環境問題への意識の高まりと共に、「アップサイクル」という言葉がよく耳にするようになりました。

しかし、一体アップサイクルとは何なのでしょうか?

多くの人が「リサイクル」と混同しているかもしれませんが、アップサイクルには独自の定義と価値があります。

本記事では、アップサイクルの基本的な概念から、リサイクルやリメイクとの違い、そして具体的なアップサイクルの例を通して、その魅力と可能性に迫ります。

アップサイクルとは

アップサイクルとは、使い終わって本来ならそのまま廃棄される製品の一部を再利用して、新たな価値のある製品に生まれ変わらせることです。

「創造的再利用」とも呼ばれており、ただ再利用するだけではなく、アイデアや工夫が大きく関わってきます。

また、サーキュラーエコノミーリジェネレーションの考え方とも近いでしょう。

例えば、穿かなくなったジーンズからバッグを作ったり、規格外の野菜を使用して別の加工食品を生産したりといったことが当てはまります。

地球環境全体で見ると、循環型経済の一環として資源の廃棄量の減少や、自然環境への負荷を軽減する効果が期待されています。

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アップサイクルとリサイクルとの違い

アップサイクルとリサイクルの違いは、「一旦資源に戻す」という工程があるかないかです。リサイクルは、製品を一度資源に戻し、そこから新たなものを作り出します。

つまり、製品を作る際にできるだけリサイクル原材料を使ったり、製品を設計する際には使用後のリサイクルがしやすいように工夫したりする必要があります。

また、新しいものを作るよりも輸送機材、人件費、燃料などのコストが高い場合が多いです。

一方で、アップサイクルは、製品そのものの特徴や気に入っていた部分を生かしつつ、新たな価値を与えて別のものとして生まれ変わります。

そのため、資源に戻す必要はなく、アイデア次第でコストはそれほどかかりません。また、リサイクルの場合はリサイクル業者に引き取ってもらって終わりというケースがほとんどです。

しかし、アップサイクルでは、企業間でそれぞれの強みを生かした開発・製品化ができるといった、廃棄物をもとにしたビジネスマッチングも可能な側面があります。

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アップサイクルとリメイクの違い

リメイクには、なにかをモデルとして「新たに作り直す」という意味があります。

様々なジャンルで使用されており、ゲームや映画のリメイク等はよく聞く言葉ではないでしょうか。

そこにはどうしても「オリジナルとの差別化」がついて回り、ものによってはオリジナルよりも「価値が低下する」可能性も付きまといます。

例えば、ファッション業界で見てみると、ある有名ブランドのスーツのボタンをアクセサリーにリメイクしても、元のスーツ以上の価値が生まれない場合もあります。。

アップサイクルでは、そこに「新たな価値が生まれる」ことに意味を持たせています。

リメイクは、元の製品の素材を生かして別のものに作り替えるという点で言葉としてはアップサイクルを含む広義な使われ方をしますが、そこに価値が下がるものも含んでいる、ということが大きな違いです。

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アップサイクルの具体例5選

まずは企業体が行っているアップサイクルを例として挙げてみます。

アップサイクルが盛んなアパレル業界

日本を代表するセレクトショップ「ビームス」では、「ビームス クチュール(BEAMS COUTURE)」というアップサイクルのブランドを立ち上げました。そこでは衣服の廃棄ロス削減を目的としてデッドストック品に別のパーツを取り入れてトートバッグにするといった「新たな価値を持った一点モノ」を生み出すことに成功しています。

参考::BEAMS COUTURE(ビームス クチュール)

化粧品メーカーが制服を雑貨にアップサイクル

ヘアケア製品を主力商品として展開しているブランド「ジョンマスターオーガニック」では、従業員の制服をコースターにアップサイクルする取り組みが行われています。廃棄される制服の布や合成皮革からボードを作る技術を活用し、廃棄予定だった700着の制服が約8,000個のコースターに生まれ変わりました。

参考:green beauty action | INTERVIEW:PANECO® / 制服アップサイクル

別の業界への参入も可能にしたアップサイクル

発酵技術を強みにしている株式会社ファーメンステーションでは、カルビー株式会社から提供された規格外のじゃがいもを原料とした発酵アルコールで「じゃがいもとお米の除菌ウエットティッシュ」を商品化しています。

スナック菓子メーカーの廃棄物が日用品に生まれ変わり、別事業への参入も可能にしました。

参考:ファーメンステーションがカルビーのじゃがいもから作る発酵エタノールを配合した「じゃがいもとお米の除菌ウエットティッシュ」を商品化

次に、個人でもできるアップサイクルの具体例を挙げてみましょう。

コーヒーの出がらしが消臭剤にアップサイクル

ドリップした後は捨てるだけだったコーヒーの出がらしは、乾燥すれば消臭剤としてアップサイクルできます。コーヒーメーカーのUCCでは、抽出かすの活用方法として、活性炭以上にアンモニア(におい成分)の脱臭効果が優れているコーヒー抽出かすの再利用方法を公開しています。

参考:抽出かすの活用方法 | コーヒーはUCC上島珈琲

ブランドの紙袋を活用したアップサイクル

お買い物をするともらう事の多い紙袋。ご自宅でついついため込んでしまって使い道のないまま捨てることになる場合が多いのではないでしょうか。アップサイクルジャパンの公式Youtubeチャンネルでは、そういった紙袋を実用的でかわいいポーチに変身させる方法を公開しています。

https://www.youtube.com/@user-ho7gh6bo7n

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日本におけるアップサイクル

日本は基本的に天然資源が乏しい国です。

そのため、再利用の文化は古くから根付いていました。「もったいない」は、今や世界の共通言語です。

江戸時代は資源を再利用する「循環型社会」だったと言われています。衣服のみならず、あらゆる日用品を再利用しており、鍋釜などの貴重な金属類はいうまでもなく、「灰」もリサイクルの対象だったという記録が残ってるそうです。

日本のエネルギー自給率の低さもアップサイクルの加速に関連しているといえるかもしれません。

東日本大震災後全ての原子力発電所が停止したこともあり、2014年度には、日本のエネルギー自給率は急激に下がっています。リサイクルで発生する再生エネルギーよりも効率の高いアップサイクルを選択することも将来的に有効なことは間違いありません。

足元は揺らぎつつあるとはいえ日本はまだまだ技術大国。新しい技術で、アップサイクルやそれをサポートするビジネスを展開する企業の動きも出てきていますし、環境省でも「サスティナブルファッション」を通してアップサイクルの普及に取り組んでいます。


まとめ

大量生産して大量消費・大量廃棄という現代社会に代わり、持続可能な社会への転換が叫ばれている今、アップサイクルが注目されています。

アップサイクル製品は廃棄物を再利用することで、新たな価値を生み出し天然資源の消費抑制効果が期待できるだけでなく、新たなビジネスやライフスタイルまで生み出しています。

SDGsのように消費者にも広まっていってみんながアップサイクルを意識し始めると、さらにアップサイクルを導入する企業も増えていくことが予想されます。

「アップサイクル」はビジネスだけでなく、様々な分野で今後の成長が期待されている取り組みです。