『サステナビリティ(持続可能性)を再定義する必要がある』

日本では2018年頃から徐々にサステナビリティの概念が広まってきていますが、オランダ、アメリカなど欧米では、サステナビリティの考え方だけでは不十分ではないか? という声が高まっています。

今回は経済や社会のモデルを考える上で注目を集める「リジェネレーション」についてご紹介します。

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リジェネレーションとは?

リジェネレーションとは、サステナビリティで掲げられる「地球環境と経済活動の両立した持続可能なモデル」からさらに進化した、意識的に地球や暮らしの環境を再生して、社会をデザインしていく考え方です。

「再生型ビジネス」「再生型経済」と言われることもあります。

リジェネレーション(Regeneration)には、「再生」「新生」「繰り返し生み出す」などの意味合いがあります。

『We Are Regeneration』をキーワードに、国際的に新たな潮流として動きが高まっています。

リジェネレーションとサステナビリティ・サーキュラーエコノミーの違い

リジェネレーションとは、既存の「サステナビリティ」や「サーキュラーエコノミー」と何が違うのでしょうか。3つの概念を対比して整理します。

概念 目指す方向 キーワード 達成イメージ
サステナビリティ 現状維持・持続 持続可能性・SDGs 環境負荷をゼロに近づける
サーキュラーエコノミー 循環・廃棄ゼロ 循環型経済・資源循環 資源を循環させ廃棄を出さない
リジェネレーション 積極的な再生・回復 再生型・more good 環境・社会をプラスの状態に取り戻す

サステナビリティが「現状を壊さず維持する」こと、サーキュラーエコノミーが「資源を循環させて廃棄をなくす」ことを目指すのに対し、リジェネレーションは「すでに傷ついた地球や社会を積極的に回復・再生させる」ことを目指します。

「less bad(悪さを減らす)」から「more good(プラスを生み出す)」へのパラダイムシフトがリジェネレーションの本質です。

なお、サステナビリティの文脈では「グリーンウォッシュ」(実態を伴わない環境訴求)の問題も指摘されています。リジェネレーションはその先にある、実質的な成果を問う概念でもあります。

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なぜ今リジェネレーションが必要か

これまでにも、地球環境に関連してサステナビリティなど様々な考え方が生まれてきました。リジェネレーションの背景を振り返りながら、なぜ今この概念が求められるのかを見ていきましょう。

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環境問題と経済発展の対立の時代

日本では明治時代から、経済発展の背景で公害問題が深刻化してきました。

戦後の経済成長期の水俣病、新潟水俣病(第二水俣病)、イタイイタイ病、四日市ぜんそくの四大公害が有名です。

ビジネスセクター(経済的価値)とソーシャルセクター(環境・社会的価値)は対立するものと捉えられていました。

企業の活動に任せていては問題が悪化してしまうという考えから、法律での様々な規制がなされるようになりました。地域や環境にマイナスの影響を与えてしまうことも考慮し、メセナ(文化支援活動)やフィランソロピー社会貢献)といった取り組みも行われるようになりました。

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サステナブルを求める時代

サステナビリティ(Sustainability)は、「維持する」「持続する力」という意味合いです。

1980年代に国連で開催された「環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会)」で、”将来世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現代世代のニーズを満たすこと”であると説明されました。

つまり、我慢するのではなく今を大事にしながら未来を考えることで問題を解決することです。

大量生産・大量消費・大量廃棄から、地球環境と共生する持続可能なモデルの実現のために、国も企業も個人も様々な取り組みを行っています。

企業では、経済価値と環境・社会価値の両立を目指すトリプルボトムラインや、本業として社会課題解決に取り組むCSV(共有価値の創造)・戦略的CSRが掲げられました。国際的な目標として、SDGs(持続的な開発目標)も掲げられてきました。

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プラネタリーバウンダリーが示す危機的状況

しかし、人類が発展し様々な経済活動を行ってきた中で、地球に及ぼした負のインパクトは、残念ながら取り返しのつかないほど大きなものになっています。

スウェーデンのストックホルム・レジリエンス・センターが提唱する「プラネタリーバウンダリー(地球の限界)」によると、2023年時点で地球の安全な活動領域を示す9つの指標のうち、気候変動・生物多様性の損失・土地利用変化・淡水利用・新たな実体(化学物質汚染)・窒素循環の6つで限界を超えています。

世界自然保護基金(WWF)の報告書では、1970年以降の50年未満の期間で、野生生物が3分の2以上減少したと述べられています。

今の私たちの生活ニーズを満たすうえで必要な活動が、地球に大なり小なり負の影響を及ぼすのです。

将来世代のことも考えるならば、環境への悪影響を減らすこと、「less bad」では不十分な状況に来ています。地球環境を配慮した具体的な取り組みとして、以下のようなものが考えられます。

  • マイボトルを使うことで海に流出するプラスチックを減少させる
  • 衣服をファストファッションからエシカルファッションに変えることで環境負荷を軽減する
  • 自宅での節電や公共交通機関の利用によりCO2の排出を抑制する

これらはとても重要なことですが、マイナス影響を0に近づける行為です。自然環境に対してプラスを生み出し、復活・回復させる視点もまた必要なのです。

「地球1個分の暮らし」を実現するうえでも、人間の活動から環境やコミュニティを再生するような「more good」にシフトする取り組みがポイントとなります。

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リジェネレーションの4つのレベル(個人・組織・システム・地球)

リジェネレーションとは、地球環境だけに限定された話ではありません。個人から地球規模まで、4つのレベルで実践できるフレームワークとして整理できます。

レベル1:個人(Self)

自分自身の心身の健康や人間関係を回復・再生する視点です。ウェルビーイングの向上、コンポストや家庭菜園など自然とのつながりを日常に取り戻すことが出発点となります。小さな実践の積み重ねが、より大きなレベルの変化につながります。

レベル2:組織(Organization)

ティール組織やホラクラシーと言われるような、多様なメンバーが自主的に動いていく組織形態への変革です。固定的な役割や縦割り文化を再生し、人が互いの力を活かし合える関係性を育てることがこのレベルの実践です。

レベル3:システム(System)

地域コミュニティ、農業システム、サプライチェーンなど、社会的なしくみの再設計を指します。環境再生型農業による土壌回復や、地域循環共生圏の構築がこのレベルに当たります。産業構造や経済システムそのものを問い直す視点です。

レベル4:地球(Planet)

プラネタリーバウンダリーが示すように、気候・生物多様性・水循環などの地球システムを安全な状態に回復させることです。大規模な生態系の修復、ブルーカーボンの活用、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換などが含まれます。

リジェネレーションを実践するためには、この4つのレベルが互いにつながるものとして意識することが大切です。個人の変容が組織を変え、組織の変容がシステムを変え、それが地球規模の再生へとつながっていきます。

リジェネレーションの具体例

では、どのような取り組みが再生型のモデルなのでしょうか。リジェネレーションの具体例を見てみましょう。

  • 環境再生型農業
  • グリーンルーフ
  • バイオミミクリー

環境再生型農業

環境再生型農業とは、農業を通じて長期スパンでの土壌の改善を促し、二酸化炭素(CO2)を吸収しながら作物を生産する仕組みを言います。

パタゴニアでは、「リジェネラティブ・オーガニック」という農法を行い、コットンや食材を調達する際に、炭素を地中に戻して健全な土壌を構築しています。

土壌が回復することで、健全な土壌が炭素を捕捉して、CO2の吸収量の増加にも貢献するのです。

その他には、ユニリーバ、ケリング(グッチなどを扱う仏アパレル企業)、ゼネラル・ミルズ(米大手食品企業)などのグローバル企業も取り組んでいます。身近な実践としては、家庭の生ごみをコンポストにして土に還すことも、環境再生型の取り組みの一つです。

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グリーンルーフ

グリーンルーフとは、屋上や屋根の頂上に植物を植えることで緑化する取り組みのことです。

エコルーフとも呼ばれ、以下のようなメリットがあります。

【グリーンルーフのメリット】

  • ビルなどの建物に緑が増え眺めがよくなる
  • 夏場は涼しく、冬場は断熱で省エネに過ごしやすい
  • 雨水を吸収して建物からの排水をスムーズにする

オフィスビル、商業ビル、福祉施設など様々な建物と共存して存在しています。

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バイオミミクリー

バイオミミクリーとは、「生物模倣」という意味の持続可能なデザイン手法です。

人間主体の意識に課題感を持ち、自然の知恵を学ぶことがポイントです。

生物や自然が過去積み重ねてきたメカニズム(変異)を分析しているため、社会課題解決につながるイノベーションを生み出すためのモデルケースとなります。

【バイオミミクリーの例】

  • 鳥の飛行メカニズムに基づいた、効率性の高い航空機の翼/エアコンのファン
  • カタツムリの殻に基づいた、雨が降ると汚れが落ちる外壁タイル
  • 木陰のつくりだす涼しさに基づいた、夏の日差しを遮る日除け

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日本・世界のリジェネレーション最新事例(2026年)

リジェネレーションとは、グローバル企業だけでなく、日本の企業・地域でも着実に広がっています。2026年時点での注目事例をご紹介します。

LUSH Japan(ラッシュジャパン):福島県産菜種油による農地再生

コスメブランドのLUSH Japanは、福島県で栽培された菜種を原料とした菜種油を自社製品に採用しています。東日本大震災後の農地再生を支援しながら、地域農業の復活と自社製品の原材料調達を同時に実現した取り組みです。被災地の土壌と農家コミュニティの再生に直接貢献するリジェネレーション型のサプライチェーンとして注目されています。

ユニリーバ:再生型農業への大規模転換

ユニリーバは再生型農業(リジェネラティブ・アグリカルチャー)への転換を主要戦略の一つに位置づけ、主要農業原材料の調達を再生型農法に切り替える目標を掲げています。土壌の炭素固定、水資源の保全、生物多様性の回復を同時に追求する取り組みとして、B Corp認証を取得した企業の手本となっています。

再生可能エネルギー企業:エネルギーシステムの再生

再生可能エネルギーへの転換は、エネルギーシステムそのものを化石燃料依存から再生可能なものへと変革するリジェネレーションの取り組みです。日本でも2026年現在、再エネ100%を目指す企業が増加しており、地域の自然エネルギーを活かした分散型エネルギーシステムの構築が進んでいます。

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リジェネレーションを実践するには

さて、リジェネレーションに向けて、私たちに出来ることはあるのでしょうか?

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イメージしやすいところでは、自然と自分自身のつながりを考え、日々の暮らしの中に自然を取り入れていくことです。

例えば、家庭で出る生ごみをコンポストすることで、植物や土にとってプラスになるたい肥へと変えることなどです。

リデュース・リユース・リサイクル「3R」に加えて、「R」として再生品の使用を心がけることもリジェネレーションの一部です。

また、地球環境に限らず、自分や組織・社会にも再生や変化という視点は大切です。

これまでの常識が変わっていく「ニューノーマル」の時代では、日々の暮らしやビジネス・働き方も以前から変わっていきます。将来に自然や環境を残していくためにも、個人や組織の在り方を見直していくことはいかがでしょうか。

個人として、健康な体と健康な心や周囲の人々との関係性を見直すこと。

組織として、ティール組織やホラクラシーと言われるような、多様なメンバーが自主的に動いていく形へと変わっていくこと。

根本にあるのは、社会の捉え方です。

  • 私たちの経済活動の中で、環境への配慮をすべきという考え方
  • 自然環境や資源の中で、私たちが社会をつくり生きていると考え方

前者の考え方では、従来のエコやサステナビリティといった取り組みなどがゴールとなりえます。後者であれば、自然を守ることが人間の未来をつくることにもつながるのです。

どのように”社会”を認識するかが、マイナスを抑える「less bad」に加え、プラスを生み出す「more good」のアクションをするきっかけになるのではないでしょうか。

『社会課題を解決したい』と話すあなたの “社会”って何ですか?

過去にも『ビジネスセクターとソーシャルセクターは対立する』という認識から、『両立できる方法も模索していこう』とパラダイムシフトが起こっています。

これまでの「サステナビリティ」を再定義した「サステナビリティ+リジェネレーション」について考えてみませんか?

リジェネレーションに関連したキャリアや暮らし方に関心がある方は、以下も参考にしてください。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。

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ライタープロフィール

よこぴー@ソーシャルキャリアをよこよこ
サーキュラーエコノミー、アップサイクルなど色々なキーワードが台頭する中で、「リジェネレーション」ってあまり知られてない気がしたので書いてみました。
関心分野は”社会貢献×投資”
Twitter:よこぴー@ソーシャルキャリアをよこよこ

よくある質問

Q. リジェネレーションとは何ですか?

リジェネレーション(Regeneration)とは、「再生」「新生」を意味する言葉で、サステナビリティをさらに進化させた考え方です。地球や社会・経済のダメージを単に「維持」するにとどまらず、意識的に回復・再生させることを目指します。

「再生型ビジネス」「再生型経済」とも呼ばれ、less bad(悪さを減らす)からmore good(積極的にプラスを生み出す)へのシフトがその本質です。国際的に『We Are Regeneration』をキーワードに新たな潮流として注目されています。

Q. サステナビリティとリジェネレーションはどう違いますか?

サステナビリティは「現在の状態を維持し、将来世代に残す」ことを目指す概念です。一方、リジェネレーションは「すでに傷ついた地球や社会を積極的に回復・再生させる」ことを目指します。

サステナビリティが環境負荷をゼロに近づける「less bad」の発想であるのに対し、リジェネレーションは生態系・コミュニティ・土壌などをプラスの状態に取り戻す「more good」の発想です。両者は対立するものではなく、補完し合う関係にあります。

Q. リジェネレーションに取り組む企業の事例を教えてください。

主な事例として、パタゴニア(リジェネラティブ・オーガニック農法によるコットン調達)、ユニリーバ(再生型農業への転換)、LUSH Japan(福島県産菜種油の採用による農地再生支援)などがあります。

国内では再生可能エネルギー企業やB Corp認証を取得した企業がリジェネレーションの理念に近い取り組みを進めています。共通するのは、単なる環境負荷の低減にとどまらず、生態系・コミュニティ・土壌の積極的な回復を目指している点です。

Q. 個人でできるリジェネレーションの実践方法はありますか?

個人レベルでは、生ごみをコンポストにして土に還す、再生品やエシカル商品を選ぶ、自然とのつながりを日常生活に取り入れるなどが挙げられます。また、エコビレッジや地域コミュニティへの参加、自分自身の心身の健康や人間関係を見直すことも、広義のリジェネレーション実践です。まずは「less bad」の行動から始めつつ、環境や社会にプラスを生み出す「more good」の視点を少しずつ取り入れてみることから始めてみましょう。

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