー」開催報告書

メリットを考えてポジティブに

アクセンチュア株式会社によると、サーキュラーエコノミーの経済効果による利益は2030年までに4.5兆ドルに上ると試算しています。

まだ欧州連合(EU)は、サーキュラーエコノミーに転換することにより、新たな雇用と価値の創造を生み出そうとしています。

環境だけでなく、私たちの生活もよりよい方向に向かっていくのではないでしょうか。

循環型社会、そしてサーキュラーエコノミーへの転換をポジティブにとらえて変化を楽しでいきたいですね。

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