サーキュラーエコノミーについて、ネット上や書籍、講演などで多くの解説がなされています。

本記事では、それらの解説や、私自身が環境経営を実践する中で感じたサーキュラーエコノミーの?(ハテナ)について、環境経営での経験から見出した視点も踏まえて深掘りします。

プロフィール
執筆者:柴田充

八千代エンジニヤリング サーキュラーエコノミー分野責任者。
2007~2021年グローバル企業 環境部署の責任者として従事。2021年9月八千代エンジニヤリング入社、サーキュラーエコノミー分野の事業検討・開発を担当。
https://www.yachiyo-eng.co.jp/

サーキュラーエコノミーとは? 

サーキュラーエコノミーとは、資源効率の向上を図ることで脱炭素など環境課題の解決に寄与するとともに、自社や社会の持続的成長を図る活動です。

サーキュラーエコノミーの定義

サーキュラーエコノミーの定義について解説します。

サーキュラーエコノミー先進地域であるEUの政策執行機関である欧州委員会、サーキュラーエコノミーを推進するNPOであるエレン・マッカーサー財団、それから日本の経産省、環境省での定義あるいは目的について整理いたします。

英語原文には私による意訳を併記いたします。

EUのサーキュラーエコノミーの定義

The circular economy will help us decouple economic growth from resource use, protecting Europe’s natural resources while boosting sustainable growth. It will help the European Union to strive to reduce its consumption footprint and double its circular material use rate in the coming decade.
サーキュラーエコノミーは、資源利用に拠らない経済成長に寄与し、持続可能な成長を促進しながらヨーロッパの自然資源を保護します。サーキュラーエコノミーは、EUが今後10年間に消費フットプリントを削減し、循環材料の使用率を倍増する努力を支援するものとなります。

出典:Circular economy – European Commission

エレン・マッカーサー財団のサーキュラーエコノミーの定義

The circular economy is a system where materials never become waste and nature is regenerated. In a circular economy, products and materials are kept in circulation through processes like maintenance, reuse, refurbishment, remanufacture, recycling, and composting. The circular economy tackles climate change and other global challenges, like biodiversity loss, waste, and pollution, by decoupling economic activity from the consumption of finite resources.
サーキュラーエコノミーとは、材料が決して廃棄物にはならず、自然が再生されるシステムです。サーキュラーエコノミーでは、製品や材料はメンテナンス、再利用、改修、再製造、リサイクル、堆肥化などのプロセスを通じて循環し続けます。サーキュラーエコノミーは、有限な資源の消費から経済活動を切り離すことで、気候変動、生物多様性の損失、廃棄物や汚染などのグローバルな課題に取り組みます。

出典:What is a circular economy? | Ellen MacArthur Foundation

経済産業省・環境省のサーキュラーエコノミーの定義

省庁・出典 記載

経済産業省
成長志向型の資源自律経済戦略

サーキュラーエコノミーは、資源の効率的・循環的な利用とストックの有効活用を、サービス化なども組み合わせて行うことにより、国内総生産(GDP)のみならず、資源効率性も高めることができる社会経済システム

環境省
令和5年環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書

これまでの大量生産、大量消費、大量廃棄型の経済・社会様式から、競争条件への影響も踏まえ、資源・製品の価値の最大化を図り、資源投入量・消費量を抑えつつ、廃棄物の発生の最小化につながる経済活動全体の在り方

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リニアエコノミーとサーキュラーエコノミーの違い

サーキュラーエコノミーの説明として、以下のような図を用いて説明されていることも多いようです。

図1リニアエコノミーとサーキュラーエコノミー概念図

リニアエコノミーとサーキュラーエコノミーは、資源の使用と廃棄に関する二つの異なる経済モデルです。

これらのモデルは、持続可能性、資源効率、環境への影響などの観点から重要な違いを持っています。

一見しての違いは、「廃棄物」が「リサイクル」に置き換わり、形が直線から円になることでしょうか。

では、リサイクルをすることがサーキュラーエコノミーなのでしょうか?

リサイクルがサーキュラーエコノミーであれば、敢えてサーキュラーエコノミーと名乗る必要はありません。

では、サーキュラーエコノミーとは何なのでしょうか?

まずは、日本におけるサーキュラーエコノミー関連政策の推移を見ていきます。


日本におけるサーキュラーエコノミー関連政策の推移

(1)最終処分場のひっ迫

1990年代の環境課題の一つが、廃棄物の最終処分場ひっ迫問題でした。

最終処分場の新設は十分に進まなかったため、最終処分場に持ち込まれる廃棄物を減らす必要がありました。

そこで、リサイクルの必要性が一気に高まります。

(2)大量リサイクル時代の到来

政府は1999年7月に「循環経済ビジョン」を策定、翌2000年6月には「循環型社会形成推進基本法」を施行します。

いずれも3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進が謳われています。

3Rで優先されるべきはリデュースでしたが、実態としては大量リサイクル時代が始まります。

大量に発生する廃棄物などがリサイクルに回るようになりましたので、最終処分量は減っていきました。

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図2 日本国における最終処分量推移(単位:百万トン)

環境省データを元に筆者作成
出典:環境省_令和5年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第2部第3章第1節 廃棄物等の発生、循環的な利用及び処分の現状

(3)大量リサイクルにおける課題

しかし、時代の変遷とともに大量リサイクルの課題が顕著になります。

原材料となる資源の枯渇に加え、日本における主な大量リサイクルの課題として3つ記載します。

  • 欧州の動向

単なる廃棄物政策ではなく、国際競争力の強化など、経済政策として矢継ぎ早に施策を打ち出しています。

例えば、飲料容器など特定の製品にリサイクル材の使用比率目標を設定したり、資材の履歴を追跡する仕組みの導入を進めたりしています。

欧州に製品の輸出をしたりビジネスを展開するには、これら政策に対応していかなければなりません。

表1 EUにおけるサーキュラーエコノミーの主な動き

2015年 サーキュラーエコノミー・パッケージ
2018年 欧州プラスチック戦略
2019年 欧州グリーンディール
2020年 新サーキュラーエコノミー・アクションプラン
  • リサイクルの海外依存リスク

日本は「資源」として不要物を輸出していました。

しかし、2019年に中国が廃プラスチック類の輸入を禁止したこと、更にはレアメタルなど重要鉱物の確保のためなどにより、国内での対応が必要となりました。

  • 脱炭素

欧州の各種政策も同様ですが、脱炭素を目的に、2021年10月に閣議決定された「地球温暖化対策計画」において、サーキュラーエコノミーへの移行が謳われました。

サーキュラーエコノミーの取り組みが進めば、製品などのライフサイクル全体における温室効果ガスの排出低減につながる、という主旨です。
(しかし、サーキュラーエコノミーの座組によっては、温室効果ガスが増加することがあるので注意が必要です。)

(4)サーキュラーエコノミーへ

2018年6月閣議決定された「第四次循環型社会形成推進基本計画」において、環境的側面だけでなく、経済的側面や社会的側面を含めて統合的に資源循環を向上させていくことが謳われました。

これ以降、表2に記載のように政府が施策を矢継ぎ早に展開したこともあり、サーキュラーエコノミーの流れは加速化していきます。

表2 日本におけるサーキュラーエコノミーでの政府の主な動き

1999年 「資源循環ビジョン」策定
2000年 「循環型社会形成推進基本法」施行
2018年 「第四次循環型社会形成推進基本計画」閣議決定
2020年 「循環経済ビジョン2020」策定
2021年
  • 官民連携プラットフォームである「循環経済パートナーシップ(略称:J4CE〔ジェイフォース〕)」を創設
  • 「地球温暖化対策計画」閣議決定、サーキュラーエコノミーへの移行を謳う
2022年
  • 「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」施行
  • 「循環経済工程表」策定
2023年 「成長志向型の資源自律経済戦略」策定

サーキュラーエコノミーの理解には、自組織の立ち位置を認識

サーキュラーエコノミーを理解するためには、自組織の立ち位置を認識する必要があります。

自組織の立ち位置により、サーキュラーエコノミーの意味が異なるからです。EUで規制の進む衣類を例に記載します。

図3 衣類におけるサプライチェーンイメージ
*1 水平リサイクル:同用途へリサイクルすること(例:衣類を衣類に)
*2 カスケードリサイクル:(通例、資源価値を下げて)他用途へリサイクルすること(例:衣類を緩衝材に)

貴社が素材製造や衣類製造の場合、リユースが推進すると、製造量は減るかもしれません。

一方、リユース業や水平リサイクルを扱う企業の場合、ビジネスチャンスは広がるかもしれません。

このように、サーキュラーエコノミーはチャンスにもリスクにもなります。

サーキュラーエコノミーに対する自組織の立ち位置をしっかりと整理しておくことが肝要です。

サーキュラーエコノミーの理解を深めるために―疑問を深掘り―

サーキュラーエコノミーをもう一段深く理解するために、私の経験も踏まえ、3つの視点を記載します。

(1)視点1:マテリアルフローの枠を拡げる

製品Aと製品Bがあったとします。使用後はリサイクルされずに廃棄物となっていたとします(図4)。

図4 廃棄を前提としたイメージ図

使用済みの製品Aを製品Bの原材料としてリサイクルすると、製品Aの廃棄は減り、製品Bの原材料投入量も減ります(図5)。これはこれで、とても素晴らしいことです。

図5 他用途にリサイクルするイメージ図

一方で、リサイクルした先のことを考えられたことはありますでしょうか。

リサイクルした先では、廃棄物になっているケースは少なくありません。

リサイクル方法にも拠りますが、未来永劫、永遠にリサイクルし続けることが難しいモノもあります。

廃棄されていたものをリサイクルすることは第一歩ではありますが、資源の循環をどの枠で考えるかは、モノによって状況も違いますので、個別に最適解を求めることが必要でしょう。

(2)視点2:時間軸を拡げる

製品の寿命を、仮に1年だとします。消費者の視点に立つと、例えば3年間では図6のような感じになります。

ここでは、「廃棄」を「リサイクル」に置き換えていただいても結構です。

3年間で、原材料投入量は3、廃棄物(リサイクル)量も3となります。

図6 製品を3回買い替えた場合のイメージ図

廃棄物をなくすことはできませんが、減らす方法として、製品の「長寿命化」が考えられます。

仮に製品寿命を3年に延ばすことができれば、原材料投入量は1、廃棄物(リサイクル)量も1になります。

図7 製品寿命を延ばして買い替えを行わない場合のイメージ図

また、修理やパーツ交換で製品を長寿命化することもできます。

図8 修理(パーツ交換)により製品寿命を延ばした場合のイメージ図

(3)ビジネスモデルを拡げる

「サーキュラーエコノミーでは、我が社の製造・出荷量が減ってしまうのではないか?」と疑問に思われる方もいらっしゃると思います。

回答としては、「従来型のビジネスモデルのままでは減る可能性が高い」となるのではないでしょうか。

そもそもサーキュラーエコノミーが求められる背景は、従来の経済システムが行き詰まりをみせているからです。

経産省、環境省ともにサーキュラーエコノミーを「社会経済システム」「経済活動全体の在り方」と定義付けています。

そのため、ビジネスモデルにまで踏み込んでいくことが必要です。この点が、廃棄物をリサイクルするだけの取り組みとは根本的に異なります。

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まとめ

私はグローバル企業の環境部署に14年在籍しました。

新しい環境の概念を取り入れ、ビジネスモデルや成功体験を変えていくことはとても大変でした。

皆さまもその渦中にあると思います。

欧州などグローバルでの環境の動きが日本に伝播するには数年のタイムラグがあります。

皆さまがいち早く組織を動かすことで、先行者利益を得ることが可能になります。

本記事が少しでもそのお役に立てば幸いです。

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