・スチール缶はリサイクルされると何になる?
・アルミ缶のリサイクルと何が違うの?
・スチール缶リサイクル協会は何をする組織?

このような疑問を抱えているのではないでしょうか?

今回は、スチール缶リサイクル協会の中田さんへの取材を通して、スチール缶の魅力をお伝えいたします。

協会が行った2019年の意識調査によると、10代の7割はスチール缶の素材を知らないという結果になりました。

この機会に、スチール缶がリサイクルされるまでの過程や正しい捨て方などについて学んでいきましょう。

※スチール缶リサイクル協会とは?
使用済みスチール缶の散乱防止対策および資源としての再利用について研究し、社会に貢献する事を目的とする任意団体です。資源化対策、美化・散乱対策、PR活動を実施しています。
スチール缶リサイクル協会のHPはこちら

スチール缶とリサイクル

スチール缶とは

ーーースチール缶とは、どのような缶なのでしょうか?

スチール缶とは、スチールすなわち鉄を材料として製造された缶です。

材料であるスチールは、厳密にいうと鉄を主成分に微量の炭素を合成した鋼(はがね)という合金で、鉄よりも強度が高いです。

スチール缶は、缶ジュースや缶コーヒーなどの飲料缶、みかんや魚の缶詰などの食料缶、のりやお茶・クッキーを入れる一般缶、18リットル缶(一斗缶)などの用途があります。

スチール缶のリサイクル率は高い?

ーーースチール缶のリサイクル率はどのくらいなのでしょうか?

2021年度のスチール缶リサイクル率は93.1%です。

過去11年間90%以上を維持しており、2020年度は94%と過去最高のリサイクル率でした。

しかし、中にはスチール缶であっても違う品目としてリサイクルされているものがあり、これを定量化して把握することは困難なため、この部分はリサイクル率に計上していません。

リサイクル率の100%に対する不足の大部分が、このような定量化が困難な回収分や再資源化分であり、リサイクル率は実質100%に近いと考えています。

スチール缶がリサイクルされるまでの過程

ーーースチール缶がリサイクルされるまでの過程を教えてください。

まず、スチール缶のリサイクルには2つのルートがあります。

1つ目は、各家庭の分別排出から始まる自治体の分別収集や不燃ごみ収集ルート。

2つ目は、自販機や事業所・工場などから排出される事業系回収ルートです。

次に、いずれのルートでも資源化施設で、磁石によってスチール缶とアルミ缶など他の容器包装を分別します。

分別後は、運びやすいようにプレス機でブロック状に圧縮加工します。

そして、ブロック状に加工されたスチール缶は、スクラップ処理業者等を経由し、製鉄メーカーが原料として購入します。

スチール缶とアルミ缶のリサイクルの違い

ーーー基本的な質問ですが、スチール缶とアルミ缶を教えてください。

スチール缶は鉄を材料としている一方、アルミ缶はアルミニウムを材料としている違いがあります。

2つの違いは主に強度にあり、スチール缶は強度が強く、アルミ缶は強度が弱いです。

そのため、スチール缶は、缶の中を真空にするため凹みやすいコーヒーやお茶に、アルミ缶は中から圧力をかけて形を維持できるようにビールや炭酸飲料によく使われます。

ーーースチール缶とアルミ缶のリサイクルにおける違いはありますか?

まず、リサイクルの仕方が異なります。

アルミ缶はアルミ缶だけでリサイクルされることが多いです。

それに対して、スチール缶は自動車や家電製品、建材などの他の鉄スクラップと一緒にリサイクルされます。

また、リサイクル後にできるものにも違いがあります。

アルミ缶は、多くがアルミ缶にリサイクルされますが、スチール缶は様々な鉄製品にリサイクルされます。

スチール缶はリサイクルで何になる?

ーーースチール缶はリサイクルされると何になりますか?

スチール缶は鉄スクラップとして、全国の製鉄工場で製鉄原料として使用され、他の鉄スクラップと一緒にまず鉄に戻されます。

そのあと、スチール缶や自動車、建材、鉄道、船舶の材料にリサイクルされます。

つまり、スチール缶は鉄製品なら「何にでも」「何度でも」生まれ変われるのが特徴です。

正しいスチール缶の捨て方

ーーー正しいスチール缶の捨て方を教えてください。

まず、分別をしていただきたいです。

資源ごみ、不燃ごみなど地域によって異なりますが、その地域のルールに沿って捨てましょう。

空き缶の中にごみを詰めたり、タバコの吸い殻を捨てたりするのは控えていただきたいです。

ーーー他に気をつけることはありますか?

可能な方は、捨てる前に軽く水で洗っていただきたいです。

ただ、本当に軽くゆすぐだけで大丈夫です。

たくさん洗うと却って水資源がもったいないですし、洗剤を使うと環境への負担も増えてしまいます。

スチール缶リサイクルのよくある質問

ここからは、スチールのリサイクルについて、よくある質問をしていきたいと思います。

リサイクルで発生する環境への影響は、新しく作ることと比べるとどのくらい削減できますか?

1/3ほどの環境負荷でできると言われています。

一から鉄を作る場合、鉄鉱石を船で輸入する必要がありますが、リサイクルの場合は鉄鉱石が必要ありません。

そのため、鉄鉱石を取るための環境破壊や船に使う燃料、製鉄時に発生するCO2排出量などを削減できます。

スチール缶をリサイクルするにあたりデメリットとなることはありますか?

デメリットはないと考えています。

ペットボトルや紙は、リサイクルした方がコストがかかると言われることもありますが、スチール缶に関しては、リサイクル技術が高いレベルにあるためコストを抑えることができます。

スチール缶とアルミ缶はなぜ分けてリサイクルする必要があるのでしょうか?

素材が異なるためです。

ただし、磁石でスチール缶とアルミ缶を簡単に分別できるため、自治体のルールに指定がない場合は一緒に資源ごみとして出していただいて問題ありません。

プルタブを集めることに意味はありますか?

協会としては、推奨しておりません。

飲料缶のプルタブは散乱防止のため取れないようになっています。

プルタブは、アルミでできておりスチール缶にもアルミ缶にも使われていますが、スチール缶リサイクルにおいて少量であればアルミが混じっていても問題ありません。

さらに、プルタブを外す際にケガをする可能性もあります。

また、アルミ缶ではプルタブの重量は缶全体の1/40程度のため、タブ単体ではリサイクル効率がとても悪いです。

そのため、スチール缶、アルミ缶ともプルタブは外さずにお願いします。

スチール缶リサイクル協会の取り組みをご紹介

ーーースチール缶リサイクル協会はどのような組織でしょうか?

弊団体は、使用済みスチール缶の散乱防止対策および資源としての再利用について研究し、社会に貢献する事を目的とする任意団体です。

鉄鋼メーカーや製缶メーカー、商社の計12社の会員会社で構成されて活動しています。

協会が設立された約50年前は、高度成長期の大量生産大量消費の時代でリサイクルの仕組みはありませんでした。

しかし、消費者や自治体、事業者などと協力して一から仕組みを作り活動を続けることで、90%以上のリサイクル率を10年間以上維持できるようになりました。

ーーー現在は、どのような事業を行っていますか?

大きく以下の2つの事業を行っています

①スチール缶リサイクルの推進と普及啓発
環境美化・散乱防止の推進と普及啓発

特に近年は、若者への環境教育や啓発活動に力を入れています。

数年に一度スチール缶についての意識調査を行っているのですが、2019年の調査では、10代の7割はスチール缶の素材を知らないという結果になりました。

このことに危機感を感じて、YouTubeTwitterを開設したり、若者が聴取するラジオ番組に出演して認知の向上に取り組んでいます。

リサイクル業界とキャリアについて

ーーー中田さんは、なぜスチール缶リサイクル協会で働いているのですか?

もともと、製缶メーカーで働いており、スチール缶リサイクル協会への出向辞令があったからです。

新卒から30代半ばまでは、営業として主にアルミ缶を売っていました(笑)

その後は、市場調査や情報システムに関わったり幅広い業務を行っていました。

市場調査をしているときに業界の色々な団体とかかわりを持っていたので、その経験を活かせると思われたのかも知れないですね。

ーーー実際に働いて見て感じる協会の魅力や良かったことはありますか?

会社単位ではなく、業界や社会のために働けることですね。

業界で言うと、鉄鋼業は国の基幹産業で、日本を支えるような業界に関われているのは意義のあることだなと思います。

また、会社だとどうしても売上や利益のために働かなければなりませんが、協会だと社会貢献を目的として仕事ができるのも魅力です。

ーーースチール缶のリサイクル率はほぼ100%になっている中で、中田さんの目標を教えてください。

まずは、今のリサイクル率を維持することですね。

さらに、もっとコストを抑えることはできないか、もっと品質を良くできないかとより良いリサイクルにもこだわっていきたいです。

ーーー最後に一言お願いいたします。

スチール缶だけに限らず、使って終わりではなく、もう一度どうしたら役立つように使えるかみんなが考えることが大切です。

将来の人々に豊かな自然や貴重な資源を残すことにつながるので、この取り組みを続けることが大事ですし、それが我々の責任の一つだと思います。

この機会にぜひリサイクルについての理解を深めていただきたいです。

お知らせ

ラジオ番組 未来授業にて、スチール缶リサイクル協会 「スチール缶にみるリサイクルの未来」が公開中

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